龍星 星組
龍星

2005年10月21日
於・日本青年館
霧影



 1度見て気に入ったので、当日券で2回目行ってきました。前回前知識なしで見に行ったので、かなりストーリーに気をとられたため、今回はもう少し落ち着いて見られました。

 とうこちゃんの龍星、やっぱり上手い。同じ密偵でも、霧影は宋がわが国という信念があるけれど、龍星は実のところ金がわが国なわけではない。他に居場所がないから、烏延将軍の命ずるがままに生きてきた。でも宋に行ってみたら、李将軍はわが子のように(わが子だと思ってるんだけど)接してくれる。愛し合っているとはいえなくても妃もいて、周りも龍星として見てくれる。この頃が、龍星の人生の中で一番よかった時期かな。(子供時代除く)
 龍星は、李将軍を殺したくなかった。一族を皆殺しにするのもつらかったと思う。けれど、やっと得た今の居場所を守るため、龍星として生きる道を選んだ。真っ赤なライトに照らされての「朕は皇帝なり」は、迫力あって格好いい。
 本物の龍星が現われた後のとうこ龍星。「お前にだけは負けたくない」の台詞が切に響きます。皇帝龍星としての居場所を奪われたら、彼には生きる場所がなくなってしまうから。霧影に負けた後、覚悟を決めた様子がまた上手いんですよね。結局は、妃も側近も失い、望むと望まざるとにかかわらず、皇帝龍星として生きていかざるを得ないラスト。真っ白な逆光のライトが、切なくまぶしい。最後の方、まばたきを忘れるくらい見入ってしまうので、いつも目がカラカラです。
 個人的には、とうこちゃんのアップで幕を下ろしてフィナーレでいいんじゃないかと思うのですが。(というか、映像じゃないからアップにはならないけど。)

 闇を一身に背負ったようなとうこ龍星とは反対に、ちえ霧影は、どんな逆境に置かれても育ちのいい明るい印象。宰相家の嫡男として、何不自由なく愛されて、素直に大きく育ちましたという感じ。ちえちゃん特有のおっとりした喋り方のせいもあるでしょうが。両親が惨殺されたと聞いても、自分が本当は李家の子供ではなかったと知っても、とうこ龍星のような緊迫感がない。2人で重苦しい雰囲気だと見ていて息が詰まるので、このコンビはとても好き。
 ちえちゃんが、自分が真の龍星だと知って歌うところ。鏡に映っていた姿がとうこちゃんとかぶって、次にとうこちゃんに歌い継がれていくナンバー。この演出格好いい。鏡とかライトとか、今回の演出格好いいです。
 とうこちゃんと相対するシーンでも、堂々としていて無理を感じない。ひらひらした衣装での大立ち回り、踏まないか転ばないか心配してしまいましたが、格好よかった。あっさり死んでしまうのはやっぱり残念でなりません。

 うめちゃんの花蓮、やっぱりちょっと強すぎると思った。1夜を共にしたあと(ですよね?)のデート、このシーンくらいはもうちょっと女性らしく色っぽく希望。ちえちゃんにも遠慮が見られて、せっかくのラブラブシーンなのに、もったいない。もっと濃厚な感じで見たかった。これからに期待します。

 飛雪はいつ見ても格好いい。李宰相を肩に担いで去っていく姿が、たくましくて男らしい。彼は、龍星の秘密を聞いてしまったのでしょうか。龍星が宰相の死を見て愕然としている時と、ちえ霧影と戦って負かされた時、必死で護ろうとする姿が、秘密を知っているようにも感じました。知ってたとしたら、いっそう私好み。悪人でも貴方の強さに惹かれます、という武人ってツボなので。

 秘密と言えば、霧影の素性を烏延将軍は知らなかったのでしょうか。敵国の宰相の息子の名前を知らない?名前は同名ということもあるけれど、その息子が行方知れずになったことも知らない?最期人払いをして、霧影に「疑ってすまなかった。密偵は龍星だ」と言うのは、疑ってはいたけれど、完璧に裏切った龍星にあだ討ちするために、見逃したのかなと。あんなに人のよさそうな霧影、海千山千の将軍を騙しおおせるとは思えない。

 とにかく切なく格好いいとうこ龍星と、のびやかなちえ霧影。見終わった後に、何ともいえない脱力感が漂って心地よい。いいもの見ました。客席の拍手もいつもの公演より大きい気がするのは、気のせいじゃないと思います。カーテンコールのとうこちゃん、客席の迫力に一瞬のまれて、言葉つまっていた。
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