アメリカン・サイコ

８０年代、ニューヨークの高級マンションで何不自由ない暮らしをしているヤッピー・べイトマン（クリスチャン・ベール）が殺人を犯していく話です。
原作はアメリカで大評判の話だそうですが、主人公が人殺しを続けていく理由がさっぱり分かりません。
とはいえ、本編には「悪魔のはらわた」のビデオが出てくるし、マンションに死体がわらわらと転がっている？シーンが出てくるので、「悪魔のはらわた」のような、意味の無い殺しの不条理さを描写しているようには思えます。
不条理といえば、主人公が８０年代の音楽マニアで、殺しをやる時にヒューイ・ルイスやジェネシスのうんちくを延々と意味も無く語るシーンは笑えました。

ラストも夢か現実か、混乱するような終わり方で、どこがいいのかよく分からない映画でした。

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トラフィック

メキシコ国境での麻薬捜査官を中心にしたドラッグの取り引きと捜査、アメリカ国内での麻薬取締長官とその家族、そしてサンディエゴでのドラッグディーラーの妻を中心にした取り引きと捜査といった、ドラッグに関する３つの話が並行して描かれます。
原作はTVのエピソードだそうで、それを大分整理したそうですが、３つの話が同時進行していく編集は上手いとは思えるものの、話が、特にメキシコ編（と勝手に分類してしまおう）が分かりにくく、眠くなりました。
ゆえにこの映画は話を楽しむより、アメリカでのドラッグにまつわる現状を知る、実録ドラマとして見た方がいい作品です。こうも分かりにくい作品がアメリカでヒットしたというのは、アメリカ人にとってドラッグが身近な問題ゆえだったのではないかと思います。

サンディエゴ編で描かれる、ドラッグの事を何も知らなかった世間知らずの若妻が、ドラッグディーラーだった亭主が逮捕されたため、生活のために彼の後を継いでドラッグ商人になってしまう話はリアルに見えました。ドラッグ問題の根深さは、案外こういった罪の意識の低さかもしれません。

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ドリフト

タイラー（ニコラス・ツェー）はレスビアンである女性を一晩の過ちで妊娠させてしまい、出産費用を稼ぐためにモグリの警備会社に入る。彼は顧客の親類として知り合ったジャック（ウー・バイ）と気が合うが、ジャックは元は南米にいた殺しのプロフェッショナルだった。そんな時、ジャックの昔の仲間が香港に進出し、彼を仲間に引き入れようとするが、彼は拒絶する。彼らはジャックの身重の妻を狙い、タイラーはジャックと共に彼女を守ろうと奮闘する。

監督はツイ・ハークですが、「男たちの挽歌」や「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」など、この人がプロデュースに回った作品ではいい作品があるものの、監督に回った映画では「アクションはいいけど話は今一つ」というような作品ばかりで、全体的に傑作と思えた作品は無かったように思います。
今回の「ドリフト」もその例外にはなりませんでした。
九龍城のマンションからロープで急降下しながら銃を撃つなど、アクションに関しては迫力あるシーンが見れます。しかし、キャラクターの描写が分かりにくく、彼らが何を考えているのかが伝わってこないおかげで、何故そういう行動をとるのか理解できず、話についていけないシーンがありました。

九龍城てとっくに取り壊したものだとばかり思っていたので、まだ存在しているとは意外でした。

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クイルズ

「存在の耐えられない軽さ」でＳＥＸを扱ったフィリップ・カウフマン監督が、「サディズム」の語源になったマルキ・ド・サドを描きます。

「サド」という言葉は有名でも、マルキ・ド・サドのことは何も知らないのでこの映画を見てみようと思ったものですが、映画はマルキ・ド・サド本人よりも、彼の作品の出版の橋渡しをする洗濯女（ケイト・ウィンスレット）や、彼を収監している精神病棟の院長である神父（ホアキン・フェニックス）など、マルキに影響を受けていく人々の描写にウエイトを置いていて、マルキ本人は狂言回しのような扱いだったのは不満でした。ま、それでも、マルキの悲惨な人生は垣間見れるのですが。
さらに、これらのキャラ達が何を考えているのかよく分からないおかげで話の展開についてゆけず、眠くなりました。「存在の耐えられない軽さ」もキャラクターの考えがよく分からなくて（字幕無しだったし）話についていけなかった作品だったけど・・・。

マルキの作品が堕落と言われて（彼自信の作品の表現やシチュエーションがけっこう直接的なのは驚きでした）出版を禁止され、ペンやクイルズ（インクの壷）を奪われてもなお、物語を伝えようとする姿勢は、表現の自由をテーマにしてるように思います。しかし、マルキの物語への執着はアカデミー主演男優賞の候補にまでなったジェフリー・ラッシュの熱演で伝わるものの、なぜそこまでして書きたいのか？その行動の理由がよく分かりません。

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ＪＳＡ
JOINT SECURITY AREA

まだ見ていない人

タイトルである「ＪＳＡ」は、韓国と北朝鮮の国境に設けられた「Joint Security Area＝共同警備区域」の意味です。この作品は、その共同警備区域で警備にあたっている韓国と北朝鮮の兵士達の、普通ならば許されない友情と、その結末を描く話です。
この映画は３部構成になっていて、おのおののパートにタイトルである「Joint Security Area」の単語が当てはめられています。まず「Area」で事件の謎が提示され、次の「Security」で観客にその事件の真相が語られ、最後の「Joint」でその結末が語られる形で話が進みます。

この映画は韓国で、「シュリ」を超える大ヒットを記録したということで期待しましたが、「シュリ」に比べると銃撃戦などのアクションシーンが少なく、おとなしめの話になっていたのは物足りなさを感じてしまいました。
また、話の始まりがミステリー仕立てになっていて、この形は観客の興味を引きつける効果があるとは思いますが、事件の真相が捜査によって明らかにされるのではなく、映画が途中で語ってしまうのは気になりました。
ただ、「シュリ」と違って話が派手ではない分、「ＪＳＡ」の方がリアルなように思います。予告でアクションのイメージが強すぎたために、その方面を期待し過ぎたかもしれません。それに、この映画のテーマは謎ときではないので、事件の真相を途中で語ってしまう構成でいいようにも思います。

メインのキャラクターが男ばかりなので、主人公に当たる調査官に女性を配置したのは正解だと思います。ソフィーを演じるイ・ヨンエは出てくるとホッとするし、美人だから見ていて楽しいです（男にとっては）。
「シュリ」に出ていたソン・ガンホが、今回は北朝鮮の兵士の役で出ています。「シュリ」と同様、この人は兄貴的な役柄が合うように思います。

すでに見た人

扱ってるネタが北朝鮮と韓国の関係のせいか、どうしてもこの映画と「シュリ」を比べてしまいます。しかしこの「ＪＳＡ」は、「シュリ」と違ってラストに救いが見えず、後味の悪さを感じました。

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Ｌｉｅｓ
嘘

女子高生Ｙは親友が憧れるデザイナーＪに電話をし、その声に魅せられたＹはＪの家に行って、２人はその場で肉体関係を持ち、逢瀬を続けていく。やがてＹは叩かれるのが好きになるが、Ｊも叩く事を要求するようになり、２人の行為はエスカレートしていく。

女子大生(初めは女子高生）と中年男のカップルが欲望のままにしまくる話です。男の方は結婚していますし、女の方には彼女を心配する兄が出てきますが、映画では主人公たちの周りの人間関係に関するしがらみはあまり描写されません。
普通ならそういった人間関係によって、話が愛憎絡まるドロドロした展開になりそうなところですが、この映画は２人の愛欲に話を絞っているせいか、面倒な人物描写が無い簡潔な話で、印象はさわやかな仕上がりになっています。
ただ、ひたすらやりまくるシーンが多いせいか、同じような描写を続けざまに見せられた感じで、眠くなりました。

ＹとＪが相手の望む行為を全て受け入れていく点は、そのためには死をも厭わなかった「愛のコリーダ」を思わせます。ＹとＪは誰でもいいからヤルのではなく、あくまで浮気もせずにヤリ続けていくのは、これはこれで一つの愛の形なのでしょう（体の相性がぴったりだったということか？）。かといって結婚までは行かないのは、結婚によって発生するしがらみは嫌だけど快楽は得たいというような、ドライな今っぽさを感じます。

