コックリさん

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夜の教室で、転校生ユジン（イ･セウン）たち３人の女子高生は倉庫の奥深くにしまわれていた「呪われた29番の席」を持ち出し、その上でいじめの仕返しとしてコックリさんを行った。翌朝、いじめグループの１人が変死する。そしてその日赴任した美術教師ウンジュ（キム･ギュリ）は教室内にいるはずのない生徒を目撃し、ユジンはウンジュの背後に不気味な人影を見る…。

「ボイス」の監督がまたまた放つ韓国ホラー作品です。「ボイス」は呪いの連鎖の話だったのがラブストーリーに変質してしまう、一貫性に欠けた構成（それはそれで面白いのだけど）でしたが、今回のお話もコックリさんはきっかけだけで、後から閉鎖社会やら転生やら超能力やらいろんな話が出てきます。
映画はこういう風に、ネタを詰め込みすぎではあるのですが、それが悪いというよりも、「こんなん出てきた!」みたいな次に何が出てくるか分からない面白さを感じてしまいました。でもラストは何のひねりも無く、無理やり明るい雰囲気にしてしまっています。

ホラーシーンはそれなりにギョッとさせてくれます。Jホラーをよく研究してる感じがしますが、人間も幽霊も髪が長いキャラが多いので、「リング」のパクりとも見えてしまいました。アメリカでやったらJホラーと思われるかもしれません。
でも、予告の方が本編よりも怖いかもしれません。「コックリさん、コックリさん…」のささやき声が…ゾヮッ！。

村の閉鎖性は「楢山節考」を思い出したし、いじめがあるのも日本と変わらない感じです。韓国は反日とか言ってるけど、こういうところは日本と似ています。

ユジンを演じるイ･セウンは、目の大きい顔立ちが印象的で、それゆえのキャスティングのように思えました。
ウンジュを演じるキム・ギュリは「女校怪談」でも主人公を演じていて、あれのキャラが大きくなった姿、なんて設定が出てこないかと期待してしまいました。でもこんなにホラー物に出続けてるとこの人、ホラー専門女優のレッテル貼られるぞ。

コックリさんを呼ぶ文句の「おいでください」は発音がほとんど日本語に聞こえました。なのでコックリさんは日本から来たものかと思ってしまいましたが、韓国でも昔からあったそうです。まさか植民地時代にこの言葉が融合してしまったとか…？

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ラストは明るい雰囲気のシーンに見せていますが、結局悪が勝つ話で、ひねりがありません。ユジンは結局取り付かれたまま死んじゃった、というのは哀れです。村人も教師１人を除いて全員殺戮なのかな?
このラストで出てくる女の子は「ボイス」の子に見えました。あの睨みの表情、似てる！

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甘　い　人　生

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ソウルを一望できるホテルのマネージャー・ソヌ（イ･ビョンホン）は、オーナーのカン（キム・ヨンチョル）に呼び出され、カンが上海に出張してる間、彼が懇意にしている音楽家の若い女性ヒス（シン・ミナ）を監視し、もし彼女に男がいたら知らせるよう命令される。ソヌはヒスと一緒に食事をしたり、尾行したりして監視を続け、ある晩彼女の家に踏み込み、男を見つける。ソヌはカンから渡された携帯を握るが、送信ボタンを押さなかった…。

「美しき日々」や「オールイン」などのTVドラマで、日本でも大人気のイ・ビョンホン主演のアクション作品です。この映画、韓国でのロードショーは日本公開の３週間くらい前だそうで、韓国映画でこういう本国とほぼ同時公開の例は珍しいケースだそうです。やはりビョン様人気のゆえか…？
宣伝コピーは「究極の愛」という文句ですが、この文でビョン様の恋愛映画を期待したかもしれない圧倒的多数であろう女性ファンは、このバイオレンス度いっぱいの内容にショックを受けたかもしれません。予告を見れば内容の想像はつくでしょうが、露骨に韓流ブームを利用したようなこういう宣伝は、いいのか？という気はします。
とはいえ、この作品を初めからアクション映画と分かって見れば結構楽しめます。ビョン様のガンアクション姿はなかなかサマになっていて、かつての香港ノワールを思わせます。話は少々もたつく箇所がありますが、退屈はしませんでした。
これがひと昔の香港映画だったら、ヒロインとビョン様が愛し合ってしまい逃避行し、ボスが率いる悪の団体が２人を追っかける、なんてお話になったと思いますが、この映画はそんな単純な話にはしないで、ビョン様はヒロインをどう思っていたのか、想像させるのが面白いところです。
監督は「箪笥」を作った人ですが、あれよりも納得のいく話でした。

