雪組
星逢一夜
ラ・エスメラルダ


2015年9月23日
於・東京宝塚劇場




 九州の小藩・三日月藩。藩主の息子・紀之介は、幼少期を農民の子らと自由に過ごしていた。 やがて成長し、江戸に上がることになった紀之介改め晴興。 将軍吉宗に目をかけられ、出世街道を歩むが、それは同時に貧しい農村への圧政をすすめることになった。 三日月藩でも一揆の色が濃くなり、晴興は鎮圧のために故郷に戻り、幼なじみの源太と対立する。

 晴興、早霧せいな。 活発な少年時代はちぎちゃんにぴったり。この人は、つくづく少年漫画の主人公タイプなんだと思う。 でも元服してからの晴興はひたすら忍の役で、こうなるとちぎちゃんにはあわない。 あんなに闊達だった少年が、なぜそこまで将軍のイエスマンになって悪評をかぶるのか、それほど出世欲があるようにも見えないし、単に世渡りが下手なだけなのか、よく分からない。 悲恋や苦悩が似合うタイプじゃないので、格好良くも見えないし。

 泉、咲妃みゆ。晴興の幼なじみで想い人。 田舎娘なので、晴れ着以外はとにかく地味な衣装。 宝塚のヒロインという感じではないけど、なかなか好演していて、最後の方はけっこう感動した。 住む世界が違うし、きちんとお互いの立場を理解していて、手に手を取っての興ざめなラストにしないでくれてありがとう。

 源太、望海風斗。泉の夫。だいもんの演技力が光りまくってました。 優しくて男気があって、いい人なのに。 貧しいって不幸だとしか言いようがない。 誰が悪いわけじゃないのに、家族や村の人が貧しさゆえに死んでいくのをただ見てることができなくて、無謀な一揆を企てるしかなくて。 晴興も源太を殺したいわけじゃないし、でもせめて自分の手で決着をつけようと思ったのだろうけど、もう何もかもやりきれなく不幸。

 時代劇としてはよくできてる話だし、芝居も上手でいいのだけど、何とも言いようのない話でした。

 ショー「ラ・エスメラルダ」 緞帳の飾り文字が、カタカナで「エスメラルダ」と書いてあるのは、あまりに昭和レトロっぽくてびっくり。 ショーも原色スパンの衣装とか、あまり上背のない雪組っ子の雰囲気とか、レースクイーンとかの題材とか、いろいろ昭和っぽかった。