change the World |
「デスノート」の人気キャラ、Lのスピンオフムービー。Lがキラとの戦いの決着後、バイオテロの脅威と戦うお話です。
映画の冒頭で、ノベライズ版で語られる「ロサンゼルスBB事件」に触れているし、ワタリやリュークやミサがちょっと顔を見せます。またラストで原作とつながる感じのシーンがあるなど、「デスノート」を知っている人には楽しめる部分がチラホラあります。
逆に言えばこの映画、「デスノート」を見てない人には人間関係で少々、分りにくいところが出ることでしょう。またLがアクションを見せるシーンでは、「デスノート」を見ていない人には、あのLがアクションをしてる!とは驚けないと思います。ただこの部分、Lが普通のキャラになってしまったようにも見え、違和感はあります。
しかし本筋のお話は「デスノート」とは全く関連しないので、あの映画を見ていない人でもついていけるかもしれません。ラストには感動的なシーンもあり、このところ不作気味に見えた中田秀夫監督の映画としては、面白い方の出来です。
ただ人が、それもいい者のキャラが死ぬシーンでのホラー的な演出はやめてほしいところでした。このカントクは、キャラクターに愛がないのかね?
映画の悪役がやっていることはいわば「環境テロ」ともいえると思います。この映画の公開前に調査捕鯨に反対するグループ「シーシェパード」の事件があったので、ちとリアルな感じがしました。
南原清隆がFBIの人間で出てきますが、FBIという感じが全くしなくて、映画で最大のミスキャストでした。バラエティじゃあるまいし、何故彼をキャスティングしたのか疑問です。キャラクター自体も、ただLに協力するだけで面白味がありません。
映画の冒頭で、最近新進著しい波岡一喜氏が出ています。英語を話すキャラというのは珍しいと思いますが、発音はまあ…。
「獣拳戦隊ゲキレンジャー」で大悪役ロンを演じた、川野太郎がチラリと顔を見せています。「デスノート」ではウルトラマンマックスが出ていたし、このシリーズ、特撮系は好みかな?
しかしL、なんで夜神総一郎の助けを求めなかったんだろう…(製作の事情だろうな、きっと)。
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新潟中越地震での実話を元にしたお話。犬と子供と災害というネタで、これはもう泣かせ狙いの企画と分かります。
話は確かにそういう要素の内容なのですが、泣くのはクライマックスだけかと思っていたのが、映画の前半から涙がこぼれてくるシーンがチラホラ出てきたのは予想外!でした。子供と犬だけでなく、家族や地域の人々との絆もしっかり描かれているおかげで、感動のポイントが多く、各エピソードの展開が期待通りで、ちゃんと泣かせてくれます。
マリと兄妹を引き離すことになった自衛官に救いのシーンがあるなど、キャラの配置も上手く、不快になるようなシーンはありません。2008年度正月の日本映画で一番のヒットも納得の一本です。
映画は主人公の兄妹が下校時にしりとりをしているシーンで始まります。単純なしりとりのせいか、答えを自分の心の中で言ってしまい、一気に映画に引き込まれてしまいました。またこのシーン、2人が途中で会う近所の人たちと交わす会話で、人間関係の説明になっているのも上手い見せ方です。
また兄妹の母親の死を、ナレーションで「死んだ」と言うようなパターンを使わないで、仏壇と手紙で見せるやり方も、上手いところでした。この出来事が主人公一家の各人の行動の伏線になっているのも、設定が生きています。
マリたち犬はもちろんですが、映画の主人公ともいえる、マリを拾ってきて世話をする妹・彩を演じた佐々木麻緒、そして妹思いの優しい!兄・亮太を演じる広田亮平の、子役2人の演技も出色でした。彼らの父親を演じる船越英一郎も、いい人キャラが似合っています。
地震は大きいのが1回来て終わるわけではなく、それ以後もかなり大きい余震が何回も襲う、という描写がドキドキさせられて怖いシーンになっています。しかしこれが本当の地震災害なのでしょう。備えをしなくてはいけない、と思わせてくれます(まず家具の支持棒か)。
映画の舞台となった山古志は闘牛で有名だそうですが、闘牛場の形が似ていることで、闘牛のシーンでは隠岐の島を思い出しました。もしかしてロケしてたりして?
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天 涯 の 貴 妃 |
東映が2007年末に放つ時代劇。前年の2006年末の東映系は「大奥」がそこそこ売れたようなので、また時代劇ということかもしれません。しかしあれが売れたのは時代劇であるということより、ドロドロのTVシリーズ「大奥」の映画版である、という理由の方が大きかったのではないかと思います(僕はそうでした)。
主人公・茶々を演じる和央ようかは、宝塚で男役をやっていた人だそうです。予告にも出てくる、茶々が西洋の甲冑のようなヨロイを着るシーンはたぶん、史実ではなく(ドラマだからそういう描写は別に構わない)、和央のために用意されたシーンでしょう。ジャンヌ・ダルクかい!と突っ込みたくなるシーンでしたが、彼女には合っていて、やはり男役だと思わされます。
とはいえこの人、映画の大筋を占める着物のシーンはあんまり合っていない感じだし、正直言って可愛いとは言い難い顔立ちだし(目が猫のように見えるシーンなんか怖い!)、これで秀吉が惚れるのだろうか?と思います。
この茶々役、企画当初は米倉涼子がキャスティングされていたのが、米倉がNGになって和央になったといううわさがありますが、確かに米倉嬢の方が納得できたことでしょう。
茶々の少女時代の方がまだ可愛げがありましたがそれも道理で、この時代の茶々を演じているのは「セカチュー」で柴咲コウの少女時代を演じた菅野莉央です。でも目が少し釣り上がり気味のところなんか、和央に似た感じはあります。
茶々の妹・小督を演じる寺島しのぶは和央より年下だそうですが、正直年が上のオバハンに見えてしまい、妹に見えません。
それに織田信長を演じる松方弘樹も貫禄はありますが、年っぽすぎる感じで、合っていません。キャストは東映系の役者に配慮したように思えますが、こういうミスキャストが目立ちます。
そんな中で、北政所を演じる余貴美子は不気味さが漂い、他のドラマでの北政所では見たことのない、面白い雰囲気が出ています。
外見だけでなく、内面もとても茶々に迫れていません。ただこれは和央のイメージとか演技よりも、シナリオのせいでしょう。感情移入もあまりできなくて、特に前半のクライマックスであろう、茶々が子を失った悲しみは全く伝わってきません。
とはいえ、クライマックスは別でした。
僕は死者と生者が絡んで盛り上げるシーンというのは涙腺が緩みがちなのですが、今回のクライマックスはそういう例でした。例によって、こんなもので泣かされてしまうのか…と思いながら、涙がこぼれてしまったのが悔しいところです。
茶々の子・豊臣秀頼は、史実では母と共に炎上する大阪城と運命を共にしたと思いますが、この映画のような、特攻ぽい描写もありでしょう(「ヤマト」かい!)。
秀頼の妻・千姫の役でこのところ売れっ子の谷村美月が出ています。彼女にふさわしく、ラストでは重要な役を任されますが、セリフ回しにぎこちなさがあり、天才役者でも時代劇はまだ荷が重いかもしれません
