まだ見ていない人
「クロウ/飛翔伝説」での闇のイメージをよりダークで、ファンタジックな方向にした感じですが、この「ダークシティ」に出てくるイメージは、悪夢をそのまま映像にしたみたいです。
地上世界は色を無くしたような無機質なトーンで描かれ、それゆえに、時々出てくる赤色は強烈です。その地上を支配する「ストレンジャー」が住む地下世界は地上以上にモノトーンで統一され、両方の舞台とも異様な世界観を醸し出してます。ストーリーよりもビジュアルでハマってしまう作品です。
ストーリーは、「ストレンジャー」が人間の記憶を改造していく話ですから、「主人公が殺人犯として追われてる」というシチュエーションは成立しないと思います。地上に住む人間の記憶が改造されることで、主人公が殺人犯の容疑をかけられていること自体が人々の記憶から抹消されてしまうと思うのですが。
地上の町は、40年代の過去のような、あるいは「メトロポリス」や、60年代SFに描かれた未来のような、どこの世界か分からない、いい意味で不思議なイメージが出ていて、「バットマン」の世界観をよりSF&ファンタジックにした感じがします。その中でのドリームキャストのマークのような、らせんの紋章の多用も不気味で面白いです。
生き物のように地上から延びたり、モーフィングして姿を変えていくビルなど、デジタル技術が悪夢的なイメージの増幅に貢献しています。デジタル技術が無かったらこれらのイメージの創生は不可能だったでしょう。CGとかに文句をつける奴はこういう映画を見て勉強しやがれ!と思います。
ストレンジャーのイメージは「ノスフェラトゥ」の吸血鬼と「ヘルレイザー」のピンヘッドを合わせた感じがしましたが、特に子供のストレンジャーは不気味でした。やはりコワいキャラには子供はハマります。
ピンヘッドが集まったようなストレンジャーの集団や、でかい顔のオブジェや、地球のようなオブジェなど、地下の世界のイメージは異様で、独特な世界観が面白いです。デザインワークはほとんど「ゴジラ」のパトリック・タトプロスがやったそうですが、いい仕事してます。
ジェニファー・コネリーは久々の映画出演だと思いますが、相変わらずきれいです。
Branky Jet Cityの「デリンジャー」がイメージソングとして、上映前にプロモが流されましたが、今更イメージソングなんて、いつの時代の宣伝の仕方だ?と思ってしまいました。
宣伝もろくにされずに、正月映画公開直前の隙間を埋めるような公開のされ方ですぐに終わってしまいましたが、カルトとしてでも残ってほしいです。
すでに見た人
世界の外が初めて明らかになるくだりは驚きのシーンでした。この作品での世界の全体像が、まさかああいう形になっているとは予想もできませんでした。普通なら星を考えるだろうところが、「銀河に浮かぶ海」だもんねえ。このシーンが出たことでこの作品は完全に荒唐無稽のファンタジーになりましたが、イメージが凄かったので、いいと思います。
ただし、クライマックスでの主人公と、「ストレンジャー」の親玉の老人との超能力対決シーンは、大友克弘の「童夢」のパクりみたい(たぶんスタッフは読んではいないだろうけど)なイメージで、興ざめでした。