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星組 エル・アルコン レビュー・オルキス 2008年1月25日 於・東京宝塚劇場 |
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大航海時代。イギリス貴族のティリアンは、英国海軍のエリート士官でありながら、いつかスペインに亡命し、7つの海を制覇する野心を抱いていた。目的のためには、罪のないものを陥れることも、他人の命を奪うことも意に介さない。スペイン無敵艦隊を率いて7つの海に乗り出す野望はかなったが、最後はティリアンを仇と追う海賊レッドとブラックに追い詰められ、自らの旗艦エルアルコンもろとも海に沈んでいく。 なんて非宝塚的な、清く正しく美しくない主人公なんでしょう。実はティリアンはこんな寂しい過去があって〜とか、本当はこんなやさしいところもあるんだよ〜とか、そういうお涙系のいいわけ一切なし!確かに母の愛人の子という生い立ちは、若干複雑ではあるけど。 罪状その1 スパイを逃がしたことを責められ、父を殺害。 罪状その2 故国イギリスを裏切り、スペインのスパイを行う。 罪状その3 善良な一市民を、自分の利益のために冤罪で処刑。 罪状その4 友人の恋人を、出世のために寝取る。 罪状その5 憧れていた実の父も、自分の計画の邪魔になるので処刑。 罪状その6 寝取った恋人に窮地を見られて、殺す。 そんなティリアンの安蘭けい。黒髪ロングの悪役キャラがきまってる。思い切って悪役に徹してるので、歯がゆさがない。言葉使いが乱暴なわけでもないし、服装も綺麗で、貴族の子息らしい品もありつつ、でもやっぱり極悪人。最期火にのまれて死んでいくところが、さすがの迫力でした。この役は、中途半端じゃできないね〜。 ティリアンに父を陥れられて殺され、その仇をとるために海賊になったレッド、柚希礼音。礼音くんは、豪商の息子で、法律を学んでいるというイメージにぴったり、なんの苦労もなさそうなお坊ちゃんに見えました。ゴージャスな金髪巻き毛がよく似合ってて、「正義と良心のためにティリアンを討つ」なんて歯の浮くような台詞も、おっとりした雰囲気で嫌味にならない。海賊になってからも、周りから慕われるのが分かる、性格のよさが感じられました。 女海賊ギルダ、遠野あすか。強くて美しい、海賊のリーダー。最初の肩肘張ったのが、ティリアンを愛してカドがとれていく女心。ティリアンは、女も欲望のうちという感じなので、あまり相思相愛に見えなかったけれど、最期彼を守って死んでいったギルダを抱えて悲しんでいたから、ギルダの想いはちゃんと通じていたのかな・・・とちょっと救われた気がします。 キャプテン・ブラック、和涼華。戦闘中にレッドに助けられてから、親友としてかたときも離れない。男っぽくて格好いい。男同士の友情っていい。今回一番美味しい役でした。 ティリアンの母の愛人で、ティリアンの実の父、ジェラードに立樹遥。ティリアンは、スペインのスパイだったジェラードに幼少期から憧れていて、7つの海を制覇するという野望を持つようになった。少年時代の回想シーンも何回かあったし、ティリアンにとってかなり影響を与えた人物だと思うのだけど、しいちゃんのジェラードは、それ程重要人物に見えなかった。ルカノール公爵(バレンシア)の悠未くんとか、ランブルーズ侯爵(白昼の稲妻)の水ちゃんみたいに、もっと悪で、もっと色気があったら、そのジェラードを踏み越えてさらに突き進む、ティリアンの非情さとか尊大さが際立ったのに。 ジュリエット(稀鳥まりや)は、きゃぴきゃぴしていて、うっとおしそうなキャラなのに、何か可愛くてほほえましい。暗い話なので、いい感じに息抜きできました。 ニコラス(綺華れい)は、すごくティリアンに可愛がられていたけれど、役の雰囲気からするともっと下級生の方があってたと思う。餞別でしょうけど。 ラスト、ティリアンがスペイン艦隊を率いた堂々たる姿が格好よかったので、幕開けもこのシーンで始まったらつかみばっちりだったのに。ティリアンが望んだものや、スペイン無敵艦隊の大きさも分かるし。LEDは、効果的に使ってるなというところと、ここは普通にセットの方が好き、というところがありました。 登場人物がすごく多くて、エピソードも盛りだくさん。人物を把握するのとストーリーに追われてしまって、感情移入して見る余裕がなかったのが残念。とても壮大な歴史ドラマという感じでした。 |