特別完全版 |
戦争映画の傑作と評価の高い「地獄の黙示録」が、初公開から23年後に新たなシーンを加えて再公開です。
僕が初公開のバージョンを見たのは高校生でしたが、戦闘シーンは凄いと思ったものの、よく分からない映画だったと記憶しています。
当時出たこの映画のサントラ盤(今は懐かしいレコード)はBGMだけでなく、ドラマ編といえるような、セリフと効果音が入ったものでした。これをよく聞いていたおかげか、この「特別完全版」を見た時、冒頭のヘリのローター音や音楽(ジ・エンド!)の入り方の記憶が蘇ってきて、鳥肌が立ちました。
初公開時に、この作品は「狂気」がテーマであるということを聞いてはいたけど、高校生の僕には実感できませんでした。しかし今見るとやっと、狂ったキャラクターと戦場の描写が、テーマとつながっていることが分かりました。
とはいえ23年前と同様、ラストの意味は分かりませんでした。なぜ最後にウィラードはカーツを殺すのか?カーツは殺されたがっているように見えたけど、それは何ゆえか?ラストの「The
Horror…」って(「地獄の恐怖」という字幕で本当にいいのか)?
今回のバージョンの見どころは、初公開時にカットされたシーンの復活でしょう。
追加のシーンは全部で53分だそうですが、これは映画全体の約1/4をも占めていて、前のバージョンは不十分な形であったのだろうと想像がつきます。追加シーンが入ったおかげで、テーマが分かりやすくなったかもしれません。
ただ、初公開時でもかなり長いと思ったのに、それからさらに長くなるのは見る方も大変です(予想通り寝てしまった…)。
前のバージョンではHシーンのあるエピソードは全てカットされていましたが、今回はちゃんと復活しています。そのせいか、意外にエロいシーンが多い映画という感じがして、ウィラード一行は女性が少ない戦場で、結構いい目にあってるように見えました。とはいえ、ここで出てくるHシーンも他のシーンと同様、病んでいると思える描写です。
この映画で一番有名なシーンは「ワルキューレの騎行」が流れる戦闘シーンでしょう(意外に早く出てくる)。「プライベート・ライアン」の戦闘シーンも凄まじいものでしたが、単にリアルで悲惨だったあのシーンと比べると、この「ワルキューレの騎行」のシーンは、かのヒトラーが好んだという、このワーグナーの曲のリズミカルなメロディと、スピード感のあるカメラワークと編集が上手く結びついて、映画の中のキャラクターだけでなく、観客にも高揚感をもたらします。それが映画を見ている観客自身の狂気も垣間見せてくれて、やはりテーマ性といいリズム感といい、これ以上強烈な戦闘シーンは無いように思います。
この作品が濃いキャラクターのオンパレードであるのも今回初めて認識しました。一番印象的なキャラはやはり、もう1人の主役であろうカーツ大佐と、サーフィンをやりたいために「ワルキューレの騎行」を流してべトコンの村を攻撃するキルゴア中佐でしょう。他にも戦闘中なのに上官の場所を知らない兵士など、普通の生活では存在が信じられないキャラが多数登場するのは見物です。
主人公であるウィラードは自分で自分を傷つけて、冒頭では一番狂ったキャラに見えますが、映画が進むにしたがって、一番まともに見えてくるのはシニカルで面白い描写です。
主人公であるウィラードを演じるマーティン・シーンは、この映画では今から23年前の姿だから当然若く、今見ると息子のチャーリー・シーンのように見えます。冒頭で顔を見せるハリソン・フォードも今ほどの貫禄はあまり感じられず、若い!と思ってしまいました。
初公開バージョンでは本編が終わる(「The Horror…」のセリフ)と映画が終了し、エンドタイトルは無く、劇場でスタッフクレジットが書かれた紙をもらった記憶があります。
今回はエンドタイトルがついてはいますが、本編が終わると一旦コピーライトのマークが出て、そこからエンドタイトルが始まります。タイトル名には「特別完全版」を意味する「REDUX」と書いてあったので、やはりこれは新しく作られたクレジットでしょう。
この映画の入場料は特別料金とかで、2000円になっていますが、映画1本にこの値段は高過ぎます。前回のバージョンも普通より高い料金だったように思いますが、合わせたんじゃあるまいな…。
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