大　奥

徳川家七代将軍家継の時代。大奥は将軍の生母として勢力を強めている月光院（井川遥）の腹心である絵島（仲間由紀恵）が、大奥総取締として冷静に仕切っていた。月光院の存在が不愉快な先代将軍の正室・天英院（高島礼子）は、同じく月光院を嫌っている蓮浄院(松下由樹)たちと共謀して月光院を追い落とす策を練り、まず絵島を罠にかけようと配下の宮路(杉田かおる)に命を下す…。

フジテレビでこれまで３作のシリーズが作られたTVドラマ｢大奥｣の映画版です。
脚本はTVと同じ浅野妙子が担当していますが、話のスケールやキャラの深みなどは、これまでのTVシリーズより落ちるし、間延びして退屈なシーンもあります。
キャストには西島秀俊や北村一輝、木村多江、浅野ゆう子、松下由樹、高島礼子といった、前のTVシリーズに出た人と重複するキャストが多くて新味がありませんが、これはこれで、今までのシリーズの総集という感じもします。
とはいえ、TVシリーズでの彼らが演じた役の方が人間味があったので物足りません。それはエピソードに時間をかけられるゆえでしょうが、２時間程度のワクでこんなにキャラが多いと、TVでのような多面的な描写はムリでしょう。特に悪役たちのあまりの分かりやすさには、コワイというより笑うしかなく、単に女優を並べただけにしか見えません。キャラの数までTVに合わせる必要はないはずです。

時代劇であるせいか、仲間由紀恵のキャラがこの映画の公開直前に終了した大河ドラマ｢功名が辻｣の千代の印象が強くて、カブってしまいました。
キャラの中では主役の仲間よりも、杉田かおるが個性が出ていたと思います。初めは目立たないものの、だんだん｢女のコワさ｣といったもの？を見せてくれます。また木村多江は今回のようないじめる役より、TVシリーズでのいじめられる役の方が似合います。
今回は鷲尾真知子＆山口香緒里＆久保田磨希の３人組がけっこう目立っていましたが、やはりこの人たちが出ていないと｢大奥｣という感じはしませんな。美味でございますぅー！

セットや着物なんかはそこそこ華麗で、金のかかっている雰囲気は出ています。また、この作品の公開前に終了した肉筆浮世絵展｢江戸の誘惑｣を見た人は、歌舞伎小屋の看板がどういう風にディスプレイされてるのか、要チェックでしょう。
江戸城の天守閣は本当はこの時代には火事で焼けて無いはずですが、姫路城の背景はシリーズの定番だから、ヨシでしょう。

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鉄コン筋クリート

昔ながらの義理と人情が生きる街「宝町」を縦横無尽に飛び回る「ネコ」と呼ばれる少年クロとシロ。その宝町を再開発しようという勢力が現れる。｢俺の街だ！｣と抵抗するクロとシロの存在を彼らは許さず、２人を追い詰めていく…。

｢ピンポン｣の松本大洋原作のコミックを、原作の大ファンだという｢アニマトリックス｣のマイケル・アリアス監督でアニメ化した作品です。
レトロでサイバーでアジアな、東洋をごった煮にしたような宝町のデザインは「スワロウテイル」のディテールをスケールアップしたような面白さを感じました。クロとシロの飛び回る動きも疾走感が出ています。
製作は「マインド・ゲーム」のスタジオ4℃で、動きにはその「マインド・ゲーム」を思い出す感じもありました。キャラデザインも原作より｢マインド・ゲーム｣に近い感じがするのですが、この点は好きになれませんでした。
また映画からは、シロとクロの絆があまり深く伝わってこなかったのですが、これは原作がそういう描き方をしているゆえでしょうか？主要キャラにあんまり感情移入できませんでした。ドライな作品が好きな人はこの映画を好きになれるかもしれませんが、泣ける映画が好きな人は入り込めないのではないでしょうか。宮崎アニメを好きな人にも合わないように思います。
クライマックスは「2001年宇宙の旅」か「アキラ」かという感じがしました。「エヴァンゲリオン」が好きな人にはいいかもしれません。

声のキャストでは俳優をかなり使っていますが、あまり違和感を持ちませんでした。特にシロの声を演じた蒼井優は際立っていて、この人のいつもの化けっぷりには感心します。また声優は初めてであろう田中眠はやはりいい味を出しているし、伊勢谷友介も意外に合っていて、エンドクレジットを見て驚きました。

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N　A　N　A　2

矢沢あい原作のコミック「NANA」のパート２です。
今回はキャストが市川由衣に変わった、ハチの男性関係と妊娠に、前作から続投の中島美嘉演じる大崎ナナたちBLACK STONES（ブラスト）のメンバーが振り回されるという、ハチが主役といえるお話になっています。
これは、端から見ると移り気に見えてしまうハチの心理を説明しようとしたために、彼女の描写が多くなったのではないでしょうか。おそらく前作でハチを演じた宮崎あおいに、「感情移入できない｣と断られたからではないかと想像します。おかげでナナは脇に回った感じになってしまいました。
さらにナナの恋人・レンは今回登場シーンも少なく完全に添え物になっていて、ほとんどいなくてもいいような存在になっています。このキャラも前回の松田龍平から姜暢雄に変わりましたが、この人は松田龍平よりもおっさんに見えてしまって、こいつが一番のミスキャストでしょう。
キャストが変わったのに加えて、キャラの描写が均等でなくなったことで映画は前作よりパワーダウンしています。音楽の使い方も前作より落ちていて、特にレイラのプロモみたいなシーンはいらんでしょう。
ただそれでも感動的なシーンがあるし、ハッとさせられるセリフがありました。特にヤス。こいつがいなかったらブラストはないでしょう。

ブラストのメンバーの中ではシンも「HINOKIO」の本郷奏多に変更になっていますが、顔立ちが幼いのでバンドには少々違和感があるものの、やさしさは出ていて、前回の無表情だった松山ケンイチよりはましだと思います。

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パ　プ　リ　カ

精神医療総合研究所で開発していた、患者の夢に入り込んで心の治療を行う装置「DCミニ」が盗まれる。サイコセラピストの千葉敦子が開発者の時田と島所長の元へと向かうと、島は突然、意味を成さない演説を語り出す。「DCミニ」を盗んだ者による夢の侵略を感じた敦子は、分身「パプリカ」として島の夢に入り込み、驚愕の光景を目にする…。

筒井康隆の原作を、「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」の今敏監督が映像化したアニメ作品です。
映画のウリであろう悪夢のシーンは現代版百鬼夜行という感じで、｢アキラ｣を思い出す圧倒的な迫力があります。画だけでなく、悪夢に浸食された人々の発するセリフは、内容は支離滅裂なのに文法的には正しく、一見(一聴？)ちゃんとした言葉に聞こえるのには唸ります。シナリオはさぞかし大変だったことでしょう。
しかし夢が現実を浸食する、という設定は現実感がわきませんでした。夢のモノが実体化するって、どうやってこの現実世界に物質として生成されるのかイメージできません。ただ監督の「矛盾は矛盾としておきつつ、バランスのとれた世界観を作れたら」というコメントの通り、それなりに見れる形で描いているところは、アニメならではの力技なのでしょう。
お話には細かい設定で分かりにくい部分はありますが、主人公パプリカはなかなかに可愛くかつプロな女のコで、彼女が事件をどう収拾つけるかという興味で退屈しません。

パプリカ、そして現実世界での敦子の声を演じるのは林原めぐみで、演技に定評のある彼女ならではのダブルキャストでしょう。時田を演じる古谷徹は、TVアニメでも見られないような強烈なヲタキャラを熱演していて、すらすらとしゃべる科学用語には苦労しただろうと想像します。今敏監督の前作「東京ゴッドファーザーズ」では、メインキャラで声優でない役者を使っていましたが、今回の｢パプリカ｣ではプロの声優の力量が感じられます。
そんな中で、「東京ゴッドファーザーズ」に出ていた江守徹が今回も重要なキャラの声を演じていて、プロの声優に負けていない役者根性を見せてくれます。