ヒロインを演じるキム・テヨンは三輪明日美に似ていて、親しみが持てました（三輪明日美だったらここまで大胆には脱がないだろうし）。彼女はほとんどのシーンでジーンズ姿で登場しますが、スカート姿をあまり見せないのはカントクの趣味かな？

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ナンナーク

タイの片田舎に住むナークとマークは新婚の夫婦だが、マークは身重のナークを残して戦争に行ってしまう。命からがら戦場を生き延びたマークは家に戻り、ナークと新しく生まれた赤ん坊と元通りの幸せな生活を始める。だがマークは、近所に生む友人から、「ナークは赤ん坊と共に死んだ」と聞かされる。

宣伝では「タイで大ヒットしたラブストーリー」としか言っていませんが、実はホラータッチの話です。
とはいえ、ホラー演出では数カ所、ギョッとさせられるシーンがあるものの全体的に今一つだし、話の展開に都合よく進んでしまう箇所があるのも気になりました。ただし、この点は仏教に絡むシーンなので仏教国のタイらしいとは思います。
戦場から帰ってきた夫を迎えた妻が実は、という話は映画にもなった古典「雨月物語」と似たパターンです。ただ「ナンナーク」では、女が自分の秘密を知る人間達を襲うという、ヒロインの行動が過激になっている点が「雨月物語」と違うところでしょう。しかし、違う国で同じような話が伝わっているのは興味深い現象です。

ヒロインであるナークを演じる女優はけっこう美人だと思うのですが、映画では髪が短すぎて、男のように見えてしまうのは個人的に難点でした。時代設定は昔で、その当時のタイ女性はこういう髪型だったかもしれないので仕方なかったとは思いますが。

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ショコラ

「サイダーハウス・ルール」のハルストロム監督らしい、辛口な描写がありながらも極悪人のいない「やさしい」映画です。ハラハラするシーンもありますが、全体的に殺伐ではない雰囲気が、アカデミー賞の候補になったゆえかもしれません。
この映画の上手いところは、チョコレートという、どこにでもあるような食べ物に魔術的な効果を持たせたことで（バレンタインデーの本当の理由はこれだったりして）、観客にとってチョコの魅力の再発見になり、興味を引くことに成功している点だと思います。
「おもいっきりテレビ」などのように昨今、食べ物の効能の話はいろいろと聞きますし、チョコレートも「ポリフェノール効果」が強調されています。「ショコラ」は健康面ではない、魔術的な違いはあるものの、効能をうたうという点では似た感じがしますし、それが現代的なように思います。観客がチョコに「癒し」の効能を求めてるゆえに、ヒットしているのかもしれません。

主人公ヴィアンヌを演じるジュリエット・ビノシュはそんなに若くないとは思いますが、１０代のような３０代のような、年齢不詳に見える魅力が、魔術的なチョコレートを調理する主人公にぴったりな感じです。
主人公の仲間になる、暴力をふるう夫から逃げる女性ジョゼフィーヌをレナ・オリンが演じます。僕にとって彼女は、「ハバナ」や「蜘蛛女」のきれいなイメージが強い人なので、初め出てきたシーンがとてもみすぼらしく見えて、彼女だと分かりませんでした。彼女が監督の夫人というのは初耳です。
主人公に反感を持つ村人の一人、カロリーヌの役で「マトリックス」や「レッド・プラネット」に出ているキャリー・アン・モスが出ています。これまでの作品の印象から、彼女は未来系アクションのイメージが強い感じがするのですが、ここでの古めかしい女性の役も以外に合っていました。ただ、彼女の心の動きを示すシーンがカットされていたようだったのは残念です。

映画の時代設定は５０年代ぽい、ちょっと昔ではあります。しかしここで語られる、流れ者が田舎の村に定着しようとする話には、民族主義が激しくなってきている「今」を反映したようなテーマを感じます。

チョコレートネタの作品だけに、この映画にはチョコに関する料理のバリエーションも多く、中には菓子だけではなく、チキンのチョコレートソースがけなるものまで登場します。チョコのソースなんて聞いたことがないので、どんな味がするのか食べてみたくなります。

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チキンラン

名作クレイアニメシリーズ「ウォレスとグルミット」で名を上げたニック・パーク監督が、スピルバーグの会社ドリームワークスと組んで放つクレイアニメの最新作で、養鶏場から脱走しようとするチキン達の奮闘を描きます。

今回のニック・パークの作品はアメリカ色が入ったせいか、ジェットコースター的なスピーディーな展開になっています。特にクライマックスは、「おおっ！！」というような驚きがあるし、演出もうまく、｢ウォレスとグルミット危機一髪｣での快調なテンポを拡大したような感じです。ただ奇想天外さは、「ウォレスとグルミット」の方が上のように思います。
ストーリーがハイペースになった分、キャラクターを描く時間が足りなくなったせいか、「ウォレスとグルミット」みたいなとぼけた個性が無くなってしまったのは物足りなさを感じました。
特に主人公キャラの描写が今ひとつで、とにかく脱走に執念を燃やすだけ、という以外に個性が感じられませんでした。ただし、このチキンがオスではなく、メスなのは今的な感じがします。「大脱走」のパロディは笑えました。
主人公が今ひとつ個性が足りない分、敵の女主人の、特にクライマックスで見せる執念深さが際立った感じがします。チキンたちのみの描写よりも、女主人やパイマシンが絡む描写になると、映画が生き生きしてきたように見えました。

エンドロール中にもシーンが続きますが、特に笑えるシーンでもないので、あえて見る必要は無いと思います。

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ハンニバル

サイコサスペンスというジャンルを生んだ大ヒット作｢羊たちの沈黙｣の続編となる、ベストセラーとなった小説「ハンニバル」（読んではいません）の映画化です。
ただし、｢羊たちの沈黙｣の監督ジョナサン・デミもクラリス役のジョディ・フォスターも今回は降板してしまい、今回の「ハンニバル」の監督は「ブレードランナー」や「グラディエイター」のリドリー・スコットになり、クラリス役は「ブギーナイツ」のジュリアン・ムーアに変わっています。｢羊たちの沈黙｣からメインで続投しているメンバーはレクター博士役のアンソニー・ホプキンスのみです。

ジョディ・フォスターが降りたのは、シナリオ内のシーンに難色を示したのが理由だそうですが、クライマックスでのグロさを見ると、それも無理ないと思います。ホラー系の映画でもここまでグロい描写はあまりないだろうに、それをＲ指定とはいえ、全国公開規模の一般向け作品でここまでやってしまっていいのか？と思いました。あまり長いシーンではありませんが、印象はかなり鮮烈で、グロい描写が苦手な人や、映画を見た後に食事をしようと思っている人にはすすめられません。

リドロー・スコットの映画は「グラディエイター」などがそうでしたが、「エイリアン」以外の作品はいつも眠くなります。今回の「ハンニバル」も例外ではなく、前半は眠くなりました。ただ、ここの舞台となるフィレンツェの古めかしい雰囲気はレクター博士に似合うとは思います。
前作とは監督が違うので、今回の作品は別物と考えるべきなのでしょうが、話の展開に｢羊たちの沈黙｣のようなサスペンス的な盛り上がりないのは不満でした。
この映画のポイントはクラリスとレクターの親娘のような、あるいは恋人のような愛憎含む関係の描写だと思いますが、その感情がストレートでないせいか、彼らがお互いをどうしたいのかよく分かりませんでした。

「ハンニバル」は予想通りのヒットを飛ばしていますが、僕にとってはストーリーがそう面白いと思えないし、キャラの感情も分かりにくく、レクター博士のキャラにおんぶしただけの映画に思えました。
グロさだけがやたらと目立ち、サスペンスというより、Ｂ級ホラーに近い感じの作品です。

