グラン・ブルー

オリジナル・バージョン

完全版

グレート・ブルー

The Big Blue

 

 

全バージョン

[オリジナル・バージョン][完全版]

[オリジナル・バージョン][完全版][グレート・ブルー]

[オリジナル・バージョン]

[完全版]

[グレート・ブルー][The Big Blue]

[グレート・ブルー(日本初公開版)]

[The Big Blue(「グレート・ブルー」アメリカ初公開バージョン)]

 

一番初めにこの作品を見たのは1988年夏の初公開当時、アメリカです。なのでこの時のバージョンは「The Big Blue」でした。他のバージョンとは大きな違いが2点ありますので、興味がある方は後記の「The Big Blue」の項目もお読み下さい。

それから10年経った(思えばあっという間だなあ…)98年夏に「オリジナル・バージョン」が公開され、これが「The Big Blue」以来2回目に見たものです。その後、このHPにこれの感想を書こうかという時に、どうせなら残りのバージョンもチェックしようと思い、ビデオで「完全版」と日本初公開版の「グレート・ブルー」を見てみました。

 

 

全バージョンを通して

バカな監督がやれば勝ち負けをめぐる根性物になったかもしれませんが、単純にそんな話ではないところがこの作品がヒットした所以でしょう。 優しいけどもどこか人間ばなれしたところのある主人公ジャックと、人間くさいエンゾのキャラクターの対比が効いているのも確かですが、全体的にファンタジーの感じがするのがスパイスになっているのかもしれません。R.ベッソン監督の海に対するハンパじゃない思い入れもあるのでしょう(「タイタニック」のJ・キャメロン監督も海大好き人間ですねえ)。

キャラクターでは主人公よりも、エンゾを演じたジャン・レノの方が印象に残りました。現代(1988年)にシーンが変わってからはしょっぱなからエンゾが活躍するし、海に心を奪われて人間じゃない感じがする主人公ジャックに比べ、感情の起伏が激しいけど憎めないエンゾの方が、人間的な面が多くて分かりやすいのが、彼の方が印象に残った要因かもしれません。メディアで名前をよく聞くのも、ジャックを演じたジャン=マルク・バールよりも、ジャン・レノの方が圧倒的に多いですし。

今これが作られたとしたら、ジャン・レノの名前がクレジットの一番初めに来たことでしょう。ここではロザンナ・アークエットの名前が一番初めに来ているというのが88年当時のポピュラリティーの度合いを表してます。

「オリジナル・バージョン」「完全版」は言語がフランス語でしたが、「グレート・ブルー」「The Big Blue」は英語でした。ということはどちらかの言語は吹き替えということなんでしょうが、キャラクターの口元を見てもどちらの言語も合ってるように見えて分かりませんでした。「オリジナル・バージョン」のパンフにあった、「完全版」の英語版ビデオ(いくつのバージョンが存在することやら…)の広告によれば、撮影時は英語で撮っていたそうですが。

 

 

[オリジナル・バージョン]

[完全版]

初公開の「グレート・ブルー」「The Big Blue」より尺が長い分、海に魅せられていくジャックと、普通の幸せを求めるジョアンナ(R.アークエット)との世界の違いがより鮮明に出たと思います。

この2つのバージョンでは言語はフランス語です、アークエットもアメリカ以外のシーンではフランス語を話してますが、そういうシーンでも時々、「It's good」とか英語が出てきました。それに、一時エンゾの恋人となったボニータと、ジョアンナ(アークエット)が洗面所で赤ちゃんの話をしてる時も英語オンリーのシーンでした。もし本当に英語で撮影をしていたなら、フランス語吹き替えの時に全部フランス語にしないで、英語を残したのはどういう基準で残したんでしょう?英語の個所はフランス語の字幕が出てもいいと思うのですが、それはありませんでした。日本公開にあわせて消したんでしょうか?それともフランス人には英語字幕はいらないということなんでしょうか。

日本人の潜水団体はドリフみたいで笑えました。日本語の発音はまあちゃんとしてましたが、関西弁が混じってたのは役者のせいでしょうか?ハリウッド映画によくあるパターンの変な日本人でした。「JAPAN」のロゴがいかにも西洋人が思う東洋的ロゴ。

この日本人の潜水団体の前の潜水者がR.ベンソン監督みたいに見えたんですけど、本人でしょうか?