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武　士　の　一　分

東北の小藩で、藩主の毒見役を務める下級武士の三村新之丞（木村拓哉）は、妻の加世（檀れい）とつつましやかに暮らしていたが、毒見用の料理の毒に当たり、失明してしまう。三村家の家禄は何とか守られたものの、その影に藩の重役である番頭の島田（坂東三津五郎）の加世への横恋慕を知った新之丞は妻と離縁するが、ある事実を知り「武士の一分」を賭けた決意を固める…。

山田洋次監督が「たそがれ清兵衛」「隠し剣鬼の爪」に続いて再度手がけた、藤沢周平原作の時代劇です。
今回の一番のウリは主演がキムタクであることでしょう。ここでもキムタクはやはりキムタクなのですが、これが江戸時代バージョンのキムタクという感じで、なかなかに合っています。
彼の妻・加世を演じる檀れいは宝塚で娘役をやっていた女優だそうで、今回初めて見ましたが、清楚な雰囲気が役に合っていて、不幸になって欲しくないなーと同情してしまいます。
また役者で特筆すべきは、彼らの使用人を演じる笹野高史でしょう。キムタクに文句を言われながらも常に尽くし、気を配るキャラが実にいい味を出しています。

映画はこの３人を中心にまとまっていている構成で、見やすい出来になっています。
お話は、こうなってほしい！と思う通りの展開になり、意外性はありませんが「たそがれ清兵衛」や「隠し剣鬼の爪」同様、爽やかに見れる物語です。「たそがれ清兵衛」ほどの今っぽさは感じませんが、「隠し剣鬼の爪」のラストほど甘い感じではないのは一安心な作りでした。
決闘に至る展開は年寄りの監督らしからぬ速さで驚きましたが、伏線を見せているので違和感はありません。終わってめでたしではなく、迷うのが山田監督の言いたいことかもしれません。

身分制度の非情さ、そして毒見役の仕事ぶりや藩主への食事の出し方など、江戸時代の事情や風俗をいろいろ出しているのが興味深いところです。

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地下鉄に乗って

まだ見ていない人

衣料品の営業マンの長谷部（堤真一）は地下鉄・永田町の駅で、弟から電話で父（大沢たかお）が倒れたと聞いた後、何十年も前に亡くなった兄の後姿を見る。それを追って地上に出た長谷部の見た風景は、昭和39年の新中野駅。その日は、彼が目撃した兄が亡くなる日だった…。

「鉄道員」などの浅田次郎原作の小説の映画化です。
映画のメインは、息子が父親を理解していく話というところでしょう。後半の喫茶店での大沢と堤のシーンは感動的ではありました。それに対して、堤真一の不倫相手である岡本綾扮するみち子もタイムスリップするものの、彼女がクライマックスでとる行動はあまりに身勝手に思え、製作者たちが命よりも倫理を優先してるように見えてしまって、彼女に同情できませんでした。

主人公たちのタイムスリップも、地下鉄のホームにいる時とか寝てる時とか条件がバラバラで、何度もするのも都合よすぎです。それにこう何度も過去に行って顔を合わせているくせに、大沢たかおは堤真一を覚えていないものかねえ。
このタイムスリップする時の音楽も、ここだけビートが効きすぎて違和感がありました。まあ他のシーンとの差別化にはなっていますけど。
堤が駅で会うかつての先生である田中泯は、タイムスリップのきっかけを作っているような感じで、神様みたいなものかもしれません。人間離れしたような存在感は強烈でした。なんでこの人が彼と父親の関係を気にするのか分からないけど。

中盤に出てくるラブシーンは初め余計に見えましたが、クライマックスでのみち子の心の揺れの伏線と解釈できると思います。

堤の亡くなった兄を演じる北条隆博は、「仮面ライダーブレイド」でレンゲルを演じていました。TV版「がんばっていきまっしょい」にも出ていたし、主人公ブレイドを演じた俳優より順調に出世しているみたいです。

映画には東京メトロが全面的に協力しているそうで、地下鉄を誉めてるセリフなんかあったりして、なるほどプロモという感じはします。

すでに見た人

みち子が死を選んだのは、愛し合った相手が妻子持ちというだけでなく、実は兄だったということだからでしょうか？確かに不倫はいいことじゃないし、近親相姦は許される関係ではないでしょう。でもそれが死ぬほどの罪なのでしょうか？人を殺したわけでもないのに。
なんだか製作者たちは、不倫や近親相姦は万死に値する罪と言いたいように思えます。岡本綾が可愛く撮れていただけに、よけいにムカつきました。

さらに腹が立つのは、みち子が自分を殺すことになるとはいえ、母親を巻き込んだことです。
母親に当たる常盤貴子はみち子が自分の娘だとは知らないわけだから、彼女にとってみち子は、自分の赤ん坊を殺した見知らぬ女、てことになるでしょう。わざわざ店を開けてオムライスを作ってあげたのに、その見知らぬ女に子供を殺されて、常盤貴子が子供を産みたくないのならともかく、楽しみにしていたのに、これでは彼女の心に深い傷を負わせることになるのではないでしょうか。それともみち子が、父を知らない子育ての苦労から母親を開放しようという、孝行心とでもいいたいのかな。

堤真一が兄を助けようとしてもムリ、つまり歴史は変えられなかったはずなのに、何でみち子の場合は変えられたのでしょうか？みち子は死ぬ運命にあったということでしょうか。死ぬために彼女はタイムスリップした、というのは残酷すぎます。

予告編を見たとき、みち子に何か悪いことが起こるんじゃないかと思いましたが、その通りになりました。日本の予告編て、何でこうもネタバレが好きなんだろう。

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木更津キャッツアイ
ワールドシリーズ

まだ見ていない人

ぶっさん（岡田准一）の死から３年が経過し、バンビ（櫻井翔）はぶっさんにきちんとさよならを言えなかった後悔を抱えながら、市役所に勤める日々を送っていた。そんなある日、バンビは死んだはずのぶっさんの声を耳にして、バラバラになっていた木更津キャッツアイのメンバーを結集させるべく、所在が分かっているアニ（塚本高史）とマスター（佐藤隆太）を木更津に連れ帰る。彼らはぶっさんの「願い」をかなえるべく、あれやこれやの行動に出る…。

「木更津キャッツアイ」の映画版「日本シリーズ」から３年…もうそんなになるのか…ぶり、これでキャッツが最後！という作品です。
映画は確かに、これが最後と思える終わり方になっています。でも宣伝コピーの「涙が止まらねえ」とは逆に、あっさりとした別れが「キャッツ」らしいところでしょう。
ただ後半でのこの辺のエピソードは、どこか退屈してしまいました。前の「日本シリーズ」もそうでしたが、どうも宮藤官九郎の映画は後半で失速しがちの感じがします。シリアス度が妙に高くなってしまうからでしょうか。
それでも全体的なノリは楽しく、話は強引なところが多々あるけど、キャッツだし…てことで許せてしまいました。でもキャラの説明とか前作の映画版がどうとかいう解説は一切無いので、TVシリーズや映画版を見てない人には楽しめないかもしれません。

そうでない、シリーズになじみのある人にとっては、今回は前作から時間が経過しているということで、キャラの変わりようが見ものでしょう。特にうっちーは驚き!で、キャッツのメンバーが突っ込みを入れるシーンは大爆笑でした。
また今回はバンビが話を引っ張る形になっていますが、演じる櫻井翔本人の成長を思わせる頼もしさが見て取れます。

予告編でバレてるかもしれませんが、今回はハリウッドの某名作感涙野球映画のパクリ、てかオマージュみたいなエピソードがあります。お話では思いっきりタイトルを言っているので、これもギャグなんでしょう。早く見ればいいだろ!て突っ込み入れたくなるのは意図的だろうか?