物語は大阪城攻略の時の、この千姫の救出から始まりますが、なぜそれをするのかという説明はありません。このエピソードを知らない人にはついていけないと思います。
映画には首実験やさらし首のシーンがあるのがリアルでした。大河ドラマなどTVの時代劇では、こういうシーンをモロに見せることはありませんが、昔は今と比べてはるかに残酷だったはずで、こういう感じであっただろうと想像します。
そして大阪城の崩壊シーンは、モデルをちゃんと壊しているような重量感がありました。こういう風にこの作品、部分的にはリアリティーが感じられるシーンがありました。
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雪山のリゾートで遊んで暮らしている瑛太、青木崇高、玉山鉄二演じる3人組。彼らが一人の「花嫁」と関わることで、変わっていくお話です。
監督は「海猿」の羽住英一郎。この人のこれまでの監督作は「海猿」や「逆境ナイン」などコミック原作のものでしたが、今回はオリジナルで勝負しています。宣伝では「雪猿」と言っていますが、本編にそういう言葉は出てきません。ま、あんまりどうでもいいことだけど。
話の展開は「海猿」同様に先読みできるものの、快調で退屈させません。そして「海猿」同様にクライマックスは爽やかで、泣けました。ただこの部分、ディズニーの某冬季スポーツ映画のパターンに似ているのが、気になりました。
音楽の担当も「海猿」と同じく佐藤直紀氏です。コーラスを使ったスコアは壮大な感じで、日本国内の舞台ではスケールを広げすぎのイメージを受けましたが、「海猿」同様に耳に残るいいメロディです。
ヒロインを演じる田中麗奈はこのごろ、CMや映画によく出ていて「仕事」している感じですが、この映画では特にかわいく写っています。
今回の主人公格は瑛太ですが、青木や玉山など、脇のメインキャラにも過去の設定が用意されています。また舞台の村のライバルとなっているリゾートホテルの設定なんかもあり、いろいろドラマが膨らませられそうで、TVシリーズ化も可能でしょう。こういう広がりが出ているのも、いい意味で「海猿」と同じ感じがします。
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京極夏彦原作の小説の映画化です。彼の小説の映画化では以前に、実相寺昭雄氏が監督した「姑獲鳥(うぶめ)の夏」があり、今回もメインのキャストは堤真一や阿部寛、宮迫博之など「姑獲鳥」と同じメンバーということでこの映画、京極堂シリーズ第2作、と言うべきなのかもしれません。
今回の監督は原田眞人氏ですが、美術はコダイが担当するなど、実相寺組が手がけています。これは「姑獲鳥」を手がけた実相寺監督が亡くなったので、原田氏に代打が回ってきたということかもしれません。
話はそれなりに整理されていて、「姑獲鳥」に比べると見やすくなってはいる感じがしました。ただ、人間関係は「姑獲鳥」同様やはり分かりにくく、特に「箱の名人」の関係がよく把握できません。展開はそんなにもったりとはしていませんが途中、眠気を感じました。
終戦直後の東京は中国・上海のセットで撮影されています。空間的な広がりは上手く出ていてスケール感はあるのですが、建物や装飾にやはり中国のセットである、と見える部分があるのは気になりました。
「姑獲鳥」はホラーの雰囲気がありましたが、今回はマッドサイエンティスト的な雰囲気で、特に悪役の本拠となる巨大な「匣」の建物は面白いイメージです。
グロいシーンも所々ありますが、ラストはグロさを美しさに転化しようという工夫が面白いところでした。
暗めの雰囲気の中で、田中麗奈のはつらつさが光っています。オヤジばかりの出演者での一服の清涼剤といったところで、なっちゃん(まあ、あれはあれで複雑なキャラだったとも思うけど)と言いたくなりました。
女性キャラでは他に谷村美月と寺島咲が重要なキャラで出ていますが、彼女らの名前がオープニングのクレジットに出ないのは不可解でした。特に谷村は、ポスターなんかでけっこう目立っているのに…。
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故黒澤明氏が手がけた傑作時代劇を、森田芳光監督がリメイクした映画です。
元の話を全部覚えているわけではありませんが、シナリオのクレジットは黒澤氏等オリジナル版と同じ名前なので、元のシナリオをほぼそのまま使っているのではないかと思います。まあ、話自体がよくできているので、これ以上変えようがなかったのかもしれません。オリジナル版を超えるなんぞは不可能でしょうから、比べてどうと言うより、オリジナル版を忘れて楽しむべきでしょう。
ただこの作品では唯一、ラストでの決闘のアクションのみオリジナルと少し違えてあります。ここは日本映画史上あまりにも有名なシーンなので、そのまま同じに見せるのもどうかと製作者は思ったのかもしれません。まあどちらが上か、なんてことは言うまでもないことですが。
今回のバージョンでは、主人公の三十郎を織田裕二が演じます。三船敏郎が演じたオリジナル版の三十郎はいかにもムサい浪人でしたが、それに比べると織田君の三十郎は若くてさわやかな感じの、いかにも織田君らしい、現代的な感じです。「踊る大捜査線」に比べてよりマジな表情が目立つ青島、というところでしょうか。
織田君以外でも、オリジナル版では小林桂樹が演じた、三十郎たちに捕らえられ閉じ込められる護衛の侍を佐々木内蔵助が演じるなど、キャストは全体的にオリジナル版より若々しいイメージになっていて、この点がオリジナル版との最大の違いでしょう。
しかし予告編でのイメージなんかに比べ、実際見てみるとそれほどミスキャストという感じも受けなくて、これはこれでアリではないでしょうか。このキャストでオリジナルの続編も見たい感じがしました。ただこの「椿三十郎」に匹敵するストーリーを作るのは並大抵なことではないと思いますが。
冒頭の三十郎の出方は唐突な感じがしました。オリジナルの三船版ではすでに「用心棒」があったので、観客はこういうキャラだと分っていただろうからいいかもしれませんが、織田君には「用心棒」は無くいきなりなので。
オリジナル版では加山雄三らが演じた若侍のグループで、リーダー格のキャラを今回は松山ケンイチが演じています。彼は「男たちの大和」や「蒼き狼」でも重要な役で出ていますが、いづれも角川春樹のプロデュースの作品で、角川氏のお気に入りかもしれません。
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魔 境 伝 説 |
ケータイで連載されていた小説が原作という物語の映画化です。日本に密かに残っていた「魔境」で、いけにえに狙われた女のコが逃げ惑う…というサスペンスタッチのお話なのですが、展開にかなり強引なところもあって、いかにもケータイの物語という感じ(偏見でしょうな)を受けました。
とはいえ、その強引さが面白いところでもあり、展開がどうの、と文句をつけるよりも、「ありえねえ!」と突っ込みながら見ると楽しめます。