 

*以降はラストをバラしてます。この作品に興味があるけどまだ見ていない人は、これ以降は見た後に読むことをお勧めします。

 

 

[オリジナル・バージョン]

[完全版]

[グレート・ブルー]

オープニングクレジットで、音楽を担当したE.セラの名前だけ四角で囲ってありましたが、なんで特別扱いしてるのか気になってしまいました。

ジャックが1回目に潜水し、浮上してきたカットでは音楽が盛り上がるのに、その後彼がジャンプの反動で再び水に沈み、海に入ってしまうカットでは、音楽が不気味な調子に変わることで、ジャックが海に魅せられていく後の展開を暗示している感じがします。

ジャックがジョアンナとSEXしてる時に、ジャックが目を時々宙に走らせていたのはなぜだったのでしょう?この状況でも心は海を思っていたということかな(イルカのことでも考えていたか?)。

ラストで、ジャックが海に入る寸前のジョアンナのセリフ、「Go and see my love.」が日本語字幕では「私の愛を見てきて」になっていましたが、ここは「行ってきて」と訳すのが適当だったと思います。ここで使った「my love」は「私の愛を」と言うより、むしろ「愛しい人」みたいな、呼びかけで使ったのではないでしょうか。「オリジナル・バージョン」「完全版」でもこのセリフはフランス語ではなく英語でした。

ラストカットは、海中でジャックがイルカと泳ぎだしたところで終わっていましたが、これはジャックが海上の人間世界と決別したという意味にとれますね。

 

 

[オリジナル・バージョン]

R.ベッソン映画には必ず出てくる、初めのガーモントのマークはこれでは旧版で、一方「完全版」でのガーモントのマークは新版(「フィフス・エレメント」と同じパターンだったと思います)だったので、「オリジナル・バージョン」が確かに初公開時のバージョンで、「完全版」は後日改めて編集したものと想像できます。

パンフに書いてある映画の後日談「イルカ人間を見ましたか?」は名文だと思います。アメリカ版との比較文である、「An American Perspective "The Big Blue"...10 Years Later」は英語だけしか載せていませんが、違いを知りたい人もいると思うので、訳も載せるべきでした。完全版との相違点が載せてあったのはビデオを見てた時に助かりました。ただ、値段が1000円もしたのに、誤植がちょこちょこあるのは困ったものです。

 

 

[完全版]

この完全版での一番の違いは、ジョアンナとジャックが初めて結ばれた後に、二人が一度別れ、その後ジョアンナが仕事を辞めて再びジャックの元に戻っていくくだりがあることでしょう。ただこの部分は、他のバージョンには無くても話にあまり違和感は感じられなかったので、カットするには一番適した部分だと思います。もちろん、ここはあればあったで興味ある話ですし、この部分がないと、ジョアンナが仕事をほっぽり出してずっとジャックにつきっきりのように見えます。

エンゾが死んでしまった後、彼の家族のシーンが無かったので気になったのですが、このバージョンでのみ、ロベルトがジョアンナに、自分がエンゾのそばにいなかったことを後悔するシーンがありました。全バージョンに入れてもいいような、泣けるシーンだと思います。エンゾの妹は、このバージョンで出てきた彼の優勝表彰式シーンで初めてまともに見たと思います。

ニューヨークに帰ってしまったジョアンナがジャックに電話しているシーンで、彼の話す人魚の話が暗示的な感じでした。人魚と一緒に行く比喩はジャックか?ジョアンナか?

言語はフランス語でしたが、クレジットは英語になっていて、タイトルは「The Big Blue」になっていました。なぜフランス語オンリーにしなかったのでしょう?