ぶっさんが復活した時の周りのリアクションは、心霊ドラマのパロディみたいでした。こうなるとクドカンのホラーも見たい気もします。ま、怖くならんかもしれんけど。

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ぶっさんの父親が復活したぶっさんを見えなかったのは、彼がぶっさんを看取ったただ一人の人間だからだと解釈できると思います。ぶっさんもオジーも、ちゃんとバイバイを言えなかった人には見えたんじゃないでしょうか。

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出口のない海

1945年、アメリカ軍の攻撃を避けながら海中を進む潜水艦に４人の若者たちが待機していた。彼らは人間魚雷「回天」に乗って敵艦に激突するという任務を帯びており、出撃命令を待っていた…。

横山秀夫原作＆佐々部清監督の「半落ち」のコンビで描く、太平洋戦争末期に開発された秘密兵器「回天」の乗組員の物語です。
昨年公開された「男たちの大和」よりは反戦の度合いが高く、戦争の虚しさはそれなりに出ています。特に主人公の最後が「大和」以上に不本意と思えるのが、テーマらしい感じがしました。
でも、主人公の回天部隊への志願の動機がよく分からないし、彼の死にたいと思う理由もよく伝わってきません。そのせいか、主人公が家族と分かれるところや最後は感動的なシーンでありながら、涙がこぼれるまでには至りません。

主人公である並木を演じる市川海老蔵は、演技は悪くないのですが、見るからにオジさんで、学生役はムリがあります。彼の上官にあたる伊勢谷友介の方が下に見えてしまいました。
キャラクターは主人公よりも脇役の方が立っていて、特に伊藤整備士役の塩谷瞬が目立って美味しい役です。また潜水艦の副官を演じる田中実が、「ウルトラマンメビウス」で隊長役を演じてるせいか印象に残りました。
並木以外の回天の乗組員を演じる伊勢谷友介と柏原収史は、「笑う大天使」や「日本以外全部沈没」など、このところ映画でよくクレジットを見かけて、けっこう仕事してる感じがします。それに対してあと1人の回天の乗員を演じる、伊崎充則はずいぶん久しぶりに見たように思います。
仕事してるといえば、並木の彼女といえる美奈子を演じる上野樹里も、「のだめカンタビーレ」など、最近映画やドラマでよく顔を見るようになりましたが、この映画の彼女は清楚で好感が持てました。

「男たちの大和」と同様この映画でも、回天の訓練の描写は興味深いものがありました。回天の最終的な戦果が知らされないのが不満でしたが、機械の操作が煩雑で信頼性があれでは、神風ほど戦果は挙げられなかったのだろうと想像します。

映画館には年配の客が目立ちました。「男たちの大和」に比べると、この作品はいま一つ若者にアピールできていないようです。

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日本以外全部沈没

原因不明の天変地異でアメリカ大陸が1週間で海に沈む。その1週間後に中国大陸が沈み始め、そしてユーラシア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸が次々と海の下へと消えた。そして住処を失った海外の生存者が唯一残った陸地である日本へ続々と上陸し、日本は外国人であふれていく…。

筒井康隆の短編小説の映画化です。筒井氏はこの小説を当時ベストセラーになった「日本沈没」のパロディとして書いたようですが、今回の映画は樋口真嗣監督の「日本沈没」の、いかにもな便乗丸出しの企画というのが、面白いところです。
白人＆パツキンコンプレックスといった島国根性丸出しの内容で、鯨肉を食べるとか、海外で見せたらヤバそうないくつかのギャグシーンが笑わせてくれます。
特に北朝鮮の行動や、韓国と中国の首脳が「神社」に参拝するという、原作には無かったはずの、タイムリーなギャグは楽しめました。
しかし結構シリアスなエピソードも多く、ラストシーンは世界平和を訴えてるようで、ちょっといい感じです。

とはいえ、間延びするシーンが多くて、ところどころ退屈でした。特に「ニッポン音頭」は長すぎです。村野武範や中田博久のオヤジ踊りなんか、長々と見たくないし。
素人であろう安っぽい外国人俳優を使うのはまあ仕方ないし、逆にそのチープさが河崎実監督の映画らしく笑えるところですが、時間を気にさせないでほしいものです。
そんなことで、お話は「日本沈没」の方がまだ見れる出来でした。やっぱ、河崎実の映画ってこんなものでしょう。

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劇場版超星艦隊セイザーX
戦え！星の戦士たち

地球に残された「コスモカプセル」を奪取するために襲来した宇宙海賊から地球を守るため、未来からやって来た戦士「セイザーX」が戦っていた。そんな時、宇宙最強最悪の生命体であるボスキートが地球に飛来する。ボスキートは数多くの人々を吸収し、かつて地球を守ったジャスティライザーの姿に変えて、戦闘員にしてしまう…。

テレビ東京系で放映されていた特撮ヒーロー番組、超星神シリーズは「超星神グランセイザー」「幻星神ジャスティライザー」「超星艦隊セイザーX」と続き、３作目の「セイザーX」でやっと映画になりました。
その劇場版では、この時放映中だった「セイザーX」、その前のシーズンの「ジャスティライザー」、そしてシリーズ初代の「グランセイザー」の、３シリーズのヒーローが一同に揃うという、映画版らしい構成になっています。
「セイザーX」のキャラクターの活躍は現役だから当然でしょうが、この映画ではさらに「ジャスティライザー」でのキャラが、役者もそのままに再登場するのは久しぶりな感じで（あんまり見てなかったけど）嬉しくなりました。ただニセモノとはいえ、途中でジャスティライザーが悪役になるのは違和感を持ちます。着ぐるみを新しく作る金の節約のつもりじゃあるまいな？
「セイザーX」と「ジャスティライザー」のキャラはどっぷり共演なのに比べて、グランセイザーの出方は最後に、おまけみたいな感じだったのはもの足りませんでした。こちらも役者が出てほしかったけど、誰も出なかったのは製作側がギャラを渋ったせいではあるまいな？

この「セイザーX」、今の子供向けの番組ということで、オジさんにはあまりなじみではないでしょう。しかしこの中で、往年の特撮ファンが驚くモノが出ます。
それは「轟天」。それも「惑星大戦争」や「ゴジラ：ファイナルウォーズ」での轟天ではなく、あの「海底軍艦」の、初代まんまの轟天です。しかも出撃シーンや攻撃のシーンではちゃんと、伊福部昭氏のあの曲が流れるのには燃え！でした。
このヘンは特撮スタッフが、東宝の古株の川北組ゆえだったかもしれません。艦長を演じているのは峰岸徹で、役名も「神宮寺」！かっこいい役です。峰岸氏、子供向けの番組ならこういう、いい役も来るのかなあ。

それにしても、このシリーズでは宇宙人てみんな日本語か…？

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MEATBALL MACHINE
ミートボールマシン

ヨウジ（高橋一生）は、向かいの工場で働くサチコ（河井青葉）に好意を抱いていたが、ただ見ていることしかできない。ある晩、彼は自分の上司に迫られていたサチコを助けようとしてボコボコにされ、サチコは殴られた彼をアパートまで送り、２人はお互いに好きであることを知る。だがその後にサチコの様子がおかしくなった時、ヨウジが数日前に拾った正体不明の物体がサチコに襲いかかり、彼女は鉄の塊のような物体に変身してしまう…。

塚本晋也の出世作「鉄男」を意識したような、謎の生命体に寄生された人間たちが死闘を繰り広げるお話を、山口雄大氏＆山本淳一氏の共同監督で描いた作品で、グロくダークな、「鉄男」を変身ヒーローにした感じの内容です。
どちらの監督が映画の主導権を握っているのか分かりませんが、「地獄甲子園」や「魁！クロマティ高校」といった山口雄大氏の映画の中では、一番まともでストレートな話でしょう。
戦闘シーンの音楽がかっこいいながらも悲壮感があって、山口氏らしい「オイオイ！」と言いたくなるぶっ飛んだ描写の間に、哀感が漂います。
しかしこの映画、出血量が多い上に、子供が殺されるような不快な描写もあるので、残酷シーンが苦手な人は避けた方がいいです。

主演の高橋一生はなかなかいいのですが、どうもこの人、主演になるのはこういうマイナーな映画や、「怪奇大家族」といった深夜枠のドラマだったりで、いま一つブレイクできないのが惜しいところです。