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スナッチ

ガイ・リッチー監督の前作「ロック・ストック＆トゥー・スモーキング・バレルズ」は面白い作品でしたが、話が多少もたつく点が気になりました。
今回の「スナッチ」も、話は金目のモノを巡ってキャラが入り乱れる、前作と似たパターンですが、前作の評判のおかげでより多くの観客を対象にしたせいなのか、話にもたつきは感じられず、前作よりも洗練された仕上がりになっています。

キャラは前作より多くなっていますが、全員が外見に特徴を持たせているし、個性の見せ方もちゃんとしているおかげで区別には困ることはなく、展開が一見複雑な構成に見えますが、分かりやすい筋立てになっています。

ダイヤを最後に誰が手にするかは、もちろんここでは明かしませんが、なかなか洒落た終わり方で、気持ち良く見れる映画です。

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ザ・セル

キャサリン（ジェニファー・ロペス）は自閉症の子供の精神世界に入り込む治療を施しているが、成果が上がらなかった。そんな時キャサリンは、女性誘拐殺害犯の心に入り、彼が誘拐した女性の居場所を突き止めるよう依頼される。彼女はその依頼を引き受けるが、その強烈な精神世界に同化の危機を迎える…。

映画では「ドリームスケープ」のような、夢の中に入り込む映画はありましたが、人間の精神世界の中に入る例は無かったと思います。とはいえ小説なんかでは、このネタは夢枕獏氏のサイコダイバーシリーズなどで既に扱われているので、新味は感じませんでした。
精神世界に入る機械の理論など、多少なりとも解説が欲しいところですが、この映画はそういった設定に関する部分はすっ飛ばして、早々と精神世界での描写に入ります。そのせいか、ストーリーには特筆するような展開は見られず、ビジュアルで見せていく作品になっています。
心の中の風景だけでなく、現実世界の犯人の行動も体中に無数のピアス？をしているなどビジュアル的に特徴のある描写がされていて、この映画はビジュアルがまず先にあって、そこから話が作られたような感じがします。なので、本編中のビジュアルにハマれば楽しめると思いますが、そうでない人には退屈な作品になると思います。

デザインで「ドラキュラ」の石岡映子氏が参加していて、セットの一部のような大掛かりな衣装は見ものです。また、精神世界で桜がやけに目立った感じがしたのは、日本人である彼女が参加した影響のように思いました。

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ダンサー・イン・ザ・ダーク

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セルマ（ビョーク）は遺伝性の、視力が衰える病気を持っている。この病気がいづれ彼女の息子にも発症すると知っているセルマはチェコからアメリカに、治療を受けさせるために移民してきた。セルマは工場のパートやマッチの内職などで懸命に息子の手術のためのお金を貯めるが、彼女の視力は確実に悪化していった…。

映画は冒頭数分間は黒のままで音楽が流れます。｢２００１年宇宙の旅｣や「スター・トレック」でも使っていた方法ですが、この「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の場合、タイトルが「暗闇のダンサー」だし、目の見えないセルマの見た目を意味してる表現のように思います。しかしそんな単純でない、もっと深い意味が隠されているかもしれません。

この作品の舞台は大きく２つに分けられます。それに従って、カメラもまったく違った撮り方をしています。
１つはセルマの実生活のシーンで、ここではカメラは手持ちで、まるでドキュメンタリー映像のように執拗なほどに常にセルマに近づきます。
もう１つは彼女が夢想するミュージカルのシーンです。ここでは逆に、カメラはフィックスやクレーンで優雅に動きますが、時々カメラがダンサー達をセンターで捉えず、踊っている画面内での空間がやけに目立つカットが目に付いて、奇妙に感じました。
この作品のカメラは、特にミュージカルのシーンではフィルムではなく、ＤＶで撮ってるように見えましたが、その通りで、おかげで多彩なアングルが見られます。

この作品のラース・フォン・トリアー監督はデンマークの人ですが、舞台はアメリカだし、「グリーンマイル」に出ていたデビッド・モースが出てるし、カトリーヌ・ドヌーヴが英語をしゃべっているし、とヨーロッパというよりハリウッドに近い感じになってるのは以外でした。
とはいえ、こういう暗い物語にミュージカルを結びつける発想は、この監督独特な感じがします。

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は２００１年の正月シーズンの映画の中では一番ヒットした作品だそうですが、話は暗いし、「泣ける」と言われていたラストは泣けなかったし、この作品のどこに観客が惹きつけられたのか僕にはよく分かりませんでした。

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処刑の直前にセルマが歌うシーンは感動的だし、ここで現実と夢想（ミュージカル）が１つになる展開はクライマックスにふさわしいと思います。しかし、まるでその感傷を断ち切るかのごとく、首吊りが唐突に執行されます。
これが普通の映画だったら、首を吊るシーンは身体の一部とか、あるいは｢ターザン｣みたいに影を映すなど、イメージのようにぼかしてまともに見せないと思いますが、この「ダンサー・イン・ザ・ダーク」では正面から首吊りを一気に見せます。この、かなりシビアな一連の見せ方には何か裏に秘められた意図がありそうに感じました。

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処刑人

敬虔なクリスチャンであるマクナマス兄弟（ショーン・パトリック・フラナリー、ノーマン・リーダス）は、マフィアの下っ端を偶然始末してしまったことから、悪人に｢制裁｣を加えだす。ＦＢＩ捜査官（ウィリアム・デフォー）は、悪人を倒す彼らに親近感を感じつつも彼らの正体に迫っていく。そして報復のためにマフィアが雇った凄腕の殺し屋も兄弟に近づきつつあった…。

映画では、悪い奴はたいがい報いを受けます。しかし現実には、悪い奴ほど力や金があるし、そういう奴ほど司法制度のすり抜け方もうまくて､彼らはノウノウとのさばってるように見えます。
だから､｢悪いやつは殺してしまえ」と思っている人は多いかもしれません。しかし現実には、どんな悪人とはいえ、殺せば犯罪になるし、そんなことは不可能です。
そんな現実のもどかしさがこの映画を作らせたのかもしれません。

この作品の主人公の兄弟は神の名の元に殺しを遂行していきますが、この点が今っぽいように思いました。現在、狂信的な犯罪が増えているし、狂信的な人たちも増えているように思えます（仏像を破壊してしまったどこかの国の人たちとか）。だから、善の方も狂信的にならないと対抗できないのかもしれません。

特に、ウィリアム・デフォーのキャラはそんな感じがします。
兄弟の殺しのシーンは、彼らが登場するシーンで描かれるのではなく、殺しが終わった後に、デフォーが推理して再現していく、というユニークな形で描写されますが、そのデフォー君の説明の仕方が段々過激になっていくのは笑えました。しまいには彼はコスプレ（何かはお楽しみ）まで見せて、イッちゃってる感じで、主人公の兄弟よりも、彼の方が一番印象に残ります。

悪事を働いた奴を殺す、という内容で思い浮かべるのは｢必殺｣シリーズです。しかし、仕事人自身が身を隠し、時に悲惨な終末を迎える｢必殺｣に比べると、この映画はずっと明るい感じです。

先に公開された｢アンブレイカブル｣も、続編ができるとすれば悪いやつを始末する話になるのでしょう。しかし今は善と悪が区別しにくい世の中ですから、本当にこんな奴らが現れたら、こう単純な話にはならないと思います。

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パダヤッパ

「ムトゥ　踊るマハラジャ」のスタッフが再結集した映画だそうですが、やはり「ムトゥ」は別格だったと認識させられた作品でした。
キャラと話は「ムトゥ」以来のパターンになってしまっています。”スーパースター”ラジーニ君が演じる主人公パダヤッパは、いつものラジーニ君のキャラの通り、強く正しく弱者の味方です。彼が偶然によりどんどん出世していく、話の展開も想像通りでした。

今回、パダヤッパの敵になるキャラクターは、彼に横恋慕する女性・ニーランバリです。彼女はパダヤッパを思うあまり、彼の好きな女性を亡き者にしようと企みますが、それが金銭とかではなく、純粋に彼を愛しているからという理由であるのが、いじらしい感じがするし、彼女がパダヤッパと踊る夢想シーンもあって、悪役であるのに憎めない存在になっています。そのせいか、映画には痛快さはあまり感じられませんでした。

