雪組
はじめて愛した

2010年11月3日
於・日本青年館



 殺し屋バードという裏の顔を持つ、カメラマンのガイ。 狙撃の現場を1人の女性に見られたことに気付いた直後、彼女はビルから飛び降りてしまった。 事件の捜査を行っている刑事ベルモンドが、事情聴取のために入院中の女性を訪ねたが、彼女は記憶を失っていた。 ガイも、目撃者の口を封じるために病院にやってくる。 だが、記憶を失いおびえる女性を見て殺す気になれず、以前からの知り合いと偽り、彼女を手元に引き取ることにした。
 レイチェルという名のその女性は、街を牛耳るマフィアの息子ジュリアーノの婚約者だった。 執拗なジュリアーノから逃げたくて自殺まではかったのだが、ガイのもとに匿われているところを見つけ出されてしまう。 ジュリアーノの顔を見て、レイチェルはすべての記憶を取り戻したが、ガイの正体については、ベルモンドに語らなかった。
 狙撃の現場を見られる失態を起こしたガイと、目撃者レイチェルは、組織から命を狙われることになる。

 ハードボイルドな正塚ワールド全開。 幕開け、狙撃の銃口を客席に向けているガイというのが、ドキッとしました。

 ガイの音月桂。 ポスターを見る限り、きむちゃんにこういうハードな役は似合わないんじゃないかと思ったけれど、冷徹無情な殺し屋というわけでなくて、心の奥で悩みながらの殺し屋というのが似合ってました。 とは言っても、ずっと暗い顔をしているより笑顔が見え始める2幕の方がいいし、ヘアスタイルもロン毛はいまいち似合ってないように思うし、正塚風大人の男はキャラじゃないかも。
 ジュリアーノを殴り倒すシーンで、椅子の脚が壊れてしまったのはアクシデント?演出?痛そう〜。
 ガイ自身も最後蜂の巣に撃たれて、痛そう。 コマちゃんがライフルのケースを持って出てきたので、クリッツィ(沙央くらま)がガイを撃ったのかと思ったけれど、その前の未沙さんの台詞を考えたらナタリーでした。 ここは、見事に正塚先生にやられたなっていう展開です。 まあハッピーエンドの方がきむちゃんには合ってるし・・・あれで組織を騙しおおせるかどうかは微妙だけど。

 レイチェル、愛加あゆ。 これは大変な役だ。ジュリアーノに追われ、組織に追われ、信用してたガイは殺し屋だし、ベルモンドは放っておいてくれないし(刑事だから当然だけど)。 挙句の果てに、目の前で好きな人が撃たれて死ぬなんて、もうボロボロ。 充分娘役らしいけど、すごい女の強さも感じる。 これだけ熱演できるのだから、トップ娘役でもいいと思うのだけれど・・・

 ベルモンド、早霧せいな。 ルックスが暑苦しくないからそれほどでもないけれど、かなり暑苦しい刑事だと思う。 それなりに優秀な刑事だろうに、なんかレイチェルに関してはとことん気の毒。 花束に花束をねじ込むセンスはどんなものだろうかと思うけれど、かなりテンパってるみたいだから仕方ないか。 2幕でレイチェルを説得しているところは、娘をさとすお父さんの域に達してるし、めちゃくちゃ嫌われてるのが可哀想。 レイチェルのことを想えばこそなのに・・・自分のことでいっぱいいいっぱいなんだとしても、レイチェル鈍すぎ。 ガイが殺されて泣き崩れるレイチェルを見て、ベルモンドもきつかったろうな・・・結局最後まで自分の気持ちは伝えられなかったし。

 ジュリアーノ、彩風咲奈。 いつも威張っていて、暴力的で、婚約者はおろか部下にすら愛されない嫌な男。 頑張っているのは分かるけれど、もうちょっと余裕が欲しかった。 マフィアのボスの息子と言ったらそれなりの大物感があってもよさそうなのに、いきがっているチンピラっぽくて、やっぱり悪役を格好良く決めるのはキャリアが必要なんだって思いました。
 撃たれて死にかけているのを救おうともしない、クロード(大凪真生)の冷めた感じがよかった。

 ガイの仲間アンリ、凛城きら。 「いや、いやいやいや・・・」のところとか、「また死んでるのか?」(byガイ)のところとか、思わず笑ってしまうシーンがちらほら。 「(アンリが)呼んでる」っていうコマちゃんの言い方が、また何とも力が抜けていて面白い。
 全力投球の人が多いから、コマちゃんのゆるキャラはほっとします。

 フィナーレナンバーが盛りだくさんなのが、楽しめました。