雪組
Samourai

2012年1月13日
於・日本青年館



 明治新政府のもと、フランスに留学した前田正名。 フランスの進んだ文明を学ぶために渡仏したのだが、対プロイセン戦争に遭遇し、パリ市民と共に闘いに参加する。 軍の上層部が降伏する中、最後まで戦い抜き、パリのサムライと称される。

 前田正名(マサナ)、音月桂。公明正大すぎるというか、主役然としすぎているというか、なんか感情移入できませんでした。 口先だけじゃなくて行動も伴っているのは分かるんだけど、重みを感じないと言うか。

 渡会(ワタライ)、早霧せいな。 マサナはファーストネームなのに、ワタライはファミリーネームで呼ばれるのね。 女にはもてないみたいだけれど、理想に熱くて、ほどほどに抜け感があって、格好いいです。 かなり追い詰められた状況でも、バカっぽい話題を振って場を和ませるのが、無理している感じじゃなくてとてもナチュラル。 死にかけている時にまで、そこまで気を回さなくていいのに・・・本当に見せ場で、すすり泣きしている人も多かった。 男気があって、いい男です。

 フルーランス少尉、緒月遠麻。 この人も男気があって、しかも見るからにたくましくて、男らしい。 隊長だから当然と言えば当然なのだけれど、フルーランスのもとに兵士が集まって、フルーランスの号令で団結して戦うのが、マサナより主役っぽく感じました。 軍に裏切られても、最後まで自分の信念を貫いて、この人のためだったら戦って死んでも悔いはないと思えます。 最期追い詰められた時、敵に銃を向けるんじゃなくて、バッグに入った爆弾を撃って大爆発起こすというのが衝撃的でした。
 2役の竜馬もすごく存在感がありました。 あまりに印象が大きすぎたので、2役にしないでもらいたかったくらい。

 マサナが想いを寄せる娘マリー、舞羽美海。 最初は日本人は蛮族だと見下す発言を繰り返すけれど、なぜか憎たらしく感じない。 強気の態度もどこか可愛らしくて、マサナを好きになっていく感じもよく分かる。

 レオン、大湖せしる。 貴族の家柄で高位士官の位につき、若くて美しくて傲慢で、平民なんて人間とも思っていない。 軍服姿もビジュアル系。せしる君の優しげな美貌に、冷たく高慢な役が逆によく合っていました。 レオンは単にプロイセンに降伏しただけで、密通してたし、いけすかない奴なのは確かだけれど、最後の敵役のような扱いはちょっと変。 レオンを殺したって、戦況は何も変わらないでしょ。

 幕開けの連獅子がお正月公演らしい。大劇場公演だったら和太鼓も舞台上で生徒が叩けたかな。(雪組は和太鼓OKでしょう。) そのあと正名の息子の嫁とやらが出てきて、もと宝塚の生徒だったとか、北海道は阿寒湖で財団を作って自然を守ってるとか、このくだりは長すぎに感じました。
 薩摩やら土佐やら安芸やら、いろんな藩の人がそれぞれの方言で話すのだけれど、聞き取りにくいから普通に話してほしかった。 土佐弁でない竜馬が変と思ってしまうのかもしれないけど。

 舞台はあっという間にフランス。 ちぎちゃんは、連獅子の次は黒燕尾のパリジャンとして踊ります。なかなか本役として登場しないと思ったら、そのあとに小汚い格好のワタライが現れました。 使用人に追われて出てきたり、マリーに沐浴を見られてひと騒動になったり、重い話の中でワタライの存在はほっとします。
 マリーと会話している飛鳥さん、台詞を噛みまくった挙句、忘れた?みみちゃんがフォローに入っていましたが、組長さんなのだから頼みます。

 戦況が悪化したなか、最後の望みをかけてベルサイユに進撃するシーン。「ベルサイユに!」と叫びながらの群舞は、若干「ベルばら」のようでもあり、階段を使ったところが「Never Say」のようでもあり。 マサナがセンターなのはトップさんだから仕方ないけれど、この辺りはフルーランスが主役のような格好よさでした。
 最後皆殺しの谷という異名にふさわしく、全滅の中生き残った主役2人。 一応想いが通じ合って幕だったけれど、2人が結ばれたわけではない。正名は、日本で子孫を残しているから。 史実があるから仕方ないけれど、仲間は全滅、ロマンスも実らないのでは、ちょっと悲しいです。

 フィナーレは黒燕尾の男役さんの総踊り。 ちぎきたコンビがもうすぐ見られなくなるかと思うと、目に焼き付けておかなくてはです。 シンメで踊る2人が、前後に重なったり、手をとって引っ張り合ったり・・・今回芝居では仲間以上のからみがなかったので、ちょっとした萌えポイントでした。

 初日あいさつ。前田の子孫の方々が観劇にみえていたようです。