最終兵器彼女

小樽の高校に通うシュウジ（窪塚俊介）とちせ（前田亜季）が付き合い始めて数日、シュウジは友人のアツシ（木村了）とアケミ（貫地谷しほり）と札幌へ出かけるが、突然無数の爆撃機が街を攻撃し始める。だがそこに何かが飛来し、それは次々と爆撃機を撃墜していくが、その破片がシュウジに迫る。絶体絶命のシュウジを救ったモノは、全身が武器に覆われたちせだった…。

東映アニメーションが製作に関わっているようで、「デビルマン」がそうでした。今回も原作は「いいひと」の高橋しんのコミックなので、その製作の２作目になるのかもしれません。
フツーの高校生と、望んでもいないのに「最終兵器」にされてしまった彼女とのラブストーリーということで、切ない話になるはずなのですが、キャラの感情があんまり伝わってこなくて、肝心のちせとシュウジが２人でいるシーンで退屈になる箇所がいくつかあり、戦闘シーンの方が面白く思ってしまいました。
脇役にしても、自衛隊員テツの使い方なんてもっと上手いやり方があったと思います。主人公カップル以上に脇役が生かされていなくて、描写に深みが無く、なんでこんなことになる？と言いたくなるような突っ込みどころも多くなっています。
それでもラストはそれなりに盛り上げてくれて、感動的でした。

映画では唐突に戦争が始まりますが、この、日常が戦場に変わる描写はギョッとさせられました。テロが心配される今、妙にリアルな感じがしてコワくなるシーンです。もし本当に来るとすれば北の某国…？（そんな戦力無いか）

ヒロインを演じる前田亜季は、これの前の出演作「リンダリンダリンダ」の写真でぶくぶくに太っていたので、どうかと思いました。今回やはり太め（「バトル・ロワイアル」の後でいきなり太ったか？）ではありますが、話が進むうちになかなかに可愛く見えてきました。ただキスシーンでは窪塚俊介と比べると、顔でかく見えてしまいました。
彼女の外見はともかく、演技的には問題には思いませんでしたが、窪塚俊介は大いに問題でしょう。シュウジの気持ちが伝わらないのは、下手な演出に輪をかける彼の演技のおかげかもしれません。まあキャリアから言えば、前田亜季の方が彼より長いので、しょうがない部分もあるでしょうけど…。

今回のCGはそれと分かってしまうシーンは所々ありますが、「デビルマン」に比べると出しゃばらなくて、使い方を心得てきているようです。でも合成のエッジがバレバレのシーンが多いのは気になりました。

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天　使

とある町に舞い降りた天使（深田恭子）。彼女は、好きな女性に告白できないコンビニ店員（内田朝陽）、仕事と子育ての両立に悩むシングルファーザー（永瀬正敏）、友達に仲間外れにされた女子高生（小出早織）といった人々に、自由気ままに寄り添っていく…。

主に３人の異なった人物の話が同時に進行していくということで、この作品も「有頂天ホテル」の規模まで行かなくても、一種の群像ドラマと言えるかもしれません。
映画での天使は狂言回し的なキャラではありますが、そう言い切っていいのか迷うほど絡んでこないし、かといって出しゃばるまではしません。命の危険が無い限りは、彼らのために何かをするというわけでもなく、ほんの「手助け」で、基本的にキャラに行動を起こさせているのが他力本願ではない、いいところです。
キャラ達の悩みがちゃんと描かれていて、彼らの背中を少しだけ押す天使の姿が感動的で、
暖かい気分になれます。僕はファンタジーの感動ものは弱い傾向があるようなのですが、今度も涙のツボを突かれまくりました。有名人があまり出ていない、かわいい小品といった映画です。

深田恭子は「下妻物語」でのロリータファッション女がそうだし、今回の天使のような浮世離れしたキャラが合います。一人の人間に肩入れせずに渡り歩（？）く、ネコみたいな感じもフカキョンの雰囲気に合っているし、ジンライムが好きというのが独自のキャラクターが出ていて好感が持てます。そうでありながら全くしゃべらないのが、人間とは違う雰囲気がして、それらしい感じが出ていると思います。
天使はもちろん羽が付いていますが、その羽のひらひらよりも、今回は帯のような腰布？がひらひら舞っている動きが、いかにも浮いているように見えて効果的でした。

だーいぶ前に「天使とデート」という超駄作のアメリカ映画ありましたが、こいつはこの「天使」と違い、天使の性格付けですでに間違っていたかもしれません。天使がビルの給水搭に座るのは「ベルリン、天使の詩」からのイメージのように見えます。

それにしてもこういう天使、来てほしいよなぁ…。

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博士の愛した数式

海辺のとある高校に新任の数学教師（吉岡秀隆）が赴任してきて、初めての授業で彼は自分がなぜ数学を学ぶようになったかを生徒たちに語る。それは交通事故の後遺症で、80分しか記憶がもたない元大学教授の博士（寺尾聰）と、その家政婦である母・杏子（深津絵里）、そして幼い彼・ルートが過ごした日々の物語だった…。

ベストセラーとなった小説を「雨あがる」の小泉堯史氏が監督した映画です。
美しい風景、美しい（優しい）キャラクターのおかげで、淡々としたテンポが心地よく、心が暖かくなり、爽やかに感動できます。
ただ、教室の生徒たちまでもがみんな吉岡秀隆の話を大人しく聞いて、ちゃんと反応しているのには、ちょっと優等生過ぎる…ようにも思ってしまいました。
このところ家族に関するドラマや映画が多いですが、この映画も同様のテーマを感じました。障害があっても、お金があまり無くても、少しばかりの思いやりがあれば幸せになれるのかもしれません。ひたすら子供の気持ちに寄り添おうとする博士の姿勢に、子供の教育についても考えさせられます。

博士が語る数式を、吉岡が生徒向けに解説しますが、理系である事柄に「愛」などといった文系？の説明は、その方面の知識が全く無い僕には目からウロコで、数学に上手く興味を持たせてくれます。なんだか、TVの「世界一受けたい授業」を見てる感じがしました。
こういう、吉岡や博士の数学に関しての説明は、その知識が無くても大方分かるように語られます。ただ「代数」とか、分かっているものとして進む箇所も所々あるので、多少は数学の知識があった方がより理解しやすいでしょう。

博士の記憶は80分しか持たないことになっています。でもその記憶は、80分経ったら全てリセットされるのか？それともいくらかの要素が80分を過ぎると徐々に失われるていくのか？映画には博士が記憶を失う瞬間が描かれていないので、気になってしまいました。野球の試合を見てる時とか、どうなるんだろう？

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THE 有頂天ホテル

大晦日を迎えた「ホテルアバンティ」では、ホテルの威信がかかった年越しカウントダウンパーティーの準備に、従業員たちが駆けずり回っていた。そんな中で副支配人の新堂平吉（役所広司）は、アシスタントの矢部（戸田恵子）と共に、能天気な総支配人、人生崖っぷちの国会議員、神出鬼没のコールガール、文字に自信のない筆耕係、「相方」を失った腹話術氏、といった様々な人々のトラブルに対処していたが、彼がまだ想いを寄せている前妻（原田美枝子）が宿泊していると知った時、彼自身の人生最大のトラブルに、自ら飛び込んでしまう…。

三谷幸喜が「みんなのいえ」以来４年ぶりに作った映画です。今回はその「みんなのいえ」の主人公カップルも、冒頭にチラリと顔を見せています。
彼らは顔見せのみですが、映画は新堂を中心に、多彩なキャラクターのエピソードがよどみなく絡んで退屈しません。こういう、いわば「群像劇」は海外だと「ラブ・アクチュアリー」なんかがありますが、日本映画では故伊丹十三監督の「タンポポ」くらいしか例がなかったように思います。三谷氏は舞台でいくつか群像劇を手がけているので、今回は彼の得意分野といえるかもしれません。
どのキャラクターのエピソードも同列に扱われているおかげで、中心である話がどれか分からないので、話がどこに行き着き、どのへんがクライマックスになるのかが分かりにくいのですが、それはそれでこの群像劇の特徴でしょう。
どのキャラもいい人で、役者はみんな合っているし、悪役ぽいキャラも憎めないところがあり、好感が持てました。女優たちも、麻生久美子や篠原涼子だけでなく、戸田恵子や原田美枝子といった年配組も、みんな可愛いキャラになっています。パーティーシーンのように、見終わって気分が良くなれる映画です。

