雪組
蒼穹の昴


2022年12月23日
於・東京宝塚劇場



清朝末期の中国。科挙の試験に主席合格したリァン・ウェンシウは、老占師の予言通りに文官として頭角を表していく。
ウェンシウの幼馴染のリィ・チュンルは、極貧生活から抜け出すための唯一の手段として、宦官になって宮廷で権力を握る野望を抱いていた。
正反対の境遇の2人が宮廷で再会。 若い皇帝のもと西太后が実権を握る宮廷で、ウェンシウとチュンルはそれぞれの信じる道を歩んでいく。

一言で言って、専科祭り。 さすがの存在感で芝居が締まるのは分かるのだけど、専科さんばかりが目に留まってしまったのと、 1本ものだったせいで、やたら話が冗長な印象が残ってしまいました。 中国の人の名前になじみがないから誰のこと言ってるのか分からないし。

ヒロインは誰が何といっても西太后。 芝居上手だしヒロさんが嫌いなわけじゃないけど、あそこまで尺取らなくてもいいのに。 「エリザベート」のゾフィー的なポジション。 専科さんの場面はもうちょっと短めにして、その分あーさが芝居一座に加わった流れとか、そら君が阿片窟に行った訳とか説明してもらいたかった。

チュンルの朝美絢。 喰い詰めて自分で去勢したって言うのは怖すぎたけど、野心で運命を切り開くパワーを感じた。 芝居一座に加わってるのが唐突すぎてなぜ?と思ったけど、京劇は華やかでした。

シュン・コイの和希そら。 そら君は、出てきたときから内に秘めた情熱とプライドがあふれてた。 歌も芝居もパンチが効いてる。 でも阿片窟で手にしたのが爆弾だって気がついたら、あっという間に爆死してて何が何やら。 すごい壮絶な最期なだけに、もうちょっと余韻が欲しかった。

縣君の皇帝は若くて、海千山千の宦官に手玉に取られてることに気が付かなくて、でも一生懸命なことがすごく伝わってくる。 「鎌倉殿の13人」の実朝のような清廉さを感じました。

ウェンシウの彩風咲奈。 原作の主人公はあーさの役だそうで、確かにチュンルの方がドラマチック。
ウェンシウは、あーさみたいな野心があるわけでも、そらみたいに復讐心にかられるわけでもなく、 感情的になるわけでもなければ、恋心に突き動かされるわけでもない。 こんなに掴みにくい役なのに、ちゃんと真ん中感があるのがすごいです。
スワサキが死んでいくのを見送る銀橋で、鼻水涙でぐちゃぐちゃなのに表情も声も変えないのに感動しました。 抑えた演技って難しいですよね。

小役人な真那春人とか、最後身代わりに死んでいく諏訪さきとか、 みんな芝居上手なのだけど、だからと言って感情移入できるキャラがいるわけでもなく、宝塚的に格好いい人もいない。 希和ちゃんもこれでさよならは気の毒。

芝居はすばらしいのだけど、宝塚見た気がしなかった。 専科公演で別箱でやってくれればよかったのに。 せめて2本立てならと思ってなりません。
中華衣装が似合わないわけじゃないけど、ラストシーンのハットにスーツの咲奈を見て、これでしょ!って思ってしまった。 フィナーレは背負い羽根なし、そのかわり真ん中3人の衣装は素晴らしくゴージャスでした。