英語のタイトルは「A Bittersweet Life」。冒頭でビョン様がコーヒーゼリーを食べてるのはその暗示のようです。甘党のハードボイルドキャラはちょっと珍しいと思いますが、僕も甘いもの好きなので親近感がわきます。
またチョウ・ユンファなど、ガンアクションのヒーローはたいがいタバコを吸っていますが、この作品でのビョン様にはタバコを吸うシーンはありませんでした。他のキャラはみんな吸ってるのに。禁煙ヒーローもまた珍しいけど、好感が持てます。
でもポスターではビョン様、タバコ吸ってるんだけど。

この作品の公開直前に新宿の伊勢丹で「甘い生活」のイ・ビョンホンの写真展というのをやっていたのでのぞいてみたら、会場はオバさま＆おねーさまばかり。男、俺だけ?みたいな感じでした。
しかも会場内は「撮影禁止」と書いてあるのに、あちらこちらでおねーさま方がケータイでビョン様の写真を撮ってました。係員もいましたが、見てみぬふり…。

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ラスト、ヒロインに微笑まれて返すビョン様の笑顔にジーンと来てしまいました。しかし、この女の笑顔のために、ビョン様は自分の人生を台無しにしてしまった、てことになるのでしょう。
一瞬の軽い想い、愛とまでは言えないような感情が「甘い人生」を台無しにする皮肉が効いています。
しかしボスがビョン君を殺そうとしたのは、彼が電話をしなかったことではなく、彼女に愛を抱いたことが許せなかったのかもしれません。ビョン君自身は気づいてなくても、ボスはいづれ彼女に対する感情が、愛になっていくことが分かってたのかもしれません。

映画はこの、ビョン様の笑顔で終わって欲しいところでした。その後のシャドーボクシングのシーンは余計で、単なるファンサービスに見えました。

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英語完全征服

地方公務員ヨンジュ（イ・ナヨン）は職場を代表して英会話学校に通うはめになってしまう。彼女は、そこで出会ったお調子者のムンス（チャン・ヒョク）に心を奪われるが、彼はメガネッ娘で胸の目立たない（失礼!）ヨンジュを全く相手にせず、クラスの担任の美人教師キャシーに夢中。だが幸運にもムンスの席の隣になったヨンジュは、彼にアタックを開始する…。

「僕の彼女を紹介します」のチャン・ヒョクがあれよりもっとお気楽な、でもやはり期待通りに収まるキャラを演じる作品です。
ジャンルとしてはこの映画、ラブコメというところでしょう。このテの韓国映画で日本で有名な作品といえば、「猟奇的な彼女」くらいしかないでしょうが、今後は「彼女を信じないでください」や「マイ・リトル・ブライド」など続々と公開される予定になっているようで、実際韓国ではラブコメってかなり多く作られているのではないかと想像します。
映画は所々に出てくるアニメが面白く、予定調和の展開を軽く楽しめます。
ただ後半でのヒロインの勘違いぶりは、状況は分かるものの、「聞けばいいだろう」と思えてちょっとイラつきました。いかにも作った話ぽいぞ。

たいがいの人は「英語がちゃんと話せれば…」と思ったことがあることでしょう。中国もので以前、英語学習のドキュメンタリー映画があったし、英語の苦労はアジア共通なのかもしれません。
しかしこの作品では、英語を勉強しに来てるのに、韓国語の方が優れてると主張する生徒達の姿勢に、民族主義の強いお国ぶりが見えます。でも彼らが学内韓国語禁止に反発する態度には、勉強しに来てるんだろ！と言いたくなりました。英語オンリーが当然と思うのは、日本人的なのか…？

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コンスタンティン

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ロスアンゼルスで悪魔祓いをしているジョン・コンスタンティン。彼が地獄から現世を侵略しようとする魔族と戦う話です。コミック原作の映画化で、「エクソシスト」＋「妖獣都市」＋「ブレイド」といった雰囲気がします。
キアヌ・リーブス演じるコンスタンティンは命の危険を招くほどのヘビースモーカーで、死後天国に行くために魔族と戦わざるを得ない、というキャラはそれなりに立っています。ただ、彼が天国へ行きたいと願うのは地獄の惨状を見たからなのでしょうが、切に望んでいる印象に今一つ欠けます。
ヒロインを演じるレイチェル・ワイズは出番こそ多いものの、お話にただ動かされているだけのキャラになってしまっていて、「ハムナプトラ」みたいな魅力が感じられませんでした。
そんな主人公たちに対して、脇役である天使や魔族といったキャラの方が性格が出ていて、人間くさく描かれていた点が面白いところでした。製作者たちは人間よりも、人間じゃない存在の方に思い入れが強かったように見えます。