香取慎吾扮するベルボーイの持つ人形など、小道具の使い方は面白いやり方が見られます。しかし、「くねくねダンス」なんかはもっと効果的に使えるように思えたし、終盤での佐藤浩一演じる議員の行動にはあまり共感できません。この辺はある程度使い方や行動を予想しました（携帯電話が２つ出てきたら…ねえ）が、映画ではその通りにはなりませんでした。もしかしたら三谷氏はそういった予想を裏切りたかったゆえに、映画でのような描写にしたのではないかと想像します。でも（もしそうなら）たとえパターンでも、予想通りにしてくれた方がもっと気持ちよく見れたと思います。
そして今回一番気になったのは、新堂の前妻に対する「見栄」が強引に見えた点でした。新堂のセリフでいろいろフォローはしていますが、それでも彼がそんなことをするキャラには見えず、非常に違和感を覚えました。この人は狂言回し的なキャラですが、それに徹してもよかったように思います。

三谷氏はこの「THE 有頂天ホテル」の製作と同じ時期に、TV「古畑任三郎」最終回スペシャルや「新撰組」の特番なんかのシナリオの仕事を抱えていたと思います。いかに今回の映画が彼の得意分野であっても、そんなに仕事をしていたら、この映画に割く時間は十分に取れなかったのではないでしょうか。構成はそれなりに上手くいっているので、製作にもっと時間をかけていれば、もっと完成度（納得度）は高くなったと思います。
今回は三谷氏の劇場用監督作３作目ということで、だいぶこなれた感じはしましたが、初監督作の「ラヂオの時間」の方がまだ、盛り上がったように思いました。

それにしてもYouて、歌上手い…って思ったけど、元は歌手だったのね…。

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輪　廻

35年前に起こったあるホテルでの無差別殺人事件を題材にした映画「記憶」。新人女優の渚（優香）はそのオーディションに行った後から、見知らぬ少女の幻影を目撃するようになる。一方、女子大生の弥生（香里奈）は子供の頃から行ったことの無いはずのホテルの夢を見続けていて、友人（小栗旬）から紹介された霊感の強い女性（松本まりか）から、彼女と同様にホテルでの無差別殺人の犠牲者の生まれ変わりだと言われるが、その直後に彼女は失踪する。そして渚は映画の撮影が進むにつれ、過去であるはずの事件の現場に迷い込むようになる…。

「呪怨」で名を上げた清水崇監督が、ハリウッド版「THE JUON」からあまり時間が経っていないはずなのに、早くも放つホラー作品です。
適度な恐怖描写と、過去の事件の真相や渚とのつながりといった謎解きで、1時間半があっという間に過ぎて、退屈しないで楽しめます。
しかし今回は「呪怨」と違い、話の論理性がけっこう気になりました。キャラが過去に行くのはいいとしても、現実世界では肉体はどうなってんだ？とか、35年前の惨劇がなぜ今になって再現されるのか？惨劇の前の前世は関係しないのか？とかいろいろ、疑問になる箇所が多い話でした。最後のオチも、勘のいい人は分かってしまうと思います。
あまり突っ込まないで、その場その場での怖いシーンやシチュエーションを楽しんだ方がいい作品です。

ホラー描写は大方は「呪怨」とあまり変わらないパターンでしたが、これはプロデューサーあたりから「客はこういうのを期待してる」みたいな要請もあったのかと思います。ただ今回は霊が単体ではなく、集団で迫る見せ方がこれまでのパターンと違う形で、それなりにゾワーッとしましたが、TV「ほんとうにあった怖い話」にも似たようなシーンがありました。
他にも「ゾンビ」や「チャイルド・プレイ」を連想するシーンがあるし、ラストは「リング２」（日本版）を連想するしと、どこかで見たような描写がチラホラあって、新味はあまり感じませんでした。
また「呪怨」なんかでは音を使ったホラー描写に上手さがありましたが、今回はいきなりの大音響で驚かせるとか、音の演出にも新味が見られません。ハリウッドホラーでよくあるパターンなので、アメリカ版の仕事の悪しき影響かとも思います。
まあ「THE JUON」からあまり時間が経っていないから、話や演出を練る時間なんてあまりなかったと思うので、こういう出来になってしまうのもしょうがないのかもしれませんが…。

映画の途中で「実験」という記述が出てきますが、そのへんを膨らましてくれた方が、ジェットコースター的な面白さは失せるかもしれないものの、興味深い内容になったように思います。
清水監督の映画では低予算の「稀人」という作品がありました。エキサイティングという点では「輪廻」の方が勝っていますが、オリジナリティーや内容のインパクトから言えば、「稀人」の方が上です。とはいえ興行面から言えば、やはり「輪廻」の方が客には分かりやすく、売りやすいのでしょう。

主演である優香は、バラエティの時とは全く違うキャラクターをなかなかにがんばって演じています。小栗旬はチョイ役で殺されるわけでもないので、使い方がもったいないように見えました。清水監督の恩師？である黒沢清も少し顔を見せていますが、何だか江川達也に似ていて笑ってしまいました。
あと、「呪怨」シリーズで悪霊･伽椰子を演じた藤貴子がさりげなく出ているので、捜して見るのもマニアックな見方かもしれません。

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ブラック・ジャック
ふたりの黒い医者

京都にあるショッピングセンターで起こった爆破事件。無免許のために収監されていたブラック･ジャックも駆り出され、負傷者に奇跡的な手術を行うが、その後の患者達の周りに「生から見放された患者を安らかに死なせて救う」ドクター・キリコの影がちらつく。やがて２人の確執は、爆破事件を起こした組織の持つ細菌兵器に関っていく…。

「ブラック・ジャック」はこれまでにも何回か映像化されていて、アニメ版の劇場用映画は２本目だと思います。今回は監督が手塚真ということで、TVで放映中のシリーズの映画版ですが、BJの最大のライバルであるドクター･キリコの登場ということで、シリーズの中でも重要な話と位置づけられるようです。
お話は一応、1本のまとまった構成にはなっているのですが、爆破事件に絡む前半のエピソードは、バラバラな感じがしました。何本かのエピソードをつぎはぎにしているようです。
また今回は映画版ということを意識したのか、アクションシーンが多く、BJも格闘を見せます。でもこれは、彼の本来の仕事とかけ離れてるのではないでしょうか？ましてやその果て？に見せたある行為は、正当防衛とはいえ「人を救う」という道に反するように思え、大いに違和感を持ちました。もしこの作品を亡き手塚治虫氏が監督していたなら、こんな描写を許したか疑問になります。
映画でのブラック・ジャックはよく「私は人を救うんだ!」と言います。でもこのセリフは、日頃クールなBJがたまに言うからグッとくるのであって、今回のように何度も言われるとウザくなります。逆にドクター･キリコは、ほとんどクールな感じを崩さないせいか、彼の方が格好よく見えてしまいました。
BJの過去を紹介するシーンもえらく説明的で、映画のエピソードに多少は関わるとはいえ、もっと考えてほしいところです。彼以外のレギュラーキャラクターも、ただいるだけ、という感じで、キャラクターに対しての「愛」が感じられない映画です。
映画はドクター･キリコが出ることで、患者を生きるか死なせるかの選択という重いテーマを持つことになりますが、以上のような気に掛かるポイントが多いせいか、空回りしてるようで伝わってきません。レギュラーのTVシリーズの方が、まだましな出来でしょう。
ただ、BJのメスの秘密が明らかになるのは、ちょっと興味深いところでした。

ドクター･キリコの声を演じているのは俳優の鹿賀丈史ですが、なかなかに合っています。また細菌兵器に運命を翻弄されるカップル、ロックの声を石垣琢磨、ミドリを平山あや、とこちらも俳優コンビが演じていますが、彼らにはぎこちなさが残ってしまっています。

今回は先に、短編である「Dr. ピノコの森の冒険」が上映されます。中身はかつての手塚治虫のにぎやかな動物ネタの映画を思わせて、意外なゲストキャラの出演で楽しめます。　

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男たちの大和
Y　A　M　A　T　O

2005年４月、鹿児島県枕崎に来た真貴子（鈴木京香）はある地点に船を出してほしいと役所や漁師たちに頼むが、ことごとく断られる。そこは戦艦大和が沈んだ場所で、海の荒れやすい危険な海域だった。だが神尾（仲代達矢）は助手の敦（池松荘亮）と共に小型漁船で彼女を連れてゆくことにする。そして神尾は船の上で、真貴子が内田の娘だと聞いて驚く。60年前、彼は内田（中村獅童）と同じく大和に乗っていたのだった…。

