火　火

信楽の陶芸家に嫁ぎ、自身も陶芸家で２人の子を持つ神山清子（田中裕子）は夫（石黒賢）に出て行かれ、一人で生活を支えなければならなくなるが、何事にも妥協することなく、ついに念願の自然釉の再現を成功させる。そんな母に姉（遠山景織子）は反発し、大学入学と同時に家を出て行くが、弟の賢一（窪塚俊介）は母と同じ陶芸家の道を恋人（池脇千鶴）と歩もうとする。だがその矢先、賢一が白血病で倒れ、骨髄が適合するドナーさえ見つかれば助かると主治医から言われた清子は、ドナーを見つけるため奔走する…。

今も信楽で作品を作り続ける実在の女性陶芸家・神山清子の半生を描くドラマです。
僕は美術は好きな方だと思ってますが、陶芸に関しては彫刻や建築ほどの興味はないせいか、神山清子の名前はこの作品で初めて知りました。
自然釉に関しても初耳でしたが、陶器を滑らかな表面にしたり、色をつけるために釉薬を塗る、という程度の知識しかなかった僕には、それが自然に出るという現象は驚きで、非常に興味をそそられました。映画に出てくる陶器の作品群は全て神山清子本人の作だそうで、その迫力もこの作品の見どころでしょう。
ただ、清子がなぜこの自然釉の再現を「使命」と思うようになったのか、描かれてないのは気になりました。

映画で描かれるこの清子の、どんな不幸にも動じないキャラクター像が凄まじく、病気の息子さえも容赦せずに叱咤する、というような強烈さで、最後まで引っ張られてしまう作品です。
田中裕子は芯の通ったキャラを演じるとピカイチだと思っていましたが、この作品でのメイク無しのような、すっぴんに見える顔で髪を振り乱す熱演は、かつて存在していたであろう「日本の母の強さ」を体現しています。

大ヒットした「世界の中心で、愛をさけぶ」など、白血病のお話は映画ではそう珍しくありませんが、骨髄バンク創設を描いた作品はたぶん初めてで、その経緯には興味深いものがありました。特に、ドナーの検査に金がかかりすぎて借金を背負ってしまう、という皮肉には、日本の医療制度が患者を幸せにするためのものではない、という現実が現れているように思えます。
難病モノのお話としては、ラストなんかは奇をてらわないスタンダードな描き方だと思いますが、泣けました。

賢一役の窪塚俊介は、TV「ほんとうにあった怖い話」なんかで少し顔を見せていましたが、今回のような重要な役は初めてではないでしょうか。
彼はあの窪塚洋介の弟で、兄が人気が出たから弟も、という安直なデビューじゃなかろうかという邪推をしたくなりますが、この作品での演技はそう問題と思えるところもなく、朴訥とした感じがキャラクターに合っています。彼は暴力的なキャラが多かった兄貴と違い、こういう「いいコ」的なキャラが合うかもしれません。兄貴みたいに、ヘンな世界に行きませんように…。

看護婦役で吉井怜が出ています。白血病から生還した彼女にとっては、きっと他人事でない話だったことでしょう。だから出演したのだろうと思いますが、登場シーンが少ないのが残念でした。池脇千鶴の代わりをやらせてあげてもよかっただろうに。

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インストール

女子高生の朝子（上戸彩）は、同じことの繰り返しである毎日に脱力し、部屋にあった持ち物を全てゴミ置き場に捨ててしまい、そこで出会った小学生・かずよし（神木隆之介）に、捨てたマックをあげてしまう。その後朝子は学校へ行くフリをして部屋に戻る不登校生活をしていたが、そんな彼女にかずよしは、OSをインストールし直した彼女の捨てたマックを使った、人妻風俗嬢「ミヤビ」になりきるエロチャットのバイトを持ちかける…。

「蹴りたい背中」で芥川賞を受賞した、綿矢りさ原作小説の映画化です。
「インストール」といえばパソコンの用語ですが、それを人生に例えた、自分探しの悪あがきドラマといった話でしょう。結末もその言葉に沿っている感じで、タイトルには納得です。
映画はコメディなのかシリアスなのかよく把握できませんが、それがこの作品の特徴かもしれません。
エロチャットの会話や、女子高生と小学生のラブシーンぽい見せ方は面白いし、「下妻物語」のように変わった映像描写があったりして、映画はそこそこ笑えて、楽しめる出来にはなっています。
しかし「下妻物語」がキャラの感情をそれなりに深く描写していたのに比べると、この作品は薄っぺらく、世界に広がりもなく、感動までは至らないライトな話になっています。
でもキャラクターの関係が深くならないのは、今っぽいようにも思います。あるいは原作者や監督が濃い人間関係を避けている結果、こういう話になったのかもとも想像します（人のことは言えないけどね）。

映画での「濡れた」なんてシーンは、スケベオヤジの考えそうな妄想ぽくて、ウケ狙いのように見えました。んなワケねーだろ！てスカした方がありそうに思うのですけど、自分は男なので、本当にそうなるのかは分からないところです。

映画に出てくるメインのパソコンはマックのクラシックで、他にアイマックも出てくるし、映画はいかにもアップルの協力を取り付けたぜ、て感じに見えました。
しかしもしこの映画のパソコンをウィンドウズにしてしまうと、もらった時の設定が10年前というとウィンドウズ95の前だから、そんなにメジャーじゃなかったろうし…と考えるとマックでいいのでしょう。
でもマックのクラシックて、OS9をインストールできたのかなあ…？

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銀のエンゼル

北海道のとある田舎町のローソンを仕切っていた北島佐和子（浅田美代子）が交通事故にあって入院してしまい、店は夫の昇一（小日向文世）に任されることになった。生活を妻に任せ、気ままに生きてきた彼は突然、店や客、さらに娘・由希（佐藤めぐみ）の進学問題という現実に向き合わなければならなくなる…。