ラジーニ君の前作（？）「アルナーチャラム／踊るスーパースター」では、ちょっとだけＣＧを使っていましたが、「パダヤッパ」では更にＣＧカットが増えてます。とはいえ、質感や動きはＣＧとバレバレですし、モーフィングの使い方はまるで素人のビデオを見てるようで、韓国や日本など他のアジア映画に比べるとまだ泥臭い感じがします。

この作品のアクションでも、お約束のラジーニ君の格闘シーンがありますが、今回はカーアクションも見せてくれます。クラッシュシーンは笑ってしまうほど大げさですが（過剰なほどのサービスと受け取るべきなのでしょう）。

東京ではこの作品は、以前｢踊るマハラジャ２｣を上映した｢銀座シネパトス」のみで公開されました。規模からいうと小さい劇場なのですが、ラジーニ君の最新作がこういう公開をされるということは、彼の人気が下火になってきたということでしょうか。

この作品のパンフは大判なものの、薄いくせに１０００円。ボッタクリだ。

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東京攻略

メイシー（ケーリー・チャン）は結婚式をすっぽかした婚約者、高橋（仲村トオル）を追って東京に来る。高橋が未払いにしたままの、新居の内装金を取りたてるという理由でユン（イーキン・チェン）も彼女に強引に付いてきた。２人は高橋の家に着いたものの、中はもぬけの殻となっていた。そこへ突然ヤクザのグループが襲いかかるが、私立探偵だというリン（トニー・レオン）に救われる。

香港映画ですが、話の大部分はタイトル通り、東京が舞台の作品です。
ストーリーは、日本の警察に中国人がいるとか、ＣＩＡに日本人がいるなど、香港映画にはよくある荒唐無稽なパターンで、話よりもアクションで見る映画です。
アクションシーンは、カンフーのような肉体を駆使したものから、ボートや車を使った大掛かりなものまで、いろんなパターンを見せてくれて飽きさせません。特に凄い点は、これらのアクションを本当に東京でやってしまってるとこで、都庁や国際フォーラムでキックボードのチェイスをしたり、隅田川でボートチェイスをするなど、よくこれだけのアクションを、規制が厳しいであろう日本でやったものだと感心します。許可無しのゲリラ撮りもしているみたいですが、それもまた香港らしいところです（映画として見れりゃあいいのよ）。
シーンによっては、有楽町にいたと思ったら次のカットでは新宿にいたりするような、東京を知ってる人が見れば変に見えるシーンもありますが、知らない人は違和感を持たないでしょう。
格闘シーンも、アクションの間に一瞬止めカットを入れたりしてかっこよく見せていて、見せ方は手馴れた感じです。

イーキン・チェンは「欲望の街」や「風雲」での寡黙なキャラとは違い、今回は珍しくおしゃべりな役です。明るいイーキン君は初めて見た感じで、新鮮でした。
トニー・レオンは「フラワーズ・オブ・シャンハイ」や「花様年華」のような芸術的な作品から、この「東京攻略」や｢ゴージャス｣といった軽めの作品まで、相変わらずのフットワークの軽さを見せています。今回は格闘アクションも披露する、明るいキャラです。
ケーリー・チャンは、香港映画のヒロインとしては珍しく戦わない役で、アクションシーンではただキャーキャー悲鳴を上げているのはジャマな感じがしました。しかし彼女がこれまで出た映画では、｢世界の果て｣といい「ヴァーチャル・シャドー」といい、アクションは見せていないので、これでもいいようにも思います。

舞台が舞台だけに、仲村トオル以外にも日本の役者が結構顔を見せています。彼に敵対するヤクザの組長を阿部寛（｢孔雀王：アシュラ伝説｣主演で香港映画経験済み）が演じていて、しょっちゅう鼻をかむ怪演を見せています。ヤクザネタのＶシネで顔を出している大和武士もカンフーを見せます。小沢真珠と遠藤久美子は最近見なくなったと思ったらこんなところにいました（エンクミ、セリフ回し下手だ！）。森山裕子がチョイ役だったのは残念です。アクション見せてほしかったぞ。

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ユリョン

韓米軍事演習中、狂った艦長を射殺した副艦長イ・チャンソクは軍法会議で死刑を言い渡される。処刑の後、目覚めたイは「４３１」と呼ばれ、韓国が極秘に保持する原子力潜水艦「ユリョン（幽霊）」の乗組員とされる。彼以外の乗組員も全て存在を消され、番号で呼ばれていた。出航した「ユリョン」は日本近海を目指すが、艦長、副艦長おのおのが違った目的を胸に秘めていた…。

韓国製の潜水艦ムービーです。「レッド・オクトーバーを追え」といい、「クリムゾン・タイド」といい、潜水艦ネタの映画は密室劇のせいか、キャラのぶつかり合いで盛り上がりますが、「ユリョン」も同様で、映画に出てくる新旧２つの思想のぶつかり合いは「クリムゾン・タイド」や「沈黙の艦隊」を思わせて退屈しませんでした。
副艦長が日本を憎んでいることで、この作品では日本がミサイルの標的になるし、ユリョンが戦う相手は日本の潜水艦です（自衛隊があそこまで好戦的になるかどうかは疑問ですが）。副艦長の主張という形で、韓国の日本に対するイデオロギーがかなり出てきます。映画の話だし、極端な例かもしれませんが、日本で公開された韓国映画で、日本をここまで憎む考え方を出した作品は初めてのように思います（本当はもっといっぱいあるんだろうなあ）。
この副艦長は顔が渡瀬恒彦に似ていますが、話の内容がコミック「沈黙の艦隊」の海江田を極端に右寄りの考え方にしたような話であるせいか、渡瀬恒彦が主演した、自衛隊右派がクーデターを実行する映画「皇帝のいない八月」に似た感じも受けました。

特撮シーンは結構あって、手は抜いていない感じです。ただ潜水艦同士が、「距離何百メートル」と言ってる割には近く見えることが多かったし、魚雷やアンテナにＣＧぽい質感が出てしまっています。

映画の終わり方は、ハリウッド映画にはあまり見られないであろう重さを感じました。

これが本当に起こったらどうなるのかと、映画の後日談を想像するのも楽しみ方の一つでしょう。ユリョンの行動や管理の責任問題で日韓で相当揉めるでしょうし、最悪国交断絶になるか…。

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リトル・ダンサー

炭鉱に勤める父と兄を持つビリー（ジェイミー・ベル）はボクシング教室に通っている。ある時ボクシングをやっているフロアで、同じビルにあるバレエ教室の女生徒達がレッスンを始める。それからビリーはバレエに魅せられてしまい、父に隠れてバレエ教室に通うようになるが、父に見つかってしまう。父も兄も、女がやるものと思っているバレエを続けることをビリーに許しはしなかった…。

このところ注目株の、イギリス製サクセスストーリーです。「フル・モンティ」のように、みんなが完全にハッピーになるわけではない、ある種の暗さを持たせているのがイギリス的な感じです。

主人公の少年はオーディションで選ばれたそうですが、表情がとても生き生きしています。もちろんダンスも素晴らしく決まっていて、映画でのダンスシーン自体は多いとは言えませんが、中盤での、彼が雪の日に踊るシーンは一緒に踊り出したくなるほどダイナミックで、ここが一番のクライマックスでしょう。また主人公だけでなく、彼の家族や周りのキャラの描写も丁寧で、彼らの想いが良く伝わってくるせいか、見ていて主人公を応援したくなります。

シーンによっては場所がいきなり飛ぶことがあり、何のために移動するのか説明が無いので、話の流れが理解しにくい部分がある点が気になりました。

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ペイ・フォワード
［可能の王国］

まだ見ていない人

小学校での初めての社会科の授業で、トレバー（ハーレイ・ジョエル・オスメント）達は担当教師のユージーン（ケビン・スペイシー）から、「世界を変える方法」という課題を与えられる。トレバーはあるシンプルな方法を考えつくが、それを実践に写すことは簡単なことではなかった。しかし、彼の知らないところでそれは意外な広がりを見せ始めていた…。