 

 

[グレート・ブルー]

[The Big Blue]

主人公の名前の発音がジャック・メイヨールと聞こえました。エンゾはマイヨールと言ってますけど。

このバージョンではラストでジャックが海に入る前に、ジャックがジョアンナに「I love you.」と言ってるのですが、「完全版」「オリジナル・バージョン」ではそれがカットされていて、その代わりにジャックを俯瞰で見るカットが入っていました。これは、ジャックがここで「I love you.」と言ってしまうと人間的すぎるからだと思います。

「完全版」「オリジナル・バージョン」でのペルーでジャックがジョアンナに言った「イルカに似ている」のセリフが、このバージョンでは字幕だけでなく元のセリフも「似た人だったか」になっていました。

ジョアンナがペルーからニューヨークに帰ってきて、ジャックの鼓動のグラフをルームメイトに見せた時、ルームメイトのセリフが「完全版」「オリジナル・バージョン」では「What the fuck is that?」となっていましたが、「グレート・ブルー」「The Big Blue」では「What's that?」となっていて、「fuck」を抜かしていました。アメリカでの審査を考慮して「fuck」を抜かしたのでしょう。

ジャックがエンゾと、レストランのテラスで話をしているシーンで、ジョアンナがエレベーターから出てきてレストランのテラスに至る、トンネルのような入り口を通るカットは、完全版には無いカットでした。

 

 

[グレート・ブルー(日本初公開版)]

ビデオで見たのですが、「完全版」のテープに比べると画質が悪かったので、たぶん僕が借りたのは初リリースのビデオ版だと思います。10年前ならこの画質でも許されたと思うと、時代を感じます。

「完全版」「オリジナル・バージョン」に比べて、シーンがカットされ、またセリフが少し変更されている分、ジャックとジョアンナとの世界の違いがあいまいになってしまったと思います。

ジョアンナがジャックの部屋からニューヨークのルームメイトに電話をした時、「妊娠したの」と言い、その後「冗談よ」と取り消すのに、字幕では「冗談よ」のセリフが「本当なんだから」と訳されていました。「完全版」では字幕は「今の話はウソ」で合っているんですが。

 

 

[The Big Blue(「グレート・ブルー」アメリカ初公開バージョン)]

前述の通り、僕が始めて見た「ブルー」のバージョンはこれでした。

このバージョンの大きな違いはまず音楽です。ここではエリック・セラではなく、「ロッキー」や「ライトスタッフ」の音楽を担当したビル・コンティがやってます。そのせいか、彼の作品を思わせるアップテンポなメロディが使われているのですが、僕は元気な音楽は好みで、違和感は全く感じませんでした。オープニングのクレジットでは、彼の名前には囲みはありませんでした。

ジャックが1回目に潜水し、浮上してきたシーンではオリジナルのバージョンと同じく、音楽が盛り上がるのですが、その後に彼がジャンプの反動で再び水に沈むシーンでは、オリジナルのバージョンでは音楽が不気味な調子に変わるのに対し、「The Big Blue」では音楽は盛り上がったままのメロディで、場面が変わるまで続きます。メロディがいいので美しいシーンではあると思いますが、オリジナルのバージョンと比べてしまうと、単にジャックが新記録を出してやったぜ、というだけのシーンになってしまった感じはします。

エンゾの死後、ドクターがジョアンナに妊娠を告げるシーンはこのバージョンではカットされていました。

このバージョンのもう一つの大きな違いはラストです。オリジナルのバージョンのラストは、海の中のジャックがイルカに近づいたところでフェードアウトでしたが、「The Big Blue」ではその後、ジャックとイルカが海上に出て、月明かりの下で遊ぶシーンになり、シーンが海上に変わったと同時に音楽にコーラスが入って最高に盛り上がり、そのままエンドクレジットへと音楽は続きます。

ここはとても美しいラストシーンだと思うのですが、オリジナルのバージョンを見てしまうと、「The Big Blue」のラストは、ジャックが海上に戻ったのを見せた、つまり彼が人間世界に戻ったことをはっきり描いてしまったことで、彼と海との関わりの意味があいまいになってしまったと思うので、話のつながりから言えば無い方が、つまりオリジナルのバージョンの方が適切だと思います。しかし、このシーンが美しかったおかげで、僕にとってはこの映画がすごく印象に残ったのも事実でした(B・コンテイ版のサントラ探しておけばよかった)。

このラストの海上のシーンは、完全版にあった、ジャックがジョアンナと初めてSEXした後、イルカと一晩中遊ぶシーンのために撮った別カットを使ったと思われます。

オリジナルのバージョンではラストシーンがフェードアウトすると「娘のジュリエットに捧げる」という字幕が出ましたが、「The Big Blue」のラストには出ませんでした。

エンドクレジットの音楽はラストシーンから続いて、メインテーマのインストメンタルが流れ、E・セラの歌は流れません。

 

 


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