この映画の最大の見ものは、小沢真珠と池内博之の怪演!でしょう。特に小沢の演じる怪人キレ女は「バトル・ロワイアル」の柴咲コウや「キル・ビル」のゴーゴー夕張を思わせ、主役たちを完全に食う暴走ぶりが大いに笑かしてくれます。彼女に付け狙われる鈴木亜美も、それに引きずられるように過激に性格が変わるのがまた、笑えました。池内博之は、なんか変態的なキャラをよく演じているイメージがあります。
そういったキャラたちの中で唯一人まともに見えるのが、主人公格のしおりを演じる松下奈緒でしょう。周りが変な奴ばかりなおかげで、彼女のフツーな感じが逆に光ります。でもこの人、「アジアンタムブルー」みたいなアート系路線のイメージがあったので、こういうB級アクションぽい作品に出るとは意外でした。
彼女達をサポートする役のしょこたんもまともなキャラのようですが、主人公達と直接絡まないのは残念でした。
話は4章程度に分かれていて、それぞれにタイトルが付けられ、初めに章内の肝心なシーンを見せてから、時間をビデオのようにリワインド(逆転)させて話が進む形になっています。見せ方としてはまあ興味深いやり方ではありますが、話の面白さの効果を高めているかは疑問です。
監督は深作健太氏で、この人は「バトル・ロワイアル2」そして「スケバン刑事」と、監督作では女子バトルモノが連続していますが、こういうネタが好きなのでしょうか?でも今回は前作の「スケバン刑事」よりはずっと面白く見れました。とはいえ、ホラー的な演出には下手さが目立ったりするので、シナリオとアクションに救われたかもしれません。
映画のアクションは横山誠氏が担当しています。この人は「仮面ライダー」のFirstやNEXT、そしてTVアクション「GARO」や「キューティーハニー」などを手がけていて、今いちばん勢いのあるアクション監督かもしれません。
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予告編やCMでは話に全く触れていなかったので、どんな内容か分かりませんでしたが、日本アルプスに墜落した(させられた)ステルス戦闘機「ミッドナイトイーグル」の謎を追う記者達が、積まれていた核ミサイルを起動させた某国工作員軍団との戦闘に巻き込まれていく話です。いわば「宣戦布告」+「ホワイトアウト」といった感じでしょう。
事件がわりと早い時間で決着がつく感じになるのが意外でしたが、これはその後に来るクライマックスを盛り上げるゆえでしょう。ここはアジア映画的な感じのするモロな展開ではありますが、狙い通り泣かされてしまいました(子供を使うってのもずるいな)。
話の中の敵は「某国」の工作員ということで、特定の国名は出していません。まあ「脱北」(だったかな?)というようなセリフで、どこか匂わせているのみです。秘密を握る工作員を、「ストロベリーフィールズ」や「HERO」などで名バイプレーヤーの地位を確立しつつある波岡一喜氏が演じていますが、今回はあまり出番が無くて、いつもの個性が見られないのが残念でした。
主人公である大沢たかおと玉木宏は、戦場カメラマンであるとか記者であるとかいう感じがあまりしなくて、どこか浮いているように見えました。まあ最後は、そこそこサマになっているように見えましたけど。
その2人に比べると、途中から彼らのグループに加わることになる、自衛官役の吉田栄作の方が、いい味を出していたと思います。
最後に重大な命令を下すことになる総理大臣を藤竜也が演じていて、この人がこういう偉い人を演じるのは意外なキャストでした。こんな総理大臣はいないだろ!と突っ込みたくなるくらいの、いい人過ぎるキャラですが、この人なら合っている感じなのでヨシとしましょう。
映画には紅一点の感じで竹内結子が出ていますが、彼女が大沢たかおに言う最後のセリフは、いかにもこの人らしい言い方でした。彼女は離婚してから印象が柔らかくなった感じがして、好感が持てるようになりました。
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続・三丁目の夕日 |
万人の涙を誘った「三丁目の夕日」のパート2。前作より4ヵ月後、昭和34年の春という設定のお話です。
前作が良かっただけに、2作目はどういう出来になるか不安でしたが、前作同様に感動的で爽やかなお話になっています。久しぶりに三丁目の人々に再会した感じで、前作が好きな人は必見!でしょう。
今回の冒頭は前作とは違い、寅さんシリーズのパターンぽい始まり方ながら、大いに度肝を抜かれました。ゴジラシリーズが「Final Was」で途絶えてから、久しぶりに復活したような印象です。模型だけでなくCGのおかげで破壊の迫力が増していて、ある意味、このシーンが映画の最大の見せ場!と言ってもいいかもしれません。山崎監督のゴジラ映画も見たくなりました(でもなぜああいう目にしている?)。
前作での舞台は三丁目以外は上野駅くらいだったと思いますが、今回は日本橋や羽田空港、日劇など前作以上に広がっています。例によってメインキャラをセットで撮り、背景はCGで作っているようですが、合成に違和感はありません。特にかつての日本橋の再現は、今と違って上が何にも覆われていない風景が見ものです。
ただ羽田のシーンで、飛行機が飛び立つ動きにカクカクが見えたのは残念でした。舞台を広げたいのは分るけど、別に羽田空港まで出す必要は無かったと思います。「あのころ」を見たいという思い入れは分るけど、欲張りすぎです。
堤真一演じる鈴木の同窓会のエピソードは、戦争の影が前作ではあまり感じられなかった反省として入れられたようですが、やっぱり浮いているように見え、これも欲張りすぎのように思います。
また薬師丸ひろ子演じるこの鈴木の奥さん・トモエの、日本橋での「2人」シーンも余計に思います。キャラの過去にはそれなりに興味は持てますが、「君の名は」のパクリみたいで引きました。
今回はこういう風に余計な、カットした方がいいと思えるシーンがいくつかあったのが残念なところです。上映時間が2時間26分と長いし、もう少しスリムにできのたではないでしょうか。
前作の後半でチラリと顔を見せた淳之介の実の父親、小日向文世演じる川渕が今回は目立っています。相変わらずの見下すような言い方はムカつきますが、彼には彼なりの思いがあること分かり、前作のような単なるイヤミな奴になっていないのは、好感が持てました。
この川渕が、淳之介の養育のことで吉岡秀隆演じる茶川にプレッシャーを与え、茶川は芥川賞を狙うことになります。しかし予告編を見たときは茶川が、金のために芥川賞を狙って作品を書く、という展開は僕はどうかと思いました。作品というものは作者の「想い」が書かせるべきものではないかと思ったので。でも本編で書きあげた作品は、茶川にしか書けないであろうものになっていて、彼が自分の「想い」で勝負したようでホッとしました。
淳之介を演じる須賀健太は前作の公開以降、ますます売れっ子になってしまったようですが、吉岡秀隆と並んだりすると、前作に比べて背がかなり高くなってしまったのが分ります。話の設定は前作から4ヶ月後となっているものの、撮影は前作の時から2年ほど経ってるわけで、成長期だから仕方ないのでしょうけど、気になってしまいました。
