星組
長崎しぐれ坂
ソウル・オブ・シバ!


2005年7月22日
於・東京宝塚劇場



 江戸末期。凶状持ちの伊佐次(轟悠)は、長崎唐人屋敷にかくまわれていた。伊佐次を追う下っ引きの卯之助(湖月わたる)。囲われ芸者のおしま(檀れい)。神田の幼馴染だった3人は、長崎の地で再会する。幼い頃の恋心を思い出す伊佐次とおしま。ともに江戸に帰ろうと言う2人だが、唐人屋敷を出ると命の保障のない伊佐次を思う卯之助の言葉を聞き、おしまは旦那と共に長崎を去る。おしまを追って唐人屋敷を出た伊佐次は、役人に追われ、最後は卯之助の腕の中で息絶える。

 作風が古いです。幼馴染の3人。時が経て、それぞれの道を歩んでいた3人が再会。焼けぼっくいに火がつくも、結ばれず、旧友に見取られて死んでいく。これしか内容がないので、作品が薄い。
 幼い頃、どいういう日々を送っていたのか。伊佐次がどういうきっかけで凶状持ちになったのか、おしまが囲われ芸者にまで身を持ち崩したのはなぜか。つかみの部分を、もっと描いてほしかった。12歳の少年が、あんなに子供っぽいのは逆に不自然だし。主演3人がそのまま少年時代を演じてはいけないの?
 唐人屋敷に集まっている面々。変に方言を使わせなくてもいいのでは?何言っているのか分かりにくいし、台詞回しに気を取られてる感じだし。いろいろな人間が集まってきているというのが出したいなら、演技の雰囲気で出せるはず。植田先生特有の妙な台詞回しで笑いを取ろうとしているのが、かえってしらける。しつこく「うど、うど」って言うのとか。
 らしゃ(安蘭けい)がだまされて襲われるところ。いきなり傷ついたらしゃが現われるのではなくて、呼び出されるシーン、だまされて襲われるシーン、逃げ出すシーン、少しは入れてほしかった。唐突すぎ。
 さそり(真飛聖)に至っては、唐人屋敷を出た後どうなったか、すっかり忘れ去られている。おそらくは無事ではいないだろうけれど、あんなに完璧に忘れ去らなくても・・・。
 本当に、演技している皆は格好いいのに、作品に全く深みがないので、感情移入できなかった。そのわりに、舞のシーンが長くて飽きるし。歌も今時でない、ベタベタのセンスのない歌詞。植田先生、本当にもういいです。せっかく素敵な生徒が泣きます。

 伊佐次のイシちゃんは、本当に男らしい。強引だけど、慕われる兄貴。おしまに再会したときは、ちょっと少年のようで。個人的には、凶状持ちになったのは何かわけがあったように思うけれど、何も語られないので不明。好きだったおしまと別れた状況も分からないし。主演が舞台上にいて、ラブシーンと傷ついてるシーンがあれば万事OKっていうのは、昭和の昔の宝塚じゃないのだから。確かに伊佐次は格好よかったけど。

 卯之助のわたる君。イナセだね〜。脚が悪いという設定は必要ないと思うけど。伊佐次が好きで、自分が捕らえるから皆は手を出すな、と言いつつ実は守ってる。まっすぐな演技のわたる君だから、とても分かる。台詞ではおしまが好きだったみたいなことを言っていたけれど、全然そんな感情は見えなかった。ただひたすら、敬愛する伊佐次のことのみ思っているように見えた。最後見取るシーンではボロボロ泣いていて、「男は涙を見せるな」という伊佐次の台詞がまた泣かせる。

 おしま、檀。流れ者芸者はぴったり。

 らしゃ。着流しのこういう役は、とうこちゃんのはまり役。演技も上手いし、格好いいのだから、もうちょっと描きこんであげてほしかった。
 さそり。やっぱり格好はいいのだけれど、らしゃ以上に忘れられて、気の毒なまとぶん。

 唐人屋敷の女たち。
 伊佐次の女、李花の万里柚美。演技は悪くないけれど、ちょっと年上のイメージが強くて、恋人の感じがしない。
 らしゃの彼女、芳連、白羽ゆり。妙な訛りを無理やりしゃべっている感じで、台詞回しもすっとんきょうで変。キンキンしゃべって、泣いて。あのらしゃが愛する女だとすれば、もっと普通に可愛い女の子のほうが似合っていると思う。となみちゃんの雰囲気から考えて、可愛い女の子ができないと思えないのだけれど。
 植田先生の描く女性は、皆古臭い。それに、伊佐次が李花を殴ったりしているのも、感じが悪くてイヤ。

 ぼらの高央りおが小者っぽい感じがよくでていて、上手かった。同心館岡、立樹遥は、いつもの気のいいお兄さん風ではなくて、職務に忠実な融通の利かない感じがよく出ていた。

 芝居は期待していなかったので、イシちゃん、わたるくんのからみがよかっただけでも、よかった。蛇のおもちゃで遊んでいるところとかは、楽しかった。

 ショーは、いきなり白いシューズがスポットに浮かび上がる。これはちょっと小洒落ていると思ったけれど、その後すぐ派手な群舞に入ったほうがプロローグっぽくていいのに。ちょっと淋しい幕開け。
 靴磨きのシーンの、わたる君ととうこちゃんの掛け合いが面白い。わたる君を見上げて「うわっ、でか」っていうとうこちゃんの言い方とか、お金を払うアドリブ?とか。お札を1枚受け取ったわたる君、「足りない。」とうこちゃん、財布から札束を出して広げて見せて、全部渡すのかと思いきや、中の1枚だけ抜いて渡す。わたる君「ま、いっか。」

 定番黒タキはやっぱり格好いい。けれども、一番インパクトが強かったのが、れおん君のロケットガール。あの身長で、黒いだるまに大きな羽根背負って、ど迫力。いかにもダンサーっていう筋肉質の脚が、生々しくなくて格好いい。ダンスも上手いし。だいたいショーはれおんヴィジョンで見ているのだけれど、他のシーンの記憶が飛んでしまうくらいのインパクトだった。そのあとの中詰めも羽根だるまのままだったし。いいもの見た。
 苦手の檀嬢は、今回もほとんど出番なし。芝居では、いつもさすがと思うイシちゃんだけど、ショーはもういいかな。