星組
眠らない男ナポレオン


2014年2月28日
於・東京宝塚劇場



 フランスが生んだ英雄ナポレオンの半生・・・ってことらしいです。
 私のナポレオン像。チビでブ男なのに肖像画は美化して描かせる。成り上がりの田舎者が最後は没落して島流しにあう。年上の未亡人とのラブロマンスとか言われても微妙。 個人的に全然英雄と思ってなくて、むしろイケてない男の筆頭くらいに思ってるのですが、とりあえずこの作品では若くして頭角を現した英雄ナポレオンが天下を取り、 ジョセフーヌとの愛をはぐくみ、没落してもやっぱり稀代の英雄だったということになってます。

 ナポレオン・ボナパルト、柚希礼音。 ナポレオンとは思えない格好よさ。 理想に燃えてがむしゃらに突き進んで、自信満々、皇帝の座まで得たのに、最後は一人づつ自分のもとから去っていく悲しさ。 ビジュアルは文句なしに格好いいし、堂々としてるし、年もとらないし、格好いいからいいかという結論に達しました。

 ジョゼフィーヌ、夢咲ねね。 浪費は激しいし、浮気もするし、かなり好き勝手な女性だけど、華やかで色香あるところにナポレオンがやられてしまったんだろうというのは分かります。 離婚したのちもナポレオンと心を通じ合わせ続けてたと綺麗にまとめてたのが、宝塚らしかったです。

 マルモン、紅ゆずる。 士官学校時代からナポレオンのそばにいたのだけれど、強引なやり方についていけなくて離反する。 ベニ特有のゆるい雰囲気が似合いで、離反しなくてはならないことの哀しさを感じました。
 このマルモンが老年期を迎えると英真さんになって、ナポレオンの人生を振り返るストーリーテラーを演じています。 一瞬2人が同一人物だとは思えない(似てない)んですが、 エマさんの演技がさすがで、ナポレオンは英雄だったと言える懐の広さに感動しました。

 真風くん始め将校たちは格好いいし、群舞も素晴らしい。 ジョゼフィーヌの浮気相手の十碧れいや君は、格好いいだけじゃない野心も垣間見える。 ロシア皇帝アレクサンドルの麻央侑希君は、出てくるだけで上背があって格好いい。
 歌もプレスギュルヴィック氏だけあっていい曲で、礼音くんの迫力ある歌声はさすがだし、ベニもベニ比で上手くなってる。 美穂さんはいつものように聞かせてくれるし、息子が人としての道を外れていくのを憂う母としての心境もすごく伝わってくる。  
 盆やせり、2階建てのセットが効果的で、さらに宙を飛んで銀橋まで出てくる書斎のセットもすごい。 ダヴィッドの戴冠式の絵画そのままを舞台上に再現したところにいたっては、絢爛豪華すぎて溜息しか出ません。
 とにかく何もかもすごいのだけれど、登場人物が多くて、ストーリーも盛り込み過ぎ。 全体に歴史の勉強をしているみたいな印象になってしまって、せっかく皆格好いいし、いい芝居をしているのに、ゆっくり堪能できない感じなのが残念でした。 エピソードを減らして、とくに凋落以降をじっくり描き込んでくれたら、きっともっと感動したと思います。 バタバタと終わってしまって、余韻に浸る間もない感じでした。

 それにしても、最近の宝塚はフランス革命周辺を題材にした作品が多すぎに感じます。 ついこの間の「愛と革命の詩」に「ベルサイユのばら」「スカーレットピンパーネル」「ジャンルイファージョン」。 ちょっと前になるけど「トラファルガー」はがっつりナポレオンが出てきて、デジャブ感が半端なかった。