前作で氷屋だったピエール瀧が転職して、ちゃんと顔を見せているのが嬉しくなりました。失業してしまったんじゃないかと心配になったので。
嬉しいといえば、今回は前作では出てこなかった、銭湯が出てくるのも嬉しいシーンでした。腰に手を当てて牛乳を飲むアクションがちゃんとあるのも、お約束です。
ラストシーンが前作と同じようなパターンであるのが、統一感があって感動的でした。あとラストと言えば、このシーンの少し前に出てくる「お嫁さん」発言にはいかにもな時代を感じました。今時の女子はたぶん、こんなセリフは吐かない…のではないかな。
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4コマ漫画の原作を、「トリック」や「明日の記憶」などで売れっ子の堤幸彦監督が映画化した作品です。
前半は4コマ漫画らしい、切れ切れの感じのお話しが続きます。映画のウリであろう、ちゃぶ台返しのシーンはバリエーションがなかなかに笑えました。
しかし後半は、当初の雰囲気からは予想もつかなかった、感涙!の純愛ラブ&友情ストーリーになるのは驚きました。ラストも爽やかに見終われて、思わぬ拾い物をした感じでした。
ただ、あんなに一途だった阿部チャンが、なんで今は自堕落な奴になっているのか?というキャラの変わりようは少し引っかかります。
ヒロインを演じる中谷美紀は、特に過去のシーンでは「嫌われ松子の一生」とかぶる感じがしましたが、あの映画よりもきれいに見えました。
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THE NEXT |
2005年に公開された「仮面ライダー:THE FIRST」の続編です。前作がヒットしたとは聞かなかったし、話も良くなかったので、続編が出来るとは思いませんでした。ともあれ、前作がライダー1号&2号の話であれば、次は「仮面ライダーV3」でしょう。
今回のお話は前作に比べれば時勢の混乱も無く、まだマシな形ではあります。ただクライマックスに泣かせのシーンを持ってくるのは、最後を盛り上げようという意図は分るけど、これは中盤に入れるべきだった思います。パターンだけど、こうすればV3がショッカー(デストロンという名前ではない!)を裏切る気持ちも分かりますし。
またこの辺のシーンは石田未来のシーンと同時進行していますが、ここでの彼女のパートは余計で、特に幽霊ネタにはしてほしくありませんでした。ホラーぽくするのはいいけど、あくまでも演出の範囲だけに留めて、本当に幽霊モノにするのはやめてほしかったところです。
結局、今回も見どころはやはりアクションということで、前作同様、迫力があります。バイクをちゃんと生かしているのは「ライダー」だし、かっこいいし、本当に戦ってる感じはTVでやっている「仮面ライダー」以上でしょう。
今回登場する怪人、シザーズジャガー(ハサミジャガーですな)は田口トモロヲがマスクを被ります。しかしゴムみたいなマスクというのは、なんかプロレスのような、人間みたいで、人間を越えている感じがしませんでした。せめて前作のショッカー怪人みたいに、メカっぽいマスクにでもしてほしかったところです。V3だってメカ的なマスクなのに。
そのV3のベルトに「バージョン3」と書いてあるのは、あからさま過ぎて可笑しくなりましたが、「V3」の意味がそうだと初めて知ったのは、ちょっとした感動でした。
ナノロボットで人間を改造する作戦は、この映画の少し前に公開された「ベクシル」を思い出しました。まあ、時期的に同じくらいに公開ということは、パクリではないでしょうけど。でもこのナノロボットを生産している工場、たぶんまだ残ってるんだろうなあ。
前作の死神博士やISSAといったショッカーの幹部は今回は全く出てきません。ライダー達の裏切りの責任を取って処刑された、ということでしょうか。
今回、仮面ライダー1号=本郷猛は高校の教師ですが、生徒に完全にナめられているのは、TV版の本郷を思うと、頼りなさ過ぎに見えて複雑な心境になりました。でも演じる黄川田将也は、仮面ライダー1号になった時は前作よりたくましくなった感じがして、今回は仮面ライダーに合っていたと思います。しかしヒーローは落ち着いてはいけないのか…?
V3を演じる加藤和樹は、敬語を時々使うところが「仮面ライダーカブト」の時のドレイクと、キャラがかぶる感じがしました。彼はこのところ連ドラに出たりして、出世を狙ってるようで…。
ライダー以外の出演者では石田未来や森絵梨佳など、過去に「仮面ライダー」シリーズに出たことのある出演者が出ているので、新鮮さはいま一つでした。とはいえ、ショート気味のヘアスタイルにした石田未来はかわいいけど。
ラストで仮面ライダー達がバラバラに散っていくのは、「仮面ライダーSPRITS」につながるのでしょうか。次回作は「X」になるのかなあ。
エンドクレジットが終わってからもシーンがありますが、まるで「ぱちんこ仮面ライダー」の宣伝です。パチンコのシーンを入れてくれ、と言われて、スタッフがヤケになって付け加えたように見えました。見なくても損しないシーンです。
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劇団★新感線による、市川染五郎主演の舞台劇「朧(おぼろ)の森に棲む鬼」。これをデジタルシネマ用のカメラで撮り、映画館上映用に編集した作品です。これは「ゲキ*シネ」なるレーベルのシリーズで、2004年の「髑髏城の七人〜アカドクロ」から始まったものですが、その時は都内1館のみの公開でした。今回の「朧の森」は劇場の数は少ないながらも、ゲキシネレーベルでは初めて全国一斉公開となる作品です。
ある島国で争う2つの勢力の時代。落ち武者狩りで暮らしている男、ライが呪われた「朧の森」の鬼と契約をして、王へとのし上がっていく物語です。
主人公ライを演じる市川染五郎は劇団★新感線とよくコラボしてますが、今回のような「悪」のキャラは初めてかもしれません。他の映画やTVでも、これほど徹底的な悪人キャラはあまり例がないと思います。
本編の中では「休憩」がありますが、それを挟んだ前半はライがのし上がっていく話、後半はライが次々と人を裏切っていく凄惨な展開になります。主人公が悪でも見るのが不愉快にならず、ライと、彼の罠に落ちていく人々の運命に興味が尽きなくて、上映時間が3時間近くもあるものの、長さを全く感じませんでした。
この映画は「特別興行」だそうで、普通の映画と違い、入場料が2500円です。見る前はちと高いと思いましたが、終わってみれば全然損した気にならず、結局2回見てしまいました。
「髑髏城の七人」(アカドクロ)は自分が見たエンターテイメントの中でベストをつければ、たぶん10位以内に入ると思いますが、今回の「朧の森」もそれに迫る興奮と感動がありました。
上映開始前に市川染五郎による音声だけの「あいさつ」があり、その中で染五郎はライについて「僕はこのキャラが大好きです」と言っています。反省しないところがいいそうです。その通り、ライは後ろを振り向くことなどしません。
この劇の作者、中島かずきはこの劇の後、TVアニメ「天元突破グレンラガン」のシリーズ構成とシナリオを担当していますが、この物語のメインキャラたちも振り向くことはしない奴らでした。「髑髏城の七人」のキャラたちも、今回の主人公ライも、そこは共通しているように思います。
