ラヴィック 雪組
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凱旋門


2000年10月24日
於・東京宝塚劇場
ジョアン


BGM *雨の凱旋門

 第2次世界大戦下のパリ。ドイツからの亡命者ラヴィックは、恋人を亡くして生きる希望を失った女ジョアンと出会い、恋をする。だが時代に翻弄され、ラヴィックはその愛を失う。この作品で、いしちゃんが芸術祭優秀賞を受賞していました。本当に宝塚の作品という枠を取り払って、普通の演劇として見ても、すばらしい作品でした。

 矢代鴻さんの歌声がすばらしくて、戦時下のパリのアンニュイな雰囲気がよく出ていました。

 ラヴィック、轟悠。哀愁漂う男の美学を演じたら、右に出る人はいないと思う。。亡命者として仇敵を探す失意の中、ようやく見つけた愛。未来に夢を持つ若い男女の恋とは違って、明るい未来を望むわけではなく、ただ今をこの相手と共に過ごせれば、つらい現実も耐えられる。そういう大人の恋の退廃的なムードがよくでていた。間違いなく、いしちゃんの当たり役。

 ヒロインのジョアンは、男の愛がなければ生きられない女。ほんの数ヶ月ですら、独りでいることが出来なくて、別の男を見つけてしまう。華やかな世界への憧れも、捨てきれない。浮気性な女には違いないのだけれど、、ジョアンはそういう風にしか生きられない。ぐんちゃんのジョアンは、変にこびるわけではないけれど、男の愛にすがって生きる弱い大人の女という感じで、本当によく役に合っていた。

 舞台全体はとても重々しい雰囲気なのだけれど、ホテルに集まる亡命者たちが生き生きしていて、躍動感があった。ひとりひとりのキャラクターがよくたっていて、未来に希望をつなぐ者、仲間を裏切る者、皆とてもよかった。

 ラヴィックとジョアンがリヴィエラに旅行したときのパーティシーン。小洒落たリゾート地の雰囲気がいい。場面が変わった瞬間に、今までの暗い日常と全然違っていて、楽しそう。謝珠栄先生の演出は、とても好きです。
 ラスト、凱旋門の前に集った民衆が蜂起するシーンのスローモーションも、舞台としては珍しい感じがして、印象的だった。

 芝居の前にショーを持ってくるというのが、目新しかった。でも個人的には、芝居→ショーの順の方が好き。幕開けいきなりショーだと、ちょっとテンションがついていかないもので。