話の展開は調子良過ぎですが、「運命の槍」（「ロンギヌスの槍」と言わないのかな？）、「地獄の聖書」、ガブリエルといったアイテムやキャラクターの登場には、ネタ的に「エヴァンゲリオン」とカブる感じで、僕みたいにキリスト教関連の善と悪の戦いの話が好きな人なら、かなり楽しめる内容になっています。
コンスタンティンの使う銃なんかそれらしい奇抜なデザインだし、魔族が硫黄の匂いという設定も恐山を思わせてリアルな感じがしました。
地獄の光景が映画で描かれることは珍しくありませんが、この作品のような最終戦争の後を思わせる破滅的なイメージは黙示録な感じで、この世と続く世界という雰囲気があり、今まで描かれた「地獄」よりリアルに見えました。
自殺が「悪」という考え方がキリスト教の教義なのかは知りませんが、丹波哲郎氏の映画「大霊界」も同じようなことを言っていました。この共通点は興味深いところです。

エンドクレジットの後にもシーンがあるので、クレジットが始まっても席を立たない方がいいでしょう。重要ではありませんが、なるほどとは思うシーンです。

予告の音楽がなかなかかっこよかったのに、使ってなかったのは不満だった…。

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ガブリエルのユニセックスなキャラ設定は面白いけど、さらに最後で、天使をああいうことにしてしまうのは衝撃！でした。でもキリスト教の信者はこれ、許せるのか?
ルシファーも、ひょうひょうとしたところが面白いキャラになってました。
彼がコンスタンティンを殺さなかったのは、パート２を作れるようにしておくためのように思ってしまいましたが、そのやり方は皮肉ぽくて、映画の雰囲気に合ってはいました。

コンスタンティンの自己犠牲は、前にキアヌ君が主演したやはり悪魔ネタの映画「ディアボロス」のクライマックスを思い出しました。またあの映画での人が消えたニューヨークのイメージは、「コンスタンティン」の地獄のイメージに似てるようにも思います。

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レジェンド
三蔵法師の秘宝

「グリーン・デスティニー」のミシェル・ヨーが、三蔵法師が遺した秘宝の秘密を受け継ぐ曲芸師一族として、悪の富豪（リチャード・ロクスバーグ）からお宝を守ろうとする話です。
秘宝の秘密を知る東洋人、それを狙う西洋人という設定は、ジャッキー・チェンの「メダリオン」とかぶる印象を受けました。お話も「メダリオン」と同様、他愛なく調子いいけど、そこそこ退屈しないで見られます。

ただしジャッキー映画の格闘シーンでは余計な動きや当たってない感じは見られませんが、この「レジェンド」ではそういう、アクションのもたつきが見られました。ミシェルはさすがに香港のトップアクション女優であるだけに、アクションの動きはいいので残念です。
しかし布を使ったアクションは、曲芸師という設定に合った、女性らしい華麗さが出てうまいアイデアです。
アクションには合成シーンが多いですが、予算のせいか、ほとんどのカットでエッジが出てバレバレです。このへんでいかにもB級に見えてしまう映画です。

肝心の秘宝は、スーパパワーとか無くて面白みに欠けます。「インディ・ジョーンズ」のパクりになるでしょうが、それでもいいから「奇跡」を見せて欲しかったところでした。
秘宝に到達するためのアクションもいまいち特徴がありません。主人公が曲芸のショーで「秘伝の大技」として使っていたものが実はそうだった、なんて設定でも作った方が面白くなったと思います。

終わりは一応ハッピーエンドですが、クライマックスでの主人公の弟の彼女の描写のおかげで、いい気分になれない終わり方でした。むやみに人を殺すシーン多いし、何でアジア人が関わる映画は命を軽視したがるかなあ。

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コ　ー　ラ　ス

現代、有名指揮者であるピエールは賞を受けたことでフランスに里帰りする。そこへ彼の少年時代の友人であるペピノが訪ねてくる。彼はピエールの恩師であるクレマン・マチューがつけていた日記をピエールに読ませる。それは1949年のフランス。マチューは保護者が面倒を見られない子供を集めた寄宿舎「地の底」の舎監として赴任した。彼は始めは校長の、規則と規律を生徒たちに押し付けるやり方に従っていたが、マチューは彼らに合唱の指導を始め、徐々に生徒らとの結びつきが深まっていく…。