ライを演じる染五郎はもちろん、阿部サダヲや真木よう子、その他の役者達もTVや映画で見る時よりも存在感が抜群でした。TVや映画とのこの違いは何なのか?と思います。
映画は基本的にミュージカルですが、曲が覚えやすく、違和感を感じません。見終わった後にサウンドトラックが欲しくなりました。
映画の中では「休憩」が15分ありますが、おそらく公演の時も中で休憩があったはずです。そして映画のときは、休憩が開ける数分前から打楽器のようなSEがかかったりして、公演の雰囲気の再現も、それらしいものがありました。
本編の始まる前、そして終わった後に市川染五郎による音声だけの「あいさつ」がありますが、特にラストシーンの滝について、「本当に入ったんです。大変だったんですよ!」のコメントは、微笑ましい感じがしました(まあ確かに、大変だったとは思うけど)。
この映画、舞台を撮ったものとはいえ、NHKの舞台中継で見るような、限定されたアングルをあまり感じません。撮影には15台のカメラを使用したそうで、カメラが動きはしないものの、アングルが頻繁に変わることでストーリーの流れが滞ることなく、ダイナミックに再現されています。役者の表情も実によく分るので、もしかしたら舞台から離れた席で見る場合よりも迫力があるかもしれません。
映画館の切符を切るところで、映画の感想のアンケートを渡されましたが、終わったら6人くらいの人が書いていました。もし内容がつまんなければ、こういうものを書くことはないでしょう。映画を楽しめたのは自分だけではないようであったのは、うれしいことでした。
劇団新感線の「映画」を見たのはこれが初めてでしたが、こういう形の「公演」もアリでしょう。これなら公演よりも安い料金で、何回でも見れます。
この劇の主人公の名は「ライ」で、これは英語の「嘘」の意味にかけてるのだろうと思いますが、あと大江山の酒呑童子の伝説も参考にしてるようにも思えました。鬼を退治するのが源頼光(ライコウ)と渡辺綱(ツナ)だし、鬼の読みは「シュテン」だし。
またライが森の中で魔物と契約する、というエピソードは「蜘蛛巣城」を思わせるし、人形を使う「血の契約」は上手い設定と感心しましたが、これはブードゥー教を思わせます。こんなふうな、話の中のいろんなネタのミックス具合も、興味深いものがありました。
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ア ク エ リ オ ン |
2005年に深夜枠でやっていた、堕天使族と人間が戦うお話のアニメ「創聖のアクエリオン」。キリスト教的なモチーフの世界観はそれなりに面白さがありましたが、おちゃらけが多かったり、キャラがいがみ合うシーンが多くて、好きになれない箇所もあるシリーズでした。
これが2007年に映画化です。何故2年経ってから映画かなのか?と思ったのですが、この映画版の上映に合わせるように、TVでパチンコの「創聖のアクエリオン」のCMが始まりました。で、この映画版のクレジットにはこのパチンコを製作している会社、SANKYOの名前が載っているので、たぶんパチンコの宣伝の意味で作られたものでしょう。とはいえこのTVアニメ自体、そんなに人気があったわけではないし、この映画版も公開館数は少なく、どの程度の宣伝効果があるのか疑問ではあります。
映画は2部構成で、1本目が「壱発逆転篇」、2本目が「創星神話篇」の2話で成り立っています。どちらの話にも「アクエリオン」に関する世界観やキャラの説明は無いので、始めて見る人には内容がよく分らないと思います。
初めの「壱発逆転篇」はTVシリーズの中の一編といった話で、コミカルタッチな感じがTV同様の雰囲気を思わせます。
2話目である「創星神話篇」は長編で、こちらがメインというべきでしょう。TV版を再構成したような筋立てが興味深く、TV版よりもおふざけが減っていて、シリアスなのが好感が持てました。
お話はTVシリーズより前の(別の)時代を舞台にしたエピソードゼロ、といった形で、ラストでのシリーズとのつながりも納得です。その、ラスト近くからTVでの初めのシーズンで流していた「創聖のアクエリオン」が流れ、エンドクレジットにつながる一連の流れが気持ちいいものでした。「西遊記」もそうですが、下手に知らない歌を使われるより、TVで使った曲を流した方がそれらしくていいです。
こちらの話はメカも見もので、特にTVではラストの方にしか登場しなかった量産型アクエリオンが出てきて、しかも(たぶんTVには出ていない?)ガウォーク体型を見せるのには「マクロス」好きな僕としては嬉しい驚きでした。太古に活躍したという、オリジナルタイプのアクエリオンも注目でしょう。
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2001年にフジテレビの月9の枠で放送され、ほぼ毎回30%を超える視聴率を出していた木村拓也主演のドラマ「HERO」。型破りな検事役のキムタクがタイトル通り、正義のヒーローを演じた当たり役といっていいドラマでした。これがシリーズ終了から6年経っての映画版です。
「HERO」はこの劇場版の公開の1年ほど前に、キムタク演じる久利生公平が地方で活躍するスペシャル版が放映されましたが、今回の映画版はその続きといった形のお話です。ただし物語は独立していて、スペシャル版を見ていなくても楽しめるでしょう。
話の構成はTVシリーズと同じ感じの流れになっていて、シリーズ同様に退屈させず、感動的なシーンがあり、爽快に見終われるお話になっています。本当の裁判なら、こういうヒーロー的な発言は許されないだろ!と突っ込みたくなるシーンがあるとこまでも、同じパターンです。
「HERO」で良かった部分は、キムタク一人だけがいい格好をしているのではないところでした。彼の同僚である東京地検城西支部のメンバーも個性豊かで、かつ久利生のことを気にして、彼がピンチに陥ると助けるといったような、一見個々人がバラバラに見えながら、いざとなると現す団結力は見ていて気持ちよくなりました。これが今でも「HERO」が人気のある理由の一つでしょう。ここもTVシリーズと変わっていないのが嬉しいところでした。このメンバーの、無理やり飲みに誘ったりしないような、微妙な距離感がうらやましいところです。
キムタクもそうですが、他の城西支部のメンバーたちも、6年間のブランクを全然感じさせません。せいぜい外見だけ、松たか子の髪がショートになっているくらいがシリーズと違うところでしょう。
TVシリーズの頃からTVに登場しだした勝村政信や小日向文世、八嶋智人といった脇のレギュラーメンバーは今や連ドラの常連で、「HERO」は彼らにとっても出世作といえるかもしれません。
今回はキムタクと松たか子が韓国へ行く、「HERO」初の海外ロケが出てきます。この韓国・釜山のシーンは某週刊誌に「とってつけたよう」と書かれていましたが、そこまで言うような違和感は持ちませんでした。映画版だから金かけました、て感じにでも受け取ればいいのではないでしょうか。
ここでイ・ビョンホンが出るのが映画のウリですが、ビョン様はちょっとだけしか顔を見せません。ギャラをケチろうとしたからかな?
