星組
1789-バスティーユの恋人たち


2023年8月5日
於・東京宝塚劇場



フランス革命を題材にしたフレンチミュージカル。 再演が決まる前から、今の星組で1789をやったらぴったりだろうと思ってたので(もちろんロナン・オランプで)、演目が発表されたときはキター!と思いました。

庶民が食べるにも困っているとき、国王夫妻は宮廷で華麗な生活を送っていた。 国王の軍隊に父親を殺された青年ロナンは、パリに出てきて革命家たちと出会う。 そして、王家に仕えるオランプとの相容れない恋。 生きるため、人としての尊厳を守るために市民が立ち上がり、革命が進んでいく。

ロナン、礼真琴。 貧しくてその日を生きるのが精一杯の農村出身。 無学で、ブルジョア階級の革命家に劣等感を持ってイラついたり、平民の中でも最下層って感じがものすごくよく出てた。 綺麗めな衣装をとっかえひっかえしてるのはトップだから仕方ないけど、思った通りのロナンでした。

オランプ、舞空瞳。 しっかりした意思を持っているけど、ヒロインとしてちゃんと可愛い。 宮廷にはいないタイプのロナンに一瞬心惹かれたのは仕方ないけど、絶対うまくいかないからやめた方がいいよ。

アルトア伯、瀬央ゆりあ。 美弥ちゃんのアルトア伯がやたら妖艶だったのに対して、セオのアルトア伯はもっとクレバー。 もちろん色気はあるし、独特の存在感はあるのだけど、策略の全てが自分が王座につくため。 単なる妖しい悪役ではなく、ちゃんとアルトア伯という人間として存在してた。

アントワネット、有沙瞳。 オープニングのルーレットからの華やかなドレス姿。 トップ娘役でもないのに、あのゴージャスな新調ドレス。 そして最後の母と王妃の責務に目覚めたあとのすばらしい演技まで、全て完璧です。 本当にいい娘役さんでした。

ペイロール伯、輝月ゆうま。 マギーのペイロールが妖しくて悪魔じみていたのに対して、輝月ペイロールは貴族の誇りと仕事に真摯に取り組む真面目さが全面に出ていて、とてもまとも。 マギーの悪魔じみたのはあれはあれですごく好きだったのだけど、作品のバランスとしてはこっちの方がいいかも。

カミーユ・デムーラン(暁千星)とロベスピエール(極美慎)。 革命家と言ってもブルジョア出身の恵まれた生い立ちで、ロナンが嫉妬心を抱くほど。 月組のときはいまいちパッとしないと思ったけど、今回は目立ってました。 同級生で一見ニコイチな2人だけど、話が進むと少しずつ違いが出てきました。
ロベスピエールが恐怖政治を行うのはまだ先、この段階では理想に燃えた青年。 キラキラした持ち味があふれ出てしまう極美だけど、ジュードポームの演説では血気盛んで、これで権力を握ったら暴走するかもしれないと感じました。 ボディパーカッションもすごく迫力があって、さすが星組パワー。
デムーランが木の葉を取って演説する場面。 ロベスピエールと同じように武器を取れって民衆を扇動してるのだけど、どこか理知的。 ジャーナリストだと思って見てるからかもしれないけど。

もう1人の革命家ダントン、天華えま。 おおらかで懐が深そうで、このダントン好きだなあ。 ぴーすけの演技は暖かくて好きです。

その他の面々
エロくなく悪役でもない輝咲玲央は珍しい、有能なネッケル。
暑苦しくないひろ香祐は珍しい、おだやかで優しいルイ16世。
若さはあふれてたけど、パワー押しでない男気溢れるフェルゼンの天飛華音。

アントワネットとフェルゼンの恋物語の比重が減って、ロナンとオランプの物語がぐっと前面に押し出されてました。 予想通りにあまりにハマっていたので、逆に宝塚と言うより東宝ミュージカルを見たような気がしました。