「世界を変える」アイデアは宣伝や予告では明かしていないので何なのか楽しみでしたが、拍子抜けするほど単純な方法です。とはいえ、理屈は分かるものの、実行するのは難しい方法で、「世の中そんなに甘くない」と思ってしまいました（世間の垢に汚れてるなあ…）。
クライマックスの展開には釈然としないものを感じましたが、ラストは泣けました。

トレバーの母アーリーンを演じているヘレン・ハントは、最近「ハート・オブ・ウーマン」や「キャスト・アウェイ」など出演作が目立ちますが、「ペイ・フォワード」では一部のカットでしわが多く、えらく年取って見える場面がありした。これが素なのか、意図的にそういうメイクにしているのかは分かりませんが、彼女がこれほど年を取っているとは思っていなかったので驚きでした。

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ラスト近くでのトレバーが死ぬ展開は、話が変に暗い感じになって釈然としませんでした。ただ、制作者達が彼をキリストみたいな存在になぞらえようという意図があるなら、これでもいいように思います。

ヘレン・ハントのしわはメイクかどうか分かりませんが、ケビン・スペイシーのヤケドは、本人がヤケドしたとかの話はありませんから、明らかに特殊メイクでしょう。出来はかなりリアルです。

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バーティカル・リミット

まだ見ていない人

自らの飛行機会社の宣伝のため、ボーン（ビル・パクストン）は悪天候にも関わらずＫ２への登頂を強行し、遭難してしまう。共にクレパスに落ちたアニー（ロビン・タニー）の兄、ピーター（クリス・オドネル）はアニーらを救うべく救助隊を組織し、命を落とすかもしれない救助に向かう…。

山を舞台にした映画で有名な作品は「クリフハンガー」でしょう。しかし、銃撃戦などの要素を入れて、山が舞台でなくてもいい話に走った「クリフハンガー」に比べると、「バーティカル・リミット」の方が、犯罪の絡まないレスキューミッション話の分、正統な山の話という感じがします。
この作品では、他人の命と自分の命のどちらを救うか選択しなければならないシーンがあったりして、内容はかなりシビアでスリルがあります。銃なんか出さなくても、山の怖さがよく出ています。

アニー役のロビン・タニーは「エンド・オブ・デイズ」でシュワルツェネガーに助けられる女性を演じていましたが、シュワちゃんの影に隠れて（敵役のガブリエル・バーンもアクが強かったし）存在が薄く感じました。でも今回の「バーティカル・リミット」では大スターが出ていない分（？）断然目立っています。
メインとなる女性キャラではアニーの他に、救出チームに参加するモニク（イザベラ・スコルプコ）がいますが、彼女ら２人とも、遭難前のシーンでは髪型と顔がよく似ているので、見分けがつきませんでした。
その他気になった出演者は、「Ｘ－ファイル」でクライチェックを演じていたニコラス・リーでした。「Ｘ－ファイル」をステップに出世かな?

この作品には「クリフハンガー」同様に、人がロープで吊るされるシーンが度々出てきます。こういったシーンは映画ではたいてい合成で処理されますが、この作品の冒頭のシーンでは人間と背景の色調の差がかなり出てしまって、見るからに合成と分かってしまう絵だったのはチープな感じを受けました。

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メインの話となる、救出に行く行程はかなり厳しいものでしたが、映画は助けたところでほぼ終わりになります。しかし帰りの道筋も行きと同じくらい厳しいものになるはずで、果たして動けないケガ人を連れて無事帰れるものか、ちょっと気になりました。

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グリンチ

ジム・キャリーが特殊メイクに身を包み、架空の街フーのはずれの山に住む、クリスマスを嫌う奴・グリンチを演じます｡
この映画の監督、ロン・ハワードは「コクーン」や「バックマン家の人々」など、ヒューマンドラマを何本か撮っていて、「グリンチ」もそういった系統に含まれるでしょう｡しかしこの作品は、僕にはあまりしっくりこない作品でした。というのも、主人公グリンチが都合のいいお調子者のように見えてしまい、彼に感情移入できなかったからです。グリンチが本当にいい奴に見えればこの映画を好きになれたと思いますが、僕にはそう受け止められませんでした。

この作品の原作はアメリカでは有名な童話だそうで、世界観はまったく架空の世界にされています。セットデザインや設定はいかにもファンタジーで、ほのぼのとした感じが出ています。

この作品は日米同時に、クリスマスシーズンに公開されましたが、アメリカではクリスマスシーズンになるとたまに「３人のゴースト」みたいに、クリスマスの意味を考える映画が出てきて、「グリンチ」はそれに当たると言えます。なので、クリスマス頃に家族で見るにはいい映画かもしれませんが、僕はあまり好きにはなれません。

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チャーリーズ・エンジェル

往年（２０年くらい前になるのか）のＴＶシリーズ「チャーリーズ・エンジェルズ」を、ドリュー・バリモア、キャメロン・ディアス、ルーシー・リューの新エンジェルコンビで復活させた映画です｡
僕はＴＶ版は見たことがないのですが、ＴＶはセクシー＆アクションの路線のようで、映画はちゃんとこのフォーマットを守っています。
この点での見どころは、３人の様々なコスプレでしょう。ウェイターやインド風の衣装やらビキニやら、果てはフリフリのミニスカドレスなど、本人たちは恥ずかしくないのか？と思うようなコスプレを見せてくれます。中でも一番インパクトがあったのは、彼女らの男装で、これが以外に合っている感じでした｡
お約束（？）のセクシー路線もちゃんとあり、エンジェルたちは下着姿や、胸元を露出した衣装などを披露してくれます｡ドリュー・バリモアがこのテのセクシーなシーンを演じるのは分かる感じがします（失礼!）が、お堅いイメージのルーシー・リューもちゃんとこれに合わせています。
また、キャメロン・ディアスは結構キャリアがあるから、きわどい姿はあまり見せないのではないかと思っていましたが、彼女も下着で踊ったり、胸元ギリギリの姿を見せたりして、かなりサービスしてくれてます。

ストーリーは安直な感じで調子よく進み、一種「バカ映画」と言ってもいいでしょう。しかし、このバカさ加減はあえてやっているようで、製作者たちの軽く楽しもうというノリが感じられ、テンポが快調で飽きさせません。日本では１１月に公開され、正月シーズンに続映されるほどのヒットになりましたが、それも無理ないと思います。

話は軽めであっても、エンジェルたちが見せるカンフーアクションは本格的で、３人のコンビネーションがぴったりでスピード感があります。劇中、彼女らが銃を使わないという点もアクションに工夫が見られて面白い点です。

話に難癖をつけるのはヤボかもしれませんが、敵の動機がとってつけたような感じで気になりました。

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アンブレイカブル

別の解釈

まだ見ていない人

乗客１３１人が死亡した列車脱線事故でデヴィッド（ブルース・ウィリス）はただ１人無傷で生き残る。自分が生き残った意味を考え出した事で、デヴィッドは今まで気づかなかった、彼自身の存在理由を悟っていく・・・。

「シックス・センス」で世界的に名を高めたＭ・ナイト・シャマラン監督の最新作ということで、予告編もミステリアスで大いに期待した作品です。

……しかしこの期待は、見事に外れでした。

話は読めてしまって意外性がありません。ラストには一応「秘密」らしいものはありますが、衝撃度は「シックス・センス」の１００分の１くらいで、大したことはありません。何よりも、これから面白くできるはずの場面で終わってしまうのは、大いに不満を感じました。
監督の言うことには、この作品をシリーズ化したい意向があるようで、この映画が「アンブレイカブル」シリーズの第１作にあたるのなら、こういう話の展開も納得はできます。とはいえ、わざわざお金を払ってまで見る話ではないと思います。

前半での、何か起こりそうな雰囲気は「シックス・センス」に似た感じで、それなりに興味を引かれます。後半はやはりと言うべきか、「Ｘ－メン」に近いものを感じました。

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事故を起こした犯人がラストで分かりますが、その理由があまりにとっぴすぎる感じがしました。ラストに観客を驚かせるものを持ってこようとして、とってつけたような印象を持ちました。