お話はTVスペシャルと全く関連がないわけではないので、スペシャルを見ていた方がより内容を理解しやすくなります(映画版公開と合わせるように再放送されましたが)。特に中井喜一と綾瀬はるかが演じるキャラは、スペシャルを見ていないと誰なのか分らないかもしれません。とはいえ、彼らは映画の本筋の事件には関わらないので、見ていなくてもあまり問題はないでしょう。でも中井喜一の演技はなかなかに感動的で、わずかな出演なのにウルウル来てしまいました。どうせなら堤真一とか、スペシャルの他のメンバーもワンカットでいいから出してほしかったと思います。
映画の興収の目標は同じTVシリーズを映画にした「踊る大捜査線」だそうですが、そこまでには及んではいないようですが、それも道理と思えます。韓国まで行ってるのに(「踊る」の舞台はお台場オンリーだ!)あの映画に比べるとスケール感が感じられないし、主人公達が組織や上下関係のあつれきにもがくようなリアリティー(親しみやすさ)はあまり見られないし、そういう問題が(わずかでも)解消する爽快さもありません。
そう考えると、「HERO」は少し苦めの勧善懲悪ドラマといった、従来からあるドラマのフォーマットから抜きん出てはいないようにも思います。
ラストシーンではあるキャラたちの関係が進展しますが、これは賛否両論あるかもしれません。まんまであってくれた方が、話が続けられるようにも思います。いくらか伏線めいたシーンを出してはいますが、それでも唐突で、無理やり決着をつけた感じがしてしまいました。
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2077 日本鎖国 |
「ピンポン」で名を上げた曽利文彦監督が、「アップルシード」に続いてのCG作品。今回は前作と違い、オリジナルのお話です。
サブタイトルの「日本鎖国」というのは、なかなかにセンセーショナルな文句です。鎖国の理由に政治的なものを期待したけど、結局、映画で語られるネタはスケールが小さく感じました。だいたい、企業を諸悪の根源みたいにするのは20世紀の時の近未来像みたいな感じで、ちと古くないかなあ。
しかし映画のラストは、考えてみると凄いことでしょう。「日本沈没」さえもここまではやりませんでしたから。だからYahooの映画評なんかでは賛否両論だったのかもしれません。
主人公たちが敵の本拠地に向かっていくシーンは音楽のノリがよく、かっこいいシーンになっています。松雪泰子が声を演じるキャラは凛々しくてかっこいいのですが、アニメでもなければ、この人にこういう勇ましい役は来ないようにも思います。主人公ベクシルを演じる黒木メイサの声の演技は、いま一つのときもありますが、全体的に悪くはありません。
映画で一番インパクトがあるであろう生物?ジャグは「砂の惑星」のサンドウォームから発想したみたいに思えました。クライマックスでのこいつの大襲撃のシーンは、哀愁が漂う感じでした。
今回も「アップルシード」同様にフルCGの作画ですが、前回よりもどことなく、セルアニメに近い作画になっているような感じがしました。それでも、動きにモーションキャプチャーを使用しているせいか、リアルすぎる感じの箇所もあり、この作画は好みが別れそうです。
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「リング」の中田秀夫監督が江戸時代を舞台に描く、幽霊の愛憎話です。「怪談」といえば小泉八雲でしょうが、この映画は江戸時代に実際にあったという事件を元にした落語「真景累ヶ淵」をベースにした物語です。
中田監督というと「リング」ぽいシーンを期待するかもしれません。今回もあの映画のように、部分的にギョッとするシーンはありますが、そんなに多くはありません。
むしろこの作品は、ホラーの形を取りながら愛を描くという、ホラーとラブストーリーの融合を目指したのだと思います。でも結局怖くも無く、感動もそれほど無くてどっちつかずの印象になってしまいました。
主人公である新吉と豊志賀の家はそんなに離れていないようだし、彼らが江戸に来てから何年も経っているようです。ならばタバコを売り歩いている新吉は豊志賀とはご近所で、なじみではないのでしょうか?それが何で唐突に恋に落ちるのかよく分りませんでした。2人が少し離れたところに住んでいて、新吉がいつも商売で通る道とは違う道を行ったら志賀に会った、というやり方の方が自然な感じの出会いになったと思います。
この新吉、やたらに女にモテます。顔がいいだけでそんなにもてる奴か、とも思いますが、冒頭で子猫のような表情を見せるシーンは、女性だったら守ってあげたくなるんだろうなあ、と思わされました。でも新吉を演じる尾上菊之助は、ウルトラマンメビウスの主人公・ミライを演じた五十嵐隼士に似ていて、ミライに見えて仕方ありませんでした。
中田監督は「リング」1作目以来、これという作品がありません。これでまた、この人は「リング」だけという印象が強くなってしまいました。
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「クレヨンしんちゃん:嵐を呼ぶモーレツ!大人帝国の逆襲」で万人の涙を誘った原恵一監督による、康一少年と彼が偶然発見した、クゥと名付けた河童とのひと夏の交流を描いた作品です。
映画は主人公とクゥの交流を丁寧に描きながら、少年が現実の優しさと厳しさを知っていく成長物語になっていて、感動的なシーンがチラホラあります。2時間以上もの長さがありながら、時間をあまり感じることはなく、退屈しませんでした。原監督の前作「マインド・ゲーム」は「クレヨンしんちゃん」の反動のような、アクが強い作品でしたが、それに比べると見やすくなっています。
映画の中の、郊外や田舎の風景がいかにもそれらしい雰囲気であるのにも感心させられました。スタジオジブリではない製作会社で、美少女などに走らない、こういう良心的な物語が作られたのは、アニメ界にもまだ希望が持てる感じがします。
クゥに対する人間の身勝手さもよく出ていて、特にクゥに向けて携帯のカメラを向ける人々は、川に迷い込んだアザラシに群がった人々を思うとリアルだし、不気味です。
しかしこういうカメラを向ける人間を見て「いやだー!」と言ってる奴ほど、いざ本当にこういうシチュエーションに遭遇したら、同じことをするかもしれません。
康一の父親の声をココリコの田中直樹、そして母親の声を西田尚美が演じているのですが、演技がとても自然で、クレジットを見るまでこの人たちだと気づきませんでした。妹のキャラも、いい味を出しています。
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フジテレビの「月9」枠で、常に高視聴率をマークしていたTVドラマ「西遊記」の映画版です。
まさかラブストーリーの目立つ月9でこういう活劇ネタをやるとは思いませんでしたが、戦隊のようなヒーロー物のフォーマットをかなり意識した構成になっていて、TVシリーズはなかなかに楽しめる出来になっていました。
今回の映画は、TVドラマの映画版でよくあるようなシリーズの後日談ではなく、三蔵ご一行が天竺へ行く途中の話です。エピソードの順番としては、TVシリーズの間に挟まる位置でしょう。
お話の構成はTVまんまのパターンです。孫悟空だけでなく各キャラクターの見せ場もあり、特に三蔵の説法は感動的でした(殺生を戒める仏教の点から、どうよとも思うけど)。サブキャラの凛凛や老子もちゃんと活躍してくれていて、TVシリーズを見ていた人は必見でしょう。初めから筋斗雲使えば?みたいな突っ込みたくなる部分がチラホラあるのも、TVと同様です。
エンドタイトルもTVと同じく「Around the World」が流れて、下手に知らない曲を使うより好ましいやり方です。さらにその後、「ガンダーラ」が流れるのですが、これが以前作られたTVシリーズをリスペクトしているようで、好感が持てました。
そのタイトルバックで見られるように、今回は中国ロケのスケール感がちゃんと出ています。中国ロケはTVでもやってたらしいのですが、あまり気づきませんでした(鳥取砂丘かと思ってた)。