監督の鈴木貴之という人は、北海道ローカルで人気だったという番組「水曜どうでしょう」を作った人だそうですが、僕のようにそれを見てない人間には、なじみであろうローソンに来る客の生態に、興味が引かれるところでしょう。
やたらでかい声で携帯で話す女や、普通は暖めようとしないであろうものを暖めるように言う男など、客や店員を巡る個々のエピソードはまあ面白く見れます。
しかし、どのエピソードも単なる行動の描写で、また核となるエピソードである主人公の家族の話もそう盛り上がるものでもなく、散漫な感じを受けました。
結末も予告で想像がついてしまい、別に感動もありませんでした。ただ、ラストは微笑ましく、気持ち良く見終われる作品ではあります。

もしかしたら初の主役かもしれない小日向文世は、気の弱いキャラは合っています。また彼と恋仲になるのかと思わせる山口もえが、バラエティで見せる天然ボケとは違う、そこはかとない色っぽさを見せたのはちょっと驚きでした。
しかし、タイトルである「銀のエンゼル」と関係するキャラが結局彼女だけというのは、映画のタイトルとしてこれは適切なのか？と疑問になります。

あと疑問といえば、コンビニの看板。停電になったら電気変えたって点かないんじゃないのかねえ…。

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ヴィタール

事故にあって昏睡状態だった博史（浅野忠信）は目覚めた時、全ての記憶を無くしていた。だが医学書にだけは興味を示し、事故前は嫌がっていたという大学の医学部に入学する。そして同じクラスの郁美（KIKI）が彼に惹かれるようになる。やがて解剖実習が始まり、博史と郁美の班には若い女性の遺体が割り当てられるが、博史はその体に見覚えがあった。それ以来、彼はその遺体・涼子（柄本奈美）の記憶なのか夢なのか分からない世界を行き来し始める…。

2004年末を飾る塚本晋也監督の作品も、いつものようにイメージ的な描写が多い、ヘンな映画で、いろいろ解釈できるお話になっています。
今回は、ラブストーリーと言うべき内容（映画評なんかではそう言い切っていますけど）でしょう。
映画は死体解剖を扱っていますが、その言葉からイメージされるようなグロさは全然ありません。実際の死体解剖もそうグロい光景でもないそうですが、この映画ではそういう死体を気持ち悪く撮ってないせいか、ラストは清清しささえ感じました。
死体の話をこういうラブストーリーに仕上げてしまう塚本監督のセンス、やはり只者ではありません。

僕はこの作品を100％理解できたわけではありませんが、涼子の「想い」は感じ取れました。こういう「再会」というか、愛の貫き方は、そこまでやるか？て言いたくなる狂気とも思える行動ですが、ちょっと感動的ではあります。「世界の中心で、愛をさけぶ」や「いま、会いにゆきます」などと同様の、女性の意志の強さを感じました。
それにしても上の２本は原作も監督も男性だし、「ヴィタール」も塚本監督のオリジナルの話です。男てこういう、女性の強烈な行動力に惹かれるのでしょうか…？

涼子を演じる柄本奈美はダンサーの人のようですが、長谷川京子をもっときゃしゃにしたような美人で、もし映画がこれ1本で終わるならもったいないです。でも、アクションに貞子入ってたような…。

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約三十の嘘

詐欺師、志方（椎名桔平）のチームが３年ぶりに仕事をすることになり、かつてのメンバーに招集がかかる。声をかけたのは久津内（田辺誠一）で、彼らは全国を回るべく寝台特急トワイライトエクスプレスに乗り込んでいく。宝田（中谷美紀）は今組んでいる横山（八嶋智人）を連れて参加する。彼らは３年前にメンバーに金を持ち逃げされて以来のぎこちなさが続いていたが、そのきっかけを作った今井（伴杏里）もメンバーに加わってくる。その肝心の仕事は、久津内の仕切りの悪さを、あまり歓迎されていなかった横山がカバーしたおかげで大成功し、彼らは７千万円の現金を手にした。その金を入れたスーツケースの管理を横山がすることになったが、朝になってそれが消えてしまう…。

詐欺師グループの仲間内での、お金を巡る攻防の話です。詐欺のシーンは一切見せず、映画のほぼ全編のシーンを彼らが移動＆宿にしている寝台特急「トワイライトエクスプレス」で見せているのは、見せ方としては変わっていて面白いです。この映画の原作は舞台だそうなので、だからそういう見せ方にしたのかもしれません。
キャラのセリフで、「真剣10代しゃべり場」かい？て思うような独白シーンがあるのも、元が舞台であればなるほどと思います。
こういうパターンは少し前に公開された、やはり舞台が原作であった「笑の大学」に似ていますが、それと同様に、舞台をまんまフィルムに写しただけのようにも見えて、面白味に欠ける感じも受けます。

お話は仲間内でキャラがくっついたり離れたりと、大学のサークル内のようなチマチマとしたつながりを見るようですが、人間関係の変化の面白さはそれなりに楽しめます。でも今一つ盛り上がりに欠ける展開ではありました。
役者にしても、主役である椎名桔平と中谷美紀はテレビドラマでも見たようなキャラクターで、新味がありません。むしろ脇に回っている、田辺誠一の方がコメディタッチのシーンが多くて弾けた感じで面白いし、八嶋智人もキャラはTVで見たような自己顕示欲の強いパターンながら、メンバー中での新参者という地位のせいか目立っていて、おいしい役でしょう。
でもキャラの中で最も気になったのは、「ゴンゾウ」の登場シーンの少なさでした。予告では結構目立っていたのに、本編では1分も出てきません。それも動かないし。

大切なのはお金じゃない、ていう部分は今っぽいかもしれません。もしこの作品がバブルの頃か、その直後に作られていたなら、お金を持ち逃げしてメデタシメデタシ！となってたんでしょうねえ。

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ゴーストシャウト

榊ヨウコ（滝沢沙織）は高三の夏に死の一歩手前の経験をして以来、幽霊が見えるようになり、今はゴーストネゴシエイターという幽霊を成仏させる仕事をしている。そんな彼女に恋人（永井大）が出来てようやく仕事から足を洗おうと決意した時、八王子の音大にゴーストが出たという呼び出しが入る。彼とデート中のヨウコは一旦仕事を断るが、「これが最後」という社長の言と報酬に釣られて引き受けてしまう…。