太平洋戦争終結の４ヶ月前に非業の最期を遂げた戦艦｢大和｣の物語を、「人間の証明」「敦煌」などの佐藤純彌監督が手がけた映画です。
逝くもの、残る者の思いに焦点を絞った構成が上手く、泣ける箇所がいくつもありました。現代と過去を交錯させる手法はスタンダードながらも、テーマをきっちり伝えています。特に真貴子が大和の乗組員に語りかける一言には、「生きること」の意味が込められているように思えて、涙が止まりませんでした。
佐藤監督というとジイサンだし、「敦煌」なんて大作感ばかり目だっていい映画と思えなかったので、見る前はぜんぜん期待していませんでした。しかし出来上がった作品は、あの戦争を知っている世代の面目躍如という感じで、日本の戦争映画でも傑作と言っていいと思います。
現在のシーンのキャラに「鉄人28号」の池松荘亮を配しているのは、大和の乗組員の願いを現代の若者が引き継いでほしいという、スタッフの願望ゆえに設定されたキャラなのでしょう。そいうことがあからさまなのは少し引っかかりを覚えたし、彼がラストに取る行動もテーマとしては分かるけど、いかにもな感じがしてしまいました。
しかし彼を15歳くらいの設定にすることで、大和の乗組員にはその年頃の少年たちも多かったということがクローズアップされます。そんな「少年」達が戦っていたという重い事実を、映画は上手く伝えています。

この映画のために大和の実物大のセットを作ったことが話題になりましたが、さすがにそれを生かした画面は、CGなんぞ及ばないリアルな迫力が出ています。その艦上で描写される、体操や訓練といった戦艦での日常生活は、これまでの戦記ものではあまり見たことが無かったので興味深いシーンでした。
またそこで描かれる戦闘シーンでは、血がババッと飛び散るシーンもかなりあります。血しぶきをCGで増したかもしれませんが、残酷なシーンが苦手な人には見ていて酷でしょう。このリアルさは「プライベート・ライアン」の影響を思わせますが、あの映画よりも意味を感じるし、この悲惨さから目を背けるべきではありません。

ただ、日本は戦争の被害者である、という姿勢が映画全体に漂っていたのは気になりました。とはいえ映画のメインキャラは兵士やその家族ということで、そういう感じになるのはしょうがないかもしれません。
太平洋戦争の説明シーンで、日本軍がアジアに「進出」していくカットなんて、あの戦争は米英に石油の補給を断たれたために仕方なかったと言ってるように聞こえました。まあ製作が角川春樹なので、日本を悪く言いたくないのかもしれませんが。
そういう描写から、もしこの作品が海外で公開された場合、アジアの国の人から「あの戦争の反省の描写が無い」なんて、的外れなことを言われるかもしれません。

音楽は久石譲氏ですが、いかにも泣かせを狙ったメロディが目立ち、シーンによっては大げさ過ぎてジャマ、と思うような箇所もあります。今回は宮崎アニメや北野監督作でのような印象的なメロディは聞かれず、耳に残りません。ただこれは彼のせいというより、監督のセンスの問題ではないかと思います。
またナレーションも、古い教育番組ぽい感じがしてしまいました。

お話で１つだけ気になったのは、｢死んだらあかん！｣という言葉を外で言う箇所でした。家の中ならまだしも、あの時代にそんなことを大ぴらに言ったら、憲兵にひっ捕らえられるのではないでしょうか。まあ、映画のテーマとしては分かるけど…。

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日　本　誕　生

日本の神話を描く、稲垣浩監督の日本映画史上に有名な、1959年度製作の作品です。
映画はイザナギとイザナミの国産みの話から始まり、メインであるヤマトタケルの物語が描かれ、その中で語り部の話として。天の岩戸とスサノオのオロチ退治が語られます。
しかし国産みの話からヤマトタケルに至るまで、天の岩戸とスサノオ以外にもいろいろエピソードがあるはずですが、それらは端折られています。
僕の観た映画の尺は126分でした。しかし映画の本来の長さは182分だそうで、現在映画館で上映できるプリントは126分にされた短縮版しかないそうです。カットされた部分には、もっとエピソードが描かれているのかもしれません。

お話は古事記にそれなりに忠実に描いていますが、あの本で語られるキャラの行動は不可解な部分も多くみられます。そのせいか映画でも、キャラクターの考えていることがよく分からない箇所がちらほらあり、キャラたちを応援しようという気にはあまりなりません。
また特撮監督はあの円谷英二で、アニメを使うなど技術的にがんばっていると分かりますが、今見るとダさく見えてしまう箇所がかなりあり、映画というより舞台劇として見た方がいいように思います。
とはいえ、住居や衣装は古代の感じが出ているし、熊襲の衣装をアラビア風にしているなど、デザインはそれなりに面白く見せています。またエキストラがかなり多いのは、さすがに映画の黄金時代を思わせます。

ヤマトタケルの年齢設定は若いようですが、演じる三船敏郎は貫禄のせいか、おっさんに見えてしまいました。そして熊襲の王を演じているのが志村喬なので、タケルが熊襲の王を斬るシーンは、「七人の侍」の竹千代が勘兵衛を斬ったように見えてしまい、ちょっと可笑しくなりました。
アマテラス役が原節子というのは、やはり！のキャストです。今は「お隠れ」になってしまったということでしょうか。

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奇　談
キ　ダ　ン

1974年。大学で民俗学を研究している里美（藤澤恵麻）は、７歳の時にあった神隠しのことを夢でよく見るようになる。彼女はその時の記憶を失っていたが、気になった彼女は当時滞在していた東北の渡戸村を訪れる。そこは隠れキリシタンの村だったが、村人は「はなれ」と呼ばれる地域の話をしたがらない。そこで聖書異伝を調べるために訪れていた考古学者・稗田礼二郎（阿部寛）と行動を共にしていくうち、里美は失われた記憶と「はなれ」に関連があると推測する…。

諸星大二郎原作のコミック「生命の木」の映画化ですが、稗田礼二郎が活躍するこの｢妖怪ハンター｣シリーズは、前に別のエピソードが沢田研二主演で、｢妖怪ハンター：ヒルコ｣として映画化されています。
この時に沢田が演じた稗田礼二郎は、状況に振り回されるだけで何もできない兄ちゃんという感じがしてしまいましたが、今回の阿部寛演じる稗田は、冷静沈着で頼れるおっさんという雰囲気です。阿部寛の学者キャラといえば｢トリック｣がハマり役ですが、あれのおちゃらけとはまた違うキャラになっています。
しかしこの映画、稗田だけでなくキャラクターはみんな狂言回しで、深くは描かれていません。それよりも「はなれ」の秘密、といった謎解きを楽しむべき作品です。
「隔離された秘密の集落」「土着信仰」「隠された歴史」「洞窟」「異端のキリスト教」といったようなネタが大好きな、僕みたいな人にはこの映画はたまらないお話で、キャラの造型があまりよくなくても、それだけで楽しめることでしょう。

川井憲次のシンセサイザーを効かせた音楽、そして荒涼とした山や「リング」を思わせる８ミリフィルムなどといった、雰囲気のおどろおどろしさもよく出ています。
さらに堀内正美や清水鉱治といった、出るだけで妖しさ全開のキャストがおどろおどろしさに拍車をかけているし、彼らに合わせるように草村礼子が、「Shall We ダンス?」といった映画やTVドラマで見せるイメージと全く違うキャラクター像を演じているのは驚かされました。
クライマックスも意外に大掛かりで見ものだし、ラストは少し感動的なシーンがありました。
ただしネタ的に興味のない人は、この映画は楽しめないと思います。

話で気になった点は、神隠しの目的が分からなかったことでした。物語では語られない謎がかなりありますが、これは重要なので説明すべきでしょう。

藤澤恵麻は1970年代の設定には合ってる感じがしました。でもNHKの朝ドラ主演以来の映画初デビューが、こういうキャラの立ってない作品ていうのはどうかと思います。一応主役だけど、見た後観客に残る映画の印象はたぶん「謎」ばっかで、彼女の印象は強くないと思うなあ…。

