アリスティド 星組
1914/愛
タカラヅカ絢爛

2004年5月14日
於・東京宝塚劇場
アデル


BGM*L'AMOUR/1914

 
 1914年、パリ。クラブ歌手アリスティドと、そのクラブに集まる芸術家たち。芸術家にパトロンを紹介する謎の伯爵夫人。青年たちの夢と愛の物語。タイトルからして、あまり期待をせずに見に行ったら、面白かった。コメディと言っていいのか分からないけれど、やっぱりコメディ。

 幕開け、黒燕尾の男役さんの総踊りからはじまって、白い羽を背負ったトップさんまで出てきて、いきなりショーモード。華やか〜。モンマルトルのクラブのシーンに変わると、黒い衣装と帽子に、赤いマフラーのアリスティド・ブリュアン(湖月わたる)。ベルエポックの絵画集には、必ず載っているロートレックの絵。わたるくんのアリスティド、ポスターからそのまま抜け出してきたかと思いました。
 このアリスティド、口が悪い。「この貧乏人ども〜」「俺様の歌が聞きたいのか?」「金を払え」罵詈雑言の限りなのだけれど、どうやらショーの前の決まり文句らしくて、これがないと始まらないらしい。一人称が俺様(!)なのだけど、そのわりに人のよさそうな感じがぬぐいきれないのが、さすがわたるくん。実は伯爵家の嫡男だったという設定で、2役ではないけれど、ガラの悪いのと御曹司の2通りが楽しめる。どちらのわたるくんも素敵だあ。

 謎の伯爵夫人を名乗る檀れい。こちらは実は、オペラ歌手を夢見る普通の娘アデル。夢は見続けてこそ夢、と言ってはいたけれど、檀ちゃんにオペラ歌手はあまりに無謀では。でも、一度も歌うシーンがなかったので、劇団側も分かってる?デュエットすらろくになかった。技術的なことは置いておいて、アリスティドが、歌手も御曹司もどちらも本当の顔なのとは違って、伯爵夫人だというのは嘘なので、大げさな演技で、素朴なアデルとは完璧に別人を演じていた。その切り替えが面白い。

 歌手アリスティドと謎の伯爵夫人として出会う2人。御曹司アリスティドとアデルとして再会、お互い似ているとは思うけれど、同一人物とは思わないらしい。そしてお互い一目ぼれ。続いて、歌手アリスティドとアデルとして再再会。ここの1連のやり取り、わたるくんの百面相が大爆笑でした。

 伯爵家の執事アナトール、英真なおきがコメディ路線まっしぐら。エマ・エージェンシーって、今もあるんでしょうか?伯爵家がコメディ担当、芸術家たちがシリアス担当という感じでした。

 芸術家たち。モディリアーニ(大和悠河)、ユトリロ(真飛聖)、シャガール(立樹遥)、スーチン(涼紫央)。歌いながらお互いを紹介しあうのだけれど、聞き取りにくい歌で、全然名前が分からなかった。
 酒に溺れて中毒になるユトリロ。アル中を演じさせたら、まとぶんの右に出る人はいないんじゃないかと思うほど、真に迫っていた。ユトリロを心配するモディリアーニ。世の中にぐれている風だけれど、モディリアーニやアリスティドには友情を感じている。モディリアーニがアリスティドのもとを去るとき、お互いけなし合っているのだけれど、ちゃんと心が通じていて、優しい気持ちが伝わってくる。たにちゃん、本当に上手くなった。1場面率いていても、安心して見ていられた。
 シャガールとスーチンは陰が薄かった。シャガールは、仲間の中で一番先に成功の鍵を手に入れてパリを去っていくのだから、もうちょっと目立ってもいいはずなのだけれど、しいちゃんの押しは少し弱かったかも。

 アポリネール(貴城けい)と恋人ローランサン(叶千佳)。アポリネールは、優しげで好感が持てた。ただ、恋人との仲が見えなかった。ローランサンは、ほんの数日でも恋人と離れていることに耐えられないタイプらしいが、それだけ相手に依存しているというよりは、ただ暗いだけだった。もっと愛している感じがあればよかったのに。

 ラスト、アリスティドとアデルが銀橋で愛を確かめ合ってハッピーエンドかと思ったら、その後が面白い。いろいろ大変なことはあっても、皆楽しく生きていこうぜという感じで、見終わって心が暖かくなった。シリアスなシーンもあって、大笑いするシーンもあって、最後は気持ちよく見終われる作品。前回の花組がどうしてもコメディだと思えなかったので、今回ほっとした。

 ショーは、体力勝負。ひたすら踊るかと思ったら、大縄跳びをしたり、アクロバティックなリフトをしたり。縄跳びは・・・かしげちゃん頑張っていたけれど、宝塚でやらなくてもいいんじゃないかと?リフトも、そんなにアクロバティックなことをしなくても。
 芝居の中盤のカンカンも含め、今回ショーでは柚希礼音が大活躍。こんなにダンスの上手い人だったんだ!と見とれた。やっぱりダンスの上手い人が好きです。わたるくんと2人で踊る蛇のシーンでは、特大の2人で見栄えがした。墓場のシーンでは、他の人たちが皆お酒のボトルを持って踊るのに、礼音くん1人、なぜかぺろぺろキャンディ。格好よく酒をぐいっと飲むシーンで、ひとりペロペロ。
 踊りまくりのショーの中で、ダンスが苦手な檀ちゃんを上手くさばいていた。蛇のシーンを、うっかりトップコンビのデュエットダンスにしてしまったら、テンションが落ちてしまうし。ひたすらテンションの高いショーでした。