主人公が不死身なのは、アニメ「装甲騎兵ボトムズ」を思い出しました。でも、なぜ不死身になったのか理由が語られていないのは不満でした。万一シリーズになったら語るつもりなのかもしれませんが（「ボトムズ」もかなり後になってからＰＳの理由を出していたけど）。

この作品がもしシリーズ化されれば、現代に生きる勧善懲悪のヒーローの話になるのでしょう。ただし、今の世の中は善悪を分けにくい世界ですから、その混沌とした価値観の中で活躍せざるを得ないヒーローの話にするのならば、悩めるヒーロー像を描くことで共感を得られるかもしれません。

別の解釈

＊必ず、「シックス・センス」と「アンブレイカブル」を見てからお読みください。

以上の感想は、「アンブレイカブル」を見た直後に抱いたものです。

しかし、この映画に違った解釈をして、「アンブレイカブル」を｢傑作｣と評した友人がいます。
その意見は全く考えもしなかった、新鮮なものでした。

まず「アンブレイカブル」について書く前に、Ｍ・ナイト・シャマラン監督の前作「シックス・センス」の解釈に触れておきます。

この映画は単なる、子供に幽霊が見えるホラーではありません。

「幽霊が見える」のは、コール君（ハーレイ・ジョエル・オスメント）だけが持つ特殊な能力です。しかしこれを、｢特殊な能力｣ではなく、｢才能｣と捉えるとどうでしょうか。
「幽霊が見える」ことは、子供が持ってる才能です。そして、彼の母親がその才能を認めることで、彼女が母親に持っていたわだかまりも解けることになります。
つまり、「シックス・センス」は「子供の才能を伸ばしてあげよう」という話なのです。
そのことで周りの人も幸せになれると、この映画は言ってるのです。

さて「アンブレイカブル」。

この映画の主人公デヴィッドは、初めのうちは自分が｢決して傷つかない｣という「特殊な能力」を持っていることに気づきません。家庭も崩壊寸前です。しかし彼がその力を自覚した結果、彼は自信を取り戻し、息子の尊敬も得るようになります。
これも「シックス・センス」と同じく、｢特殊な能力｣を｢才能｣と捉えると、「アンブレイカブル」は、「自分の才能に気づく話」と見ることができます。自分の元々持っていた才能に気づいたことで、主人公は幸せになるのです。

一方、悪役であるイライジャ。
「アンブレイカブル」のラストでの、イライジャが全ての事故の元凶であった点は、単なるどんでん返しのように思えます。
しかしこのシーンは、以下のような解釈が成り立ちます。

イライジャはデヴィッドを見つけるために数多くの人名を犠牲にしてきました。たった一人の特殊能力者を見つけるために、です。
ここで、イライジャをＭ・ナイト・シャマラン監督自身と見てみるとどうでしょうか。
彼が優秀なスタッフや役者、つまり才能がある人間に出会うまでには、たくさんの出会いがあったことでしょう。その中にはシャマラン監督のおかげで人生を棒に振ったり、彼の期待に応えられなくて去っていった｢才能の無い｣人が大勢いたでしょう。

いわばイライジャは、才能のあるスタッフを探すために多くの人を犠牲にしてきた監督の姿と言えます。ブルースに当たるのが、「シックス・センス」のハーレイ君かもしれないし、あるいはブルース君－－今までアクションのイメージが強かった彼から「静」のイメージを引き出して、新しい魅力を出したこと－－かもしれません。

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ザ・カップ
夢のアンテナ

日本では珍しい（もしかしたら初めて?）ブータンの映画で、ワールドカップを見ようと奮闘する少年僧たちの話です。
これまで見たことのない国の映画だけに、修行のやり方や食生活や住まいなど、修行僧たちの風俗は興味深いものがあります。修行用の衣の下にシャツを着ていたり、居眠りをする僧がいたりといった描写が出てくるせいか、彼らが想像していた以上に普通の人という感じがして、映画に親近感が持てます。
とはいえ前半は、そういった風俗紹介ぽいシーンが多いせいか、眠くなりました。
しかし中盤、ワールドカップが話の中心に来るあたりから物語が回り始め、面白くなります。

ストーリーの中心で活躍する少年僧達の個性はそこそこ出ており、キャラの描き分けは出来ているので、誰が誰だか分からなくなることはありません。
中でも主演ともいうべき、ワールドカップに憧れる少年僧ウゲン役の少年は、表情がとても自然で素人とは思えませんでした。一見調子がよさそうに見えながら、実は責任感のあるキャラというのも好感が持てます。
出てくるキャラがみんないい奴で、安心して、さわやかに見れる映画です。

この映画の製作は「ラストエンペラー」を制作したジェレミー・トーマスで、彼が「リトル・ブッダ」を作っている時に、「ザ・カップ」の監督ケンツェ・ノルブがアドバイザーとして一緒に仕事をしていたのが、この映画を作る縁だったそうです。
クレジットを見てみると、メインのスタッフは大部分がハリウッドのスタッフだったようで、撮影にしろ編集にしろ、垢抜けたものを感じました。

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初恋のきた道

「グリーン・デスティニー」での女剣士役で鮮烈な印象を残した、チェン・ツィイーのデビュー作となった映画です。
この映画では彼女は、ひなびた村に赴任してきた男性教師に一途に恋をする村娘ディを演じていますが、その輝くような表情には引き付けられました。恋する少女のドキドキ感と喜怒哀楽が全身から伝わってきて、彼女の存在がこの映画に爽快な印象を与えるのに大きく貢献しています。その意味では、これはチェン・ツィイーのための映画と言ってもいいでしょう。

話の構成は現在から過去を回想する形ですが、現在のシーンが白黒で、過去のシーンをカラーで表現する、普通の映画とは逆のやり方をしています。しかし、この方法がかえってディの恋する喜びが画面から溢れてくるようで、効果的に思いました。
「恋の喜び」が聞かれなくなった（？）現在よりも、過去の方がこんなに一途な恋ができて、生き生きしていたのではないか、と製作者たちが言いたいようにも思います。

監督は「紅いコーリャン」や「菊豆」のチャン・イーモウで、僕はこれらの作品を見たはずなのですが、あまり記憶に残っていないし、感動したという覚えもありません。文芸的なイメージのあるこれらの作品に比べると、「初恋のきた道」はもっと普遍的な話で、より多くの人達に受け入れられそうに思います。

終わり頃には客席からすすり泣きの声が聞こえたし、特にラストは過去と現在が見事にシンクロして、感動的に盛り上げてくれてます。悪役も登場しないし、さわやかな感動が味わえる作品です。
東京では２００１年の正月映画として、１２月から予定を延長して上映しているようですが、ロングランも当然と思える作品です。

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流星

ウェイ（レスリー・チェン）はやり手のビジネスマンだが、株で損失を出し、無一文になってしまう。その夜、住処としているクルーザーに帰ったウェイを待っていたのは一人の捨て子だった。一度は子供を捨てようとするものの、捨てきれなくなったウェイはその子を育てることにする･･･。

レスリー・チェンというと、これまでは「男たちの挽歌」や「星月童話」のように、クールなイメージの役が多い俳優ですが、この映画での子煩悩な父親役もまた、以外なほどハマっています。子役がレスリーになついていて、２人が実の親子のようにいい関係なのが感じられます。
レスリー父子を見守る警官の役で、ティ・ロンが出ています。レスリーとティ・ロンは｢男たちの挽歌（１、２）｣では兄弟役で、久々のコンビ復活の感じです。ティ・ロンは｢男たち～｣のキャラとは全く違う、気の弱い中年男をうまく演じています。
レスリー・チェンとティ・ロンの２人とも、これまでに見たことの無いキャラを演じているのがこの映画の一番の見どころでしょう。