宣伝によれば、フランスで「アメリ」のヒット記録を塗り替えたという作品です。
少年たちがコーラスをやるということで、クライマックスは「スウィングガールズ」みたいな大会で発表という予想をしましたが、それは外れました。むしろこの作品のクライマックスは、「いまを生きる」を連想しました。
ここは泣きまでは至りませんでしたが、ラストで明らかになる「真実」のおかげで、とても終わりが気持ちのいい映画になっています。
「いまを生きる」と同様に、少年たちの個性もちゃんと出ているし、ストーリーもキャラクター設定も巧みで、フランスでの大ヒットという宣伝も納得です。

ダメと思われていた子供たちが輝いていく、というお話は「スクール・ウォーズ」のパターンに近いと思います。やはり子供たちを認め、同じ目線に立てる教師こそ理想なのでしょう。

校長が悪役格というのもまあ、パターンですが、ただの悪役になっていないのがいいところでした。誰にだって「立場」てモンがあるよねえ。

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サ　マ　リ　ア

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ヨジンは刑事の父と２人暮らしの女子高生。いつも親友のチェヨンとつるんでいるが、彼女は援助交際をしていて、ヨジンは連絡＆見張り役をしている。だがある日チェヨンが入ったホテルの部屋に警察が踏み込み、彼女はヨジンの目の前で窓から飛び降り、虫の息となったチェヨンは笑顔を残して亡くなる。そしてヨジンはチェヨンの行動をなぞるように、自分が手帳に記録していた男たちに連絡を取り、ホテルに入るようになる。そのヨジンの行動を父が目撃してしまう…。

「悪い男」や「春夏秋冬そして春」といった、独自の作風を貫いているキム・ギドク監督の作品で、彼はこの映画で、第54回ベルリン国際映画祭で銀熊賞（監督賞）を受賞しました。
ストーリーは「春夏秋冬そして春」よりは把握できやすいと思いますが、キャラの行動は奇抜に見えてしまうこともあり、理由を考える必要があります。その意味では今回も、観客の想像力が試される映画です。
とはいえ、「パスミルダ」「サマリア」「ソナタ」という３部構成のタイトルの意味や、チェヨンとヨジンの援助交際の本当の目的（映画で少しだけ触れてるけど、本当にそれだけか?）、ヨジンが男たちにしてあげた行動の意味など、分からない箇所が結構ありました。
しかしギドクらしい？面白いイメージは今回も楽しめます。

後半はヨジンの父親が主人公のような展開になります。映画で初めは援助交際を描くつもりが、少女の心理よりもオヤジの心理に興味が行ってしまったのではないかと想像してしまいました。ギドク監督もオヤジだし、感情移入しやすかったんじゃないかなあ。

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宣伝用の批評ではラストをハッピーエンドと解釈しているようなコメントがありましたが、僕にはヨジンが親友とか父とか、親しい人に次々と去られてしまう「痛み」を受けているように思えました。
でもその前の、父がヨジンに運転を教えてるシーンは微笑ましくもあり、その次に来る別れが予想できて切なくもなる、上手い演出です。この映画、たぶんヨジンと父親の「成長の物語」ではないでしょうか。

娘の援助交際を知った父の行動は、賛否両論あることでしょう。しかし一番身近な家族なのに何も言えない皮肉さ、無力感、戸惑いといった感情はよく出ています。初めの方の、チェヨンとヨジンが銅像の家族の傍らに座るシーンが、そんなことを暗示しているように思えました。

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香港にあるアジア銀行が武装集団に襲われる。彼らは犯行を警察に通報し、駆けつけた警官たちをマシンガンで撃ちまくって楽しむ。チャン警部（ジャッキー・チェン）は「３時間で犯人を逮捕する」と宣言し、犯人グループのアジトに向かうが、彼の部下は罠にはまり、目の前で殺されてゆく。一人生き残ったチャンはショックで酒に溺れ、警察官の誇りを失っていく…。

