星組
エル・アルコン
RAY


2020年11月27日
於・梅田芸術劇場


 大航海時代。 イギリス貴族のティリアンは、英国海軍のエリート士官でありながら、いつかスペインに亡命し、7つの海を制覇する野心を抱いていた。 目的のためには、罪のないものを陥れることも、他人の命を奪うことも意に介さない。 スペイン無敵艦隊を率いて7つの海に乗り出す野望はかなったが、最後はティリアンを仇と追う海賊レッドとブラックに追い詰められ、自らの旗艦エルアルコンもろとも海に沈んでいく。

 同じ星組での再演。 聞き慣れた曲に、登場人物が次々現れるプロローグはテンションが上がります。 エピソードを詰め込みすぎて慌ただしい感は否めないけど、ちゃんと皆キャラだちしてて素晴らしい。 盆やせり、LEDの演出がなかったり、群舞の人数が圧倒的に少ないハンデはあったけど、初演に負けてない、いい作品でした。

 ティリアン・パーシモン、礼真琴。 童顔な琴ちゃんが、ダーティヒーローなティリアンを堂々と演じてて、瞳子ちゃんに負けない伸びのある歌声が心地いい。 瞳子ちゃんはひたすら皮肉な野心家という感じだったけど、琴ちゃんはもっと若くて素直な情熱を持っている。 母やギルダへはちゃんと愛情をしめすし、ジェラードに対しても尊敬の念を抱いてる。 何より、スペインに認められたときの素直な笑顔が可愛い。 原作のティリアンは瞳子ちゃんに近いけど、人間味のある琴ちゃんの方が感情移入しやすくて、宝塚っぽくて良かった。

 ルミナス・レッド・ベネディクト、愛月ひかる。 いつ見たか記憶にないくらい珍しい、愛ちゃんの白い役。 実はこれが一番見たかったんです。 礼音くんのような青二才感はないけど、爽やかで正義感ある格好いい青年。 上背あって男らしくて、宝塚の男役きたーって素直に思えるのがいい。 ナウオンで話してた、琴ちゃんにあごをつつーっと触られるところも、いい感じでした。

 ギルダの舞空瞳、華奢で可愛いのに堂々とした女海賊っぷり。 あすかちゃんほど頑なな感じじゃなくて、戦ってるときの嬉しそうな顔がいい。 琴ちゃんのティリアンは本心からギルダを愛してるように見えたから、少しはむくわれたかな。

 エドウィン、天華えま。 貴公子然としてるけど、それだけじゃない。 場面が増えたこともあるけど、ペネロープに対する思いとか、彼自身の男気がきちんと伝わってきた。 涼はひょろっとしてて、何もできないお貴族様に見えたから。

 ペネロープ、有沙瞳。 琴まりえはつんけんしてるだけの可愛げない娘だったけど、さすが芝居上手のくらっち、プライドは高いけどちゃんと可愛げのある娘だった。

 ブラック、天飛華音。 前回もめちゃくちゃ美味しかったけど、今回も良かった。 愛されキャラで美味しいとこ取り、華音くんのこれからからの活躍が楽しみ。

 ジェラード・ペルーの綺城ひか理。 上背はあるのだけど、押し出しが弱い印象。 ティリアンにあれほど影響を与えた大人の男としては、もっと押し出しの強さが欲しい・・・って、立樹遥の時も思ったのだけど。 しいちゃんより年次若いし、仕方ないかな。

 ジュリエット、桜庭舞。 頑張って可愛く演じてたけど、稀鳥まりあちゃん以上に適役の人はいない。

 前回も好きだったけど、全体として今回の方がいい作品を見たって余韻に浸れました。わざわざ遠征した甲斐があるってものです。

 ショー「RAY」。
 初演は群舞が多くて、場面ごとの印象がほとんど残ってないのだけど、今回の方が楽しめました。 とにかく主演コンビの振り数の多さ。 あれを踊り切ったうえで、さらに歌うってすごいです。 若い組子が多くて勢いだけになりそうなところを、愛ちゃんがぐっと大人の魅力で引き締めてくれるのがいい。
 新生星組、本当に楽しいです。