TVで細木数子から、タイトルを変えたらヒットする、という「お告げ」を受け、「ゴーストネゴシエーター」からタイトルを変更してしまった作品です。
しかし僕がこの映画を見たとき、劇場はガラガラで、タイトルを変えた効果があったとは思えません。
でも客が入ってないのは、細木数子のせいではないでしょう。話はシリアスなのかコメディなのか中途半端だし、事件が解決しそうでしない展開がスマートでなく、もどかしくなりました。

TVドラマで脇役をこなしてきた滝沢沙織にとって、この映画は初の主演作品ですが、こういう腕っぷしの強いキャラは合っています。ただ、時々セリフが棒読みぽくなるところは気になりました。演技としては脇で出ている、AV女優で人気のある高樹マリアの方が、上手いように思えました。彼女、AVから引退宣言したみたいだし、一般作に戻るつもりなんだろうか？
滝沢沙織の恋人役で永井大、その母親役が川島なお美、というコンビはTV「アットホーム・ダッド」と同じで、新味が無いのも気になりました。まあ、これは映画のせいではないんでしょうけど。
他にゲストで、玉木宏やはなわや高橋克典など中堅どころを揃え、それなりに豪華に見せていて、ただの低予算映画ではない感じにはなってます。

一番のミスキャストは幽霊役の南野陽子でしょう。怖くないし、なんでこいつの恨みを他人が受けるのかよく分からんぞ。

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ロード88
出会い路、四国へ

夜行バスで徳島に着いた植村明日香（村川絵梨）は、病気にもかかわらず、スケボーで四国88箇所のお遍路に出発する。同じ頃、落ちぶれたコメディアンの佐藤勇太（小倉久寛）も再起をかけ、ドキュメンタリーの企画で「ママチャリ遍路」に挑戦する。そして人に言えない仕事のために東京を追われ、故郷に戻った伴野一郎（長谷川初範）も明日香に刺激され、お遍路を始める。それぞれの旅が交錯して、彼らの運命が変わっていく…。

｢和｣に関心を持つ若い女性は増えていると思いますが、それでも若い女性がお遍路、という話は作ったような感じがして、あまり関心を持たなかった映画です。四国に行ってなければ、見ようとは思わなかったことでしょう。

時々入るナレーションで、「人生の意義」とか語られますが、そんなことは映像で語れよ、て言いたくなりました。またお寺だけならまだしも、その他でも場所の字幕が入り、まるで四国の観光映画です（ま、行った自分としてはそれもいいんですけど）。
それに、主人公のはずの明日香と比較して、勇太や伴野のエピソードのボリュームも結構あって、この映画は明日香の話じゃないのか？と突っ込みたくなりました。特に暴力のシーンは、映画のテイストから浮いて見えます。この点は、監督はジイさんだから、若いねーちゃんよりもオヤジの方が理解しやすくて、そういう配分になってしまったのではないかとも想像します。

とまあ、途中までは所々違和感を持ったのですが、だんだん気にならなくなってきます。後半では３人の話が収束していき、意外にも最後は大泣きの、大感動作品です。
ラストも爽やかで、いい映画を観た、と思える作品になっています。
サブタイトルに「出会い路」という言葉がありますが、確かに、人の出会いで人生は変わる、ということを実感させられる物語です。

話のキーポイントになる善通寺に行きましたが、お遍路さんの大方はオジサンオバサンで、明日香みたいな若い女性は見かけませんでした。なので、途中で彼女が語るお遍路の理由はオイオイ！と思いましたが、これは別の真意が隠されてると解釈すべきなのでしょう。

この作品は渋谷のシネアミューズで見ました。小さい劇場ながらも朝早い上映なのに、そこそこ観客が入っていて不思議でしたが、見た後は納得でした。リピーターがいるのでしょう。
この時、上映２分ほど経って突如映像と音声が切れる、というハプニングが起こりました。係のお兄ちゃんが入ってきて「すいません」と謝り、３分ほどして、もう１度頭からスタート。フィルムの交換間違いだろうか…？

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レディ・ジョーカー

日之出ビールの社長・城山が誘拐された。「レディ・ジョーカー」と名乗る犯人は城山に「警察には５億要求したと言っておけ」と言い含め、実際は20億円を要求して２日後に彼を解放する。その本当の人質は350万キロリットルに及ぶビールで、会社は警察には極秘に金を出そうとし、警察は誘拐犯と会社の行動を掴もうと躍起になる…。

高村薫のベストセラー小説の映画化です。予告編では、久々の骨太サスペンスという感じで期待を持たせてくれました。
しかし出来上がった映画は、誘拐グループの面々が犯罪に至る心情なんかよく分からないし、警察内部の組織のゴタゴタやビール会社と総会屋の関係など、話が広がり過ぎたせいか描写が浅く、食い足りなくなっています。
社会派サスペンスと欲張るのは分かるけど、こういった構成はTVでやるべきボリュームで、映画では時間が無さ過ぎて何を描きたいのか分からなくなりました。
「OUT」も今ひとつの出来だったし、どうも平山監督は原作ものは合わないように思います。ま、シナリオのせい、というのも大きいところでしょうが。

主人公を演じる渡哲也は、いつもの通り貫禄のある演技を見せていますが、誘拐の理由はそこまでやるか？と納得できませんでした。「鬼になる瞬間がある」とか言われてもねえ…。
事件を追う刑事役の徳重聡は、渡の所属する石原プロが売り出したいゆえのキャスティングかもしれませんが、真面目さは伝わってきます。しかし警察側の役者では、彼と対峙する不良刑事役の吉川晃司の方が、ひょうひょうとした面白い味を出して見ものです。

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あゝ！一軒家プロレス

人気プロレス団体を主宰する獅子王（橋本真也）の念願の新居祝賀パーティーに、彼に恨みを抱くレスラー・マーク（ニコラス・ペタス）が乱入し、乱闘は参加者全員を巻き込み、ついにはなぜか新居が大爆発を起こし吹っ飛ぶ。妻・麻美（粟田麗）の願いである新居の再建、そして直後に発生した彼女の人魚と化していく奇病の治療費を捻出するため、以前より増した興行のハードスケジュールと給料の遅れに、部下のレスラーたちは獅子王を見限る。そこへ彼のドキュメンタリーを取材している山路（佐野史郎）が獅子王に、死者を出すために興行が出来なくなったプロレス団体との一騎打ちを打診してくる…。