この映画、渋谷のイメージフォーラムではどうもプロジェクター上映のようで、時おり走査線みたいな横線がモロに、特にキャラクターをロングで捉えている時、キャラの部分に出まくりだったのが気に障りました。
上映途中には画面が乱れて、メニュー文字らしいものまで画面に出てきたので、後で苦情を言ってやろうと思いましたが、映画が終わる頃にはすっかり忘れてしまっていました…。

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スケバン刑事
コードネーム＝麻宮サキ

渋谷の雑踏で１人の女子高生が爆死する。その頃、アメリカで暮らしていた麻宮サキ（松浦亜弥）は母親（斉藤由貴）がFBIに逮捕されたため、ニューヨークから日本に強制送還されてくる。特務機関の吉良（竹内力）に引き渡されたサキは、３日後に母親を釈放させることを条件に期間限定の特命刑事として、渋谷での爆破事件の関連を調べるべく、聖泉学園に潜入することになる…。

TVで人気だったシリーズから十何年ぶりかで復活した「スケバン刑事」です。今回はそのTV版、特に斉藤由貴が麻宮サキを演じたパート１の続編という形になっています。なので久々に登場した「あの人」やTVシリーズと新キャラの関連は興味深いところで、僕みたいにTV版を熱心に見ていた人なら、そういった点が楽しめることでしょう。

でもお話は迷走で、特に敵の目的がよく分からないし、あげくの果てはそんなことか？とがっくりきました。スピード感のあるイカしたオープニングタイトルの中で、脚本が丸山昇一というクレジット見たときにヤな予感がした通り、今の若者はこうなんだろうと、年寄りが想像して描いた感じの悪役像でした。
窪塚俊介のキャラは「あぶない刑事リターンズ」とカブってますが、これは同じ東映の映画だからでしょうか？製作者たちの想像力の貧困さに呆れるばかりです。映画としてなら、TV版の頃に作られた作品の方が、まだ話がストレートで良かったと思います。
だいたい、ネットのハンドルネームが「ロメオ」とか「ジュリエット」なんてありふれていて、誰でも容易に使えるでしょう。やけに人数が少ない「集会」は何のためか分からないし、このシーンで出てくるヲタクはただのバカにしか見えません。こういった部分も、単なる想像だけで作った感じがします。

サキ役の松浦亜弥はなかなかに合っている感じで、出たての時の南野曜子や浅香唯なんかに比べると悪くないと思います。彼女が初めのうちヨーヨーを上手く使えないのが面白い設定でしたが、いつの間に使えてしまっているのはちょっとがっかりでした。練習シーンくらい見せろって。
それに対して、石川梨華がヨーヨーの使い手になってる設定も面白いところでした。この石川のヤな女ぷりがかなり合っていて、素はこういう女なんだろうと思わせてくれます。
この石川のいるユニット、美勇伝からは他の２人のメンバーも出ていますが、岡田唯のムリめな関西弁は演技的にどうかと思います。でも個人的にかわいいと思うので、俺的にはOKですな。

このラストだとパート２もやりたそうですが、次は若いライターにシナリオを書いてほしいなあ。でも東映だとムリ…つーか、この映画あんまりヒットしてないみたいだから、どうなることやら。

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夜のピクニック

夜を徹して80キロを歩く「歩行祭」。高校生活最後の歩行祭で甲田貴子（多部未華子）は、一度も話したことのないクラスメイト・西脇融（石田卓也）に話しかけようと考えていた。２人の間にはある事情があって近づけないでいたが、それを知らないそれぞれの友人たちは彼らが好き合ってると思い、告白するようけしかける…。

本屋大賞を受賞した、恩田陸の小説の映画化です。
キャラクターが高校生ということで、この作品には多部未華子や石田卓也、西原亜希や加藤ローサや貫地谷しほり、といった最近映画やドラマでよく見るようになった、伸び盛りの俳優たちがけっこう出ています。
加えて近野成美や高部あいといった、グラビア出身でこのところドラマに出てくるようになったアイドル（そう言っていいのか？）も出ています。そういうことでこの映画にはフレッシュな、溌剌とした雰囲気があります。彼らのいい表情が撮れているし、キャラの個性は出ていたと思います。
ただお話自体は、当人にとっては深刻であろうけど、他愛ないといえば他愛ない話でしょう。前半は時おり意味の分からない夢想シーンや回想シーンがあり、それらで間を引き延ばした感じで、現実のシーンとかなり浮いた感じがして話に乗れませんでした。でも後半になってきてキャラがだんだん生きてきて、まあ楽しめるようにはなりました。ラストが爽やかで、気持ちよく見終えることはできます。
とはいえ深い感動というものはなく、原作小説の方がいいのだろうと思う出来です。

ちょっと悪役格の高部あいは、ミス・プレイボーイから出たコなので、ただのアイドルかと思っていたら、意外に演技が自然に見えてびっくりしました。

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オトシモノ

高校生の奈々（沢尻エリカ）は妹・範子と共に、入院中の母親（浅田美代子）の見舞いに行く途中、妹のクラスメートの孝（武井証）と出くわす。彼は定期券を拾って「僕死ぬんだって」と言うが、そこで奈々は不気味な女の影を目撃し、孝はそのまま失踪する。そして後日、範子が定期券を拾った後、行方不明になってしまう。一方、奈々のクラスメイトの香苗（若槻千夏）はボーイフレンドからブレスレットをもらうが、外せなくなる。彼を駅のホームで見つけた香苗は、そこに黒い女の影を見る…。

「水霊」「着信アリ Final」「親指さがし」など、今年もいくつか和製ホラーが作られていますが、どれも見れるものではありません。この「オトシモノ」も同様で、導入のアイテムとしてのオトシモノは面白いと思えるものの、結局何の意味もなしていないのにはがっかりです。
悪霊の目的も正体もよく分からないし、クライマックスに出てくるゾンビ軍団は全く必然性が無く笑うだけでした。ホラー描写も上手いとは言えず、怖くありません。

ただ、優等生の沢尻エリカと遊び人の若槻千夏、孤独感を抱える２人の友情シーンは感動的でした。ホラーではなく友情の話として見た方がいい映画でしょう。

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フラガール

昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町。石油に押される世の中で、ここにもリストラの波が迫りつつあった。そんな状況から人々の雇用を守るべく「常磐ハワイアンセンター」が立てられることになったが、人々の対応は冷ややかだった。そしてハワイアンダンサーの募集に、ここから抜け出すチャンスと、早苗（徳永えり）は親友の紀美子（蒼井優）を誘うが、希望者は４人だけだった。そしてSKDに所属していたという平山まどか（松雪泰子）がダンスの講師としてやってくる…。

福島県にある「スパハワイアンリゾート」＝以前の「常磐ハワイアンセンター」の立ち上げ時に、実際にあったことを元にしたお話です。
監督の李相日は「69 sixty nine」を手がけた人ですが、今回はあれがウソだったような出来ばえで、「スウィングガールズ」＋「プロジェクトX」といった感じの良作になりました。
適切なキャラ描写のおかげで後半は泣ける箇所かいくつもあり、客席からもすすり泣きの声が聞こえました。

ダンサーの中心となる蒼井優は、この作品の前の「ハチミツとクローバー」よりずっと存在感がありました。ダンスもとても上手に見えて、この映画の少し前に公開された「バックダンサーズ」なんぞ霞んでしまいます。
また彼女をダンスの世界に誘うことになる、早苗を演じる徳永えりも、途中で消えてしまう役柄ながら印象に残りました。
宣伝では南海キャンディーズのしずちゃんの出演が話題にされています。すごく上手いとは言えませんけど、悪くないと思います。

しかしハワイアンセンターのステージ、初回は盛り上がって感動だけど、毎日踊りをやっていくにつれてそんな感動も無くなり、段々人が少なくなっていくんだろうなあ…。

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アキハバラ@DEEP

ページ（成宮寛貴）、アキラ（山田優）、ボックス（忍成修吾）、タイコ（荒川良々）、イズム（三浦春馬）の５人は、傷ついた心を癒してくれたサイト「ユイのライフガード」で知り合い、秋葉原で一緒に「アキハバラ@DEEP」として事業を起こし、画期的な検索エンジン「クルーク」を開発する。そのベータ版を見たデジタルキャピタルの社長・中込（佐々木蔵之助）は、それを自分のものにしようとアキハバラ@DEEPを吸収しようとするが、ページたちに拒絶され、悪辣な手段を使い出す…。