宣伝によれば、ジャッキー・チェンはハリウッドでは思うように映画が作れないので香港に戻ってきたそうで、その復帰作として彼のこれまでの映画の中で一番のお気に入りである「ポリス・ストーリー」を新装したそうです。
確かに今回のアクションには、２階建てバスや高いところからの落下といった、「ポリス・ストーリー」第１作を思わせるシーンがあります。そういったアクションシーンは彼のこれまでのハリウッド作品なんぞ軽く霞んでしまうド迫力！だし、年齢を全く感じさせない動きには驚きです。
近年のハリウッドでのジャッキー・チェンの活躍は目ざましいものがありましたが、どの映画もそこそこ面白いものの、アクションは「すげーっ！」と思うものはありませんでした。やはり「ポリス・ストーリー」シリーズや「フー・アム・アイ」など、香港で作ったものでないとインパクトがありません。そういう意味でやはりこの「香港国際警察」のように、香港映画でないとジャッキーの本領は発揮できないのでしょう。

今までの香港映画のジャッキー作品で気になったのは、画一的なキャラクターと統一性のないストーリーでしたが、今回はキャラの描写も深くなっています。強いキャラが多かったジャッキーが、映画のしょっぱなから酒に溺れる姿を見せるのは意外でした。
犯人側の描写も単なる「悪」より踏み込んだ描写を見せているのは進歩した感じです。ただ、チャンの相棒シウホンと犯人の対比が明確になると、もっと良くなったと思いました。チャンと婚約者の描写も前の「ポリス・ストーリー」シリーズよりも切なくなっていて、後半は感動する箇所がありました。
こういった部分はもしかしたら、キャラとストーリーで見せた「インファナル・アフェア」のヒットが、いい影響を与えたかもしれません。

ただ前半で残酷な描写が目立つのが、命を軽視してるようで気になりました。この辺はアジア映画の悪しき伝統が残ったように思います。罠はＴＶゲーム「刻命館」を参考にしたかな。

キャストには若手も積極的に起用して、香港映画の今後を考えているジャッキーの姿勢には感心するし、彼の期待に体を張って応える、ニコラス・ツェーたちも大したものです（でも好みはやはりササ役のシャーリーン・チョイ。ツインズだけにかわいいし）。

同じキャラたちでパート２が見たくなりました。ジャッキー、もうハリウッドに戻らんでいいわ。

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サイドウェイ

小説家志望の中年男マイルス（ポール・ジアマッティ）は、結婚を１週間後に控えた親友ジャック（トーマス・ヘイデン・チャーチ）と、念願のカリフォルニア・サンタバーバラのワイナリーへの旅に出る。マイルスの目的は真面目にワイナリー巡りだったが、ジャックの真の目的は結婚前の最後のハメ外しだった。あるワイナリーで出会ったステファニー（サンドラ・オー）と意気投合したジャックは、結婚前ということを隠してベッドインしてしまう。ステファニーの親友マヤ（ヴァージニア・マドセン）はマイルスと同じワインマニアで２人もいい仲になるが、離婚のショックを引きずっていたマイルスは今一歩踏み込めない…。

2005年度のアカデミー賞で脚本賞を取った、男２人のロードムービーです。大した事件が起こるわけでもなく、お話自体はそうエキサティングなものではありません。
しかしその分？主人公男２人のキャラクターがじっくりと描かれています。特にマイルスの、負け犬的キャラでネガティブな思考をしてしまうところなんかは、他人とは思えません。ワインにうるさいという、ヲタク（全員がそうではないが）の偏狭さもよく出てます。
またジャックは対照的に思考はポジティブですが、都合のいい自分勝手なポジティブで、結婚前だというのに女たらしなイヤな奴です。でも見ていて嫌いにはなれず、旅の最後で彼の懇願に答えるマイルスの行動は、どこか納得してしまいました。
映画でのこの２人の行動の行方に興味が尽きなくて、最後まで飽きることなく見れました。

ただラストについては、もう少し踏み込んで描いてくれれば、もっと爽やかな気分になれたと思います。余韻が残るという意味では、このままでいいという人もいるでしょうけど。

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ビヨンド the シー
夢見るように歌えば

1950，60年代にヒットを飛ばした歌手、ボビー・ダーリンの生涯をミュージカル仕立てで描いた作品です。
そのボビー・ダーリンを演じるケビン・スペイシーは主演だけでなく、この映画では制作や監督も兼ねています。彼は「他の仕事をしていても心はいつもこの映画にあった」とコメントしてるそうで、ケビン君にとっては執念の企画といえる映画でしょう。
そのせいか映画にはボビー・ダーリンへの愛情とリスペクトがあふれています。ケビン君が見事なダンスと歌を聞かせる熱演はもちろん、クライマックスはしっとり見せて感動的で、ボビー・ダーリンを知らない僕も楽しく見れました。
ボビー氏には複雑な家庭事情があったせいか、映画はスターのサクセスストーリーというより夫婦と親子の物語になっています。おかげで映画は親近感を持つ、共感できる内容になっています。
この映画を見たのは平日でしたが、映画館では年配のオバちゃんが目立ちました。青春時代を懐かしんでるのかなあ…？