セルＡＶで有名なソフト・オン・デマンドが始めて一般用に制作した劇場用映画です。だーいぶ前にこの映画の記事を読んだ記憶があるのですが、公開劇場が決まらなかったそうで、製作終了から1年経っての公開だそうです。
宣伝ではかなりおバカな映画に思えましたが、意外に真面目な、お涙頂戴のお話で、あまり笑えませんでした。
ただクライマックスとなる後半の「一軒家プロレス」は、敵キャラがゾンビみたいな奴や超能力者みたいな奴など、こんなレスラーいるわきゃねーだろ！と言いたくなる個性が強くて楽しめました。

映画の初期の企画段階ではそれなりにまともなストーリーになっていたようですが、それをテリー伊藤が「こんなんじゃダメだ！」と引っ掻き回しておかしくなったようです。やはり彼はバラエティ向きの人で、話作りの才能は無いのでしょう。もしソフト・オン・デマンドが再び一般用の映画を作るなら、今度は彼を抜かして作るべきでしょう。
宣伝では、映画関係者に「ストーリーが無い」と言われたそうですが、この作品以上にストーリーが無い日本映画なんてゴマンとあります。そういう発言をしてる奴ほど「ストーリーが無い」映画を作りがちじゃないかなあ。

格闘シーンはそれなりにかっこよく撮れていて、本職のレスラーのせいか迫力があります。彼らの演技の方はまあ…それなりでしょうか。
獅子王の妹を演じるソニンは、肩幅は広いけど結構色っぽくて、かっこよく映っています。役者の見どころは彼女と、佐野史郎の久々の怪演でしょう。

この映画は全日公開にこだわって劇場の決定が遅れたそうですが、もっと早い時期ではレイトショー公開ならばOKという劇場もあったそうで、別にそれで上映してもよかったように思います。ソフト・オン・デマンドの意地かな？

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ハウルの動く城

引退を匂わせながら新作を発表し続ける宮崎駿監督。
今回の作品は、巻き添えで呪われてしまい19才から90才にされてしまったソフィーが、悪い噂のある魔法使いハウルの動く城に転がり込み、彼を理解して守るために活躍する話です。
映画の世界観は、メカが「天空の城ラピュタ」、魔法が日常の情景が「魔女の宅急便」、不気味なキャラが「千と千尋の神隠し」を合わせたような、宮崎世界の集大成といった感じです。キャラの関係も「千と千尋の神隠し」のように、極端な悪役のいないほのぼのとした感じが心地よく、途中まではこれまでの作品同様に、面白い出来でした。

しかし問題は後半です。何でこいつはこういう行動をするんだ？とか、このシーンは何のためだ？とか、あれはどうなったんだ？とか、突っ込みたくなる箇所がいくつかありました。見終わった後に「分かんなかった」と言ってた観客がいましたが、無理もないと思います。
途中までは順調に映画を作っていたのに、後半になってスケジュールが無くなって駆け足になり、置いてきぼりをくらわされた感じです。
もともとこの作品は2004年の夏に公開の予定が、年末に延期されました。それでもこういう部分があるなら、公開をあと1年くらい延ばしてでも、話をちゃんと整理すべきでしょう。
全体のクオリティから言えばアニメでは、同じ日に公開された「雲のむこう、約束の場所」の方が「ハウルの動く城」より人数も予算も少ないだろうけど、上のように思えました。

ハウルの声を演じるキムタクは、TVドラマなんかでのいつもの感じですが、意外に合ってます。
荒地の魔女の声を演じる三輪明洋は「もののけ姫」以来、宮崎アニメでは２度目の登板ですが、前半は不気味、後半は弱々しいタッチの「もののけ姫」でのモロとは全然違うキャラで、その変幻自在ぶりには驚かされました。しかし初日の舞台挨拶でキムタクを持ち上げまくってたのは…シュミなのかな。

ソフィーのイメージは宮崎氏の周りにいる高齢の女性スタッフだそうですが、この映画では実写でもあまり描かれることのない歩く時間の若い時との違いなど、高齢になった苦労が描かれているのが面白い点です。こういう、老人や介護の問題をさりげなく入れているところは、高齢化社会となっている現在にはぴったりの内容です。

これまでの宮崎氏の映画はどれも完成度が高く、新作を発表するごとに日本映画の興収記録を塗り替えてきましたが、今回はそうもいかないように思います。

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雲のむこう、約束の場所

青森に住む中学生のヒロキは冬休み、親友のタクヤと兵器工場でバイトを始めた。彼らは墜落した探査機を改造して飛行機を作り、国境線の向こうにある、かって北海道と呼ばれ、今はユニオン国に占領されエゾという名になっている土地にそびえる、「塔」に飛ぼうとしていた。タクヤはひょんなことからその夢を、ヒロキがあこがれていた同級生・サユリに話してしまい、飛行機を見たサユリは２人と共にいつか塔に行く約束をする。だがその約束はかなえられることはなく、３年の月日が過ぎて、別々の道を歩むヒロキとタクヤは、今は眠ったまま目覚めなくなってしまったサユリが、塔の秘密に深く関わっていることを知っていく…。

「ほしのこえ」で余情を味あわせてくれた、新海誠監督の初の長編アニメです。
今回も「ほしのこえ」同様に、道路標識や自動販売機といったディテールが緻密な日常カットの積み重ねが、リアリティーを出しています。話の展開が主人公とヒロインのモノローグで進む形も、同じようなパターンです。音楽の使い方やタイミングも前作同様、的を得た作りになっています。
こういったことで、この「雲のむこう、約束の場所」でも「ほしのこえ」と同じような余情性が出ていて、あの雰囲気を長編にしたような感じの作品です。悪く言えば作りとしては前作と変わらないのですが、それが「ほしのこえ」の前の「彼女と彼女の猫」より一貫しているこの監督のスタイルなのでしょう。期待した通り、最後の方は感動的に見せてくれる内容です。