小説が次々と映像化されている石田衣良原作の、秋葉原を舞台にしたお話です。
ヲタクが主人公という設定は、ヲタが特殊な人物でなくなってきた現代にふさわしい物語だと思います。確かに映画の前半、主人公たちが事業を考えていく展開は「アキバ」という感じがして気持ちがいいものでした。
しかし途中から暴力シーンが多くなってげんなりで、クライマックスは「死亡遊戯」か？と思いました。体力があまりないはずのヲタが主人公であるなら、もっと頭を使うのがそれらしい戦い方でしょう。アクションものになるのは違うというかパターンで、話の作り方がオールドタイプです。

アキハバラ@DEEPのメンバーは極度の潔癖症や、点滅する光で卒倒するといった、身体や心に欠陥があると見える奴ばかりですが、大多数のヲタクちゃんはもっと普通でしょう。このへんも、いかにも作った感じがしてしまいました。
彼らの中心である成宮寛貴は、どもりがひどいという設定で演技は大変だっただろうと思います。でもそのせいかいま一つ影が薄くて、忍成修吾の方が儲け役に見えました。
メンバーの中で一番目立っていたのは紅一点の、しかも一番元気のいい山田優で、足が長いおかげか格闘シーンはかっこよく見えました。しかし、この人が腐女子という設定でないのは何ででしょう？女ヲタの差別ではあるまいな。

敵役を演じる佐々木蔵之助は、親玉という貫禄がいま一つしませんでしたが、変態的な演技は合っていました。TV版で同じ役を演じた北村一輝の方が、貫禄があったかもしれません。しかしこいつ、明らかに犯罪者で、金を持ってるとはいえこんな奴についていく部下なんてそういないと思うぞ。
彼の携帯の着信がガンダムのビームライフルの音だったり、ホワイドベースの警報音が鳴ったりするのは、マニア心をくすぐられるシーンでした。なのに映画には、藤圭子の歌や緋牡丹お竜のシーンなんかが出てくるのが、よく分からないところでした。出すならアニメか特撮ヒーローでしょう。監督はヲタのことをあまり分からない、オジさんなのかもしれません。

クルークの概念はそれなりに画期的に見えましたが、使うのが少々面倒くさそうな感じがしました。名前はグーグルを意識した感じですが、グーグルの目指す形は、このクルークかもしれません。だから映画のスポンサーなのでしょうか。

映画館の観客は少なく、しかも男ばかりでした。公開２週目で大方の劇場で上映回数が減らされたのも、無理ありません。

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花田少年史
幽霊と秘密のトンネル

わんぱく坊主の花田一路（須賀健太）は、今日も母親の寿枝（篠原涼子）と激しいバトルを繰り広げた末、自転車で脱出する。その途中一路はトラックに跳ねられてしまい、奇跡的に一命を取りとめたものの、幽霊が見える力を授かってしまい、香取聖子という女子高生（安藤希）の霊に付きまとわれてしまう。さらに一路の本当の父親と名乗る弁護士の霊（北村一輝）も現れる…。

コミック原作の映画化。まあ、「シックス・センス」のコメディ版といった内容です。
主人公である花田少年の言葉は乱暴だし、家族（特に母親）は暴力的と、一見教育上良くないような一家ではあります。だけどその絆はしっかりしていて、「クレヨンしんちゃん」を思わせます。
その「しんちゃん」での良くできたエピソードのようにこの映画、親子の絆で何箇所か泣かされるシーンがありました。まあ、僕が幽霊モノに弱いせいもあるかもしれないのですが。
予告編ではそんなに面白い感じはしなかったのですが、細々ながら上映が続いているのも納得です。
ただ、クライマックスでのじいちゃんの船など、あれはどうなったんだ？と突っ込みたくなる、詰めの甘さが所々見られるのが惜しいところです。

幽霊ネタの話とはいえ、ホラーという感じはないので、怖くはありません。なのでクライマックスでの、幽霊同士の戦いのシーンはかなり違和感がありました。「異人たちの夏」みたいに、理解の無いプロデューサーあたりが無理やり入れたのかもしれません。
またこのバトルシーン、合成がいまいちなのですが、冒頭の一路が空を飛ぶシーンなんかも色の違いが出てしまったりして、全体的に合成の出来はよくありません。

しかし北村一輝って、こういうヘンな役が合うよなあ…。

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バックダンサーズ!

同じ高校を中退になった、ダンス好きのヨシカ（hiro)とミウ（平山あや）はジュリ（長谷部優）と知り合い、３人で踊るようになる。ある日ジュリが音楽会社にスカウトされ、ヨシカとミウはともえ（ソニン）と愛子（サエコ）を加えた４人で、ジュリの「バックダンサーズ」として踊ることになる。だが男好きのジュリはやがて突然の結婚宣言をして、芸能界から引退してしまう。行き場をなくしたバックダンサーズは根性だけがウリの新人マネージャー（田中圭）を押し付けられる…。

平山あや、hiro、ソニン、サエコといった人気の若手女優＆歌手４人の主演で描く、サクセスストーリーといった内容です。彼女たち４人の背景の設定はありふれてる感じはしますが、その個性はちゃんと描き分けられていて、特にサエコとソニンは性格がはっきりしていて面白いキャラになっています。
しかし彼女たちが抱えるエピソードが切れ切れで深みが無いし、脇のキャラがいかにも作ったようにパターンで、こんな奴いねえだろ！と呆れるばかりでした。お話のあまりの食い足りなさに、実はこの映画、テレビドラマにするための原作じゃないか？と思ってしまいました。

トレーニングを重ねたというだけあって、主人公４人のダンスはそれなりにかっこよく撮れています。しかしクライマックスのダンスは４人のためのはずなのに、他のダンサー達のダンスが強烈で彼女たちの影が薄くなってしまい、主役に見えなくなってしまいます。
またここで起こるトラブルは、映画の冒頭で４人の今があらかじめ分かってしまうおかげで全然サスペンスにならず、処理も中途半端で何の意味もありません。
その後のラストカットも、ああいう形ならば、エンドタイトルは彼女たちのコンサートで締めるべきでしょう。

脇キャラのオジさんバンド「スティールクレイジー」は、ボーカルを演じている陣内孝則が、昔歌ってた頃はあんな感じだったかもと思わせます。つのだひろもおいしいキャラで、彼らの方が主人公たちより面白味がありました。監督はオジさんだから、彼らの気持ちの方が入れ込めたかもしれません。

監督の永山耕三はテレビ畑の人で「東京ラブストーリー」や「ラブレボリューション」を手がけたそうですが、この「バックダンサーズ!」の出来を見ると、番組が人気があったのは演出のせいではなく、シナリオのおかげであったのかと思いたくなります。
映画には監督の「想い」が感じられず、「ウォーターボーイズ」や「スウイングガールズ」みたいな路線を作れば受ける、とマーケティングだけで作った映画に見えました。

金券屋でこの映画の鑑賞券が850円で売られていました。いろんな企業にばら撒いたゆえかもしれませんが、まあこれくらいが妥当な額でしょう。

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ミス・ピーチ

福島県の桃のおいしさをアピールするミス・ピーチ。ミキ（林由美香）と、準ミスのサキエ（薫桜子）、アケミ（小島三奈）は、「ミスフルーツ・インターナショナル」の日本代表の座を手に入れるため、キャンペーンをがんばっていた。ミキには17年前に手放してしまった子供がいたが、立派な大人になって一緒に暮らす夢があった。ある日ミキは、週刊誌の記者・宇都宮（岡田智宏）の取材を受けるが、彼の偏見に満ちた態度にキれる。だが宇都宮は後日、ミキの真摯な姿を知り、惹かれるようになる…。

