スサノオ 雪組
スサノオ
タカラヅカ・グローリー!

2004年6月25日
於・東京宝塚劇場

イナダヒメ


 アマテラスオオミカミが天岩戸に隠れてしまったため、大和の国は暗黒に包まれてしまった。自分の暴力が原因だと嘆くスサノオ。いけにえに捧げられるはずのイナダヒメを助けて、共にヤマタノオロチ退治に出かけることになる。スサノオは、アオセトナとの闘いの後、暴力はむなしいと気づき、大和の国に平和がおとずれる。

 たぶん、ストーリーはこんな感じ。正直よく分からなかった。主役カップルと、5人くらいのメインキャスト以外は、全員白装束の揃いの衣装で、舞台上に出ずっぱり。本舞台上に、100人くらい白装束がひしめき合って、台詞も無く、動きといえばフォーメーションくらい。群舞やアンサンブルは好きだけれど、これはそういう感じでもなくて、段々うっとおしく見えてきた。日本神話はお話として面白いのに、変に暴力はいけない、平和を!なんていうメッセージを入れてしまうものだから、話が分からなくなってしまった。「王家に捧ぐ歌」のときは、平和のメッセージが上手く生きていたと思うけれど、今回はストーリーがつぶれた。曲も「王家」と似ていた気がする。

 スサノオ、朝海ひかる。暗いです。明るい役ではないけれど、陰にこもらなくても。お姉さんのアマテラスオオミカミに「男と女、どっちが偉いか?」なんて喧嘩をふきかけて、キレて暴れるって小学生かい!怒ったアマテラスが岩戸に隠れてしまったので、もう暴力は使わないと言っているけれど、ヤマタノオロチの退治は暴力とは言わないでしょ。鬱々するのではなくて、精神的に幼い暴れん坊の感じを出してほしかった。コムちゃん、いつも芝居が暗くて、もっと外に発散するパワーがほしい。

 イナダヒメ、舞風りら。可愛いと思った。毎度思うけれど、コムちゃんがいつも難しい顔をしているのに、隣にいるまあちゃんは可愛くていい。しんがしっかりしていて、他の人がなんと言おうと、自分の考えをきちんと持っている女性。彼女がいたから、スサノオも更生できたんですね。

 アマテラスオオミカミの初風緑。男役の演じる女役なので、若干は仕方ないとしても、メイクとか表情とか声とか、こわい。君臨する神の威厳は感じました。

 今回、一押し。アオセトナの水夏希。その色っぽさは何?蒼いメイクに爪まで蒼くて、ビジュアルだけでもセクシーなのに、これでもかと誘惑してくるアオセトナ。「欲しいものを言ってごらん♪」なんて言って、皆大挙して押し寄せても知らないから。貴方が欲しいって。スサノオとの闘い、アマテラスの幻影との闘いじゃなくて、ちゃんとアオセトナで見たかった。
 スサノオが復活してせりあがってくるところ、アオセトナはせりの上の階段に立ったままで、かなり上のほうまで上がっていた。そんな不安定な階段で、足元揺れて、怖そう〜。スサノオを見ている状況ではなかった。

 月読、壮一帆。主にストーリーテラー。スサノオの兄だけれど、「Romance」の時ほど無理がある感じはなかった。スサノオを破滅させようとしたらしいけれど、そのわりに死んだときに嘆いていた。月読は、スサノオの死を望んでいたのかいないのか、よく分からない。

 イナダヒメ父、アシナヅチの未来優希は、さすがの迫力。まあちゃんも鼻グズグズになって熱演していたけれど、見せ場でした。
 アメノウヅメ、音月桂。チャイナ・ガールみたいで可愛かった。ずっと暗かったので、最後の最後、きむちゃんの登場で舞台が明るくなった。「私は女だと思う?男だと思う?」とよく分からない歌を歌っていたけど。アメノウズメは女性でしょ。さすがにストリップショーは、宝塚ではできませんでしたね。

 役付が、本当にこれだけ。役の描き方も足りないし、無理に平和を訴えるのではなくて、純粋に日本神話のお話を見たかった。アマテラスの話も、ヤマタノオロチの話も、ファンタジーとして描いたら、もっと面白かっただろうな。

 今回、初舞台生の口上が芝居の前にありました。ムラでは普通なのだろうけど、東京でははじめて見た。おお〜、これがそうか、と思った。
 ショー。水ちゃんのパーフェクト・ガイ。客席に降りて、たぶんおひげの男性がいたらしい。「お兄さん、ひげが似合ってますね」と言っていた。さんざんキザって去り際に、「ひげ描いてこよう」だって。客席大うけでした。水ちゃん、色っぽくて格好いい。
 初舞台生を含めての大ロケットは、人数多すぎて、舞台奥まで全員斜めに並んでいて、かえって迫力がなく見えた。やっぱりロケットは、舞台前で一列に並んでる方が好き。