主人公ヒロキの声を演じているのは吉岡秀隆ですが、初めて彼のモノローグを聞いた時は「北の国から」の純みたいで、彼の顔を想像してしまいました。演技としては悪くはないのですが、タクヤの声を演じる荻原聖人が「冬のソナタ」の吹き替えで慣れているせいか、顔を想像させない分上手いと思います。

この作品はパラレルワールドを扱っていて、ジャンルとしてはSFと言うべきなのでしょう。しかし、例えば塔を建てた意味が不明であるなど、SF的な設定に関しては突っ込みたくなる点がいくらかあります。これはもしかしたら、作品で一番重要な点はヒロキたち３人の心の動きなので、その展開を優先したために設定まで手が回らなかったのかもしれません。

この作品は意図したのではないでしょうけど、宮崎駿のアニメ映画「ハウルの動く城」と同じ日に封切られました。キャラクターが多くてスケールの大きい話の多い宮崎アニメに比べると、新海アニメはスケールは小さくないもののキャラクターが絞られていて、パーソナルな内面を扱っているのが違いといえるかもしれません。
それゆえに合う人には好みでしょうが、嫌いだという人も多そうで、宮崎アニメ以上に賛否両論が分かれる作品だと思います。

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海　猫

美輝（ミムラ）は彼氏から母親の過去をののしられ、婚約を解消されてしまい、事故死と聞かされた母親・薫の死の真相を祖母（三田佳子）に問い正す。何十年か前、薫（伊東美咲）は函館から峠を越えて漁師の赤木邦一（佐藤浩市）の元に嫁いできた。だが強引で家のことが第一で自分に構おうとしない夫よりも、その弟で函館で暮らす広次（仲村トオル）の、優しい性格に薫は惹かれていく…。

「失楽園」を作った森田芳光監督が、「セカチューを抜かす」と豪語して作った作品です。
しかし、田舎の普遍的な高校生活を舞台にしていたセカチューと比べると、漁村の三角関係の話では客の感情移入の度合いは低いと思います。また、映画のメインである薫たちの時代の話では、もっと状況を考えろ、て突っ込みたくなる箇所が多くて全然キャラに同情できませんでした。これはどうなったんだ？と思うような尻切れとんぼのエピソードもちらほらとあります。
しかし、後半での現代のシーンでは過去の伏線がそれなりに効いていて、感動的になっているシーンがあります。少なくとも、「失楽園」や「模倣犯」よりはまだましな出来でしょう。

映画の公開前には、週刊誌なんかで「伊東美咲が脱いだ」みたいにHシーンがクローズアップされましたが、確かにSEXシーンが多い作品です。しかし伊東美咲の場合、胸や尻はほとんど見せずに手なんかで隠しているのが、いかにも事務所に遠慮してるようで興ざめでした。
しかしキャラたちの行為では、いきなり入れてしまったりとかじっくりと責めたりとか、Hのやり方の違いが性格描写みたいに見えるのは面白いところです。

主役の伊東美咲は悪くはありませんが、そんなに上手いとも思えません。むしろ娘を演じたミムラの方が、伊東よりキャリアは浅いだろうに上手く見えました。でも一番凄いのは伊東の義母役の白石加代子でしょう。人の良さそうなおばさんのウラの顔が…コワっ。

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クレヨンしんちゃん
暗黒タマタマ大追跡

成田空港。ホステスの集団が降り立った金髪男ヘクソンを迎え、彼は小さな｢玉｣を渡そうとするが、その瞬間玉はオカマ3兄弟に奪われ、彼？らは車で春日部方面へ逃げていく。翌朝しんのすけは愛犬シロの散歩の途中、草むらで寝ているオカマの傍らで光る玉を拾って帰る。その夜、オカマ３兄弟は玉の行方を追って野原家に上がりこむが玉はひまわりが飲み込んでしまったため、やむなく一家全員を新宿２丁目のオカマバーに連れていく。彼らが玉の歴史をショーで説明した直後、ホステス軍団が店に乗り込んできて、玉を飲み込んだひまわりの争奪戦が開始される…。

この「クレヨンしんちゃん」の劇場版はしんちゃんの妹・ひまわりが初登場というおかげか、この後の劇場版ではお荷物的？な存在のひまわりが話のカギにされています。「オトナ帝国の逆襲」のような感動はありませんが、次々と起こるエピソードが飽きさせないで、軽く楽しめる出来になっています。最後の「悪の復活」なんていかにも「しんちゃん」らしいスカし方でした。

そしてこの映画、駅のベンチで寝るシーンなど、何気ない描写が妙にほのぼのと味のある雰囲気になっています。また「七人の侍」のパロディがあったり、いきなり万博音頭の踊りが出るなど、笑えるけど子供に分かるのか？疑問になってしまうシーンがあるのがこのシリーズらしいところです。
そもそも原作者の特別出演…て見どころか？

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COSMIC RESCUE

21世紀半ば、人類が月に基地を建設し、火星を目指しつつある時代。コスミック・レスキュー第819師団に所属する南條俊（森田剛）、江口亮（三宅健）、澤田東（岡田准一）の3人の仕事は、本来の人命救助よりもデブリと呼ばれる宇宙ゴミの回収が多かった。そんな仕事が続く中、東は救助を求める少女（堀北真希）の映像信号を受ける。３人はレーダーでそれらしき船の位置を確認して現場に向かうが、途中で目標は消え、しかもそこは進入禁止の宙域だった。彼らはそこに都合よくやってきた宇宙警察に月面基地へ連行される。東は救助信号の受信を主張するが、誰もその信号を受け取ってないと言われ、船の記録もいつの間にか消えていた。その上彼らは管理官（戸田菜穂）からチームの解散を命じられる…。