AVやポルノ映画など数々の作品に出演して、2005年6月に35歳の若さで急逝した林由美香の、遺作となってしまった作品です。
この作品の監督と脚本を手がけた、吉行由実は林由美香とは過去に何度も共演し、監督もしたことがあるそうで、今回の作品はおそらく林由美香の良さを一番知る彼女が、その魅力を最大限に生かした内容になっています。
お話はラブコメ＆サクセスストーリーといった形で、林由美香は表情が豊かで、オーバー気味なコメディ演技がハマっています。予算が少ないのが分かってしまうシーンがあるのは仕方ないところですが、終りも爽やかで気持ちよく、下手なTVのラブコメより断然面白い内容です。もしこの映画をフラっとポルノ映画館に入って何の予備知識も無く観てたら、すごくいい拾い物をしたと思ったことでしょう。

映画の元々のタイトルは「ミスピーチ：巨乳は桃の甘み」だったようで、DVDでは本編にそのタイトルが残っています。映画が好評だったせいか一般館（たぶんテアトル新宿）で上映する際に、タイトルをフツーの映画ぽい感じにしたのでしょう。

もし林由美香が亡くなっていなければ、この作品を契機にして今頃はポルノでない映画やTVに進出して、キュートな魅力を広めていたかもしれません。本当に惜しいことです。

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マスター・オブ・サンダー
決戦!!封魔龍虎伝

三徳（倉田保昭）と源流（千葉真一）たちは若い時、黄泉と現世の征服をたくらむ悪霊・小野篁（松村雄基）を封印した。それから長い年月が経ち、篁は再び行動を開始し、彼の手下の悪霊に襲われた三徳の弟子たちは全滅してしまう。ただ一人残ったアユミ（木下あゆ美）は、悪霊を封印する力を持つ子孫を探す旅に出る…。

倉田保昭とソニー千葉。海外でも活躍する日本の２大アクションスターが手を組んだ映画です。
でも注目は御大ソニー千葉と倉田保昭のアクションのみで、「お話」と書くのもはばかられるような、あまりにもイージーすぎる展開には呆れるばかりでした。
話で見てはいけない映画で、劇場で見たと言うのが恥ずかしくなるほどです。良くてDVD向けの映画（映画にもなっていないと思うけど）でしょう。

御大以外の出演者には「特捜戦隊デカレンジャー」の木下あゆ美、「仮面ライダー555」の芳賀優里亜、「仮面ライダーブレイド」の椿隆之と竹財輝之助、「仮面ライダーカブト」の永田杏奈、「ウルトラマンマックス」の長谷部瞳、「セーラームーン」の小松彩夏といった、特撮ヒーロードラマに出ていた若手俳優がかなり顔を見せています。なのでそういう番組を見ている人や、アイドルが好きな人なら少しは楽しめるかもしれません。

劇場は広くないところでしたが、観客は男ばかりでした。なるほど。

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親指さがし

武（三宅健）には８年前、小学校の友人たちと「親指さがし」というゲームをした時に同級生の由美子が行方不明になった過去があった。20歳の同窓会で当時の仲間の智彦（松山ケンイチ）、知恵（伊藤歩）、信久（尾上寛之）、綾（永井流奈）と再会した武は、もう一度５人でゲームをして由美子を捜そうとする。その翌日に信久が殺され、その親指が切り取られていた…。

V6の三宅健主演で描くお話で、心霊ホラーに見えて実は…という展開になります。
しかし、こんなパターンなオチを臆面もなく描くスタッフの神経に、ただただ呆れました。ホラーシーンも思わせぶりな描写ばかりで、全然怖くありません。監督は「ニライカナイからの手紙」を手がけた人だそうですが、ホラー向きではないように思います。
クライマックスは泣きを狙ってるようですが、キャラに全然共感できなくて感動なんぞありません。こんな都合いい話で「心の闇を見つめろ」なんて言ってほしくないぞ。

主役グループ５人の個性はそれなりに出ています。特に松山ケンイチがフツーの男を演じてるのは珍しい感じがしましたが、やはり「デスノート」や「男たちの大和」の方が上手かったように見えました。

劇場には10代20代らしきねーちゃんたちが目立ちましたが、たぶんＶ６三宅のファンなのでしょう。そんな人のみのための映画です。

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U　D　O　N

まだ見ていない人

コメディアンとしての成功を夢見てN.Y.に行った松井香助（ユースケ・サンタマリア）は芽が出ず、故郷である香川県に戻ってくるが、うどん作り一筋で生きてきた父は歓迎しない。ある日香助は、ひょんなことから恭子（小西真奈美）という方向音痴の女性と行動を共にすることになるが後日、友人の庄介（トータス松本）の口ききで地元の雑誌社に就職し、そこでミニコミ誌の記者をしている恭子と再会する。２人が一緒にいた時に食べたうどんの美味しさから、何気なくそこにあった「うどん」の魅力に気がついた彼らがミニコミ誌で特集をすると、それは一大ブームに発展していった…。

「踊る大捜査線」の本広克弘監督が、「サマータイムマシン・ブルース」に続いて故郷である香川県を舞台に、その地の「ソウルフード」である「うどん」をネタにしたお話です。
映画には「踊る大捜査線」のように情報量がかなりあり、特に映画のメインであるうどんの食べ方や食べさせ方のバリエーションなど、そのウンチクの多彩さが楽しくて奥深さを感じさせ、讃岐のうどん屋の暖かさもよく出ていて、ソウルフードと言われるのも納得でした。
てことで映画を見終わると、讃岐うどんが食べたくなります。渋谷で見たので「はなまるうどん」に行ってしまいました。

お話の展開は「踊る大捜査線」以上にパターンで先が読めるし、都合が良すぎて突っ込みたくなるシーンも目立ちます。映画で一番面白いパートは前半のうどんがブームになっていくくだりでしたが、後半でも部分的に泣ける箇所がありました。でもこれは、僕が幽霊ネタに弱いせいかもしれません。

しかしこの映画、やたらと入るナレーションがウざく思いました。映画なんだから映像で語らせるべきで、「あなたのソウルフードは何ですか？」なんて余計なお世話です。しかも小西真奈美の声なのに、なぜ恭子ではない第三者の視点で語らせるのか、理解できません。
映画は前半が主人公たちが巻き起こすうどんブームの話、後半が主人公と実家との関係の話という、２部に分けられるような構成になっています。でもこの２つのパートはもっと密接に結びつけることが出来たはずです。
キャプテン・ウドンなんて話に直接関係ないキャラのエピソードもあったりして、２時間半もの長さは要りません。
またキャラクターの背景が分からないのも、面白味に欠けるところです。特に恭子はどういう暮らしをしてるのか分からないし、香川にいる理由もろくに語られません。主人公がうどん屋を嫌うようになる理由も説明が無く、取ってつけたように見えました。
食べ物ネタの映画としてはやはり、故伊丹十三監督の「タンポポ」の方が上の出来だと思います。

主人公を演じるユースケはやっぱりユースケのまんまで、「踊る大捜査線」シリーズの真下正義と変わらないようなキャラでした。
トータス松本は自然な感じで、楽しく演じているように見えました。ユースケとトータスは前にTVで共演していたことがあったというだけあって、息がぴったりのいいコンビぶりを見せてくれます。「バンザイ」はまあ、ご愛嬌でしょう。

「とくダネ」の小倉智昭らメインメンバーや中野美奈子アナ（香川出身だから？）が顔を見せるところは、いかにもフジテレビが製作に絡んでるらしいシーンです。本広監督とは「踊る大捜査線」での名コンビで、この「UDON」でもプロデューサーである亀山千広が出てくるシーンは、実際の仕事のパロディみたいで笑えました。
佐々木蔵之介や藤沢恵麻や松本明子といったゲスト出演者がいろいろ出てくるのも、フジテレビ資本という感じがしました。でも大泉洋て北海道じゃないのかなあ。
あと、ゲストというより脇キャラという扱いで「サマータイムマシン」のキャラクターが出ているので、あの映画を見た人は楽しくなるかもしれません。ただしこれまた出ている人たちは脇役で、瑛太や上野樹里ではありません。

