新劇場版 破 |
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新劇場版のパート2。今回も前作「序」と同様に、話の大枠はTV版をベースにしています。しかしその内容は前作以上にオリジナルな展開を見せて、TV版を知っている人は「そう来るのか!?」と驚くことでしょう。まさに「破」の言葉にふさわしい作品になっています。
ただし、それゆえにTV版を見た人、あるいは前作を見た人でなければ、とても話が理解できないはずなので、初めての人はこの作品から「エヴァ」を始めることが無いよう、注意が必要です。
敵である使徒は前回以上に増えています。そのデザインは多彩で、中にはTV版とは違う形の奴もいます。彼らの変形のバリエーションもCGならではの、予想外の形状を見せてくれます。そいつらとエヴァの戦闘シーンは大迫力!で、一瞬たりとも目が離せないハイペースで展開します。まさに、映画は画で見せるものという、映画ならではの興奮を味わえます。
そういったエキサイティングなシーンと対極のように、映画には通学や食事といった、日常シーンが目立ちました。戦闘があってもフツーの日常が続いているのはちょっとシュールで面白いですが、ありそうでリアルに見えて、観客にも親近感がわくかもしれません。しかしなんといっても、こういう何気ないシーンのおかげで、後半の衝撃の展開(アスカが…)が大いに盛り上がります。
その衝撃シーンでは、画だけでなく音楽、特に今回は小学生からお年寄りまで、日本人なら誰でも知っているであろう、あの「歌」の使い方が強烈なインパクトでした。状況やキャラの心情にどんぴしゃりで、凄い効果を上げています。「エヴァンゲリヲン」でこの歌をこう使うことになるとは、全く予想もつかない驚きでした。
映画は2時間くらいの長さで、話がまとまっているおかげか、TV版よりキャラクターの心情が分かりやすくなっていて、彼らが成長していることが分かります(シンジがなぜかモテモテ!)。僕としては見やすくなってヨイと思うのですが、作りが安定している分、破綻しそうな面白さ?には欠ける感じなので、TV版が大好きな人にはまとまりすぎ、と言われるかもしれません。
シリーズのラストがどうなるのか、大いに気になるところです(カヲルは一体…?)。でもここまで面白くしてくれたなら、前の映画版やTV版のようにラストがケムにまく形になっても、許しましょう!
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「序」のクライマックス(ヤシマ作戦)では、シンジはレイに助けてもらいました。今回の「破」のクライマックスでは、シンジがレイを助けようとします。対のような構成にしているのが、上手いところです。
しかもここで「翼をください」。このセンスが凄い!
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新劇場版 序 |
90年代に一世を風靡して、TVから劇場映画にまでなった「新世紀エヴァンゲリオン」(今回のタイトルは「エヴァンゲリヲン」)。TVシリーズ終了から10年以上経っての、またの映画化です。
今回はシリーズを再構築する構成のようで、全4部作の予定になっています。この作品「序」は、その第1部に当たります。
今回はTV版第1話から第6話のヤシマ作戦までのお話で、TV版とあまり変わらない展開になっています。でもやはり、初めに出てくる使徒や、ヤシマ作戦(よくもこんなスケールのでかい作戦を考えたものだ!)といった戦闘シーンはTV版以上の迫力があり、盛り上がります。ヤシマ作戦に関するシーンでは、TVの時は泣くまでいかなかったのに、今回は泣けた箇所がいくつかありました。
TV版との大きな違いは、2D,3D共にCGがかなり使えるようになったことでしょう。特に3番目に出てくる使徒は、TV版の時はあまり面白味が感じられませんでしたが、今回はCGのメリット生かした自由自在な変形が楽しませてくれて、こんなのとどう戦えばいいんだ!?と思わせました。
今改めて「エヴァンゲリヲン」を見てみると、随所に流れるオペレーターの声や、日本語を主体とするディスプレイや看板など、細部の描写の巧妙さに感心させられます。また所々挿入される、マンションや空といった何気ないカットも、日常の空気感を上手く醸し出しています。こういった細かいディテールの積み重ねが、リアリティーのある独特の世界観を作り出すのに成功して、今見ても古さを感じさせないのでしょう。
「エヴァンゲリオン」はTV版、劇場版共に最後が大いに不満でしたが、今思えばああいう不可解な終わり方であったからこそ、今まで「伝説」として残ったのかもしれません。そういう風に思えば、謎の決着の期待を裏切られて怒り心頭だったあのラストも、許せる感じに思えてきます。TV版では最後の方にしか出てこなかった渚カヲルが今回早くも、わずかながら登場するのは、再構築のストーリーの行方を期待させてくれます。
今回はエンドタイトルの後に次回「破」の予告編が「サービスサービス」されているので、クレジットが始まっても立ってはいけません。もし次回がこの予告通りの内容なら、TVと違う展開もアリのような期待を持ってしまいます。
僕はこの映画を、上映3日目に新宿のミラノ座見ましたが、平日なのに1000以上もの座席がほぼ満席になっていました。中でも10代20代くらいの、「エヴァンゲリオン」を見たことが無いか、小さい頃にしか見ていないであろう人が目立ったのには驚きました。「伝説」を体感したいということでしょうか。「エヴァンゲリヲン」とは今だに、これほどのパワーを持てるソフトであったのかと思い知らされました。
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