雪組
JIN 仁
Gold Spark


2012年12月7日
於・東京宝塚劇場



 東京の病院に勤務する脳外科医、南方仁。 救急搬送されてきた患者の手術を行うが、術後病室を抜け出した患者を追って、高所から転落してしまう。 気がつくと、そこは江戸時代。 目の前で、侍が刺客に襲われていた。
 橘恭太郎と名乗ったその侍の手当てをした縁で、南方は橘家に居候して、江戸の人々の病気を治すことになる。 充分な医療設備の整わない中で、南方は限界を感じながらも精一杯の治療を行い、江戸の人々との交流を深めていく。

 原作は読みごたえのある大作なのに、1時間半強の短い時間に詰め込むだけ詰め込んだので、単にあらすじを追いかけているだけみたいでした。 エピソードもかなり端折っていて、感情移入して物語を見るには程遠い状態でした。 もう少しエピソードを絞り込んで、ひとつひとつを丁寧に描いてもらいたかったです。

 南方仁、音月桂。 いきなりタイムスリップしてしまったり、目の前で人が斬り合いをしていたり、普通ありえないようなことを次々経験しているのに、何もかもあっさりと受け入れすぎていて不思議。 咲さんに対する愛情も、何だかあっさりしていて。 確かにあわただしいのだけれど、さらっと流さずに、もうちょっと感情表現してもらいたかった。

 橘咲、舞羽美海。みみちゃんは、芯がしっかりして、いじらしい女性の役がよく似合うので、咲さんもぴったりでした。 南方先生と愛を育むシーンがほとんどなかったのが残念。 恭太郎さんが女の子に追いかけられるシーンを入れるくらいなら、南方先生と咲さんのロマンスをきちんと見せてもらいたかった。

 坂本竜馬、早霧せいな。 ただの女好きのお調子者のようでいて、どこか大物っぽさを感じさせる竜馬。 南方先生を友と呼ぶところは、すごく信頼感を感じました。 キラキラしていて、今が旬だな〜と痛感しました。きむちゃんからダイレクトにバトンタッチしてもらいたかった。

 橘恭太郎、未涼亜希。 お父さんの役が続いていて兄のイメージはなかったのですが、家長としての責任を背負った真面目な雰囲気がありました。 友人である竜馬に刃を向けなくてはならなくて苦悩するところは、さすがの演技力でした。

 勝麟太郎、北翔海莉。 もともと苦手な生徒さんなのですが、大仰な歌舞伎芝居、演歌調の演技が鼻について仕方ありませんでした。

 野風、愛加あゆ。 ゴージャスなお衣装の吉原のナンバーは見ごたえありました。 吉原エピソードはそれなりに時間を割いていたけれど、野風自身の気持ちを描いているシーンがなくて、残念です。 気丈な女性を好演していただけに、南方先生への思慕をちゃんと見たかった。 夕霧の最期は感動ものでした。

 佐分利祐輔、沙央くらま。 いい感じの抜け感が絶妙で、こまちゃんの存在はいつもホッとします。

 千吉、夢乃聖夏。 江戸の火消し、熱い男。ともみんにぴったりの役です。 まといを振るナンバーが格好良かった。 大火のエピソードがかなり端折られていて、医者も火消しも命がけで人を救っているんだというのが全く描かれていなくて、ここも残念でした。

 辰五郎親分、夏美よう。さすがの貫録、格好よかったです。

 お駒、大湖せしる。いい女はせしる君が演じるお約束。千吉とも似合いのカップルでした。

 ホタルの群舞が効果的で、ダンスも素敵でよかったです。 無理に2本立てにせず、しっかり1本もので見たかった作品でした。

 ショー「Gold Spark」は、ちょっと短めのオーソドックスなショーでした。
 韓流スターのような男役のナンバーは、反則だ!と言いたくなるくらいの格好よさでした。 黒い鳥のともみんが素敵だったので、黒鳥も群舞に加えてもらいたかった。