星組
眩耀の谷
Ray


2020年8月28日
於・東京宝塚劇場



 周の国王は、かつて征服したブン族が隠れ住む眩耀の谷の秘密を知り、管武将軍に探索を命じた。 任を受けた丹礼真は、白い幻に導かれるうちに、正体不明のブン族の男に出会い、眩耀の谷に連れて行かれる。 谷の人たちの話を聞くうちに、それまで自分が信じていた周国の正義が偽りだったことに気がつく。 正体不明の男に自身のルーツを教えられた礼真は、ブン族と共に生きることを選ぶ。

 謝先生の書下ろしということですが、明らかに「AKURO悪路」。 10年以上前の作品ですが、結構好きだった。
大和朝廷から蝦夷(えみし)平定に遣わされた青年。
敬愛する坂上田村麻呂の命を受け、鉄の谷を探す目的を持っていた。
青年は森の奥で白い鹿に会い、謎の男(アテルイ)に導かれるまま谷にたどり着く。
そこで出会った盲目の女性。
謎の男の正体を知り、隠されていた真実を知った青年は、蝦夷とともに立ち上がった。
 これが「AKURO」。 さすがにアテルイのままじゃ、デジャブ感が半端ないと思ったのでしょう。 オリジナル設定に変わってました。

 丹礼真、礼真琴。 安定の演技力で、お披露目ってことを忘れてしまう。 本当は半年前に見るはずだったのが延び延びになって、やっと見られて嬉しいです。
 熱くてまっすぐな青年・・・というか少年と言ってもいいくらい。 真琴ちゃんは少年役がぴったりだし、アジア系のコスプレも似合うので、書下ろしと言われても納得です。 そんなまっすぐな青年が、自分の信じてた国や将軍の嘘を知り、挙句の果てに信頼してた部下にすら裏切られる。 ブン族のために戦うとか、ありがちな若者の成長物語とかじゃなく、生きて次世代につないでいくという終わり方が良かった。

 瞳花、舞空瞳。 AKUROではもっと心を病んでたけど、瞳ちゃんはそこまでじゃなかった。 お披露目で闇を抱えすぎても重いし、宝塚的にはこのくらいでいいのかな。 舞を舞う場面はさすがでした。

 謎の男、瀬央ゆりあ。 AKUROではアテルイにあたる人。 吉野圭吾はさすがの存在感だったけど、セオも堂々としてて格好良かった。 どこからともなく現れてフッと消える不思議さとか、誰にも見えてない存在の仕方とか、いい感じ。 真琴ちゃんと対峙して全然負けてないし、ビジュアル的に華やかなので一番目立つ役だった。

 管武将軍、愛月ひかる。 国王に民衆の貧困を伝えたり、ブン族の舞姫との間に子をもうけたことを黙ってたあたりは、 もしかして内心国王のやり方に納得してないとか、最後に反旗翻しちゃったりして?なんて思ってたのだけど、 自分の子を殺しちゃうとか、仁義より利とか言ってしまうとは、しっかりヒール役だったのね。
 上背もあるし文句なく格好いいのだけど、最後尻すぼみな終わり方が残念すぎる。 AKURO的には坂上田村麻呂にあたる役で、「阿弖流為」では敵役としてもっと目立ってたのに。 今回は戦いがテーマじゃないからある程度は仕方ないにしても、あとはご想像にお任せしますって言うのはさすがにどうだろう。

 周の国王、華形ひかる。 すでに組子なんじゃないかと思うくらい連続して星組に出てるので、星組で退団できて良かったのかな。 昔はもっと線の細いイメージがあったけど、さすがに堂々としたものです。

 そんな王を手玉にとってる巫女、音波みのり。 いわゆる悪女キャラじゃなく、一見楚々としてるのに王すら手中におさめてるって言うのが怖い。

 神の使い、水乃ゆり。 AKUROでは、私のダンススタジオの真貴先生が演じてた白い鹿。 ダンスだけで空気感を変える、いかにも謝先生らしい役で、とても魅力的なダンスを見せてくれました。

 ストーリーテラーの有沙瞳。 ただの語りべかと思ったら、ちゃんとブン族が存続したんだって分かる大事な存在でした。

 ショー「Ray」
 黄はセオがセンターで、白は真琴ちゃんのスパニッシュ、黒は愛ちゃんが大人っぽく、赤はみつるがチャイナ風にと場面ごとにテーマはあるのだけど、 基本群舞なのでどれも似たような印象で記憶に残ってない。 ダンサーコンビだけあって、さすがに振り数は多かった。 オリンピックの場面は残念だったな〜。

 次はロミジュリなのかな? 何でもいいから、無事に上演してもらいたいです。