雪組
銀の狼
ワンダーランド


2005年11月11日
於・神奈川県民ホール



 記憶をなくし、殺し屋として生きるシルバ。世間では「銀の狼」と呼ばれ、恐れられていた。シルバは、被害者の妻子に顔を見られたため警察に追われることになり、記憶のない自分を拾い、殺し屋に育てあげたレイのもとを去ることにする。
 自分の過去を知りたいシルバは、顔に見覚えのある女性ミレイユから話を聞きだす。大統領候補だった彼女の父親が暗殺者に襲われたこと、そのとき治療してくれた医師がシルバだったこと。全ての記憶を取り戻すシルバ。事件の夜暴漢に襲われ、妻子が殺され、自分も瀕死の重傷を負ったのだと。全ては夫の陰謀なので、事件を明るみに出すと言うミレイユと、復讐を胸に誓うシルバは、ともに旅に出る。

 チラシには過去の出来事が細かく説明されていたけれど、実際の話は、記憶をなくしたシルバが、記憶を取り戻して復讐を遂げるまでのストーリー。過去の事件や拾われたいきさつ、シルバを襲った真犯人などは、断片的な会話の中で出てくるので、最後の最後まで話がつながらなかった。真犯人は物語のオチだから、先に言ってしまうわけにはいかないのだろうけれど。過去の事件や、シルバがレイに拾われたところを、台詞ではなく芝居で見たかった。

 シルバこと、外科医ミシェル・ラブロー、朝海ひかる。こむちゃん、また暗い。明るくなれない役だとは思うけれど、こむちゃんの陰のある役は苦手。
 それから、かつらが似合ってない。せっかくの小顔が大きく見える。あんなオスカル様みたいなヘアスタイルでなくて、ウルフヘアとか、普通に短髪の方が格好いいのに。銀髪と黒髪と、本当はどっちの髪色が本当なんだろう。どっちかがかつらという設定?

 ミレイユ、舞風りら。凛とした大人の女性を演じるまーちゃんは、とても好き。毅然としているのに、押し付けがましくなくて、素敵な女性だった。

 レイ、水夏希。シルバを拾って暗殺者に仕立てたというので、もっと黒い役かと思っていたら、意外と好青年。シルバが暗いので、2人で暗いと見ていてつらいことになりそうだけれど、個人的な希望としては、もうちょっと黒い役が見たかった。結構暗い過去を持っているのに、全然感じないのは、水ちゃんの芸風なのか演出なのか。
 乾杯のナンバーでよっぱらっているところは、最高にセクシー。常に前をはだけた、だらしない着こなしがまたセクシー。ラッパ飲みするのも格好いい。シルバと別れた後の苦悩の歌は、唯一つらそうなレイの姿が見られる。こむ、水、きむの3人で歌いつぐところが、正塚先生っぽくて好き。
 出番が少なくて、いきなりラストシーン。マント姿が格好いい。レイの言っていることがしばらく理解できなかったけれど、かなり突拍子もないオチだった。やっぱり暗殺事件〜記憶喪失までは、影芝居でいいから見せてもらったほうが、すっきりしたと思う。なんで今更罪の告白しようと思ったのかが、謎なんだけれど。そして死に際までセクシーな水ちゃん。最期までいい人でした。

 ジャンルイ、音月桂。大統領の側近で、ミレイユの夫。野心家で、冷徹非常で、愛されないタイプ。最後、「おまえを愛していた」とミレイユに言ってキスするのも、自分の欲望を満たすためという感じがすごくよく出ていて、中途半端に本当はいい人だったなんていうのがなくて、いさぎよい悪役っぷり。きむちゃん、若いのに芸達者で、何の心配もない演技。ただ1つ、決定的に見た目が若すぎる。他の閣僚たちを下に見ているジャンルイの態度からしても、ミレイユが大人っぽいことからしても、もう少し年次が上の人の方が合っていたと思う。

 トランティニアン、凰稀かなめはさわやかな刑事さん。ジャンヌの愛耀子の尻に敷かれながらも、いいコンビでした。ストーリーテラーなのだろうけれど、それほど違和感なく話に絡んできていたので、よかった。なによりかなめちゃんのあの抜群のプロポーションは、舞台が華やかになっていい。

 大統領、未来優希。さすがに上手い。存在感のある演技派の生徒さんがいると、芝居が安心して見られます。

 幕切れがちょっと盛り下がってしまった感じで、全然拍手が起こらなかった。水ちゃんの告白や、ラストのストーリー展開が唐突過ぎて、皆頭の中に?が飛び交っていたのかも。

 ショーは大劇場公演とほぼ同じ。銀橋がないので、客席からの登場が何度かあって、その都度びっくりした。暗転のうちに客席板付きって、あまり見ないパターン。1階前方席の人は盛り上がっただろうけれど、2〜3階席の人はつまらなかっただろうな。アラビア館のシーンでは、「せっかく神奈川まで来たのだから、写真とろう」と言っていました。カーテンコールでは、神奈川出身者の紹介も。