役者の演技面では見るところがあるのに対して、話は物足りません。先が読めてしまうし、ラストはあっけないものでした。

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決戦・紫禁城

剣聖イプ・クーシン（アンディ・ラウ）は紫禁城に降り立ち、剣神サイモン・チョンシン（イーキン・チェン）との紫禁城にての決闘を皇帝に申し入れ、承諾される。だが、それにまつわるような連続殺人事件が発生し、サイモン・チョンシンの親友で宮廷の隠密である龍龍九（ニック・チョン）と、イプ・クーシンの従姉妹で密かに彼を慕うフェイ・ホン（ビッキー・チャオ）が調査を開始する…。

監督は「風雲／ストーム・ライダーズ」のアンドリュー・ラウで、「風雲」と同じノリのＣＧを駆使した武侠（中国剣劇）ものです。主演は「欲望の街」「風雲」に引き続きイーキン・チェン、そして「上海グランド」のアンディ・ラウです。
イーキンは今回もクールでかっこよくて優しいキャラですが、いつも同じパターンのキャラを演じていて、面白みが感じられませんでした。
それに対してアンディは、心に野望を秘めているキャラで、クライマックスはそれが話のカギになってラストが感動的に盛り上がります。その意味では、アンディの方がおいしいところをさらってしまった感じです。キャリアとしてはイーキンよりアンディの方が上だと思うので、しょうがないかもしれませんが。
この２人以外にも龍龍九が主役クラスとして活躍し、特に前半は彼が中心になって話が展開します。彼はコメディリリーフ的なキャラで、フェイ・ホンとの掛け合いで笑わせるようなシーンが多いのですが、そのギャグが空回りしてる感じで、前半は退屈に思いました。
龍龍九の存在のせいか、映画の前半はコメディタッチ、後半がシリアスという、話が一見ちぐはぐな雰囲気になりますが、これはこれで香港映画らしいといえます。

デジタルのイフェクトは「風雲」ほど多くはありませんが、「風雲」と同様、戦闘シーンのスピード感アップや神秘性の出し方に効果を上げています。

女優陣ではアンディ・ラウ、イーキン・チェンそれぞれに恋をする女性が登場し、２人ともきれいな女優さんです。しかしパンフやＨＰには、アンディに惚れる役のビッキー・チャオは台湾で超人気の女優ということで大きく紹介されているのに、イーキンに惚れる役の女優は、それらにはクレジットもされていないのは残念です。

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エクソシスト
ディレクターズ・カット版

「エクソシスト」は１９７４年に初公開され大ヒットしましたが、当時はこの映画が怖そうに思い敬遠していました。以来この映画を全編通して見たことは無く、今回初めてまともに見ました。
なので、初公開バージョンと今回のバージョンの違いは直接分かりませんが、パンフには書いてある相違点やいくつかの批評を読んだ限りでは、ホラー的なシーンよりも人間ドラマのシーンを多く加えているようで、今回のバージョンの方がよりリアルなドラマになっているような感じがします。
この作品は当初、１０月公開の予定だったのが、フリードキン監督が画のクオリティにクレームを出したために公開が延びましたが、これはかえっていい宣伝になったように思います。
どの程度画質を修正したのかは分かりませんが、確かにフィルム自体は古い映画とは思えないくらいきれいだし、音も良くなっており、古さを感じる部分はキャラクターたちが着ているファッションぐらいで、新作と互角に渡り合えます。宣伝コピーの「恐怖の原点にして頂点」というのは確かにその通りで、正月シーズンも続映というヒットもうなづけます。

この映画ではリーガンの首が１８０度回転するなど、ホラー的なシーンが強調されますが、本編ではそういったシーンは長く見せません。しかしそれらのシーンを見せるポイントをちゃんと押さえているために印象は鮮烈で、今見ても古さを感じません。技術的にも、これらのシーンは今でも見劣りせず、ＣＧなんか影も形のない時代に「スパイダー・ウォーク」なんてどうやって撮影したのか不思議です。ウィリアム・フリードキン監督も特撮担当のディック・スミスも、いい仕事してます｡

主人公の少女リーガンがおかしくなってから、母親が数々の病院で治療にあたらせます。この治療のシーンはかなり長く、退屈な感じもしましたが、このエピソードを長く描写したおかげで、話がリアリティーを重視しているのが分かります。手術のシーンでは、喉から吹き出る血が痛そうで気持ち悪くなりました。
リーガン役のリンダ・ブレアーはこの映画以降はあまり売れず、結局一発屋でした。今はどうしているのかなあ？　

メリン神父を演じたマックス・フォン・シドーは、この作品が作られた時は既に名優という地位を確立していたと思います。当時はホラー映画も今ほどメジャーではなかったはずで、このテの映画にこういう地位の、しかも外国の俳優が登場するのは珍しいことではなかったかと想像しますが、この人の存在感がこの映画にホラーという枠を越えた重厚さを与えていて、登場シーンは短くても強烈な印象を残します。

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１３デイズ

１９６２年、核戦争寸前になったという｢キューバ危機｣の始まりから終息までの、ケネディ大統領兄弟や軍部や外交官たちの動きを、大統領補佐官ケネス・オドネル（ケビン・コスナー）の目を通して描きます。

｢キューバ危機｣は何度も映画に取り上げられているほどの有名な出来事ですが、その過程はあまり知られていないと思います。大統領や軍部の間でどのような軋轢があり、どういう経緯で決断に至ったかを分かりやすく、たたみかけるようなテンポで描きます。結果がすでにわかっている出来事をこうもスリリングに見せてしまう手腕には感心しました。

アメリカやソ連、そして政治家や軍人が関わる話だけに、この作品には指揮や決断、駆け引きや戦略について考えさせられるシーンが随所に出てきます。グループリーダーなど、指揮や判断を任されている人なら自分に置き換えて、興味深く見れる映画でしょう。

一つ気になった点は、軍部があまりにおバカに描かれていたことでした。国防省が協力を拒否したという話も当然だと思います。

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ダイナソー

恐竜が地球を跋扈していた時代、突然の隕石落下による環境の激変で、彼らは食料を失い、住処の移動を余儀なくされます。

ディズニーがＣＧテクノロジーを総動員して、たくさんのリアルな恐竜を見せることをウリにしている作品です。しかし、「ジュラシック・パーク」でＣＧでのリアルな恐竜を見せられて以降は、いくら恐竜をいっぱい出されても「ジュラシック・パーク」の２番煎じに思えて、もはや映像面での驚きは感じられません。
話の点でも、恐竜が主人公となって新天地を目指すストーリーは、アニメの「リトルフットの大冒険」ですでにやっているので、新味は感じませんでした。恐竜が猿に育てられる点も、最近のディズニーの｢ターザン｣を思わせます。
話自体は、恐竜たちの１グループが隕石落下後の世界を生き延びようとする物語で、全地球的な規模ではないのでスケール感はありませんが、その分こじんまりとよくまとまっていて、最後まで退屈せずに見れます。助け合い、協調して生きることをテーマにしている点がディズニーらしい感じです。

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ファイナル・デスティネーション

飛行機事故で死ぬはずだった少年が、事故を予知したために「死の予定」を回避してしまい、共に助かった数人と共に「死」に付け狙われる話です。

映画の序盤にはドクロを思わせる人形や、「TERMINATE」（処刑する）を思わせる単語など、「死」にまつわる不吉なイメージが随所に出てきます（日本であれば、黒猫が前を横切るなんてシーンが出てくるのかもしれません）。これらの描写は単なる大写しだけでなく、サブリミナル的に挿入される時もあり、何か起こりそうな不気味な雰囲気を効果的に盛り上げています。

助かってしまったキャラクターたちがどのような運命をたどっていくのかがメインのストーリーですが、死に方など、こちらが予想した展開を裏切る描写があったりして、話自体には先読みが出来ない面白さを感じました。
スタッフ、キャスト共に有名な人はあまり参加していないのでＢ級映画と言えそうですが、よく出来たＢ級作品だと思います。

