雪組
ソルフェリーノの夜明け
Carnevale 睡夢

2010年4月14日
於・東京宝塚劇場 



   赤十字の創設者アンリ・デュナンの物語。
 植田作品ということで、全く期待しないで見に行きました。相変わらず突っ込みどころ満載で、何が言いたいんだか・・・。

 プロローグ。戦争の暗い話のはずなのに、なぜかキラキラしいとってつけたようなショーから始まる。 ショーから始まるのが嫌いなわけではないけれど、芝居の雰囲気を現したショーが好き。 (「マラケシュ」とか「堕天使」のプロローグのショーは、大好きでした。) 今回だったら、オーストリア兵とイタリア兵が戦う群舞にするとか。あまりに前時代的過ぎて、最初から引き気味。

 イタリア独立戦争の最中。旅行で通りかかった戦場の惨状を目の当たりにしたアンリ・デュナン(水夏希)。 「こんな悲惨な状況だなんて」とショックを受けて、負傷者の介抱を手伝うことになる。 戦争だし、死傷者がたくさん出ていることは想像できるだろうし、よりにもよって一番の激戦区を何も知らずに通りかかるなんて、いくら外国人とは言っても、どうなんでしょう?
 そして、臨時の野戦病院になっている教会へ。 人手も医薬品も足りないなかで、毎日たくさんの負傷兵の看護でへとへとになっている医師や看護婦に対して、突然現れた赤の他人が「負傷兵に敵も味方もない」 「なぜ戦争はなくならないんだ?」なんて知ったようなことを言う。「お前に何が分かる〜!」って怒鳴り返さない彼らは偉いです。

 オーストリア兵なのにイタリア風のポポリーノなんて名前だったり、おそらくイタリア人と思われる医師の名前がハーベルマンなんていうドイツ風の名前だったり。 国籍の違いがキーになっている話なのだから、名前くらいは分かりやすくその国らしい名前にしようよ。
 軍服も、景子先生だったらビジュアルに訴えるように、イタリア兵はグリーン+赤、オーストリア兵は白+赤の国旗カラーにするんだろうけど。 (トリコロールはフランスのイメージが強くて)
 そのイタリア兵たちが、女の子と一緒に陽気に歌い踊る。 怪我が治っているなら、いつまでも残っていないで、早く戦場なり故郷なりに帰ればいいでしょう。 野戦病院なのだから、完治するまでいる必要はないし、オーストリア兵の心意気を見習えってものです。 オーストリア兵は、なかなか迫力あってよかったです。
 ポポリーノのハーモニカに合わせて、敵味方みんなでアヴェマリアを大合唱するっていうのも、何だかな。 隣の席のおばさんが一緒に口ずさんていたのが、ちょっと怖かったです。

 ヒロインのアンリエット(愛原実花)とエクトール医師(彩吹真央)。 お互いに憎からず想っているらしいけれど、いまいち中途半端。 アンリエットは、デュナンについていくことを決めたくらいだから、デュナンに惹かれているようでもあるけれど、 エクトールに抱きつくっていうことは、やっぱり気持ちはエクトールにあるようでもあり・・・。 間で揺れる女心というわけでもなさそうで、一体どっちなんだ!?って聞きたい。
 そして、2人のラブシーンをのぞき見ているハーベルマン医師(未沙のえる)。 エクトールが好きな女と別れのあいさつを交わしているのだから、ちょっとそっとしておいてあげようよ。 人の恋路に口をはさむ人は、馬に蹴られて死んでしまえって言うでしょうが。 まあ確かに、エクトール医師はちょっと草食系男子ではありましたが。

 激戦区を負傷者を連れて通りかかる一行。 デュナンはイタリア兵に銃を向けられて、「彼らに銃を向けるなら、私を殺せ!」とご立派な発言をしていましたが、戦時下においてヒューマニズムに訴えても何にも解決しないでしょう。 参謀(音月桂)が、上司に向かって「銃撃のご命令を!」と繰り返し叫んでいましたが、私だったら命令を待たずにさっさと抹殺して終わります。 だって、明らかに変だもの。 軍の上層部から命令が来て、赤十字の一軍に攻撃を仕掛けるなと言われているならいざ知らず、突然現れてわけの分からないきれい事を並べている人なんて、兵士の士気をそぐだけ。 キムちゃん、ずっと血管切れそうなほど怒りまくってました。

 一歩間違ったら、小さな親切大きなお世話になりそうなデュナンだけど、なぜか水ちゃんだと許せてしまいました。 それが主演男役の魅力ってことなんですね。

 ショー「Carnevale 睡夢」
 幕開け、ベネチアのサンマルコ広場の水面がキラキラ光っている感じがきれい。 星組の「ロマンチカ宝塚」もベネチアを舞台にしたショーだったけれど、あれは幻想的で、今回は明るくて楽しかった。 カーニバルの華やかな雰囲気の中で、道化師と王侯貴族の2人が目立っていました。(早霧くんと緒月くん) この2人は、前芝居から出てきて、場を盛り上げてくれました。
 早霧くんは黄色いドレス姿も披露してくれました。動きはコメディ系なのだけれど、久々に本当に美人な男役さんを見ました。 水ちゃんも紫のドレス姿で現れましたが、水ちゃんはやっぱり男役の方が素敵。
 ゴンドラに乗って現れた水ちゃんが、マントをとってのデュエットダンス。このダンスナンバー好きです。 なんか、青年になったロミオみたいな感じでした。
 2階席だったのですが、華やかな総踊りが多かったので、全体がよく見えてよかったです。黒燕尾もフォーメーションがよく見えてよかった。