まだ見ていない人
人間の心を持ったヴァンパイア=ブレイドが、密かに人間社会に入り込むヴァンパイア軍団に戦いを挑む話です。話のテンポは快調で、退屈しないで見れました。
主役のブレイドを演じるウェスリー・スナイプスは動きが速く、決めまくってくれてかっこいいです。こいつは当たり役かもしれません。
一方、ブレイドが狙うヴァンパイア軍団の親玉・フロストを演じるスティーブン・ドワーフも、ぱっと見はチンピラぽい感じはするものの、それだけに収まらない存在感を見せてくれます。人間だけでなく、同族のヴァンパイアさえも平然と殺す冷血な悪役ぶりが光ります。
アクションが速いことが、話のスピードをよりアップさせて気持ちいいです。切られたヴァンパイアがさっと消えるCGエフェクトも合成は大変だったろうけど、スピード感のあるSFXでした。
冬に公開された同じ吸血鬼モノの「ヴァンパイア/最後の聖戦」と比べると、あれは田舎が舞台だったし、ヴァンパイアの殺し方は大掛かりすぎてスピード感が無く、「ブレイド」の方が全体的にスマートな感じがします。どっちがいいというのは好みの問題でしょうけど。
ブレイドが人間とヴァンパイアのハーフともいうべき宿命を背負いながらも、それを深刻に悩むのではなく、淡々と自分の決めた道を進むことで、ストーリーが淀み無く、快調に進んでいったのだと思います。ただし、これがTVシリーズのような長尺物であれば、人間であって人間でないブレイドの内面をより詳しく描けて、また別の魅力が出たとも思います。
黒人の吸血鬼は、パンフでも触れられていたように、「吸血鬼ブラキュラ」くらいしか思いつかない(見たことないけど)ので、新鮮な感じがします。対する悪役のフロストが白人というのは、人種同士の戦いを匂わせているような感じもします。
ブレイドの持つ刀の防護装置は伏線にもなっていて面白いですが、都合のいいときに作動したりしなかったりということがあるのは少し気になりました。
ブレイドの相棒になる女・カレンが、今までは研究一筋だったであろうに、銃を慣れたように扱い出すのは、強い女を強調し過ぎた感じがしました。新しい血清を作るとか、ブレイドにとっては便利な存在なのだから、アクションは抑えめにして知性の面をもっと出してもよかったと思います。
冒頭で人間を誘う女ヴァンパイアが、トレイシー・ローズだったとは気付きませんでした。メイクのせいでしょうか?でもうまいキャスティングだと思います。
ヴァンパイアが人間社会に普通に入り込んでいて、人間と協定を結び、一部の政治家がそれを知っているという世界観は、ありそうな感じで面白いです。矢追純一の宇宙人話を思わせます。ヴァンパイアがそうあちこちにいるわけではなく、普通の人間を下僕として使っている、という設定もそれらしい感じがします。
ヴァンパイア達のリーダーを演じるウド・キアーはなじみの無い役者ですが、プロフィールで見てみると、「処女の生血」(見たことないけど)なんかに出てるので適役でしょう。顔がヨーロッパ的な風貌なので、純血のヴァンパイア、という雰囲気に合っています。
純血のヴァンパイア達が、ヴァンパイアの世界では高い地位についているはずなのに、フロストに従うままというのは情けない感じがしました。彼らがフロストに反撃する(でも最後にはフロストに抑えられてしまう)話もあってほしいですが、それを出すと2時間では収まらなくなるのでしょう。
ブレイドと、子供を人質に取ったフロストが対面するシーンは緊張感あふれるシーンでしたが、フロストがよける銃弾がいかにもCGに見えてしまったのは興ざめでした(TVCMでもこのカットは出てたけど)。ヴァンパイアが消えるSFXで特撮スタジオは力を使い果たしたか?