V6主演をウリに単館公開された作品で、制作にはジャニーズ事務所も絡んでるようです。そう聞くとただのアイドル映画に思えますが、これがなかなかの快作に仕上がっています。
お話はレスキューモノのセオリーをちゃんと踏んで、１時間半程度の時間で長すぎず短すぎず快調にまとまり、観客がこうなってほしいと思うであろう、定番のツボをきっちり押さえて気持ちよく見れる内容です。
V6：カミングセンチュリー演じる主人公たちの描写も過度にヒーローぽい扱いはしていないし、３人の性格がはっきり分かれていて混乱することはありません。特に、話を引っ張っていくことになる岡田准一はこういう「木更津キャッツアイ」みたいな直情型のキャラが合っています。ただ、森田剛はウジウジしすぎに思えました。

他のキャストは戸田菜穂や松本莉緒や菅野美穂などそれなりに豪華？です。遠藤憲一は初めはいいモノぽい役に見えますが、うさんくさいとすぐに分かってしまいます。
他に田中要次や諏訪太朗、津田寛治がさりげなく顔を見せていますが、この人たちが出ると作品のレベルが一段高くなるような気がします。特に津田寛治は頭の固い「月勤務」の小役人を好演していて、どんな映画でもキャラクターをモノにしてしまうのには感心します。

監督の佐藤信介は「LOVE SONG」や「修羅雪姫」を作った人です。メイキングでSFをやりたかったと言っていた通り、見てソンした「LOVE SONG」をやったのがウソのような快調な出来で、やはり本当に好きな作品をやるとノリが違う、と思わせました。
ただ、事件のきっかけになる堀北真希の描写が少ないし、逆にクライマックスの宇宙船の危機シーンは長すぎると思う箇所があるなど、物語のペース配分をもうちょっと考えたほうが良かったように思う部分は、多少あります。

実写による宇宙ネタのアドベンチャー作品は、ハリウッドならゴマンとありますが、日本だと「レムナント６」という短編はあったものの、アドベンチャーといえる内容ではなかったし、おそらく80年代頭の「さよならジュピター」まで遡らなければならないかと思います。その意味ではこの作品、実は珍しい日本製実写版スペース・アドベンチャームービーと言えます。

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いま、会いにゆきます

まだ見ていない人

秋穂巧（中村獅童）の妻・澪（竹内結子）が亡くなってから１年目の梅雨の季節、６歳の息子・佑司はてるてる坊主を逆さまに吊り、雨が降るように願っていた。澪は１年後の雨の日に戻ってくると予言していたのだ。巧は半信半疑だったが、その予言通り澪が現れる。だが彼女は記憶を失っていた。巧と佑司は彼女を澪として受け入れ、彼らは再び家族になっていく。だが、雨が上がる夏になったら澪が消える運命にあることを、巧と佑司は知っていた…。

恋愛小説の映画化ということで、「世界の中心で、愛をさけぶ」と比較したくなる作品です。しかし突っ込みどころが多く泣けなかった「セカチュー」とは逆にこの「いま、会いにゆきます」は、泣けました！
しかしこの映画の本領は、涙！のクライマックスの後でしょう。澪はなぜ戻ってくると予言したのか？そして映画の中で何気なく見えたシーンが伏線になり、「いま、会いにゆきます」の言葉につながっていく展開は、まとまり具合がとても爽快です。その気持ち良さのおかげで、原作を読みたくなってしまいました。小説原作の映画は珍しくありませんが、原作を読みたくなる作品というのはめったにありません。
巧と佑司、父子とも澪に対してコンプレックスを持っている設定がリアルに思えました。自分は相手にとってふさわしいのか？そういう疑問は大方の人が持っているのではないでしょうか。クライマックスではその疑念が浄化され、人を信じられる感じがします。愛する人が側にいることの素晴らしさを素直に謳い上げる作品です。

この映画がハリウッドあたりで作られたら、澪が怪しい奴とかいって親戚に捕らえられて引き離される、とかなりそうですが、そういうバカな展開にしないで、悪役キャラなんぞ出さずにストレートに、家族の話に徹しているのがこの話のいいところです。

この作品の主人公カップルは恋愛に対してはオクテです。まるで過去（今でも）の自分を見ているようで、「セカチュー」と違い、学生時代にあまり幸せな恋愛経験をしなかった人には、彼らの気持ちがよく分かるのではないかと思います。
「セカチュー」は恋愛映画というよりも難病映画という感じがしてしまい、この「いま、会いにゆきます」の方が恋愛映画というジャンルにふさわしい作品だと思います。できればカップル、特にお互いが「好き」と分かっているカップルが見るのには最高の映画でしょう。

すでに見た人

映画は、別れの後に来る澪の視点のシーンにかなりの分量を費やしていますが、原作はこの部分はさらりと終わらせていて、これが原作と映画の構造の一番の違いでしょう。でも映画の方は、何気なく見えたシーンにも意味を持たせていて、「そうだったのか！」という驚きが原作より大きいものがありました。
映画はキャラクターの設定でも、原作のノンブル先生に当たる人物を主治医に変えたり、澪と永瀬さんのシーンや佑治の小学校のシーンなど、原作に無いシーンが加えてあるのが面白いところでした。それでもキャラの行動にそう違和感がないせいか、「いま、会いにゆきます」の世界観にマッチしていて、製作者たちが原作を尊重したであろう思い入れが感じられます。

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隠し剣鬼の爪

幕末、東北の海坂藩。平侍の片桐宗蔵（永瀬正敏）は島田（吉岡秀隆）と共に江戸屋敷に向かう友人の狭間弥市郎（小澤征悦）を見送る。宗蔵は母（倍賞千恵子）妹・志乃（田畑智子）、そして奉公人のきえ（松たか子）とつつましく暮らしていたが、１年後にきえは油問屋に嫁いで行く。それから数年後、島田と結婚した志乃からきえが嫁ぎ先で病に伏せっていると聞いた宗蔵は伊勢屋に行き、人目もはばからずきえを連れて帰る。そしてきえが回復し宗蔵に幸福な日常が訪れた頃、藩の江戸屋敷で謀反が発覚し、弥市郎が国許に護送されてくる…。

