雪組
ドン・カルロス
Shining Rhythm!


2012年5月11日
於・東京宝塚劇場 



   スペイン国王フェリペ2世は、先の王妃が早くに亡くなったため、もともと息子の許嫁だったイサベルと再婚していた。 息子ドン・カルロスは女官のレオノールに心を寄せていたのだが、フェリペ2世は妃と息子が通じていると疑いを抱く。 ドン・カルロスは、国王の冷たい態度に心を痛めるイサベルの相談を受けていたところを、国王の手勢に見つかり捕えられてしまう。 さらに友人ポーザ侯爵から預かっていた新教徒の聖書を持っていたこともあり、異端審問にかけられることになる。

 もう少しサイドストーリーとか複線とかないの?と思うほど、単純な話でした。
 政略結婚の許嫁とは言っても、ドン・カルロスもイサベルも相手に愛情を抱いてないというのが不自然。 ドン・カルロスがレオノールを愛しているのはいいとしても、イサベルはドン・カルロスを愛していて、 口実をつけて2人きりで会おうとしていたとか言う方が納得できる。 あるいは、ネーデルランド絡みか何か他の陰謀に巻き込まれるとか。

 ドン・カルロス、音月桂。気さくで、民衆受けも仲間受けもいい好青年ではあるけれど、ちょっと考えが浅いとしか思えない。 異端審問の後、軽率な行動は取らないようにと言われていたにもかかわらず、ポーザ侯爵に対してネーデルランドの話を持ちかけるって、それが軽率だって言うの。 聖書の入手経路を追求されなかったのはお情けみたいなものなのに、わざわざほじくり返さないように。 王子としての責任感もあまりなさそうなので、レオノールと旅に出たら、きっとあのまま帰ってこない気がする。

 レオノール、舞羽美海。みみちゃんは、宝塚の娘役らしいいじらしい役がよく似合う。 牢獄のシーンで男は身勝手と訴えるところは、ちょっと感動しました。

 フェリペ2世、未涼亜希。まっつはお父さんがよく似合う。 国王と言っても人間が小さくて、妃が出産で亡くなったために息子を許さないとか、いつまでも亡くなった妃を想い続けて新しい妃を愛さないとか、息子に嫉妬するとか、 芝居が上手いだけに嫌になります。 裁判でイサベルが声を上げなかったら、本気で息子を見殺しにするつもりだったわけ? 親子喧嘩で周りを巻き込まないでほしいです。

 王妃イサベル、沙月愛奈。 夫がつれないからドン・カルロスに相談するなんて、あまりに浅はか。 2人だけで密かに会っていたら邪推されるのは分かりきっているし、普通の夫婦じゃないのだから、国際問題に発展するって言うのに。

 ローザ侯爵、早霧せいな。気をかけていた少女が目の前で焼身自殺したのはショックだとは思うけど、いきなりネーデルランド独立運動に目覚める? どんなに混乱してたとしても、あかの他人の女性とそんな関係になって、隠し子まで作ってしまうってあり? 挙句の果てに、親友まで売って。 やたら苦悩していて気の毒ではあったけど、よく分からない人です。 あそこまで泥沼化したら、最後までばっくれるのが筋っていうものだけれど、根は真面目で優等生なんですね。

 これで雪組最後のきたくんは、友人仲間と言ってもほとんど絡みがないし、こまちゃんに至っては全く脈絡のない役。 生徒さんはそれなりに役を作り込んで演じてはいるのだけれど、あまりに薄っぺらい話で、感情移入全然できませんでした。

 ショーは楽しかったです。
 ちぎちゃんを中心にした、黒いスーツの男役さんの群舞。めちゃくちゃ格好いい。 娘役さんもセクシーでいい感じでした。 芝居で見られなかったちぎ・きたコンビが見られて、大満足です。
 スパニッシュ、ラテン、エジプトの光と影、そして黒燕尾とバリエーションが豊富。 ダンスナンバーが見ごたえあって良かったです。