まだ見ていない人
この作品、ラブストーリーのように宣伝されています。確かにそういう側面もあるのですが、むしろ監督の言うように「死期を悟った人間の最後の日々を描く映画」と思って見た方がいいです。
僕はこれを見た時、ラブストーリーだと思って見ていました。しかし主人公ジョンウォンは、ヒロインであるタリムを見守るだけような、プラトニック・ラブです。こういう形は発展が無いように感じるので好みではなく、終ってから不満を感じたのですが、パンフにある監督のコメント(前記)を読んで、納得がいきました。
一番の不満は、冒頭で主人公の病気が重たいということをもっと強調してほしかったことです。本編でやっていた、病院へ行くとか、薬を飲むくらいの描写だけでは、主人公は何か軽い病気を持っているだけなのかと思ってしまい、そのために何でいつまでもプラトニックなんだ?と歯がゆくなりました。
とはいえ、クレジットが終って明るくなってから周りを見ると、泣いてたらしい人がちらほらといました。
映画のテンポはゆっくりめなのですが、すいかを食べるシーンなどの日常描写は感じが良く出ています(やっぱ同じアジア)。主人公の親兄弟や友達も、みんな主人公のことを思いやるいい奴というのが、かえって作っていない感じがしました。
タリムを演じるシム・ウナは表情がとても自然で、この映画では本当に輝いてると思います。ネクタイの制服てのもポイント高いけど(シュミ)。主人公とスクーターに乗るシーンや、急な雨の中を相合傘で走るとこなんか、ほのぼのとした感じがしました(うらやましい...)。服がズブ濡れなのが妙に色っぽい感じもしたけど。
しかし、韓国と日本て緯度はほとんど同じだと思うんだけど、セミの声は日本と違うんですねえ。
すでに見た人
タリムがジョンウォンのいる写真館に入ってきて、「寝るからね」とソファで勝手に寝てしまう行動は、無礼な感じがしたものの、男が側にいるのに無警戒で寝てしまうタリムに無邪気さというか、かわいらしさを感じてしまいました。彼女はジョンウォンには兄貴的な気安さを感じてるのでしょう。それに応えるように、黙ってタリムに向かって扇風機を調節してあげるジョンウォンもいい奴です。
ジョンウォンの病気の重さがつかめてなかったため、雷の夜に彼が父親の布団に入ってくるシーンなんか、なんて子供ぽい奴と思ったのですが、自分が父親と一緒の布団に寝ることなどもう無いかもしれない、という理由の行動であれば納得が行きます。
ラストのタリムの表情には、ジョンウォンの死を知っているのだと思いました。ジョンウォンがタリムに出そうとした手紙をしまうシーンがありましたが、親戚(たぶん妹)がその手紙を出したのでしょう。タリムの表情に、自分を愛した男を忘れないで、前に進んでいくような強さを感じました。