映画の後半は、反ブッシュな感じを受けました。

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セ　ル　ラ　ー

高校の生物教師をしているジェシカ・マーティン（キム・ベイシンガー）が学校へ行く息子を見送った後、家に５人の男が乱入し、彼女は連れ去られてしまう。見知らぬ家の屋根裏に監禁されたジェシカは、壊された電話機の配線をつなぎ、それはオタッキー？な若者ライアン（クリス・エバンス）の携帯電話に繋がる。ライアンはジェシカの話をイタズラと疑うが、ジェシカは携帯を警官に渡してほしいと懇願し、言う通りにしたライアンは警察に行く。応対した警官（ウィリアム・H・メイシー）はその日が引退だった…。

監督のデヴィッド・Ｒ・エリスは、コリン・ファレルが主演した「フォーン・ブース」を撮った人で、今回もそれと同じく電話をネタにした映画です。
ケータイが通話以外にいろいろ機能がついているのは常識だし、普通の電話と違って電波切れやバッテリー切れという弱点があります。映画はそういったケータイにまつわる色々なネタを適宜に散りばめて、実に面白い展開で進みます。テンポもキャラのセリフも小気味よく、最後まで飽きさせません。

ただし、見ず知らずの女のために命を失うような危険を冒すか？という、主人公ライアンに関する設定は大いに疑問なのですが、それを言ってしまうと話が成立しなくなるので、目をつぶるべきでしょう。
また、ライアンは女に振られても諦めずにつきまとうような奴ですが、こう次々と機転が利かせられる奴がそんな負け犬的なキャラなのか？という疑問も持ちました。ま、この映画はキャラクターのリアリティーは置いといて、ユーモアやサスペンスといったシチュエーションを楽しむべき映画です。

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1960年代、トルコのイスタンブールにあるスパイス店。少年ファニスは店主である祖父からスパイスや天文学の話を聞いて育ち、いつの間にか料理の名人になっていた。だが彼の一家はトルコとギリシャとの政治紛争のあおりでギリシャに強制退去になり、トルコ国籍であった祖父を残しファニスは両親とアテネへ移住する。だが数年後ついに祖父から、アテネに向かうと連絡が入る…。

前半が子供と老人の話で、後半が成長した子供の今の話という、「ニュー・シネマ・パラダイス」を思わせる構成の話です。
しかし「ニュー・シネマ・パラダイス」と違い、この作品のクライマックスは苦さが目立ち、ラストも妙にファンタジー過ぎる終わり方で、感動まで行きませんでした。
背景にギリシャとトルコの紛争があるので、２国間の歴史を知ってるともっと楽しめるかもしれません。

ただ、コメディタッチのシーンはそこそこ笑えるし、食べ物のうんちくはウソかホントか分かりませんが、興味深いものがあります。

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ステップフォード・ワイフ

高視聴率をたたき出す番組を連発する敏腕プロデューサー、ジョアンナ（ニコール・キッドマン）は、新番組のトラブルで会社をクビになる。壊れた妻を心配した夫（マシュー・ブロデリック）は、一家でニューヨークを離れ、穏やかな街ステップフォードに引っ越す。しかし住民は確かにフレンドリーなものの、ここに住む妻たちがあまりに画一的な主婦であることにジョアンナは違和感を持ち、友人となった作家（ベット・ミドラー）と共に調べ始める…。

60年代の映画「ステップフォードの妻たち」のリメイクで、オリジナルはラストの「秘密」で有名らしい作品です。
それゆえに今回のリメイク版では、この「秘密」がバレバレであるせいか、中盤に明かされてしまうものの、最後にもう一押し、オリジナル版にも無かったであろう意外な「秘密」が出てきます。この部分はちょっと予想を超えた意外さがあったし、グレン・クローズのキャラクターがこのシーンで納得！でした。

映画のテーマは、妻は夫の奴隷ではない、ということなのでしょう。オリジナル版が作られた頃には、これはタイムリーな主張だったかもしれません。しかし、今の世の中ではそんなことは当たり前になってしまってるから、今さらフェミニズム的なテーマを描く意味が分かりません。
軽い小品コメディということで退屈はしませんが、ビデオでも十分な映画です。