映画の見どころはやはりSFXでしょう。特に中盤の、悟空と銀角のドッグファイトはスピード感もあって、迫力でした。TV版の特撮は、最終回なんかはあまりのダささに呆れましたが、常にこのクオリティでやってほしかったものです。たぶんこれがスタッフの目指した、本来の形なのでしょう。でもまだ、マット絵なんかではいま一つのクオリティのものもありました。
悟空と銀角の空中戦は「ドラゴンボール」のようなアニメのテイストを感じました。エンドクレジットに「画コンテ」で「ヒグチしんじ」なる名前がありましたが、もしかしたら彼が担当したのがこのシーンかもしれません。
他にも、悟空がスーパーサイヤ人になったかと思う描写があるし、竜はまるで神龍の実写化といった、「ドラゴンボール」を思わせるシーンがいくつかあります。たぶんオマージュのような、意図的なものだろうと想像します。
今回の敵役である金角と銀角は今までにない、ゴージャスな悪という雰囲気を出している面白いデザインです。銀角は中盤かなり活躍するので目立ちますが、それに比べて金角はあっけなく退場してしまう印象になりました。デザインがいいだけに、もう少し粘ってほしかったものです。
今回はご一行のニセモノが出てきます。この人たち、ちょっとしか出ませんがなかなかな豪華キャストで、映画の隠れたウリかもしれません。パンフの表紙にもなってるし。
今回のヒロイン、玲美はキャラクターとしてはインパクトはあまりありませんが、演じる多部未華子は「夜のピクニック」より可愛く見えました。まあ、コスプレのせいかもしれんけど。
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「私は女優」という思い込みの強い澄伽(佐藤江利子)が帰ってくることで明らかになる彼女の家族の物語です。澄伽を始め、家族のメンバーがみんなインパクトのあるキャラクターで、退屈しません。
家族が分かり合うのがフツーのドラマですが、この作品だと、家族だからこそ甘えとエゴがむき出しになり、余計に分かり合えなくなるという感じを受けました。
お話は一見ドロドロとしていますが、DVのような悲惨な出来事をギャグにするような、ブラックコメディというべき内容で、不愉快にはなりませんでした。小さな村のくせに村人がみんなホラーコミックを読んでるとか、突っ込みたくなる笑いもあったりします。
サトエリ演じる澄伽を初め、キャストはみんな合っていますが、特に澄伽の妹・清深の段々明らかになるダークな性格と行動には、彼女こそ真の主役と思います。演技の面でも、清深を演じる佐津川愛美はサトエリを圧倒していて、かつて映画版「エコエコアザラク」で主役の吉野が敵役の菅野美穂に圧倒されていたことを思い出しました。
映画はキャラクターの心理状態を詳しく語らず、いろいろと想像してしまいます。ラストもはっきりとは描かず、後になって彼女らはどうなるのか、ふと考えたくなりました。
チャットモンチーによるエンディング曲「世界が終わる夜に」は映画の内容に合っています。「私が神様だったら、こんな世界は作らなかった」との詩は、初め聞いた時は澄伽の気持ちかと思いましたが、考えてみると清深にも待子にも、兄・宍道にも当てはまりそうです。
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さよなら あなた |
1982年に大林宣彦監督が撮った「転校生」を25年後に同じ大林氏が再びリメイクした作品です。
男女が入れ替わるという基本の設定は同じです。しかし今度の舞台は前作の海沿いだった尾道と違い、海が無く山が多い長野で、女のコの方も着物姿が多いせいか、前作と印象はかなり違って見えました。
お話自体も、特に後半の展開はかなり違うものになります。今回は前作に比べるとけっこう重い展開になるのですが、これは「命」について語りたいゆえでしょうか。昨今の命を軽んじてるような風潮に、一石投じたいのかもしれません。
前作で男になった小林聡美は出色でしたが、今回男になる蓮佛美沙子も、男になった時の違和感があまり無く、自然な感じを見せるのには驚かされました。
主人公達の入れ替わりを同世代はあっさり受け入れるけど、親の世代は信じないという違いが、新しいものを受け入れる新世代と、古いものしか見えない旧世代の違いを表しているようです。
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人気ライター・宮藤勘九郎がシナリオを担当した、舞妓マニアの物語です。
今回はクドカンと同じ劇団「大人計画」の阿部サダヲが、映画では初の主役です。これができるのは彼だけ!としか思えない適役をハイテンション!で突っ走り、どこまで行くのか想像がつかない舞妓マニアの暴走の、快調なテンポが飽きさせません。
敵役の堤真一も対抗するように、TVドラマで見られないようなアホ役で答えているのには大いに笑えました。特に冒頭のネットの書き込みなんかは見せ方も上手く、大爆笑です。
阿部サダヲの恋人が柴咲コウ、というのは凄いキャスティングですが、冒頭のかっこ悪いキャラはクドカンならでは(他のシナリオライターだったら、こういう役はやらないのでは)の役で笑えます。ただ舞妓になった時の彼女の顔は、化粧をしていても柴咲コウの顔が出てしまって、強烈過ぎる感じがしました。この人は素顔の方が合うように思います。
柴咲に次ぐ重要なヒロインである舞妓を演じているのが小出早織ですが、映画ではある事情から全くおしろいをおとさない役柄になっているので、クレジットを見るまで気づきませんでした(丸顔なので長澤まさみかと思った…て、出てるなら主役だろう!)。ほんわかだった「時効警察」と全く違うイメージに驚かされました。
映画では今は亡き植木等も顔を見せています。恐らくこの作品が最後の出演でしょう。わずかなシーンながらも、さすがに貫禄が出ていて、改めて惜しい人を亡くしたと思います。
他にも、TVドラマでは主演格のイケメン俳優がチョイ役で顔を見せたりして、さすがクドカンの映画は俳優にモテモテのようです。
今は和のイメージに目が向けられているようなので、映画で取り上げている舞妓という題材は、タイムリーなネタかもしれません。適度なうんちくを入れているのも「トリビアの泉」みたいで面白いし、新幹線の新車両700系を営業より早く出すなど、マニアをくすぐる小ネタを散りばめているのも上手いところです。
ラストはまあ納得はできるし、これがマニアの究極の姿のようにも思いますが、こういう形をマニアが本当に望んでいるのか?疑問ではありました。例えばフィギュアのコレクターだったら、このラストに相当するような結果はおそらく望まないでしょう。その点で、クドカンはマニア心を本当に分かっているのか、ちと気になりました。
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明るい物語が多い沖縄を舞台に、ホラーというのは珍しいと思います。確かに映画で語られるように、沖縄には「キジムナー」という妖怪(ゲゲゲの鬼太郎にも出てくる!)がいるそうですから、ホラーのネタにふさわしくない、ということはないはずです。
映画では夜だけでなく、昼間のホラーシーンが結構出てくるのが、沖縄らしい感じがしました。
しかし、冒頭で語られる「幽霊は幻覚」というエピソードが全く生かされない展開は疑問でした。もしかしたら当初の企画では「幽霊なんていない」方向であったのが、製作途中で転換したのかもしれません(横槍でも入ったりして)。わずかながらモンスターが出るシーンなんかは楽しめますが、おかげで内容は普通のホラーになってしまっています。
主演の田丸麻紀は無難に初主演の役柄をこなしていますが、この人だけ、いい子すぎなキャラで面白味がありません。
田丸よりも、幽霊役の菜葉菜の方が存在感がありましたが、何かこの人、正常じゃない人のキャラばかりやってるようなイメージがあります(「スペイン語会話」みたいな明るい役でも来ればいいのに)。
