岩崎彌太郎 雪組
猛き黄金の国
パッサージュ


2001年5月22日
於・東京宝塚劇場
竜馬


 三菱の創始者、岩崎彌太郎の物語。様々な人との出会いを通して、彌太郎が経済界で成功するまで。いつも宝塚を一緒に観にいく友人が、三菱の社員なので、ちょっと小恥ずかしかったらしい。

 もっととってつけたようなストーリーになるかと思っていたら、全体によくまとまった話になっていた。ただ、現代の若者を途中に交える構成は、好きでない。登場人物全てが妙にものわかりのいい人ばかりだったのが、少し絵空事のように感じた。

 まず利左衛門。成瀬こうき自身は、落ち着いた、頭のよさそうな三井の番頭を上手く演じていたけれど、商人がわざわざ幕府の要人に、「あなた方幕府を見限ります」と報告に行く?話を聞いた上野介も、普通なら憤るだろうに、納得するというのは無理があると思う。
 沖田総司も、竜馬に会ったときに「土佐に生まれてあなたの友人になりたかった」と言うのは違う。(私は新選組ファンなので、新選組キャラには特にうるさい。)
 こういう、ものわかりのよすぎる人々に囲まれて、彌太郎は順風満帆に成功していく。

 轟悠は、青年時代の常に前向きな彌太郎もさわやかでよかったけれど、中年になってからの渋い権力者としての彌太郎が、さすがの貫禄だった。この人は、どこまで男らしくなっていくのだろう。
 竜馬の絵麻緒ゆうも、安心できる演技。
 今回赤丸急成長なのが、彌太郎の友人、後藤象二郎を演じた湖月わたる。今までちょっとものたりない感じがしていたのが、イシちゃん、ブンちゃんと並んでも、まるで見劣りしないだけの存在感。身長もあるし、今後が楽しみ。

 未来への思いをイシちゃん、ブンちゃん、わたる君の3人がそれぞれ銀橋で歌うところが、3人3様の役の色が出ていて面白かった。彌太郎は、まっすぐに前を見つめている。竜馬は、すでに世の中を悟ったように、未来を見ている。そして、おじを殺された象二郎は、怒りに燃えて。特に彌太郎と竜馬は、同じ歌詞で同じように未来を歌っているのに、そのキャラクターの性格を上手く表しているのに、感心した。

 最後命尽きていく彌太郎が、竜馬たちの幻影の中、我が人生に悔いなしと叫ぶシーンは、一瞬さよなら公演かと悲しくなるほどに、情緒たっぷりだった。