在原業平 星組
花の業平
夢は世界を翔けめぐる


2001年1月29日
於・宝塚大劇場
藤原基経




 伊勢物語から、在原業平と藤原高子の悲恋を描いた作品。愛し合いながらも結ばれ得ない2人は、その身は引き裂かれても、心だけは傍にいることを誓う。

 東京ではノルさんは卒業しているので、日帰り宝塚観劇ツアーを実行しました。往復8時間、現地4時間とあわただしいツアーでした。

 稔幸の業平は、なんだかぱりっとしない男。愛に生きる平安の男というのは、こんなものなのでしょうか。 高子や清行の言葉の中で、業平はただのプレイボーイではなく、すぐれた才能を持った人物だと褒められているけれど、それを裏付けするシーンがなくて業平の人物像が見えてこない。 言葉で済ませてしまうのではなくて、なにか1つでもシーンを入れてくれるほうがいい。

 一方、政敵である藤原基経の香寿たつき。陰謀を企てる大物として、存在感があった。 自分の意にそぐわないものをおとしめる為に策を練り、権力を欲しいままにしていく様子が、よい意味でも悪い意味でも、これが真の権力者なのだろうと思わせた。 こういう黒い大物系の役は、ぴったり。

 よく分からないのが、絵麻緒ゆうの梅若。 業平のようなやんごとなき身分の方が、下々の者たちとかかわりを持つとは実際考えにくいし、その中でも梅若の立場は浮いてみえた。 貴族の話に絞り込んで、宮中の公達たちを多く出したほうが、話がすっきりしたと思う。

 さらにもう1人専科から初風緑が、業平の友人、安倍清行。 清行が業平と共に東国に下るエピソードは、高子と引き離された業平の苦悩や、業平と清行の友情を語る絶好のシーンだったろうに、全く描かれないまま京に戻ってきてしまった。 どのシーンも中途半端な印象ばかりが残りました。

 高子の星奈優里。深窓のお姫様。演技力のある人なので、伊勢神宮の巫女のシーンがなくても、充分高子の孤独な境遇は分かったと思う。 このシーンをなくして、他のシーンを膨らませてくれたらよかったのに。

 今回専科からの参加が多いので、随分ゴージャスな舞台になるだろうと思っていたのに、脚本がバラバラで、せっかくの芸達者なキャストを使いきれていないように思えた。 ノルとぶんちゃんが共演するのも、これが最後と期待していたのに、からみもほとんどなくて、がっかりした。