アカデミー外国映画賞のノミネートにまでなった「たそがれ清兵衛」を作った山田洋次監督・藤沢周平原作による時代劇の２作目です。
「たそがれ－」はサラリーマンの生き方、という現代的な見方ができました。今回はそういった現代に通じる度合いはあまり感じませんでしたが、主人公宗蔵の「自分らしく」「愛に」という生き方はこの時代に出来るのか？とちょっと疑問も持ってしまい、やはり現代寄りな話であるような感じはします。
今回は「たそがれ清兵衛」より勧善懲悪気味なお話で、前作のようなユニーク度は下がって普通の時代劇に近くなった感じはしますが、痛快な感じはあります。「仕事人」を連想してしまいました。

最後はさわやかに終わりますが、「たそがれ清兵衛」のラストのナレーションを思うと、主人公たちの今後は明るいものではないように思えました。「たそがれ清兵衛」に出ていた知恵遅れ？の従者がこの作品にも再登場してますけど、こういう人たちの面倒を見きれるのかなあ？

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理　由

6月の雨の夜、東京都荒川区の高層マンションの植え込みで死体が発見される。飛び降りと見られたその男の部屋には、他に数人の死体があり、当初は男の家族と思われていたが、全員が男と何の関係もない人物であることが判明する。彼らはどういう理由でその部屋に住んでいたのか？飛び降りた男は本当に自殺なのか？関係者の証言から、謎が徐々に明らかになっていく…。

宮部みゆき原作の小説「理由」を、大林宣彦監督が映像化した作品です。
企画当初は衛星放送WOWWOWで放映されるスペシャルドラマとして制作されましたが、そのクオリティは劇場公開にも立派に耐えうる仕上がりです。
この作品の最大の特徴は、キャラクターがカメラに語りかける形で物語が進むという、ドラマではめったにないスタイルでしょう。物語は彼らの証言が、謎が謎を呼ぶ！という展開になっていき興味が尽きず、退屈しません。
宣伝によれば、映画に登場するキャラクターは107人いるそうですが、実際はそんなにいたか？と思います。しかし107人とは言わなくても、キャラが多いのは事実です。そのうえこの映画、多いだけでなく同じキャラクターが、初めに出てきた名前とは別人である、なんてエピソードまで出てきたりします。普通のドラマならこれだけキャラが多いと混乱しがちですが、この作品では全くそういうことがありませんでした。
そういう登場人物たちが一見無関係に見えながら、奇妙につながっている人間関係が面白いところです。エンドクレジットで、「さーつじーんじけーんがむすーんだきずーなー」ていう奇妙な歌が出てきますが、まさにその通りの話です。この、人々がつながっていく様はなんだか、ＴＶゲーム「街」を思い出しました。
大枠は殺伐な話ながら、どこかホッとさせられるシーンもあり、映画は原作とどれくらい違うのか分かりませんが、大林監督にふさわしい、やさしい物語になっています。

宮部みゆきの小説の映像化は、TVの連続ドラマを除くとこれが３本目だと思いますが、この「理由」が一番いい出来でしょう。特に「模倣犯」なんぞは、比べること自体「理由」に失礼です。

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笑　の　大　学

昭和15年。新任の検閲官・向坂睦男（役所広司）は演劇の台本を検閲し、戦意高揚に適さないと思われる箇所の変更や削除を指示し、それに作家が応じない場合は不許可にして上演をさせなかった。劇団「笑の大学」の専属脚本家である椿一（稲垣吾郎）が持ち込んだ台本も同じように扱い、削除を言い渡すが、椿はその要求を飲みながら何とか笑える台本に変えようと苦闘を開始する…。

三谷幸喜の舞台劇の映画化です。映画や演劇といった創作物は何でもかんでも自由にやるよりも、かえって制限がある方がいいアイデアが浮かんでくる、ということがありますが、それをいいものを作ろうという意図ではなく「検閲」という、つぶそうという意図でやるのに、逆の結果になっていく発想は面白いところです。
鉄面皮に見えた向坂が台本が面白くなるに従って、子供のように熱心になっていく過程が笑わせてくれます。

しかし映画で言いたいことは分かるものの、やはり太平洋戦争前夜という時代を考えると、ラストのセリフなんかは甘く思いました。
また映画の舞台はほとんど取調室で、外の風景は浅草の「笑の大学」劇場の周りくらいしか出てきません。ここで、前のシーンでは普通の劇場街だったのが、後のシーンでは戦意高揚の看板や軍人が目立ってくるなど、劇場周辺の風景が変わることで時代の変化を表そうとしてるようです。
しかし「笑の大学」周辺だけでは時代背景の説明が不十分でしょう。「さるまた」なんか若い観客に分かるかどうか疑問です。大方のシーンが警察署内部と「笑の大学」周りだけというのは世界観に広がりがなく、舞台をそのままスクリーンに置き換えただけのように見えました。

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「超」怖い話Ａ
闇　の　鴉

とあるコンビニ「三津屋」。そこで働く人々や客が次々に呪われていく話です。
冒頭いきなり、女子高生が車に轢かれるシーンでギョッとさせてくれますが、「ファイナル・デスティネーション」の事故シーンのパクりみたいな見せ方です。デジタル合成のおかげでこういう事故シーンをモロに見せられるのはそれなりに迫力はありますが、あまりにあからさまでえげつない感じも受けました。
合成シーンは多くありませんが、「ガメラ３」とかを担当したというデジタルフロンティアの参加を映画のウリにしているせいか、そこそこのクオリティになっています。
ホラー描写もそこそこ怖がれる見せ方にはなっています。ただ、中盤での幽霊が襲うシーンで「G線上のアリア」を使ってるシーンがありますが、まるで合ってなくて、製作者の意図を疑いたくなります。
また肝心のクライマックスは、主人公の佐藤寛子が幽霊に襲われるわけでもなく戦うわけでもなくただ逃げるだけで、あまり盛り上がらず、いつの間にか終わってしまった感じでした。

佐藤寛子はヤングマガジンなどのグラビアではよく出ていますが、演技をしているのを見たのは初めてです。まあ別に問題ない感じに写っています。
出演者で一番有名なのは寺島進でしょうが、ちょっとしか出てこないし、何のために出てきたかもよく分かりません。
またニュースキャスター役で原作者が出ていますが、当然棒読み演技で、僕みたいに原作に興味の無い人間には興ざめでしょう。