十字架が効かないという設定は「ヴァンパイア/最後の聖戦」にもありましたが、そもそも、見せるだけの十字架にどうしてヴァンパイアが弱いのか?と不自然な感じがしていたので、これは納得でした。紫外線オンリーのライトに弱いという設定も、だから太陽光線が苦手である、ということになると思うのでリアルな感じがしました。
また、フロスト達が顔にジェルを塗ったり、ヘルメットを被ることで太陽光線を恐れないところもリアルで、従来の、昼間になると弱くなってしまうヴァンパイア達と一線を画した感じです。
「その肉体は不死身。その魂は人間。彼は血を流すヴァンパイア。」というキャッチコピーはかっこいいと思います。体は怪物だが、心は人間、というのは「デビルマン」がそうですが、永井豪はアメリカでも人気があるようですから、原作のコミックに影響を与えたかもしれません。
菊地秀行の「吸血鬼ハンターD」も吸血鬼の血を引くヒーローがヴァンパイアを狩る話だったと思います。「ブレイド」の設定を聞いたときにまず思い出したのはこの作品でした。アニメの「吸血姫美夕」も同じような設定だったはずだし、「毒をもって毒を制す」というネタは洋の東西を問わず、魅力があるのでしょう。
すでに見た人
フロストは純血なヴァンパイアではなく、人間から変身した者なので、純血なヴァンパイア達に対してコンプレックスを持っていたと思われます。なので、彼が世界の覇権を握ろうとする本当の理由は、世界を支配したり、ブレイドを倒すためではなく、自分をさげすむ純血のヴァンパイア達に対して、自分の力を見せ付けるのが目的ではなかったかと想像できます。こういう想像が出来る設定も、スティーブン・ドワーフを魅力的な悪役に見せるのに一役買っています。
TVCMでも流れた、ブレイドがサングラスを取り戻すシーンで、てこずっていた敵の首をあっさりと跳ねてしまうのは、彼の強さが感じられてかっこいいシーンでした。
ブレイドが途中で人間に戻ろうとしていたのが、最後にはやはり今のままの形を続ける、というのは続編を意識したような感じがしました。だいぶ昔にやった「サイボーグ009/超銀河伝説」で、ラストでボルテックスの力で人間になれたハインリッヒが、元のサイボーグの体に戻ると決意するシーンを思い出しました。
ブレイドの母親が生きているという点は意外でした。ここはブレイドの驚きや、母親を裏切る葛藤で盛り上げることもできたでしょうが、話のテンポからいえば、本編の通りにさらりと流してよかったと思います。
最後に魔王の力を得る、というパターンがクライマックスになるのは、ホラー物やアドベンチャー物ではありがちな感じがします(ヴァンパイア物に限ればそうでもないかもしれませんが)。この点では「ヴァンパイア/最後の聖戦」の方が面白味がありました。しかし、主人公がいけにえというのは両作とも共通しています。
スティーブン・ドワーフのインタビューによれば、クライマックスはフロストが巨大な血の固まりのようなヴァンパイアに変身して、ブレイドと戦うという案もあったらしく、そうなっていれば確かにフロストが魔王の力を得た、ということがビジュアルでよく分かるでしょう。本編ではフロストが魔王の力を得ても、目の色が変わる以外に外見には変化が無いので、力を得たことが分かり難く、体を切ってもすぐ再生する(体がくっつくシーンは笑える)ことで、やっとそれらしい感じが出ます。しかし、この作品ではスティーブン・ドワーフ自身のキャラが立っているので、ここは本編通り、ブレイドとフロストの剣での一騎打ちでよかったと思います。
このシーンでは2人とも日本刀を使っていましたが、チャンバラというよりはフェンシングという感じがしました。ここはフィルムの回転を遅くして撮影した(再生すると、動きが速く見える)らしいですが、このやり方は香港映画のアクションシーンでよく見られるので、これも香港アクションの影響かもしれません。
ヴァンパイアの被害に遭った人間はどう処分されてるのでしょうか?この作品の世界でも、一般的にはヴァンパイアの存在は知られていないようですが、血のシャワーなんてやっていたら相当数の人間が餌食になっていると思います。ヴァンパイアに協力している病院で、死体の傷を隠すとか、協力している警察官が行方不明として処理したりしているんでしょうか。
ブレイドが日本刀を使ったり、彼の部屋に仏壇みたいなものがあってたりして日本テイストを結構取り入れていますが、ブレイドとカレンが中盤で入っていく、日本人がたむろしているらしいバーで、コギャルみたいな女が歌っていた日本語の歌(?)は何だったんでしょう?