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アレキサンダー

ローマ帝国が栄える前の紀元前。ヨーロッパからアジアに至る地域を征服し世界史で必ず習う人物、アレキサンダー大王の生涯を描いた物語です。
映画はアレキサンダー（コリン・ファレル）の死から40年後、部下だったプトレマイオス（アンソニー・ホプキンス）の回想という形で描かれます。そこではアレキサンダーの少年時代は、愛馬との出会いやの父の死といった重要事件がピンポイントで描かれ、映画の大部分は、ペルシャを征服してから以降のアレキサンダーと軍の行動が占めています。

映画で描かれる、アレキサンダーが東征を続けた理由はなんとなく、それなりに分かる感じはしました。とはいえ「トロイ」でのアキレスと同じように、それに共感はできません。それは彼についていけない部下も同様のようで、「トロイ」とは違い、演出の狙いなのかもしれません。
ゆえにアレキサンダーという人物像は、映画では今ひとつ分かりにくい描き方になっています。これを３時間もやられると長さが鼻について、眠くなってしまいました。また映画は「史実に忠実にした」せいなのか？男色シーンが多くて、これも見ていてあまり楽しくないところです。

映画の一番の見どころは、やはり戦闘シーンでしょう。特に前半のクライマックスといえる、ペルシャ軍との砂漠戦は、俯瞰のカットが大軍団の激突らしいスケール感を出しています。またインドでアレキサンダー軍の運命を決定付ける、「像」軍団との戦闘はあまり見たことがない戦い方で、後半の見どころと言えます。
そして、バビロンやアレクサンドリアといった古代都市の、マット画とCGでの再現も、僕のような古代遺物が大好きな人には興味深いところです。特にバビロンのシーンでは「大英博物館の至宝」にあった遺物を思わせる彫刻なんか出てくるので、行った人なら「おおっ！」と感動でしょう。

映画でアレキサンダーは「異民族に『文化』を広めるのだ！」と言ってますけど、これってブッシュを意識してる感じがしました。オリバー・ストーン監督は映画とアメリカ政策は関係ない、て言ってますけど…。

この作品は平日に横浜で見ましたが、劇場はオヤジが目立ちました。「ヘブン＆アース」なんかもそうだったけど、歴史モノてどうもその傾向が強そうだ…。

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オーシャンズ12

前作で一杯食わされたカジノ王テリー・ベネディクト（アンディ・ガルシア）は、盗まれたお金が保険で戻ってもその屈辱は忘れておらず、あるルートでオーシャンズのメンバー全員を突き止め、彼らに盗んだ全額と利子を２週間後に払うよう告げる。オーシャン（ジョージ・クルーニー）たちはその金を稼ぐためにアムステルダムに渡るが、そこにはラスティー（ブラッド・ピット）の元カノでユーロポールの捜査官イザベル（キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ）がいた。さらにそこでの初仕事の結果、ヨーロッパ最高の泥棒と言われる「ナイトフォックス」（ヴァンサン・カッセル）から彼らがライバル視されていることが分かる…。

ブラッド・ピットやジョージ・クルーニーなど、大スターを集めてそこそこヒットした「オーシャンズ11」の続編です。今回は前作と全く同じキャストをそろえるだけでなく、新たにキャサリン・ゼタ＝ジョーンズやヴァンサン・カッセルが加わって、さらに豪華なキャスティングになっています。
てなことで配役は相変わらず華やかだし、役者たちも勝手が分かってるせいか、楽しそうに演じている感じがします。お話のテンポも前作同様に快調で、楽しめる筋立てになっています。
とはいえ、その内容は前作以上に込み入って複雑になっているし、前作以上に都合のいい展開が目立ちました。特に一番肝心な「だまし方」は、観客には絶対推理できないような形で、ズルいとさえ思います。今回は犯罪映画というより、キャラクターで見る映画というべきでしょう。

映画には一人、クレジットに乗っていない大物スターがゲスト出演しています。この人が絡むシーンは、開き直りという感じのギャグが面白いシーンでした。
今回の真のオーシャンズの敵ともいえるナイトフォックスは結構重要な役ですが、演じるヴァンサン・カッセルのクレジットがブラビたちより遥かに低かったのはかわいそうになりました。フランス映画では第一級の役者でも、扱いがアメリカ人より低くするのがハリウッドなんかねえ？