映画のキャラクターはそれほど深みは感じられませんが、特別出演みたいな形でちらりと顔を見せるトニー・トッドは、「キャンディマン」を思わせて不気味でした。

最後のオチはやはりホラー物、という感じで、気持ちよくなるラストではありませんが、話は十分に楽しませてくれます。

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レッド・プラネット

絶滅寸前の地球を救うため、火星探査に赴いたチームがそこで見たものは…。

宣伝にあるように、「火星に空気がある」とか「ロボットが反抗する」など、映画にはいくつか「謎」がありますが、その「謎」には回答が出ていないものがあるし、回答があっても至極まっとうな理由で、面白みが感じられませんでした。
宇宙空間で事故に合う設定も、同じ火星ネタの「ミッション・トゥ・マーズ」と同じパターンです。たぶん２本とも同じ時期に企画が立ち上がったと思うので、偶然似てしまったのでしょうが、それにしても発想が貧困に思います。

宣伝では「マトリックス」でヒロインを演じたキャリー・アン・モスが出ていることをウリにしていますが、彼女は本編ではほとんど活躍せず、クライマックスでやっと行動するだけで、彼女目当てに見た人は不満に思うかもしれません。
主人公のヴァル・キルマーを初め、他のキャラクターも真面目なだけで面白さが感じられません。彼らに哲学的なセリフを言わせたりすることで、この映画が単純なエンターテイメントでないことを言いたいようですが、ただ退屈なだけでした。

同じ火星ネタの「ミッション・トゥ・マーズ」もそんなに上手い出来だとは思いませんでしたが、「レッド・プラネット」に比べれば、そこで描写されるイメージにはオリジナリティーが感じられたし、クライマックスの展開にはまだ、ぶっ飛んだ面白さが感じられました。

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シックスティナイン

リストラされたＯＬが、部屋の前に置かれていた大金の入った箱を拾ってしまったことで、その金に絡んだ人間たちに翻弄されていく１日を描きます。

日本でタイの映画が劇場公開されることは、これまであまりありませんでしたが、今年はこの後に「バンコク大走査線」の公開が控えており、１昨年はインド、昨年は韓国、そして今年はタイ映画がブレイクするかもしれません。

この「シックスティナイン」の話の構成はタランティーノの影響が濃いようで、中にはまんま「トゥルー・ロマンス」というシーンもあります。しかしそのシチューエーションや人間関係の設定はなかなか面白く、ブラックな笑いを提供してくれます。
とはいえこの映画、間の取り方が長くて退屈しました。僕がタイの映画で唯一見た作品と言えば、ＮＨＫで放映された「運命からの脱出」くらいでしたが、「運命からの脱出」は話のテンポが快調で気持ちよく見れましたが、「シックスティナイン」は眠気を感じました。

結末が皮肉ぽくなっていないのが、やはり仏教国の映画という感じがします。

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オーロラの彼方へ

過去を変えることで、より良い未来を作っていく話というのは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を思わせるパターンです。
しかし、この映画の上手い点は、単に過去を変えてめでたしめでたしにはならず、過去の変化が、新たに危険な未来を作り出してしまう点でしょう。小道具を使ったアイデアも上手く、最後まで気持ち良く観られる作品です。

タイムパラドックスネタの映画では、論理的な破綻がありがちですが、この映画は途中まではそういう部分は特に感じさせず、ラストまで一気に見せてくれます。
ただし、クライマックスに関しては、後々よく考えると疑問符がつくと思うのですが、テンポが快調なおかげで、見ている間はあまり気にはなりません。この点は、邦画で同じタイムパラドックスものの「タイム・リープ」が、クライマックスを力技で見せてしまったことを思わせました。

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ピッチブラック

定期便の宇宙船が事故にあい、常に太陽が昇る惑星に不時着するが、その日は日食のためにその惑星に２２年に一度の闇が覆う日だった。そして、闇にしか生きられない生物が地上に現れ、生き残った者たちに牙を向けつつあった…。

低予算で（あろう）、役者も無名の人が多い､Ｂ級といえる作品です。「ディープ・ブルー」のように、誰が生き残るか分からない話ですが、あまりハラハラドキドキはしませんでした。生物との対決よりも人間ドラマに重きを置いていて、キャラの設定はそれなりに面白さがあり、退屈はしません。

「エイリアン」のような、宇宙生物が襲ってくる話はゴマンとありますが、暗闇になると動き出すという設定だけでなく、そこに何１０年に一度の日食という話を持ってきた点に、この映画のオリジナリティーを感じます｡
クリーチャーのデザインは「ゴジラ」のパトリック・タトポロスですが、十字架を思わせる３Ｄ的な頭が面白いデザインです。

２つの太陽が重なって日食になっていくイメージは不気味さがあって面白いのですが、それ以外は砂漠のシーンばかりで、映像イメージのインパクトは今一つです。
しかし、明かりを点けたら生物が周りにうじゃうじゃいるシーンはどきりとします。小松左京の「保護鳥」という小説のラストを思わせました。

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スペース　カウボーイ

クリント・イーストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナーの４人のご老体が、かっての空軍での宇宙計画のテストパイロットに扮し、挫折した宇宙計画のリターンマッチのごとく、宇宙を目指す話です｡
イーストウッドは御年７0才（!!）だそうです。老人が宇宙に行く話というのは、ちょっと前なら荒唐無稽と受け取られかねなかったと思いますが、この作品の公開前にジョン・グレン氏が宇宙に行ったことが、いいタイミングでこの映画にリアリティーを与えてくれました。

この映画のウリでもあり、見どころでもあるのは主役４人でしょう。４人ともキャラクターにマッチしたキャスティングで、それぞれの個性が上手く出ています。健康診断で裸になった時の４人のリアクション―特にドナルド・サザーランドのそれには笑えました。
４人は年の功と根性で若い連中と対抗し、周囲からのプレッシャーを跳ね除けますが、そのやりかたが笑わせてくれます。そういった子供ぽさを持ちながら、プロ意識もちゃんと持っている彼らは見ていて気持ちがいいです。
ドナルド・サザーランドとジェームズ・ガーナーはこのところ脇役が多いせいか（主役を張るには難しい年齢でしょうけど）影が薄い感じがします。この映画での２人は、クリント・イーストウッドとトミー・リー・ジョーンズに比べると出番は少ないですが、他の映画に比べれば断然目立っている方で、まだまだ現役を張れそうです。

クリント・イーストウッドの映画は、｢許されざる者｣があまりいいと思えなかったので敬遠していたし、彼の映画で特撮が絡んだ作品といえば、「ファイアーフォックス」がありましたが、これはドラマもキャラもいま一つの作品でした。そういった理由から、この「スペース　カウボーイ」にはあまり期待していませんでしたが、題材も話も、この映画は納得のいく出来でした。イーストウッドに関しては、特に出発のシーンでの、奥さんと別れる時に見せるさりげなさがかっこいいです。

宇宙に行ってからのクライマックスシーンでは、予想もしなかった一大特撮シーン（ｂｙ　ＩＬＭ）が展開して、驚かされました。前半がユーモア＆人生ドラマ、後半はサスペンス＆スペクタクルといった構成です。

ラストは｢新世紀エヴァンゲリオン｣でおなじみになった、「Fly Me to the Moon」が流れる、感動的なシーンになっています。パンフにあったクリント・イーストウッドのインタビューでの、このシーンの見せ方についての意図は、まさにその通りでしょう。

この映画での不満らしい点といえば、あまり女っ気が無いことでしょうか。登場する女優もあまり美人とは思えないし。ま、ご老体４人が主役の話なので必要ということもないですけど。

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カル

「八月のクリスマス」以来の、ハン・ソッキュとシム・ウナの共演作です。今回ハン・ソッキュは猟奇殺人犯を追う刑事に扮し、シム・ウナは、犯人に狙われている可能性があるために彼に保護される女性を演じます。

この映画で鮮烈なシーンは、バラバラ死体が見つかるシーンでしょう。かなりグロいシーンですが､エレベーターの中や高速道路など、発見されるシチュエーションや場所にオリジナリティーが感じられます。
しかしこの映画で一番困るのは、犯人側の人間関係がまるで把握できないことでした。おかげで肝心の、犯人がよく分からないし、動機も分かりません。

この作品は謎解きではなく、猟奇犯罪的な描写を楽しむ（?）べき映画と言えそうです｡

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