当代きってのシェイクスピア役者と言われたエドモンド・キーン。上流階級の人たちにも賞賛されてはいるものの、皆が求めているのは彼自身ではなく、彼が演じるシェイクスピアの登場人物。そのジレンマに悩み、役者仲間と飲んで借金を重ね、恋に悩み、自分を見失いそうになりながらも、キーンは役者として生きていく。 キーン、轟悠。主演で見るのは飽きてきたと言っても、やっぱり上手いです。出ずっぱりで、あの膨大な量の台詞。しかもハムレットやオセローといったシェイクスピアの作品を劇中劇で演じつつ、その合間合間にキーン本人だか、他の人が望む役者としてのキーンだか、キーン自身わけが分からなくなっている状態を演じている。心理劇なので、演技力のない人だと出来ない役でしょうね。 シェイクスピアは大学で専攻したので、劇中劇や台詞は割とすんなりと受け入れられました。冒頭の「ハムレット」のラストシーン、2幕の「オセロー」がデズデモーナを殺害するシーンは、劇中劇としてまだ成り立っていたけれど、途中言葉遊びのようにキーンが言うシェイクスピア作品の台詞は、知識がないと何言ってるの?状態だったと思います。 ヒロインは、エレナの南海まりより、アンナの蒼乃夕妃だと思いました。 南海ちゃんは、歌声がとても綺麗。ただ、普通の貴婦人という以上の印象は残っていません。蒼乃夕妃ちゃんは、若くて元気で、キーンを振り回している感じがよく出ていました。キーンに影響を与えたのはアンナの方だし、イシちゃんとしっかり組んで芝居をしているのも蒼乃ちゃんだったので、エレナより目立って見えました。 キーンがエレナに夢中になるのはいいとして、プリンス・オブ・ウェールズは本当にエレナにご執心?キーンの反応を見て、面白がっているだけに感じました。エレナも、恋のアバンチュールを楽しんでいるだけだろうから、人気俳優と皇太子を比べたら、皇太子の方が勝ったんですね。 プリンス・オブ・ウェールズの柚希礼音。体格がいいので衣装は映えるし、腕を組んで片手をあごに添えるポーズとか、キーンを見下したようにはすに構えてニヤっと笑って見ているところとか、何か、礼音くんいいぞ〜。キーンとは親しくしているとはいっても、そこは階級制度の厳しい時代の皇太子と役者。キーン本人にも、エレナとの関係にしても、完璧優位に立っているのを知っていて、キーンの気持ちを揺さぶって楽しんでる。ただお上品なプリンスでないのがいい。 ブロマイド売り(如月蓮)は、幕開け早々つかみのシーンなのに、歌詞は分からないし、かなりテンション低くてまずいのでは?声楽のテストじゃないから、綺麗に歌うことよりもインパクトが欲しかったな。 そのほかのアンサンブルは良かったです。役者トリオも面白いし、アクロバットメンバーは大したもの。側転するわ、飛ぶわ、体はってました。酒場のシーンは、本当に迫力あって楽しかった。 個人的に、紫蘭ますみのソロモンが可笑しくて好き。キーンの性格を知り尽くしているんでしょうね。プロンプターボックスから頭を出すのが、また面白い。 一輝慎のネヴィル卿は、もうちょっと役作りはなかったんでしょうか。キャラクターが薄くて、もっと存在感のある役だと思うのですが・・・ 2時間半、プロローグもフィナーレもなく、びっちり芝居。せっかく礼音くんが出てるのだから、ちょっとくらいショーもあったらよかったのにな。 |