アイアン・ジャイアント

 

 

1957年、メイン州ロックウェルの街に住む空想好きの少年ホガースはある晩、変電所の鉄を食べている巨大ロボットを発見する。恐る恐るこの「ジャイアント」に接するうち、ホガースと無垢な心を持つ「ジャイアント」は友達同士になる。ホガースはくず鉄屋のディーンに「ジャイアント」をかくまってもらうが、彼を他国からの侵略と信じて、探し回る政府のエージェント・ケントに見つかるのは時間の問題だった…。

99年の秋頃、YAHOOの掲示板に、「すすめ!アイアン・ジャイアント」というサイトの事が載っていて、このサイトを見て始めて「アイアン・ジャイアント」というアメリカ製アニメーションムービーの存在を知りました。
この頃はアメリカでの興行成績がよくなかったせいか、この作品の日本公開予定は無くて、おクラになってしまう可能性がありましたが、内容自体はとても面白そうで、ぜひ見たいと思っていました。

それから半年あまり、(「すすめ!アイアン・ジャイアント」サイトの作者の方、ご苦労様でした)やっと念願の作品を見ることができました。

期待は裏切られませんでした。

話はこじんまりとしていて、よくまとまっています。前半はロボットと主人公のふれあいをていねいに描き、あきさせません。そして後半、ジャイアントの存在が他の人々にバレ(宣伝スチルでこのシーンは出てるので、ここはバラしてもいいかなと…)た後からの展開は、それまでのペースがスローに思えるほどの怒涛のハイペースで進みます。
後半ではジャイアントも変形しまくって、その隠された機能に驚きながら、キャラクターたちの運命に手に汗握りつつ、感動のクライマックスに突入します。

「すすめ!アイアン・ジャイアント」にも載せられているように、数多くの批評が「この映画は泣ける」と絶賛していますが、それはウソではありません。最近見た「グリーンマイル」は全然泣けませんでしたが、このクライマックスでは涙が出てきたし、周りからすすり泣きの声が聞こえました。キャッチコピーに使われている「ぼく、鉄砲、ならない。スーパーマン、なる。」のセリフが見事に生きたシーンです。
その後、ラストがまたさわやかです。見た後、そう快な気分になれることうけあいです!

この作品は時代設定を1950年代にしています。街中のダイナーやTVから流れるホラー映画(元ネタの想像はつくぞ)など、その時代の雰囲気作りは上手いです。
冒頭部分は「ゴジラ」ぽいし、「火星人地球を侵略」や「宇宙戦争」に出てきたようなシーンも見られるし、50・60年代の映画のいいところを上手にブレンドしています。

ロボット自身も古めかしい、レトロタッチなデザインが効果的です。ロボットの顔が「ロケッテイア」に似ていると思っていたら、デザインが「ロケッテイア」の映画版を監督したジョー・ジョンストンであるというのは納得です。またロボットの兵器も、レコードを思わせるような動きをするものがあったり、レトロながら、独特のデザインセンスを感じさせます。
ロボットのデザインや、その用途には「ルパン3世」の「さらば愛しきルパンよ」に出てきたロボット・ラムダ、あるいは「天空の城ラピュタ」のロボット兵士(ラムダのゲスト出演ともいえるが)の類似を感じます。もともとは原作がある作品ですが、これらの作品から影響を受けてようにも思います。

監督はアメリカで人気を博したTVアニメ「シンプソンズ」を手がけたブラッド・バードですが、「シンプソンズ」が一見ドライに思えながら、実は家族の絆を強調するウェットな話であったのを思うと、この「アイアン・ジャイアント」の作風も納得が行きます。
この映画は、もし銃が「自分は銃じゃない」という意志を持ったら?ということがテーマのようですが、銃犯罪が頻発する今のアメリカへの批判があるように思います。また、武器として生まれた(?)ロボットが、「愛」を教わることで変わってゆく、という話には「教育」もテーマにあるように思います。その意味では、親子でぜひ見てほしい映画です。

この映画の、日本語吹き替え版の声のキャストはみんな合ってると思いましたが、パンフにもチラシにも、クレジットが無いのは残念です。ケント役の声の大塚氏は「新スター・トレック」でデータの声を演じていますが、この人は悪役も多くやっていて、予想した通りのキャストでした。

この映画のパンフは800円と高めですが、前半のストーリー紹介は子供向けの絵本形式で、後半のメイキングは豊富な記事とデザイン画でたっぷり読ませてくれて、見た人には「買い」でしょう。特にストーリー紹介のクライマックスパートは、思い入れたっぷりの記述と共に、一番感動的なカットの写真を載せていて、再度感動にひたれます。

「ターザン」も感動的だったし面白かったけど、話の流れからいえば、「アイアン・ジャイアント」の方が無理が無いかもしれません。それにしても99年のアメリカアニメ界はこの「アイアン・ジャイアント」を始め、「ターザン」に「ポケモン」や「もののけ姫」、「トイ・ストーリー2」など、いい作品がどんどん公開された年ですねえ。

 

 

 

 


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