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仮面ライダー
THE FIRST

まだ見ていない人

週刊詩の記者である緑川あすか（小嶺麗奈）は水に関する記事の取材で城南大学を訪れ、相手をした学生・本郷猛（黄川田将也）に親しみを覚える。だが彼は秘密組織"ショッカー"にさらわれ、改造人間「ホッパー」にされて悪の手下となった。そしてショッカーは組織の秘密に触れそうになったあすかを抹殺すべく、ホッパーと改造人間・スパイダーを送り込むが、ホッパー＝本郷はあることをきっかけに記憶を取り戻し、あすかを守るべくスパイダーと戦いだす…。

｢仮面ライダー｣のTV版の第１作をリメイクした映画で、仮面ライダー１号＝本郷猛と仮面ライダー２号＝一文字隼人がショッカーと戦うようになるまでを描く話です。
バイクを使う戦闘があるのはタイトル通り｢ライダー｣らしく、特にライダーキック！にはしびれました。こいうバイクの戦闘を見たのはTVの｢仮面ライダーBLACK｣以来かもしれません。格闘シーンもなかなかにかっこよく見せています。でも迫力やスピード感は、香港映画とかに比べるてしまうと今ひとつです。
仮面ライダーは文字通り仮面＝マスクをかぶっていて、今回は着脱シーンが｢変身！｣の代わりなのか頻繁に登場します。そして今回はライダーだけでなく、敵の改造人間も普通は人間の顔をしていて、作戦事などコトを起こす時に「マスク」を付けるという設定がライダーと共通で、同じショッカーの出自であることをよく表しています。コスチュームもTV版での生物感と違う、スーツというのが今っぽい感じがします。
仮面ライダーたち自身のデザインはTV版とあまり違えてませんが、改造人間はかなり大胆にリファインされています。レザーの基調の感じは｢仮面ライダーブレイド｣を連想しました。

今回のライダーは正義というより｢愛ゆえに｣戦うという、まあ要は女のために戦うライダーになっています。本郷＆一文字＆あすかといったライダーの三角関係の話といってもよく、昼メロかとも思ってしまいます。でも「人間が人間でなくなる」改造人間の悲哀は、それなりに出ています。
今回は本郷と一文字の戦いを描く本筋というべき話と、もう1本の話が同時に進みます。その話の主人公がウエンツ瑛士なのですが、このエピソードが本編とどう絡むのか、かなり後になるまで分からないし、同時進行のくせに本筋より過去に起こった話であるというややこしい構成です。これは本来エピソード２といった、別枠で語るべき話でしょう。これがあるおかげで構成がド下手な結果になり、毎年の仮面ライダーの映画に比べて落ちる出来になってしまいました。やりたいテーマは分かるのですが、あれもこれもと欲張るのは素人の作りです。
TV版第1作のリメイクといえば、前に「ULTRMAN」がありました。こちらの方が先に作られたから、今回の企画に影響を与えたかもしれません。でも「ULTRMAN」が戦う理由は家族や他人のためということで、こちらの方がヒーローらしいし、話もストレートで見習って欲しいところでした。

今回の本郷猛は、オリジナル版の藤岡弘.氏と比べるのは酷かもしれないけど、それにしても黄川田将也はただのヤワな学生にしか見えません。体力とか秀でてる感じもしないのに、なぜショッカーが彼を選んだのか不可解です。一文字隼人の高野八誠の方がまだ、何となく迫力があるように感じました（やはり１回ライダーを演じているのが効いてるか？）。
ショッカーの幹部で死神博士が登場するのはうれしくなりました。演じていた天本英世氏は今は亡き人なので、TV版から彼の映像を抜き出すという｢デジタル出演｣だそうですが、やはりこの人が出ると｢ショッカー｣という感じがします（天本氏自身は死神博士役を嫌っていたという噂もあるし、生きていたら出なかったかも）。
ISSAはただのいまどきの兄ちゃんという感じしかしませんが、これがショッカーの幹部というのは、これはこれで面白いかもしれません。
バット(こうもり男)を演じるのは津田寛治ですが、｢仮面ライダー龍騎｣ではいい役を演じていたはずです。ショッカーに捕まって改造されたかな。

冒頭でTV版の主題歌が流れるのはいい感じでしたが、途中でオーケストラのBGMに変わってしまうのは非常に中途半端でした。エンドクレジットあたりでちゃんと主題歌を流した方がよかったと思います。まあISSAの曲があるから無理かもしれませんが、その曲よりもいいでしょう。

続編を作るなら、今度はまとまった1本の話にしてほしいところです。いづれISSAも怪人として戦うのかなあ？

すでに見た人

ライダーやショッカーの設定やアクションには見どころはありますが、ライダーキックをした後のバイクは、倒れるんじゃなかろうか？と気になりました。バイクが海中から飛び出すのもかっこいいけど、ありえないでしょう。
また映画には変身シーンは出てこないし、代わりというべきマスクはいつもどこに持ってるのか？と疑問になります。改造人間の命を保つ「イジェクション」が本郷だけは必要ない理由が説明されておらず、一文字は必要なはずだったのに、ラストではうやむやにされています。細かい部分では突っ込みたくなる箇所がかなりありました。
あと欲をいえば、怪人が自爆する時、自爆装置のスイッチが入るような描写が欲しいところでした。あれってショッカーの秘密を知られないために、自爆させてるはずだったような。

仮面ライダーV３を演じた宮内洋氏がワンシーンながら、立花藤兵衛！役で出演していたのは嬉しい顔見せでした。

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カーテンコール

東京にある写真週刊誌の記者の香織（伊藤歩）は、モノにしたスクープが自殺騒ぎに発展したために福岡のミニコミ誌の編集局に異動させられる。香織は読者からの投稿ハガキに書かれた「幕間芸人」について取材することになり、下関にある映画館「みなと劇場」を訪ね、そこに長く勤める絹代（藤村志保）から、昭和30年代に上映の幕間に物真似を見せて人気を博した安川修平（藤井隆）という青年のことを聞く…。

佐々部清監督が「チルソクの夏」よりさらに昔にさかのぼる、昭和30年代と現代とを交錯させて描く物語です。
「半落ち」「チルソクの夏」「四日間の奇蹟」と、佐々部清監督の映画はいつも泣かされますが、今回もキャラクターがみんな思いやりにあふれていて優しく、感動する箇所がいくつかありました。特にラストは、奇をてらわないスタンダードな演出なのに、涙ポロポロになりました。

映画には「チルソクの夏」同様に在日のエピソードが出てきます。下関出身である佐々部監督には、地元の在日の問題は印象が強かったのかもしれません。予告編とかではこの部分は全く触れていませんが、マイナスの印象を持たれると思われたのでしょうか（「パッチギ！」みたいに堂々と出している映画もあるのに…）。

同じ昭和30年代を舞台にした作品では、「ALWAYS：三丁目の夕日」がほぼ同時期に公開されています。
しかし過去の話に徹していた「三丁目の夕日」と違い、「カーテンコール」は香織を絡ませることで、現代との接点を持たせています。映画は彼女の成長物語という形にもなっていますが、当初の香織にどこかもう少しイヤなところがあると、ラストでもっと成長したと明解になったように思いました。
「カーテンコール」は「三丁目の夕日」と比べると、２つの国を舞台にしているものの、地域が狭いせいか広がった感じはしないし、メインのキャラは少ないし、また大掛かりな特撮を使っていない分、スケール感はこじんまりとして、こちらの方が小品の印象を受けました。
とはいえ特撮なんぞ使わなくても、舞台となる映画館がいかにも地方にありそうな存在感にあふれているおかげで、昭和30年代の雰囲気はよく出ています。

藤井隆は、好青年を演じるとハマる感じがします。彼と井上堯之は似ているとは思えませんが、井上氏が歌えるのは役として大きい利点だし、なかなかに存在感があります。
脇役では、エキセントリックなイメージが強かった橋龍吾が、けっこうイイ人も似合うのが意外でした。
映画にはさりげなく、「チルソクの夏」のポスターが出てきます。この映画の主演だった水谷妃里も、映画館の売り子の役でチラリと顔を見せています。