映画にこんぴらさんが出て来るのは、行った自分としてはうれしいシーンです。あの石段を走るのは、キツイぞ…。

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ラストシーンはヒロインが映像を見ているという、本広監督の失敗作「スペーストラベラーズ」と同じパターンでした。しかもその映像だと、主人公はハリウッドスターになったように見えました。うどん屋が上手くいきそうなのにアメリカにまた行くという展開だけでも唐突なのに、ハリウッドスターというのはそれまでの話と全く関連が分かりません。
せめてアメリカでうどんチェーンでもやるなら、まだ分からないこともありませんが、ハリウッドスターは違うでしょう。故郷でうどん屋継ぎました、て終わりじゃなんでいけないのかなあ？

うどんブームが終わってから主人公の父親が倒れるという展開は、「第１部終了」みたいで都合よすぎに見えました。主人公が起こしたうどんブームのおかげで父親が働きすぎになって倒れたというような、主人公が父親を追い詰めたような構成にした方が、前半と後半の結びつきが密になったと思います。

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ハチミツとクローバー

まだ見ていない人

美大に通う竹本（櫻井翔）は、世話になっている教授・花本（堺雅人）の家で開かれた親睦会で彼の親戚であるはぐみ（蒼井優）を見て恋心を抱く。そんな時、竹本の隣の部屋に住む、放浪の旅から帰ってきた先輩・森田（伊勢谷友介）がはぐみの非凡さを認める。当初警戒していたはぐみも、才能のある森田に惹かれていく…。

アニメにもなってTVで放映された、人気コミック原作の実写映画化です。
メインのキャラクターは竹本を含めて５人。彼らの恋する想いがみんなすれ違うけど、ヘンに違う相手とくっついてドロドロになるような、そういう昼メロのようなアホらしい展開にならなくて、爽やかに見れました。
キャラたちが結局みんな優しくて、これが原作が支持されている理由なのかもしれません。悪く言えば他愛ないとも言えますが、まあこういう方が意外にリアルなのかなとも思います。

はぐみの描く絵と森田が作っている彫刻は抽象的過ぎて好きにはなれませんが、彼らがそういう絵や彫刻を創作している姿勢に、真剣勝負といった感じの真摯さが出ていてるのは好感が持てました。コミックが原作ということで軽めの筋立てという印象がありましたが、こういう風に作品と正面から向き合っている姿勢に、話の説得力が出ているように思います。

物語の主人公は一応竹本なのですが、彼よりも森田の方が目立っています。やっぱ「いいひと」は強烈な個性の前には薄れてしまうのでしょう。でも竹本の、部屋にお城のプラモやガンプラがあったり、城のことを語らせると止まらなくなるヲタぶりは笑えて、親近感が持てました。
伊勢谷友介と関めぐみは同じコミックが原作の「笑う大天使」にも出ていますが、あれよりもこの「ハチクロ」の方が上手いし、存在感がダントツでした。これがシナリオと監督の差なのかもしれません。
花本教授を演じる堺雅人の、はぐみや竹本を心配しながら見守る姿勢は、彼に合った感じがしました。

エンドタイトルにボーカル曲が２曲も流れたのは余計に思いました。スピッツの曲１曲で十分で、その後の嵐の曲は余計です。いかにもCDを売るための営業戦略、という感じがします。

しかしなんでこれ、「ハチミツとクローバー」てタイトルなんだろう…？

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ラストのはぐみのアップはカメラが手持ちのようで、ブレるのが気になりました。肝心なシーンなのに、何で固定にしなかったのでしょうか?

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時をかける少女

親友の千昭や功介と楽しく高校生活を送っている紺野真琴は自転車事故の瞬間、昨日に戻っていた。そのことを叔母の芳山和子に相談すると、それは「タイムリープ」という過去に飛べる能力だという。真琴はやがて日常生活で気に入らないことをなかったことにしようと、気軽にタイムリープを繰り返していく…。

筒井康隆原作で、過去に何度かTVや映画になっている「時かけ」。しかし今回のアニメ版は、主人公が原作と違うキャラクターで、時代設定が21世紀の現代という、いわば「ネクストジェネレーション」と言うべき筋立てになっています。
主人公である真琴は積極的な性格で、ちょっとお軽いところが現代らしいところです。映画の雰囲気はそんな真琴に引っ張られるように、有名な大林監督の物静かな「時かけ」とは違う明るいタッチで進みます。過去をどんどん変えていく展開は、「バタフライ・エフェクト」のコメディ版という感じがしました。
でもただ軽いだけでなく、話が進むうちに「今」という時間の大切さが現れてきて、真琴の想いにいつしか同化してしまいました。泣くまでは行きませんでしたが（でも泣いてもおかしくはない）爽やかな気分で見終われる作品です。

絵に影が無いなど、作画に手は込んではいませんが、初めと終わりで何か真琴の顔が違ってるような、ちゃんと成長した印象を受けてしまいました。所々の、日常の何気ない風景のインサートも、ありえないファンタジーに上手いリアル感を与えています。
主題歌も内容に合っていて、TEPCOひかりのCMでおなじみの奥華子の澄んだ歌声が、心地よく聞こえました。

原作の主人公である芳山和子は今回、成長した姿で登場します。彼女が出てくるのが原作とリンクする箇所でしょう。彼女の仕事場が東京国立博物館とされていて、よく行ってる自分としては嬉しい舞台でした。

声の出演は、真琴にCMに出ている仲里依紗、千昭に「蝉しぐれ」の石田卓也、芳山和子に連ドラの脇役でよく顔を見せる原沙知絵など、実写系の俳優がけっこう起用されています。ただ谷村美月が演じる声のキャラはあまり出てないし、性格もおとなしめの設定でもったいない使い方でした。

監督の細田守氏は「ハウルの動く城」を当初監督するはずだった人ですが、この「時かけ」を見て、やはりこの人のバージョンの「ハウル」を見たい気がしました。あの後半のゴチャゴチャが、もっとすっきりしたかもしれません。
しかしこの「時かけ」が、宮崎の息子の「ゲド戦記」と同じ時期に公開というのは、因縁めいてるように思います。

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ゆ　れ　る

東京でカメラマンとして成功している猛（オダギリジョー）は母の一周忌で帰省する。彼は実家のガソリンスタンドを継いだ兄の稔（香川照之）と、そこで働く幼なじみの智恵子（真木よう子）と再会し、３人で近くの渓谷に行くことにする。だが猛が稔と智恵子と離れて写真を撮っている間に、智恵子が渓谷にかかる吊り橋から転落してしまう。猛はそれをそばにいた稔のせいではなく、事故として処理しようとする…。

「ゆれる」というタイトルが全てでしょう。兄弟の話ですが、憎悪や愛情とか色々な感情が交錯し、さらに田舎のイヤらしさなんかも見えたりして、かなりドロドロした話になっています。一人っ子の僕には分かりませんが、兄弟というのはこういうものなのでしょうか…？
映画はキャラクターの気持ちや行動を全て説明することはしないで、観客の想像に委ねることで色々な解釈をさせてくれます。
それには役者の演技力が重要になりますが、やはり主演の香川照之が圧倒的な存在感を見せ付けてくれて、特に彼の「笑顔」の捉え方は人によって様々でしょう。そして弟を演じるオダギリジョーも、兄への刻々と変わる複雑な想いを上手く出していて、特に彼らが相対するシーンは息詰まる迫力でした。
脇役では特に、ガソリンスタンドの店員を演じる新井浩文が、「ギラッ！」と擬音をつけたくなるような目の変化の演技に鬼気迫るものを感じました。またバラエティ畑の木村祐一に検察官という意外なキャスティングがされていますが、棒読みのような朴訥さ？に不気味さが感じられる、奇妙な味のあるキャラになっています。

倒れた徳利からの酒が足に垂れるというような、何気ないカットなのに、所々ハッとする描写がありました。

映画評ではこの作品、「ケインとアベル」と言っているものがありますが、僕はオダギリジョー演じる猛を「タケル」と読ませていることで、「ヤマトタケル」を連想してしまいました。そういえばヤマトタケルの兄は天皇かそれに近い地位で、タケルは常に兄に疎まれて国外の敵を征伐に行かされていた、と仲が良くなかったような…。