日本での記者会見で、ブラピとジョージ・クルーニーとマット・デイモンが揃ったのは凄いと思いますが、ここでブラピは「「13」は日本で撮りたい」と言ったそうです。冗談だと思うけど…マジはやめてほしいなあ。

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オペラ座の怪人

1870年代のパリ、オペラ座。端役のダンサー・クリスティーヌ（エミィ・ロッサム）は新しく来たオーナーが幼ななじみのラウル（パトリック・ウィルソン）であることに胸をときめかせる。ラウルも同様にクリスティーヌに惹かれるが、彼女は音楽の師である「天使」にさらわれ、オペラ座の地下にある「ファントム」（ジェラード・バトラー）の隠れ家に連れて行かれてしまう…。

アンドリュー・ロイド＝ウェーバーによる大ヒットした舞台劇を、自らの製作、脚本、そして作曲により映画化した作品です。
冒頭、過去に戻っていくシーンはあの有名なテーマ曲を背景にして、鳥肌が立つような迫力がありました。
しかしその後のドラマは、例えばヒロインが、ファントムがいいのかラウルが好きなのかどっちつかずだし、支配人たちがなぜ過去の人であろうディーバにこだわるのか分からないし、ファントムの過去が劇場に関連していないなど、気になる点がいくつかあり、そのせいか話もだんだん盛り下がっていく感じであまり乗れず、眠くなりました。

結局この作品は、舞台をそのまま映画に移しただけで、舞台を飛び出したような映画独自の広がりが感じられません。その意味では、やはり舞台をまんま移したぽかった「笑の大学」と同じような感じを受けます。
監督はウェーバー本人ではなく、ジョエル・シュマッカーがやっています。彼は「ロストボーイ」や「バットマン：フォーエバー」などそこそこ面白い映画を監督していますが、突出した作品は記憶にありません。今回も結局、ウェーバーの言いなりで仕事をしただけのように思えます。
とはいえ「舞台まんま」の形は、「舞台の記録」という意図があったゆえかもしれません。地方など、舞台を見にくい人にとってはこれはいいかもしれません。しかしオリジナルの舞台の方が、映画よりはるかにいい出来と想像します。
ただしこの映画、舞台をそのまま移したような美術はやはり凄く、ゴージャス感があります。

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マイ・ボディガード

元米軍特殊部隊だったクリーシー（デンゼル・ワシントン）は除隊後も酒に溺れていた。そんな彼を見かねた戦友レイバーン（クリストファー・ウォーケン）はクリーシーを誘拐ビジネスが横行するメキシコに呼び、護衛の仕事を紹介する。実業家のサムエル・ラモス夫妻に雇われた彼は９歳の娘ピタ（ダコタ・ファニング）のボディガードとして働くことになる。初めは無愛想に接していたクリーシーだったが、ピタとの触れ合いで笑顔を取り戻していく。だがピタは誘拐組織に襲われ、奮戦したクリーシーは重傷を負ってしまう…。

人生に絶望していた男が子供との触れ合いで人間性を取り戻し、その子供を奪った奴らに復讐をする、といった物語です。
トニー・スコット監督はや「トゥルー・ロマンス」「クリムゾン・タイド」みたいにいつものごとく、ソツなく話を見せてくれます。特に前半といえる、クリーシーとピタの触れ合いのシーンは丁寧に描かれていて、それなりにほのぼのとしたいい話になっています。特に演技には定評があるデンゼル・ワシントンと、「アイ・アム・サム」での演技が絶賛されたダコタ・ファニングのコンビの名演が、お話にかなりの説得力を与えています。
映画の後半はそういう雰囲気が一変する復讐物語になります。ここは前半とは全く違うハードなテイストになり、それはそれでアクション作品が多いトニー・スコットの面目躍如という感じがします。しかしここで描かれる「殺した奴は殺す」という論理？は、前にトニー・スコットが監督した「トップガン」みたいな、いかにも単純なアメリカ的価値観に思えてイヤになりました。映画全体が２時間半という長さのせいか、この後半も結構長いようで、もっと切って欲しかったところです。
そういったせいか、これまでのこの監督の映画同様、感動までは至りませんでした。

映画の宣伝では「レオン」以来の感動とか言ってますが、全く関係ない「レオン」を持ち出してくるのはナンセンスでしょう。でもあえて「レオン」とこの「マイ・ボディガード」を比較しても、キャラの描写もテンポも「レオン」の方が上の出来でした。

この映画だとメキシコが誘拐大国に思えてしまうけど、メキシコの人は怒らないのかなあ？

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