しかし鶴田真由演じる美里、息子に韓国名をつけときながら自分は韓国語話せない、てのは在日の人では普通なのか…？

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A L W A Y S
三丁目の夕日

昭和33年の東京下町の夕日町三丁目。青森から集団就職で上京してきた六子（堀北真希）は鈴木（堤真一）が一家で経営する「鈴木オート」に住み込みで働くことになるが、大きい工場でないことに失望していた。一方、鈴木家の向かいにある駄菓子屋の店主で売れない小説家の竜之介（吉岡秀隆）は、近くの路地に開店した飲み屋のママ・ヒロミ（小雪）に言い含められ、彼女が面倒を見ることになっていた友人の子供・淳之介（須賀健太）の世話を押し付けられる。初めは恐々と竜之介に接していた淳之介はあることを知り、竜之介を尊敬の眼差しで見るようになる…。

現在も連載中の西岸良平原作のコミックを、山崎貴監督で映画化したものです。
山崎監督といえば｢ジュブナイル｣や｢リターナー｣といった、SF作品に強い人という印象があるので、このテの人間ドラマを監督というのは意外でした。でも｢ジュブナイル｣はなかなかの感動作だったし、今回の「三丁目の夕日」の舞台は過去で、VFXを多用するという意味では適役だったかもしれません。
そして映画はその期待通り、美しい人情劇といった内容になりました。

話の予想はついてしまいますが、こうなってほしいという展開にちゃんとなってくれるのが良く、感動する箇所がいくつかありました。映画を見た後で日本テレビでの特番を見たら、感動したシーンが少し出てくるだけでウルウルしてしまいました。
それは、映画が描くのが昭和30年代という過去であり、その頃はこれから日本が高度成長を迎えるという時期で、「豊かになれる」ことが信じられた時代だからなのでしょう。
映画を見ていると感動で幸せな気分になれますが、当時生きていた人は、そんなに風に幸せなんて意識していなかったように思います。今は戻ることができない過ぎ去ってしまった時代であるから、美しく見えてしまうのではないでしょうか。その意味でこの作品は、昭和30年代を舞台にしたファンタジーというべき映画でしょう。
また映画には高度成長の光の面ばかりではなく、便利になれば捨て去られるものもあるという、影の部分もわずかながら描かれているのが、一面的でなくていいところです。

映画のキャストは吉岡秀隆や堤真一や薬師丸ひろ子といった、他の映画やTVドラマでも見る人が結構多いのですが、みんななかなか役に合っています。中でも堀北真希は「気が強い純情娘」というキャラがぴったりで、成長を感じさせます。

特撮は、列車内の1シーンのみ合成のエッジが分かるところがあるけど、それ以外の町の情景や上野駅や日劇や東京タワーといった再現は完璧です。パンフを読んで合成だったと分かる箇所も多々あり、山崎監督が所属する？白組の面目躍如でしょう。実物の機関車や模型などを使い、CGオンリーに頼っていないのが上手く成果が出たと思います。こういった素晴らしい情景描写が、映画の感動を大いに盛り上げています。
ただ、１カットだけ出てくる未来都市のイメージは、小松崎茂のイラストのようなタッチにして欲しかったと思います（マニアかも）。

映画で少し気になったのは、「戦後」ということがしばしばセリフで出てくるのに、今一つそういう感じがしなかったことでした。空襲の残骸とか、戦後を映像で見せるシーンが欲しかったところです。

僕がこの映画を見たのは初日でしたが、観客はオジサンオバサンが目立ちました。舞台が昭和30年代というせいかなあ。
ラストのセリフは今の観客に向けられたものでしょう。そうありたいものです。

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まだまだあぶない刑事

韓国・釜山で核兵器密輸団をぶっ潰したタカ（舘ひろし）とユージ（柴田恭兵）が横浜に帰ってきた途端、狙撃事件に出くわす。現場に急行した水嶋（佐藤隆太）と鹿沼（窪塚俊介）に捕まったタカとユージは、７年前とは違う場所に移転してしまって行き方が分からない横浜港署に行けてラッキー!とそのまま連行され、トオル（仲村トオル）が捜査課課長になっているのに驚く。そして少年課課長になっていたカオル（浅野温子）から、７年前に２人が逮捕した銀行強盗犯、尾藤が脱獄していることを聞かされる…。

TVや映画で一世を風靡したヒットシリーズ「あぶない刑事」が、1998年の「あぶない刑事フォーエヴァー」から７年経っての復活です。
舘ひろしと柴田恭兵のコンビ、そして仲村トオルや浅野温子、木の実ナナ、ベンガルといったおなじみのメンバーの再登場はうれしいし、舘や柴田の歌、ハーレーで銃を撃つタカ（突っ込みもあり!）など、「あぶ刑事」ならではのお約束のシーンも相変わらずで、かつてのシリーズのノリはそれなりに出ています。
しかしエピソードの強引さには、80年代や90年代は許せたかもしれませんが、今だとありえねぇ！と引くシーンが目立ちました。重要であろうシーンをセリフだけで済ますなど、描写が薄い箇所があるのも気になります。

お話は妙に込み入っていて、後半で意外な黒幕が明らかになるのはいかにも映画版という感じですが、その黒幕の描写は、パソコンを分からない年寄りオヤジが今どきの若者はこうだろう、と薄っぺらい想像をして書いたようなキャラでリアリティーのかけらも無く、笑えもしません。

今回は「あぶ刑事」ネクストジェネレーションの話になるのかと思ってたら、そうじゃないのにはがっかりしました。それとも「あぶ刑事」は舘ひろしと柴田恭兵しか認めない、てことなんかねえ（「宇宙戦艦ヤマト」の古代と雪じゃあるまいし）。
そのせいかクライマックスは後味悪いし、ラストはホラーか?と言いたくなりました。

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この胸いっぱいの愛を

まだ見ていない人

鈴谷比呂志（伊藤英明）は故郷の北九州・門司に帰るために飛行機に乗っていたが、到着したそこで過去の自分（富岡涼）と出会い、1976年の世界に来てしまったと知る。また同じ便に乗り合わせたチンピラヤクザの布川（勝地涼）も同様にタイムスリップしたと分かる。とりあえず比呂志は、自分の実家である旅館にお手伝いとして居候することになるが、かつてあこがれていた女性・和美（ミムラ）がまだ生きていた…。

「黄泉がえり」の監督、塩田明彦氏が同じ梶尾慎次氏の原作を映画化した作品です。
映画にはいくつか、「黄泉がえり」と同じパターンと思える箇所がありましたが、まず主人公に関する途中の大オチには「黄泉がえり」を連想してしまいました。
また「黄泉がえり」同様、今回も主人公のエピソードと、いくつかのサブエピソードが描かれますが、メインの伊藤とミムラの話はクライマックスで引いた箇所があったせいか、あまり感動できませんでした。
しかし一方、クドカンのエピソードは短いながらも泣けました。こういう、メインよりもサブエピソードが泣けたというのも、「黄泉がえり」と同様でした。
ラストでナレーターが変わるのも「黄泉がえり」と同じパターンです。でも統一感が無くて、ヘンに聞こえます。

映画は後半で盛り上がった後もシーンが続きますが、この部分はおまけに見えてしまいました、コンサートのシーンで終わっていいと思います。
ラストなんかもいかにもファンタジーで、付け加えといった感じがしましたが、涙がボロボロこぼれて、一番泣けたシーンではありました。

塩田監督の映画としては、「カナリア」に比べるとインパクトにかける仕上がりではあります。「黄泉がえり」もそうですが、メジャーの会社の作品では、個性を抑えてマイルドにしてしまうのかもしれません。万人向けではあるでしょうが、少々面白味に欠ける内容です。

すでに見た人

コンサートシーン。チームプレイであろうコンサートのまして本番で、団員が全く知らない素人であろう和美を使うのはありえないでしょう。絵にはなるというのは分かるけど、納得できない展開でした。

死ぬはずの和美が生きたということで、歴史は変わったことになります。ならば死ぬ運命にある主人公だって、未来では生きていても良かったのではないでしょうか。過去の自分に「○才の1月には飛行機に乗るな」とか伝えて。

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深　紅

小学生の秋葉泰子（堀北真希）は修学旅行中に１人だけ東京に戻らされ、そこで両親と弟、家族全員が殺されたことを知る。８年後、泰子（内山理名）は犯人・都築（緒形直人）の死刑執行判決を機に訪れたルポライター・椎名に都築の娘の居場所を聞き出す。泰子はその娘・未歩（水川あさみ）に素性を隠して近づき、彼女が夫（内野朝陽）の暴力に苦しんでいることを知る…。

