星組
My dear New Orleans
ア ビヤント


2009年4月15日
於・東京宝塚劇場



 2度目の「My dear New Orleans」は、初見ほどさよならを意識せずに見られました。
 ダンス重視の私ですが、とうこちゃんの歌声は心にしみて好きです。もちろん上手いのだけれど、ミュージカルの歌(ダンスも)は、技術でなく魅せるってありますよね。

 ジョイとルルは、話の流れとしてはハッピーエンドになってもよかったと思うけれど、2度と会うつもりはないし、心の底から愛しているのに、さよならを言わずに出て行くルルの表情とか、「俺が勝手に惚れた」というジョイを見ていると、この2人には甘いラブコメより、こういう切ない別れのほうが似合っていると思えます。
 相手役を食ってしまうほどの演技派娘役のあすかちゃんに、負けず劣らず演技派のとうこちゃん。ぴったりのカップルでした。

 オープニング、蒸し暑いニューオリンズの夏だというのに、ロングコートをしっかり着込んでいるジョイ。宝塚のお約束かもしれないけれど、とうこちゃんなら、スーツの上着を手に持って、腕まくりしてるくらい気崩していてもサマになると思う。

 ルルとレニーのデュエットソングは、なくてよかったかも。礼音くんに花を持たせるためのシーンだったのかもしれないけれど、芝居だけで充分シスコン・・・もとい、2人の信頼感が伝わってくるから。2人だけの姉弟という設定ならまだ分かるけれど、お母さんが健在だし。
 そのお母さんが(万里柚美)、また半端なく自己中心的で、娘を利用することしか考えてない。そんなお母さんでも、やっぱり見捨てられないものなのかな。

 ムッシュ・アンダーソンの方が、2番手の役だったと思う。しいちゃんの演技は、どうも私とは周波数が違うのか、何も伝わってこないので、いい役だろうに残念。お金の力でルルを引きとめているけれど、実は本当に惚れていて、母親と弟がたかっているのも承知だし、ルルがお金のために自分のそばにいるのも分かっているけれど、あえて何も言わない大人の男っぷりとか、悲しさとか、そういうのが見たかった。見栄えはするのに。

 「ア・ビヤント」は、プロローグから華やか。
 靴磨きの少年が、見そめられてスターになり、最後の幕が下りるまでのストーリー仕立て。とうこちゃんの靴磨きと言えば、「ソウル・オブ・シバ」を思い出します。
 劇場の妖精と影のナンバーは、やっぱり好きです。あかし君の濃いダンスと、礼音君の流暢なダンスとの絡みがたまりません。あかし君はだるまもあるけれど、女役はちょっとどうかと・・・。夢乃くんは、スタイルがよくて、なかなか似合ってました。
 とうこちゃんと礼音くんのデュエットダンスは、公演中盤になって精神的に落ち着いたのか、礼音くんが前見たときほど辛そうでなくて、見ていてほっとしました。
 中詰めでカンカンは珍しいけれど、盛り上がりますね。お姉さまのカンカンガールはちょっと痛かったけれど。カンカンボーイたちが頑張ってフェテターンをしていたのを見ると、礼音くんのフェテ10数連発に目を奪われたときのことを思い出します。

 芝居でもショーでも、とうこちゃんが本当に宝塚が大好きで、満たされて退団するんだということと、組の皆もとうこちゃんが大好きなんだということが伝わってきました。