オスカル 雪組
ベルサイユのばら

2006年5月16日
於・東京宝塚劇場

アンドレ


BGM*愛あればこそ

 
 オスカル編ということで、アントワネットもフェルゼンも登場せず、ひたすらオスカルを中心にしたストーリー。稔幸バージョンの時のような詰め込みすぎの印象はなかったけれど、宮廷が全く出てこないので、物足りない気も少々。
 幕開けの小公子の後、いきなり大階段のパレードが始まって、もう終わり?と思ってしまった。プロローグ、そろそろ今風に変えてほしいなぁ。長台詞も健在で、これもなくていいのに。

 オスカル、朝海ひかる。オスカルの扮装がよく似合っていました。星組バージョンのように女声でもなく、ごく自然なオスカル。ただ、オスカルにしては物分りのよすぎる感じがする。衛兵隊士が剣を売り払ったのも怒らないし、もうちょっと気性が激しいほうがオスカルらしくていいのだけれど。満面の笑みでペガサスに乗って現われたときは、ドン引き。演出家の皆さん、夢見すぎです。ラストもガラスの馬車だし。
 オスカルの最期、星バージョンでも気になっていたのだけれど、「万歳」と中途半端にあげる手が嫌。今までどうしてたか覚えていないけれど、視覚的に絶対変!
 こむちゃんが、まーちゃんに対して優しい目を向けるようになったのが、好感持てた。Romanceの頃は、なんでこんなに冷たいんだろうと思ったので。
 フェルゼンが登場しないので、オスカルが何に心引き裂かれているのかがよく分からない。アントワネットもいないので、オスカルの立場も分からないし。詳しく描かなくてもいいけれど、少しは出してほしい。

 アンドレは、水夏希。ファンビジョンなので、格好いいです。が、あまり作りこんでいる感じはしなかった。毒ワインのシーンや、今宵一夜は感情が吹き出てくる感じでよかったけれど、後は控えているだけだし。1幕ラストの独白も、ちょっと台詞をもてあましてる感じがした。「白ばらの人」の歌だけで、充分アンドレの気持ちは伝わるのに。その後ペガサスだから、かなりアイタタ・・・
 ルルーとのシーンは、ほほえましかった。宮廷のざーます奥様たちがいなくて、こういうちょっとほほえましいシーンが入ってくる位が、見ていていい感じ。
 今宵一夜のような型にはまったシーンより、感情のままに演技する方が、水ちゃんは格好いい。

 ジェローデル、貴城けい。ビジュアル系の役は適役です。華やかな貴族で、「受け取ってください、唯一つの愛の証です。身を引きましょう」なんて歯の浮くような台詞を、ひざをついて言っても、嫌味にならない。今回、ジェローデルの扱いがかなりよくなっていて、そんな台詞絶対言わない!と納得いかない台詞もないし、原作のままのジェローデルでよかった。

 アラン、音月桂。荒々しい芝居は上手いのだけれど、キュートなルックスが邪魔をして、アランには物足りない。雰囲気はよく出ているけれど、もうちょっと大柄な方がアランはイメージが合う。水ちゃんのアラン、格好よかっただろうな〜。

 ロザリー、舞風りら。楚々として、可愛い感じがロザリーらしい。オスカル編だと、トップ娘役の扱いには毎回苦労するみたいだけれど、アントワネットよりはよかった。
 アンドレ同様、ロザリーもかなり夢見る夢子ちゃん。オスカルの幻影に惑わされ、デュエットを踊る。夢見るのも、ロザリーならまだアンドレよりは許される感じはあるけれど。「姉と慕う」なんて中途半端な感情ではなく、オスカルを恋する乙女心がいじらしくて、可愛い。でも、面と向かって告白したのには驚きました。ロザリーはそんなタイプじゃないのに。オスカルも困ったことでしょう。

 ベルナール、未来優希。クセの強いおじさん役なんかだと、はまこさんの芝居の上手さが生きるのだけれど、ベルナールは似合わなかった。ロザリーとのカップルも、歳の差カップルのようで、まーちゃんが気の毒に見えてしまった。

 衛兵隊のシーンが多くて、これはこれで好き。家族だか恋人だか、からんでくる女たちはうっとおしかった。ディアンヌだけでいいのに。ダグー大佐が民衆の仲間に加わったのは、これは原作のままで行ってほしかった。

 「ベルサイユのばら」、これからも上演し続けるのだろうな。原作が好きで、原作のキャラクターのイメージが強いので、どうしても比べてしまうし、あまりに昭和のイメージで作品を作ってもらいたくはない。今回は、あまりに原作とかけ離れた描かれ方の登場人物がいなかったのは、よかった。夢見すぎなのと、アントワネットとフェルゼンが出てこないのが残念だったけれど。