「破線のマリス」や「砦なき者」など、映像化の多い故・野沢尚氏の原作の映画です。
親の犯した「罪」は子に引き継がれるのか?という、「罪」や「許し」といったことが映画のテーマでしょう。字に書くと重く見えますが、映画はそれを若い女性２人をメインで見せているせいか、あまり重苦しさがなく、ラストも明るく爽やかな気分で見終えられます。
このテーマは、映画では家族と家族のような個人レベルの関係で描いていますが、広義に捉えると、テロの応酬の続く今の世界に訴えてるようにも思えました。
伏線で上手い箇所があるし、娘の「計画」と父の殺しのシーンがシンクロするクライマックスの構成もいい見せ方です。

しかし演出や音の使い方や音楽、そしてメロディには下手なTVドラマを思わせる、パターンと見える箇所があります。また所々使われている特撮シーンもパターン的なダサさが感じられたし、数箇所のCGイメージカットは何のために出したのか意味不明でした。
また冒頭、幼い泰子を演じる堀北真希のシーンが終わると、次は水川あさみのシーンになったので、内山理名が出てくるまでは水川が成長した泰子だと思ってしまいました。こういうまぎらわしい編集はやめてほしいところです。
まぎらわしいといえば、泰子は「かなこ」と読みますが、映画の後の方でこの字が出てきたときに読めなくて「誰?」と思ってしまいました（パソコンで「かなこ」を変換してもこの字は出てこない）。ここは「加奈子」とか、もっと読みやすい漢字を使うとか、前のシーンで「泰子」の読みを出してほしいところでした。

今回の内山理名は、にこやかな表情が一瞬にしてコワくなる変化が不気味で、それ自体がサスペンスになっています。この人はラブストーリーよりも、「新耳袋」のようなホラーやサスペンスの方が合うかもしれません。
緒形直人は凄みを出そうと努力しているのは分かりますが、「被害者」という面があるせいか、どうしてもいい人のイメージがつきまといます。犯行の動機にしても、こういう真面目な人が一家全員を殺すほどのものか疑問になりました。彼の妻の死にも相手が関係してるとか、もっと追い詰められる動機を追加した方が納得できたように思います。
小日向文世が悪役というキャストは珍しいと思いますが、あの穏やかな感じがかえって不気味な味になっていました。この人はどんな役をやってもサマになります。

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蝉　し　ぐ　れ

江戸時代の東北の海坂藩。下級藩士の牧文四郎の父（緒形拳）は、藩の抗争に負けた側についていたため、切腹を命じられた。だが彼の家族にお咎めは無く、文四郎は反逆者の息子として肩身の狭い思いをしながらも立派に成長する。ある日文四郎（市川染五郎）は減らされていた禄を戻すと言われるが、その命令を出した里村（加藤武）は父の敵だった…。

NHKでTVドラマ化もされた藤沢周平の有名な原作を、黒土三男監督で映画化です。
石田卓也が文四郎を演じる主人公の幼年期のシーンは、彼ら田舎侍の日常の紹介という感じでペースは遅めですが、江戸時代の風俗に関心がある僕には興味深く見れました。でもそうでない人にはもたついて、退屈するかもしれません。
しかし主人公役が染五郎に代わって、事件が起こり出してからは物語はハイペースになり、一気に話が展開していきます。映画は原作をかなり端折ってるようですが、上手い省略で違和感はなく、まとめ具合はいいと思います。
ただ文四郎の戦い方がけっこう無様なのが、人を斬ったことが無いリアルさが出ているように見えたので、その後の剣士との戦いはかっこいいけど違和感がありました。秘剣のエピソードは完全に削っていいと思います。

お話は楽しめましたが、同じ藤沢周平の原作としては、山田洋次氏が手がけた「たそがれ清兵衛」の方が今っぽさを感じました。でも文四郎のような真っ直ぐな人間は見ていて好感が持てるし、こういう人物を現代を舞台に描こうとするとウソっぽく見えてしまうかもしれません。
映画で一番重要である文四郎とふくの「想い」は今の若者にはどう受け入れられるか分かりませんが、思いを寄せながらもかなえられない切なさが共感されるかもしれないし、男女間で深い関係が築きにくいであろう現代では、文四郎とふくのような一途な想いはうらやましがられるかもしれません。

幼年期の文四郎を演じる石田卓也はセリフの言い回しにぎこちなさが見られ、もっと練習してほしいところでした。それに対してヒロイン役の佐津川愛美は目の演技が素晴らしく、彼女のおかげで映画は感動的に盛り上がります。
文四郎の親友役としてふかわりょうと今田耕司の起用は意外で面白さがありますが、TVのバラエティまんまな感じに見えたのは少し引っかかりました。これは黒澤明が、自分の映画で所ジョージなどTVのバラエティからの人を使ったことを意識したようにも見えました。

人の死の場面で死ぬところを見せず、虫の死骸など、イメージで表す上手い節度が、特に前半で見られます。撮影もきれいで、季節ごとのカットには時間をかけた丁寧さが感じられます。
そういう映画にデジタルを使うのは異論が出るでしょうが、能面が落ちるシーンなんて手で面を持った動きがバレバレで、ここはデジタル合成を使った方が良かったと思います。また洪水のシーンも、CGで氾濫する川の全体像を見せた方が、よりリアリティーが出たように思います。

CMや予告編で流れた一青ヨウの歌は、イメージソングということで映画では流れません。でも予告で何度も聞いていると、エンディングとかで流れないのはヘンに思えてしまいます。

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N A N A

小松奈々（宮崎あおい）は恋人・章司（平岡祐太）のいる東京に向かう列車で隣の席に座った、同い年、同じ名前の大崎ナナ（中島美嘉）と意気投合。２人は東京駅で別れたが、アパートを探している時に再会し、一緒に住むことになる。人気バンド・トラネスの大ファンの奈々は、そのギタリスト・蓮（松田龍平）へのナナの思いを徐々に理解していく…。

大人気の矢沢あい原作のコミックの映画化です。僕は原作は読んでいませんが、中島も宮崎も役に合って見えました。中島は演技は上手いとは言えませんが、若手の歌手でナナの雰囲気を持って演じられる女性は、彼女しかいないのではないかと思います。格好よく決めるつもりが、現状に流されてしまうナナの姿はなかなかにリアルでした。
映画は２人のナナのお話ではありますが、どちらかというと主役はナナで、奈々は狂言回しぽいポジションです。キャラクター達に今ひとつ深みは感じられませんでしたが、２人のナナの友情は微笑ましくなりました。
主題歌がいいせいか、それが流れるコンサートのシーンはなかなかに感動的で、ここがクライマックスというべきでしょう。その後もお話は続きますが、おまけに見えます。
でも男がこの映画を見るとナナたちより、彼女らが恋する蓮や章司の気持ちの方が、気になってしまうかもしれません。特に章司に関しては、分かる分かる！て同情してしまいました。監督は男なので、もしかしたら章司に肩入れしてしまった部分があるのではないか？とも思います。

宮崎あおいはやはり上手いしかわいいけど、今回は目のシワが目立ちました。まだそんなにトシでもないだろうに、芸能界て苦労するところなのかなあ。
その奈々のライバル、幸子を演じているのがサエコですが、声はあの特徴ある甲高い声ながら、クレジットを見るまで分かりませんでした。TV「ドラゴン桜」とえらく違う化けっぷりに驚かされます。
バンドメンバーでは成宮寛貴が存在感がありました。「いま、会いにゆきます」よりもこういう、やんちゃなキャラが彼には合っています。

ナレーションは、奈々がナナと別れた後に回想しているという設定に思えました。いずれこの２人に悲劇が訪れるのかもしれません。それにしてもナレーションは、１人に統一してほしいところです。

今回はストーリーが大きく動いた感じはしなくて、導入編というところでしょう。パート２に波乱があると期待してみますか…。

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SHINOBI

古くから忍たちが暮らす伊賀・鍔隠れと甲賀・卍谷の里は、その力のぶつかり合いを恐れた初代服部半蔵により接触を禁じられていた。だが甲賀の弦之介（オダギリジョー）と伊賀の朧（仲間由紀恵）は、互いに頭の後継者でありながら愛し合う仲になっていた。そんな時、伊賀と甲賀の壊滅を目論む徳川家康と天海は、２つの里の頭領に選りすぐりの忍の名前を書かせ、互いに戦うように命じる。そこには弦之介と朧の名前があった…。

