雪組
君を愛してる
ミロワール


2008年2月29日
於・東京宝塚劇場



 由緒ある伯爵家の当主が亡くなり、その遺言には「遺産は長男ジョルジュに譲る。ただし、半年以内に貴族または上流階級の娘と結婚すること」とあった。今すぐ、恋人もいないのに、遺言のために結婚なんかできないと落ち込むジョルジュ。深酒したところを、サーカス団員のマルキーズに助けられる。甘ったれたジョルジュを叱るマルキーズに、段々ひかれていくジョルジュ。マルキーズも、ジョルジュの優しさに気づく。ジョルジュは相続のため、マルキーズはサーカス存続のために、お互い別の結婚話が進んでいくが、最後はあっさりまとまって大団円。

 限りなく等身大のラブコメ。皆役にあっていて生き生きとしていていいのだけれど、あまりに等身大すぎて、もうひとひねりあってもよかったのにとちょっと思ってしまいます。

 ジョルジュ・ド・シャレット、水夏希。爽やかな青年だけど、あまりにもお坊ちゃん。「僕はひとりぼっち」とか言って飲んだくれているけれど、友人も弟も知り合いも、いくらでもジョルジュのことを思ってくれてる人はいるでしょ!「寒い」って行き倒れてないで、さっさと家に帰りなさい!って、マルキーズでなくても、思わず殴ってやりたくなります。本当に苦労知らずで、愛されていつくしんで育てられたのね。

 マルキーズの白羽ゆり。うじうじしたジョルジュに腹を立て、いきなり洗面器で殴りつけた女。平手打ちくらいならまだしも、かなり想定外の行動に驚きました。はきはきした現代っ子で、ジョルジュを尻に敷くことでしょう。

 アルガン、彩吹真央。マルキーズの元カレで、今は大サーカスの敏腕プロデューサー。シルク・ド・メールは、シルク・ド・ソレイユみたいなお洒落なサーカスなんでしょうね。
 最初悪役っぽく現われるのだけれど、「過去にしがみついていても未来はない。新しい時代に合わせたエンターテイメントをつくっていくべきだ」というアルガンの考え方はかなり道理が通っていて、誤解されやすいだけで、悪い人じゃない。最後失恋した時、螺旋階段にがっくり寄りかかっているアルガンが、ちょっと可哀想と言うか可愛いと言うか・・・。出番は少なめでしたが、しっかり存在感ありました。

 ジョルジュの親友その1、フィラントの音月桂。お調子者で、遊び人で、でも憎めない。きむちゃんが出てくると、舞台がぱ〜っと明るくなります。土方さんみたいな色気のある大人の男も出来るけど、やっぱりきむちゃんは、こういう明るくはじけた役がぴったり。

 親友その2、アルセストの凰稀かなめ。フィラントとは対照的に、真面目で気が小さい。あれだけイケメンなのに、なんでそんなに自信ないんだろう?本人はいたって真剣なのでしょうが、暗いオーラをまとったまま現われるアルセストが可笑しい。

 セリメーヌ、大月さゆ。ジョルジュのフィアンセ候補で、アルセストが想いを寄せる娘。アルセストの煮え切らなさにキレて、「ジョルジュと結婚する!」と宣言。男は情けなくて、女は強い。どちらのカップルも今どきです。

 ジョルジュの弟、クレアントの緒月遠麻。悪役面なのに、全然欲がなくて、奥さん一筋。「伯爵家なんて継ぎたくない」と嘆く人なんて、滅多にいないでしょ。兄貴よりかなりガタイはいいけれど、それでも兄弟話しているところは弟っぽい。綺麗な生徒さんが多いので、緒月くんのようなガテン系の生徒さんには活躍してもらいたい。

 神父の未来優希。ソロの歌とか、最後の大団円に持っていく展開とか、ちょっとくどい感じ。もう少し出番控えめでもいいのに。

 ショー「ミロワール」。5列目センターという、大劇場公演ではこれまでで最高の席だったので、ショーでは口開きっぱなしでした。
 幕開けの金ぴか衣装がまぶしかった。ゆみこ&きむちゃんの、合わせ鏡のダンスは可愛い。今回は、芝居でもショーでも、きむちゃんの明るさが目立ってました。

 今回の一押しが、水ちゃんのメデゥーサ。緒月くんたち黒服トリオが銀橋に現われただけで、格好よくておもわず歓声を上げてしまったのに、トリオが去った後に現われたサングラスの水ちゃんの格好いいことといったら。見た人を石に変えてしまうことに悩むメデゥーサも素敵だし、徹底的に悪役の黒服たちも格好いい。最後、耐え切れずに鏡で自分の眼を見て石化してしまうけれど、水ちゃんのメドゥーサだったら、皆喜んで石になると思う。

 銀橋、彩那くんの白雪姫とかなめちゃんのシンデレラ、どっちも綺麗。かなめちゃんは本当に顔が小さくて、お人形でもこんなにスタイルよくないんじゃないかというくらい。でも個人的には、彩那くんの女装の方が、色気があって好きでした。
 AQUAの水色の総踊りは、あまりにもタカラヅカ舞夢を思い出してしまうので、違う衣装で見たかった。ゆみこちゃんなんて、パリスにしか見えない。

 メドゥーサが見られたので満足なのですが、鏡の世界というと想像するような、神秘的で魔性の世界もワンシーン入れてくれたら、もっと嬉しかった。「レ・ビジュー・ブリアン」の夢に誘う男みたいな。きっと水ちゃん、すっごく色っぽかっただろうな〜。