星組
鎌足


2019年5月20日
於・日本青年館



 中臣鎌足。大化改新の立役者。 ここら辺は以前月組の「飛鳥夕映え」で見た話だけど、そこに鎌足のラブロマンスが目いっぱい入り込んでくる。 そっちばっかりクローズアップして、むしろ大化改新の方がおまけにしか思えないレベルだった。

 1幕の始まりは冥府?歴史を編纂する天寿光希が、高僧の一樹千尋に語り始める。 場面が単調で、説明セリフが延々と続くから、しょっぱなから意識が飛びそうになった。

 続いて学問所。蘇我入鹿(華形ひかる)たちが勉強してるところに、中臣鎌足(紅ゆずる)が遅刻して入ってくる。 学友に追い出されたベニは、幼馴染の与志古(綺咲愛里)と原っぱでイチャイチャ。 そこにみつるも加わる。 友情を描きたいんだとは思うけど、この子供時代が長くて、さらに意識がもうろうとしてくる。 ベニがヘタレだってことはよく分かった。

 その後は、みつると皇極天皇(有紗瞳)のラブシーンが長々と続く。 皇極天皇は「飛鳥夕映え」ではゆら姉が演じたくらい年長のはずなのに、見た目が若すぎて単なる恋人同士にしか見えない。 みつるのファンは嬉しいだろうけど、そうじゃない者にはいい加減にしてくれとしか思えない。 話の大筋に関係ないだけに、完璧に意識が飛んだ。

 ここまでどのくらいの時間だったんだろう?1時間近かったんじゃなかろうか? まだセオは出てこない。 1幕主人公はみつるです。 しかも、いつのまにか暴君になってた。

 蹴鞠のシーンで、やっと中大兄皇子(瀬央ゆりあ)が登場しました。 宝塚ファンなら中大兄くらい知ってるだろうという大前提なのかもしれないけど、唐突すぎて、誰あれ?状態。

 そして、あっと言う間に大化改新。 石川麻呂のちぐさんは、さすがいい味出してる。

 でもね、すべてが唐突すぎなんです。 暗殺するしかなかった経緯を、もうちょっと丁寧に描いてほしかった。 幼馴染を殺さなきゃいけないって言うのは、「星逢一夜」みたいにしたかったのかもしれない。 けど、そういう葛藤とかほとんどなくて、あっと言う間におしまい。 ここ、クライマックスじゃないの?ってくらい、さらっと流れてました。

 1幕があまりにひどかったので2幕どうなるのかと心配しましたが、少しはマシだった・・・かな?

 有紗ちゃんが若くて、セオのお母さんに見えないと言うのは置いておいて、演技はよかったです。 恋人より息子を選んだところとか、彼女が陰で牛耳ってる感じとか。 

 ベニが単なるヘタレなのは、相変わらず。 陰謀を企てる策士ってイメージにしたくなかったとしても、多くの人を殺してるのは事実なんだから。 あーちゃんとイチャコラしてる姿は、ブルギニヨンにしか見えない。 そうじゃないよね? 人の命を奪った重み、中大兄に逆らえない葛藤、国を思う芯の通った心、そういうの何も見えないもん。 「よしこがいないとやだ〜、よしこがいいの〜」ってぴーぴー泣いてるだけなの、はっきり言ってうざい。 もうちょっと男気のある演技はできなかったんだろうか?

 あーちゃんはしっかりしてた。 鎌足を想うからこそ、敢えて中大兄に身をゆだねる感じもよく分かったし。 この辺り、生田先生「あかねさす紫の花」をやりたかっただけ?って思ったけど。

 中大兄は、どうやら鎌足がすごく好きだったらしい。 ベニが小者感満載だからいまいち分かりにくいけど、鎌足って本当はすごく優秀で、手元に置いておきたい、人間としても敬愛してるってことだったんだろうな。 だったら、1幕でもうちょっと2人の関係性描いてくれたらよかったのに。 登場するの、遅すぎ。
 不比等が自分の息子だって気がついて、グッとこらえて礼を言うところ。 いい演技だなって思いました。

 元号の始まりは「大化」。菅さんよろしくちぐさんが巻物を広げたら、そこに書いてあったのは「令和」。 時事ネタ突っ込んでましたね。

 みっきーの「歴史は勝者によってつくられる」ってセリフは、激しく同意します。 でも、今回の話に必要? 蘇我入鹿も石川麻呂も歴史の教科書にちゃんと載ってるし、とくに歴史の改ざんはなさそうだけど。

 さらに「やまとしうるわし」の歌。これはヤマトタケルの結構有名な歌だよね? 「MAHOROBA」で歌ってなかったっけ? って言うか、MAHOROBAでやまとは美しいって言われたらそうだねって思ったけど、今回の作品でそれを歌われてもどこが?って思うよ。 ベニはあーちゃん以外見てなかったし。 生田先生が、自分を賛美してるのかと思った。

 とにかく、とっ散らかってるわ、描き足りないわ、ベニがヘタレすぎだわ、中途半端な作品でした。