原作は山田風太郎の「甲賀忍法帖」。常人を超えた力を持つ忍者同士が戦う、という大筋は原作どおりだそうで、映画の一番のウリは忍たち同士の死闘でしょう。
彼らの使う忍法は、ある者は剣を、ある者は肉体を使い、またある者はお色気で迫る、と個々の技のバリエーションが楽しませてくれます。その力は忍術と言うより、超能力と言った方が適切でしょう。
でもそのアニメで見せた（「バシリスク」なるアニメにもなっていますが）方が良さそうな「ケレン」を、適切なVFXでスピード感を出し、ちゃんと見せているところがこの作品の面白いところで、映し方も上手いカットがあります。それだけに、忍たちがあっけなく死んでいくのはちょっと残念でした。

ただアクションに力を入れた分、ドラマ的な盛り上がりは今ひとつになってしまい、クライマックスと言える弦之介と朧の戦いは盛り上がりません。これは冒頭で、彼らがいつの間にかカップルになっている、という時間的省略をしてしまったおかげで、彼らに感情移入する時間を無くしてしまったことも関係していると思います。
また忍の、人殺しとしての生き方の哀しさ、というテーマぽい描写も途中で消えてしまい、何を言いたいのか分からないお話になってしまっています。

それに、忍者同士の戦いがなぜ将軍家の跡継ぎに関係するのか分からないし、忍を使っていたはずの家康が彼らを知らないように語っているのは気になりました。
また伊賀と甲賀の２つの里がどのくらい離れているのか、位置関係がよく分かりません。彼らの里があっけなく襲われる展開も、徳川に戦いの禁が解かれた時点で互いの里の襲撃を警戒するのが普通だと思えて、こいつら徳川が恐れるほどの忍者集団なのか？と突っ込みたくなりました。

「パッチギ!」や「阿修羅城の瞳」など、このところ映画出演が続いている沢尻エリカが、伊賀忍者の一人、蛍火を演じています。自分を犠牲にして朧を守ろうとする姿は健気で可憐（！）でありましたが、セリフがぎこちなくなるのは気になりました。「戦国自衛隊1549」の綾瀬はるかといい、若手女優には時代劇は荷が重いのでしょうか。

浜崎あゆみの歌う主題歌は、予告編で流れた時は盛り上がりましたが、本編ではエンドロールに流れるのみで、あまり効果的に見えませんでした。日本映画では珍しくないケースですが、主題歌はエンドロールのみでしか流してはいけない、という契約でもあるのかな?

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サマータイムマシン・ブルース

とある夏。甲本（瑛太）たち善通寺近くのとある大学のSF研究会のメンバーは、ふとしたことでクーラーのリモコンを壊してしまう。彼らはゴミ捨て場から扇風機を拾ったりして猛暑を避けようと試みるが、ことごとく失敗した後、部室に戻ると見知らぬ男がいた。田村（本多力）と名乗る男がそそくさと部室を出て行くと、甲本たちはそこに妙な機械を発見する。それはタイムマシンではないかと彼らは思い、とりあえず強引に曽我（永野宗典）を乗せて昨日に送ってみる…。

「踊る大捜査線」をヒットさせ、最近ではそのスピンオフである「交渉人真下正義」を手がけた本広克行監督が描く、タイムトラベルのお話です。
タイムトラベルの映画といえば、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という名作がありますが、この「サマータイムマシン・ブルース」でもそのタイトルが出てきて、リスペクトが感じられます。しかしこの映画はそれ以上にスケールが小さく、ほぼ今日と昨日を行ったり来たりに終始します。
しかもタイムトラベルの目的となるきっかけは「壊れたエアコンのリモコンを昨日に行って取って来る」というもの。このご近所感覚のアホらしさが、これまでのタイムマシン物に無い、この映画の面白いところです。
しかしアホっぽい設定とはいえこの作品、タイムマシンのお話では重要であるタイムパラドックスの問題には抜かりがなく、話の論理性が上手く構成されていて、ちゃんと真面目に話を成立させています。
そして「踊る大捜査線」同様にセリフの間が気持ちよく、ギャグやリアクションのタイミングも絶妙で、タイムパラドックスを起こさないよう右往左往するキャラたちの行動が最後まで大いに楽しませてくれます。
ただ、キャラクターの行動を笑ったり感心してる間に、話がなんとなくいつの間に収まってしまい、大きな盛り上がりや感動はありません。まあ、それがＢ級らしいところでしょう。

映画は、部員たちが野球をしているという何気なく見えるシーンから始まりますが、徐々に「何だこれは？」と不思議に思う箇所が出てきます。でもこの作品がタイムトラベルのお話ということを頭に置いて見ていれば、後々のシーンでその疑問は解消されます。この映画にはそういう、「なるほど！」と話のピースがはまっていく快感があります。

主役である瑛太や上野樹里はそれなりに目立ってはいますが、単にいいやつといった感じで、脇キャラの方が個性が出ているように見えました。主役たちにも、脇のようにいじめられとか収集癖ありなど、どこかインパクトのある部分を持たせた方が良かったように思います。女性キャラも、ただ色モノな感じしかしなかったのは物足りません。

「踊る大捜査線」同様、映画には所々マニアックなシーンが出てきますが、特にSF研究会のガラクタ群は、１回見ただけでは把握できないお宝がいっぱいありそうだし、マスコットキャラも強烈です。BGMで「機動戦士ガンダム」を使っているのは、ニヤリとしてしまいました。
また、中に出てくる「映画館」もマニアな感じです。あの制服ということは、館主は「踊る大捜査線」で意外にレギュラーになってるあの人かも。

映画の舞台は香川県の善通寺で、SF研のメンバーが五重塔をバックに歩くシーンは「同じとこ通った！」とうれしくなりました。古い感じの街並みも、映画に合っています。

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ノ　ロ　イ

2004年4月12日、怪奇実話作家・小林雅文氏の自宅が全焼した。現場からは彼の妻の焼死体が発見されたものの、小林氏はそれ以来消息を絶ってしまう。彼は怪奇現象を自ら追跡取材したビデオ作品「ノロイ」を完成させたばかりだった…。

映画はこの「ノロイ」の、内容紹介という形で進んでいきます。
ホラー映画で「呪いの連鎖」パターンは「リング」や「呪怨」など珍しくありません。しかしこの「ノロイ」はその形を「ブレアウィッチ・プロジェクト」のようなＴＶドキュメンタリー形式で見せていきます。こういった構成は低予算のビデオ作品にはよくあるかもしれませんが、劇場公開作品ではあまり見たことがないので新鮮でした。全編ビデオの画質というのがチープながらも、かえって雰囲気がリアルになり、引き込まれました。
とはいえ出てくる映像には、こんなとこを撮影しねーだろ！て突っ込めたり、やらせっぽいカットもかなりあり、全編本当にあったことのように作っているものの、明らかにウソと分かります。

後半には幽霊も登場しますが、全てビデオの画質のせいかそこだけデジタル特撮とバレバレで、かえって違和感が出てしまっています。ただその周辺のシーンは、見てた時はあまり怖いと思いませんでしたが、「ブレアウィッチ－」同様に、夜中とか後で思い出すと怖くなりました（子供ってのは効果的だ）。

エンドクレジットがほとんど無いのもビデオの雰囲気を出すためなのでしょうが、スタッフのクレジットが無いのは彼らに対して失礼なようにも思います。
アンガールズと松本まりかと高樹マリア（マジ本当だったらレポーターできんのか？）は、劇中のレポーターとしてちゃんと自己紹介をしていますが、本当の名前が出るのは彼らくらいです。

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劇場版金色のガッシュベル!!
メカバルカンの来襲

人気TVアニメ「金色のガッシュベル!!」劇場版の第２弾は、魔界のマッドサイエンティストがガッシュの「友達」バルカン300のメカバージョンを無数に作り、ガッシュたちに襲いかかる話です。
「大親友」であるバルカンとは戦えないガッシュがどう危機を乗り切るか、というのが話の大きなポイントで、その悩みに応えようとする清麻呂たちの活躍はそれなりにかっこいいし、感動的なシーンもあります。
ただこの部分、ガッシュらしいと言えばそうだし気持ちは多少分かるけど、仲間を危険な目に合わせてまでもバルカンにこだわるのは、意固地すぎて共感できません。