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ゲ　ド　戦　記

まだ見ていない人

多島海世界のアースシーでは、人間界と袂を分けたはずの竜が出現するなど、異変が起こり始めていた。そんな事態を憂れう国王に息子のアレンは憎悪の刃を向ける。一方、世界のバランスが崩れている原因を探る旅に出ていた大賢人ゲドは、国を捨てて放浪していたアレンを見つけ、旅の共とした。だが都城ホートタウンで別行動を取ったアレンは、人買いに捕まってしまう…。

人気があるというファンタジー小説シリーズ「ゲド戦記」を、スタジオジブリの宮崎駿氏の息子で、自身も原作のファンであるという宮崎吾朗氏が監督したアニメ作品です。
スタジオジブリブランドの映画ではありますが、テンポはゆったりめで、従来の「宮崎アニメ」のような血湧き肉踊るとかいう、動画的な面白さはあまりありません。あくまでも宮崎アニメとは別物、と割り切って見れば楽しめると思います。

映画で一番気になったのは、タイトルに「戦記」とついているし、世界に異変が起こっているという大風呂敷を広げた設定なのに、だんだんスケールがローカルになってしまう展開でした。「人間の頭が変になってる」のように現代を意識したような設定やセリフが興味を持たせますが、結局なぜそうなったのかうやむやで、何の解決もされていません。
後になって「あれは何だったんだ？」と思う箇所もかなりあります。

また、アニメ映画なのに背景の人物とかがあまり動いていないのは、手抜きのように見えて気になりました。CMとかの宣伝で流れているテルーの歌も、動かない景色をただ長回しで見せられたようで少し退屈でした。唐突に出てくるのも何かなあ…。ネットで「外道戦記」と書かれてしまうのも無理ありません。

岡田准一や菅原文太などメインのキャストの声はみんな合ってたと思います。特にクモ役の田中裕子のボソボソとしたしゃべり方は、リアルで感心しました。部下のウサギを演じる香川照之はドラマでは悪役もよくやっていますが、こうも単純な悪役は珍しいのではないでしょうか。
しかしチョイ役にまで、内藤剛志や倍賞美津子のような有名俳優を使う必要があったのでしょうか。まあ、ジブリアニメだから出演したいと言ってきたのかもしれませんが。

初監督である宮崎吾朗氏を、経験豊富な父親の宮崎駿氏と比べるのは酷かもしれません。でもこうも大宣伝をしていると、観客はどうしても同レベルの作品を期待してしまうでしょう。全国公開よりも単館公開が相応しい内容だったかもしれません。
いつまでもジブリがトシである宮崎駿氏に頼れないというのは分かりますが、やはりこの人が監督したモノが見たかった気はします。

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映画にはアースシーとかいう単語はほとんど出てきません。なぜ竜が出てきて、共食いしたか分からないし、テルーが竜に変身した意味や彼女の本名を出した意味も謎です。

お話は途中からアレン＆ゲドとクモの戦いの話になってしまい、スケールが尻すぼみでした。
てことで世界がおかしくなったのはクモのせい、と映画は言ってると思ったのですが、監督のインタビューによると、まだ世界は均衡を取り戻してはいないそうです。でも映画のラストには特にそう見える描写も無く、悪を倒してめでたしめでたしだけのように見えました。
世界が元に戻ったとは明言していないけど、だからといって観客がそういう解釈をしてくれるでしょうか？後で思えば思うほどこの映画、監督の独りよがりが目立つ内容でした。プロデューサーの鈴木敏男、ブレーキかけられなかったのかなあ？

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バルトの楽園（がくえん）

第一次世界大戦中の1914年。中国・青島を占領していたドイツ軍は参戦した日本軍に蹴散らされ、4700人のドイツ兵が捕虜として日本に送還され、各地にある収容所に振り分けられた。そんな中、厳しい生活を強いられていた捕虜たちが、徳島県鳴門市にある板東俘虜収容所に移送されてくる。所長の松江豊寿（松平健）は彼らに寛容な待遇を約束し、実際そこにはビールやパン工場や印刷所など、あらゆるものが揃っていた…。

今や聞いたことがない人はいないかもしれないベートーベンの「第九」。これが日本で始めて演奏されたという、第一次世界大戦中の板東俘虜収容所での史実を元にした物語です。
映画にはハラハラドキドキといったサスペンス的なシーンはあまりなく、ひたすら日本人とドイツ人の友情で泣かせる、ベタと思うような美しい話です。
映画で描かれているエピソードは大方が事実だそうですが、少し前に公開された同じ第一次大戦が舞台であった「戦場のアリア」のような、史実を元にして人間のあるべき姿の理想を描いた話、というところでしょう。

責任逃れや事なかれ主義が目立つ今の世の中、この映画みたいなことが起こりえるでしょうか？現代では松井が持っていたような「矜持」は失われてしまったかもしれません。
そうであっても「戦場のアリア」と同様、人間の憎しみの想いは心の持ちようで変えられる、てことを映画は言いたいかもしれません。かつてこういうことが本当にあったという事に、まだ希望が持てるのかもしれません。中東やアジアで相変わらず憎しみが続いている現在に、ふさわしい話でしょう。

状況のナレーションを、若いドイツ兵が母親へ宛てた手紙という形で、ドイツ人の役者に日本語で語らせていたのは面白いやり方です。ただ冒頭のナレーションは「男たちの大和」みたいに記録映画ぽい感じで、ここはいかにも東映というか、オジいさん監督の感性に見えました。
映画のペースは早くも無くゆっくりでもなく、良く言えば万人受けといったところでしょう。設定が古い時代のせいか、高年齢層が目立つのは仕方ないかもしれません。

映画には神戸の有名なパン屋、「ビゴの店」のモデルかと思うキャラがいて、見終わった後に支店のあるプランタン銀座に行きたくなりました。そんなふうにもしかしたらこの収容所が、ソーセージやバームクーヘンといった、ドイツの食べ物や文化が日本に広まるきっかけになったかもしれません。後に締結される日独伊の三国同盟も、こういった日本人のドイツへの親しみゆえという伏線があったかもしれない、と想像したくなりました。
映画を見る前は、なぜドイツ人が日本に収容されたのか不思議でしたが、日本も第1次大戦に参戦していたとはこの作品で初めて知りました。第２次大戦に比べるとこの時代の事はあまりTVや映画には取り上げられることが無いせいか、知らなかった歴史も学べる映画です。

松平健が演じる松江の人間像はちゃんと描かれていて説得力があるし、ドイツの兵隊たちもそれなりのキャラクターを与えられてるのに比べて、総督であるハインリッヒの人間像があまり見えないのが残念でした。なぜあそこまで皇帝を信じていたのか、よく分かりません。せっかく「ヒトラー～最期の12日間～」のブルーノ・ガンツが演じているのに。

エンドクレジットの後にもシーンがありますが、単なるイメージというか監督の願望みたいで、余計に見えました。

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大 奥

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鉄コン筋クリート

鉄コン筋クリート

N A N A 2

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パ プ リ カ

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武 士 の 一 分

武 士 の 一 分

地下鉄に乗って

木更津キャッツアイ ワールドシリーズ

出 口 の な い 海

出 口 の な い 海

日本以外全部沈没

日本以外全部沈没

劇場版 超星艦隊セイザーX 戦え！星の戦士たち

劇場版 超星艦隊セイザーX 戦え！星の戦士たち

MEATBALL MACHINE ミートボールマシン

MEATBALL MACHINE ミートボールマシン

ス ケ バ ン 刑 事 コードネーム＝麻宮サキ

ス ケ バ ン 刑 事 コードネーム＝麻宮サキ

夜のピクニック

夜のピクニック

オ ト シ モ ノ

オ ト シ モ ノ

フ ラ ガ ー ル

フ ラ ガ ー ル

アキハバラ@DEEP

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花 田 少 年 史 幽霊と秘密のトンネル

花 田 少 年 史 幽霊と秘密のトンネル

バックダンサーズ!

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ミ ス・ピ ー チ

ミ ス・ピ ー チ

マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝

マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝

親 指 さ が し

親 指 さ が し

U D O N

ハチミツとクローバー

時をかける少女

時をかける少女

ゆ れ る

ゆ れ る

ゲ ド 戦 記

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