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チェーン

携帯電話で拡大する呪いの映画、といえば「着信アリ」がありましたが、その公開の数ヶ月前に同じネタを先行したのがこの「チェーン」です。
しかしその内容は、単に呪いが広がり、最後に主人公である小向美奈子が呪われて霊にとり殺されてしまう、というものです。
要は「着信アリ」のオープニングで殺されるシーンを、延々７１分に引き延ばしただけのような話で、出来が今一つだった「着信アリ」も、「チェーン」に比べればまだ良心的な作品でしょう。「怪談新耳袋」みたいに、５分あれば十分なお話です。
このHPではネタバレはしない方針ですが、さすがに内容がこれだけしかない作品（と言うのもふさわしくない気がしますが）なんぞ、たとえビデオでも見るだけ金と時間のムダという、警告の意味で書いておきます。

ただこの映画での唯一の見どころは、最後に出てくる幽霊でしょう。初めは空中に浮いている出方で、大方の心霊映画の幽霊が立っているのに比べると、ワイヤーか合成を使ってるようで、ちょっと金がかかっている感じがします。
その次に、幽霊は１度ドサッと床に落ちて動かなくなり、のびたか？と思ったところで顔を上げて、小向美奈子に襲いかかってきます。立ったままや、這ったまま近づいて来るパターンはよくありますが、こういう、浮遊、落下、這いという動きを組み合わせた幽霊は今までに無くて面白いところです。
一方幽霊に取りつかれた小向は何もせず、頭を抱えて悲鳴を上げてるだけです。金縛りとかされて動けないなら別だけど、そうじゃないなら殴るとか抵抗すりゃあいいのに。いかにも襲ってください、て見えるのがアホっぽいです。

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草　の　乱

1884年11月、秩父地方の農民数千人が生糸の暴落による借金と重税に苦しんだ末に武装蜂起し、数日で鎮圧されてしまった「秩父事件」。今年2004年はその秩父事件120周年ということで、その全貌を描く映画が作られました。
僕はそれなりに日本史は好きな方ですが、この「秩父事件」のことは全く知りませんでした。歴史の教科書や参考書でもその名前を見た覚えはないし、恐らく正史からほとんど無視されている現状なのでしょう。
映画は農民たちの結束から内部崩壊に至るまでを分かりやすく描いて、秘められていた事件の全貌を興味深く見せてくれます。
地元の歴史のドラマということで、映画の製作には秩父地方の人たちが積極的に協力したそうで、エキストラ8000人を使ったという集団のシーンはさすがに迫力があります。

映画は、歴史の上では罪人とされている人たちがいかに義の人々であったかを訴えていて、それは成功していると思いますが、強調しすぎな感じを受けました。農民たち誰もがみんな武装蜂起に積極的に加担していくのですが、それがかえって疑わしくなりました。面倒に巻き込まれるのはごめんだ、とかいって戦いに参加しない奴とかもいたのではないでしょうか。

また、映画で事件の流れは分かりますが、例えば生糸売買のシステムがどうなっているかなど、突っ込んだ背景は描かれません。それに当時使われた用語も意味が分かりにくいものありました。上映時間の関係でしょうがないとは思いますが、できればそういったことももう少し詳しく描いて欲しかったところです。ま、それなりに想像はつくから、いいといえばいいのですけど。

それにしても映画でのお役人や政治家の姿を見ていると、国民に対する政府の対応は当時に比べてどれくらい進歩したのか？と思います。高利貸しに対する規制は強まっただろうけど、自分たちが良ければ国民が痛もうとも、ヘとも思わない政府自身の無作為ぶりは、この時代からあんまり変わってないように思えました。

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茶　の　味

栃木県？の田舎町に暮らす春野家。長男のハジメは片思いの転校生（土屋アンナ）とどう仲良くしようか悩み、妹の幸子は時々出現する巨大な自分の分身が消えなくて悩んでいた。祖父アキラ（我修院達也）は遊び相手をさせる幸子のことを気にかけていて、母親の美子（手塚理美）は自宅でアニメーターの仕事をしており、父ノブオ（三浦友和）は催眠治療士。そこを叔父のアヤノ（浅野忠信）が時々、訪れていた。

ヘンなキャラがオンパレードのバイオレントな作品「鮫肌男と桃尻女」の石井克人監督が放つ、それとは全く違うピースなテイストの作品です。
今回は映画の所々に、桜や山などの風景描写が挿入されて、どこかゆったりした古き良き時代の日本映画を思わせました。家族の描写もほのぼのとしていて、ぱっと見は小津映画という感じもしてしまいます。
石井監督がそういう田舎の美しさや家族の幸せを描くのは意外でしたが、さらにラストではちゃんと感動！させてくれたのにも驚きました。なんだか、こういう穏やかな物語を通して、平和の大切さを訴えてるような感じもします。

しかし映画にはやはり、「鮫肌男－」を思わせるような笑えるキャラクターやシチューエーションがぽつぽつと出てくるのは、石井監督らしいところです。アニメがあるのもやはり、と思わせられました。
アニメに関するシーンで、監督役で庵野秀明が出ていたのには笑ってしまいましたが、結構ちゃんと演技していたのは驚きでした。

映画の中でヘンにリアルだったのが中島朋子と浅野忠信の、振られた男と振った女の会話シーンでした。そのいごごちの悪さには、ビデオで見てたら早送りするようなところです。

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火 火

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銀のエンゼル

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ヴィタール

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約三十の嘘

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ゴーストシャウト

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ロード88 出会い路、四国へ

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レディ・ジョーカー

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あゝ！ 一軒家プロレス

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ハウルの動く城

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雲のむこう、約束の場所

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海 猫

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クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡

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COSMIC RESCUE

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隠し剣 鬼の爪

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理 由

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笑 の 大 学

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「超」怖い話Ａ 闇 の 鴉

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チェーン

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草 の 乱

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茶 の 味

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火　火

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出会い路、四国へ

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