前作はガッシュの母親や知り合いが絡むなど、ガッシュたち自身の話になっていたのに比べると、今回の敵は彼らの運命にそんなに関わってるわけでないせいか、話が弱いと思いました。
ならば「ポケモン」みたいに、悪役やゲストキャラで映画の印象を強くすべきでしょう。今回の悪役Dr.M2は、おちゃめな性格は面白く、千葉繁氏の「うる星やつら」を思わせる怪演はなかなかです。でも彼がこの世界に来た目的がよく分からないし、悪役のくせに後半ではうやむやのうちにいい者になっちゃうのは、都合が良過ぎます。

映画の予告編では、メカバルカン軍団が市街を行進するシーンがありましたが、本編ではそういうシーンはありません。そのせいか今回の話はローカル規模に見えて、世界の危機というシーンがあるくせに、そういうスケール感が出ていません。
絵のクオリティは前作よりアップしていますが、お話は前作より落ちる出来になっています。

お話に、ラストを予感させる箇所があるのが今回の特徴でしょう。そろそろ終わりにしてもいい頃か…？

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運命じゃない人

真紀（霧島れいか）は同棲していた彼氏の浮気を知ってしまい、婚約破棄を決めてマンションを出た。レストランに一人で入った彼女は、周りの幸せそうなにぎわいに泣きそうになるが、そこで「一人?」と声をかけられる。一方マジメ人間の宮田（中村靖日）は同棲していたあゆみに出て行かれるが、彼女のことをあきらめきれない。そこに親友の私立探偵の神田（山中聡）から、あゆみのことで話があるとレストランに呼び出される。神田はあゆみのことはあきらめるように宮田に言い、一人で寂しそうにしている女性に「一人?」と声をかけた…。

2005年度のカンヌ映画祭に出品され、話題となった作品です。シナリオの構成が好評だったそうですが確かに、始めは恋愛映画に見えていた物語が、話が進むにしたがって事実や人間関係が２転３転していく構成は、大いに楽しませてくれます。
ただ所々、間が長いと思うシーンがあるのは気になりました。もっとテンポよく進んでくれると、同じように時制をずらした「パルプ・フィクション」にも負けない仕上がりになったことでしょう。

キャラクターが出来てるのも映画の面白いポイントで、特にヤクザの組長が、フツー想像するような荒くれのヤクザと違うキャラになっているのが、妙にありそうに見えました。
ラストの「フライング」はちょっと面白い感じですが、話の途中で終わるような感じがして、物足りなくなりました。続編狙いかな?

神田がレストランで宮田に言うセリフ。独身男には痛い！お、おっしゃる通りで…。

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ヒ　ナ　ゴ　ン

広島の田舎にある比奈町では30年前、謎の生物ヒナゴンが度々目撃され、いたずらっ子のイッちゃんも遭遇するが、その存在は週刊誌に否定され、騒動は収まってしまった。そして現在、町長に当選したイッちゃん（伊原剛志）はヒナゴン復活を目指し町役場に「類人猿課」を作り、その職員に都会からIターンしてきた信子（井川遥）が任命される。だが町は隣町との合併問題に揺れていて、ヒナゴンどころではなかった…。

お話のモデルは、ここのところ話を聞かなくなった「ヒバゴン」なのでしょう（クッシーとか、どうしたんだろう…？）。この手の未確認生物ネタのお話のラストは、予想は付くけど感動！でした。
しかし映画はヒナゴンの話だけでなく、町同士の合併問題のエピソードなんかも結構出てきて、何を言いたいのかよく分からない映画ではあります。
とはいえ映画で描かれる、「みんな知り合い」といったほのぼのとした田舎の人間関係は見ていて気持ちいいし、うらやましくなりました。敵ぽく見えるのに友達?というゆるゆるした関係はちょいと分かりにくかったのですが、それが田舎というものなのでしょう。たぶん。
ただ田舎の「悪さ」は、ちょいと不愉快になります。
テーマとかあまり考えず、ほのぼのとした人間関係とファンタジーの大切さを楽しむべき映画でしょう。

キャストもなかなか良く、特に伊原剛志と上島竜兵は合っています。他の作品ではそんなに上手いと思えない嶋田久作も、この作品では上手く見えました。また鶴見辰吾はTVや映画にけっこう顔を見せていますが、いつも役をモノにしているのには感心します。

井川遥は、デビュー作である「フィラメント」よりは元気なキャラで、なかなかに似合っています。ただ映画では、主人公のくせに単なる狂言回しみたいで、存在の意味はあまり無いように見えてしまいました。
ナレーションも井川がやっていますが、やたらと語られてうざい！と言いたくなります。映画なんだから画で見せろって。

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亡国のイージス

海上自衛隊の最新鋭イージス艦「いそかぜ」での訓練中、先任伍長・仙石（真田広之）が艦内の不審な動きを副長・宮津二佐（寺尾聰）に報告すると、部下の如月（勝地涼）が工作員だと知らされる。その如月が機関室を占拠し、仙石が彼を捕えた直後、全乗員は「いそかぜ」から降りるよう命令されるが、その命令に不審を抱いた仙石は艦に戻る。宮津やヨンファ（中井貴一）たち反乱勢力が残った「いそかぜ」は、ハープーンミサイルの照準を僚艦である「うらかぜ」に向ける…。

福井晴敏氏が日本推理作家協会賞などを受賞したベストセラー小説の映画化です。2005年は福井氏が関った映画「ローレライ」と「戦国自衛隊」が立て続けに公開されましたが、そのトリを飾る？作品です。
福井氏は「ローレライ」のパンフレットでのインタビューで、ハリウッド映画のような小説を書きたかった、というコメントをしていますが、この「亡国のイージス」の内容はその言葉通り、「ダイ・ハード」＋「シュリ」＋「ザ・ロック」という感じで、こういう作品が作りたかったのね、と納得でした。
監督は「どついたるねん」や「KT」などを手がけた阪本順治氏です。この人の映画はそんなに見ていませんが、「ビリケン」はそこそこ楽しめたものの、「KT」は今一つだったし、予告編もエキサイティングな感じがしなかったので、面白くなるのか疑問でした。
しかし今回は話のテンポも良く、盛り上げるべきシーンはちゃんと盛り上がり、なかなかエキサイトできました。阪本順治てハリウッド的なエンターテイメントも作れるじゃん…と、妙な感心をしてしまいました。
ただ、この作品の編集はなぜかアメリカ人が担当していますが、ハリウッドの人間に編集やらせたことでヘタに余計なシーンが入らなくて、話がスムーズになった、て結果になったかもしれません。

映画は長い原作を分かりやすくまとめていますが、ハリウッド的エンターテイメントが前面に出たおかげか、テーマ的な重みはあまり感じられません。
また時間的に仕方がなかったとはいえ、キャラの背景なんかで端折られた部分は気になりました。宮津の息子とDAISの関係なんて、少ししか触れていなくてよく分かりません。
でも一番分からなかったのは女性工作員のジョンヒで、彼女がヨンファの妹である。ということすら本編では説明しておらず、映画では彼女の存在の意味が無いよう(単にイロだけ)に見えてしまいます。

本物の護衛艦や戦闘機を使った自衛隊の協力のおかげで、映画にはリアルな迫力が出ています。近年の日本映画では「ゴジラ」シリーズなど、自衛隊の協力は珍しくありませんが、自衛隊自身を舞台にしているせいか、今回はその成果が一番生きた映画でしょう。
ただ、ラストのイージス艦破壊のシーンがモロにCGに見えてしまったのが、その迫力を下げて残念でした。これも本物を破壊して…ムリか。

前半のクライマックスといえる、ミサイル戦のシーンは、自衛隊がこれまで実戦を経験していないことを思うとコワイシーンでした。しかし1発だけでああなってしまうもんなのか…？

今回の主役、真田広之は「たそがれ清兵衛」や「ラスト・サムライ」ではあまり気付きませんでしたが、自衛隊の制服を着ると背が低いのが目立ってしまい、ヒーローらしからぬ不恰好に見えてしまったのは新しい発見でした。
それに対して、如月を演じた勝地涼は背もそこそこあり、制服もピタリとハマっていて、試写会で声援が飛んだのも無理ないでしょう。今回は大抜擢のもうけ役でしょうが、真田広之となかなかにいいコンビです。
宮津の部下で吉田栄作が出ています。近年の彼はTVドラマなんかでチラホラ出てるみたいで作品は多くないですが、いつの間にかいい役者になっているのには驚きました。

エンドクレジットの中で、庵野秀明氏の名前が「画コンテ」で出ています。「ローレライ」と同様でちょっと驚きました。

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