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水木しげる原作の国民的?コミックの、まさか!の実写映画化です。
鬼太郎はもちろん、砂かけ婆あや塗り壁といったメインの妖怪達の見せ場はそれなりにあって、退屈はしない展開になってはいます。妖怪達の表現にCGを多用してるおかげで「妖怪伝さくや」や「どろろ」なんかで目立っていた、着ぐるみのダささがそれなりに消えているのもいい点です。
しかし、どこか話に乗れませんでした。妖怪界全体の命運がかかっている話のくせにスケール感がないし、色恋のエピソードも空回りしている感じです。アニメでの劇場版のように、善悪の戦いに徹した話にした方がよかったように思います。
鬼太郎をウエンツ瑛士が演じているのに違和感を持つ人もいるかもしれませんが、あのキャラを実写でやるなら、適役といえる人はそういないのではないでしょうか。その意味では、ウェンツ君は無難にこなしていると思います。ただ、ハゲ頭にはちょっと驚きました。
猫娘の衣装をどうして短パンに変えたのかはよく分かりません(原作の衣装はいかにも「昭和」だけど)が、太ももを露出した田中麗奈はなかなかに可愛いです。その分、戦闘モードで変形するCGの顔の落差は気になりました。もっと目が大きく見える女優が演じた方がよかったように思います。できれば柴咲コウとか(まあムリだったろうけど)。
西田敏行やYOUなど、それなりに大物の役者を妖怪役に配したキャスティングは見ていて楽しい部分でした。中でもねずみ男を演じた大泉洋は、調子のよさそうなイメージと相まって、一番の適役だったと思います。
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「陰陽師」の夢枕獏による原作の小説の映画化です。
主人公を演じる阿部寛はかっこいいし、剣の戦闘シーンもそれなりにかっこよく撮られていて退屈はしませんでした。
しかしSF+時代劇という、宇宙人まで出てくる大がかりな話のわりにはスケール感がありません。オリハルコンとかそそられるネタがあるのに、あんまりワクワクできませんでした。アニメでやった方が、もっとキテレツでインパクトが出たように思います。
ヒロイン格である長谷川京子は可愛いけど、2重人格というキャラの面白さがいま一つ出ていません。こんな風に映画では、面白そうなキャラクターがそこそこいるのに、その面白さがあまり生きていないのが残念です。たぶん原作の方がもっと面白く、ワクワクできるのではないかと思います。
そんなキャラたちの中で一番面白かったのは、ここぞというとこでいつもドジる大倉孝二演じる忍者と、黒木メイサが演じた役でした。あの人をこういう形で出すとは以外だったし、かっこいいキャラになっています。
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TVアニメにもなったコミックを「アキラ」「スチームボーイ」の大友克洋氏が監督した実写作品です。大友氏は多作な人ではありませんが、自分のものでない原作を手がけたのは珍しいように思います。
形は不明瞭ながら、ある時はホラー、ある時はファンタジーといった雰囲気で描写される「蟲」のイメージは迫力がありました。CGも上手く、特に蟲と絡む蒼井優のシーンは、主人公であるギンコよりもかっこいいです。
とはいえ、個々の事件をつなぐお話のテンポが緩くて眠くなりました。特にギンコと、彼の師匠であるらしい江角マキコの関係。そして彼らの考えていることがよく分かりません。なんだか、蟲のシーンだけやたらと力を入れて、それ以外は手抜きをしたような出来でした。やはりコミックの人が手がけると、こういう風にビジュアルに偏ってしまうのでしょうか。
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the movie |
人気が高かった連ドラ「アンフェア」の映画版。先に放送されたスペシャル版の続編に当たりますが、ストーリーはその続きではなく、独立したお話になっています。
今回は雪平が娘を救うため、娘が入院している病院に立てこもるテロリストに戦いを挑むという、雪平版ダイハードといった感じのお話です。
話には突っ込める箇所がいろいろありました。しかし中盤、TVと同じ伊藤由奈が歌う主題歌と合っていることで、パターンながらも泣かされ、燃えてしまうシーンがありました。
今回は連ドラで出てた瑛太は出ていません。スペシャルの時は幻想シーンで出ていたのに、やはり「アンフェア」なら、彼には1カットでも何らかの形で顔を見せてほしかったところです。
また香川照之演じる雪平の元夫も、娘が絡むから大事なキャラのはずですが、今回は全く無視されています。あと連ドラからのキャラでいえば…「彼女」が死んでしまうのは、少し残念でした…。
それにしてもこの終わり方だと、シーズン2もありそうです。
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安野モヨコ原作のコミックの実写化で、土屋アンナ演じる江戸時代のおいらんの物語です。お話自体はだるい箇所もあり、眠くなりました。しかしこの映画の見どころは、物語以外のところにあります。
監督が写真家だからなのか、ド派手で怪しい遊郭セットのビジュアルに、独特のセンスが感じられます。この作品の劇場公開の半年ほど前に江戸東京博物館で開催された「ボストン美術館秘蔵の肉筆浮世絵展」に出品されていた北斎の絵に、遊郭の寝室に置かれていたと推測される鳳凰の屏風がありましたが、その絵がかもし出していた怪しさを連想させる色使いです。
また音楽を椎名林檎が手がけているおかげか、曲だけ聴くと時代劇とは思えないポップさがあります。
土屋アンナは映画では脱ぎませんが、共演している木村佳乃と菅野美穂はヌードとは言わないまでも、これまでの出演作に比べると、意外なほど濡れ場での露出度が高いのには驚かされました。女性監督ということで気を許したのでしょうか。
しかし濡れ場をがんばっても彼女たちは映画ではそう目立っておらず、主演の土屋アンナ一人がかっこよく撮られていて、他の女優たちはその影にかすんでしまっています。とはいえ、気が強くブレることのない、きよ葉というキャラクターはアンナのイメージに合っています。その意味ではこの作品、まさに土屋アンナのための映画、と言うべきでしょう。
僕がこの映画を見た日はレディースデーでした。だからなのか、映画館にいた客はほとんど、もしかしたら僕以外全員女性だったかもしれません。これは「さくらん」が人気があるのか、それともアンナだからなのか…?
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手塚治虫原作の有名なコミックの実写化です。
ちゃんとした日本というわけでもない、中東なんかがごちゃ混ぜになったような世界観は、面白いイメージが出ています。アクションもまあまあ迫力あってスピード感も出ているし、主人公?の百鬼丸を演じる妻夫木聡もかっこよく撮れています。でもこれは、アクションパートの監督が「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」を手がけたチン・シウトンのおかげかもしれません。
妖怪はCGや着ぐるみで表現されていますが中には、百鬼丸の赤ん坊の姿とか子供のモンスターなど、造型がダサくて作り物バレバレのものが出てくるのは興ざめでした。
また百鬼丸の敵となる醍醐の国のスケールが小さいのも気になりました。せっかくニュージーランドという広大なロケ地で撮っているのに、まるで部落の長みたいで、何カ国も落としている国には見えません。ただ、そこで見せる親子愛の描写は、まあまあ感動的ではあります。
柴咲コウ演じるどろろが、途中で自らの境遇を嘆く叫びは、安物のドラマみたいで同情できませんでした。凄惨な生活を送ってきた奴が、そんな軽々しく自分の境遇を嘆くものかなあ?
同じ時代劇で「さくらん」に主演している土屋アンナが妖怪の役で出ていますが、「さくらん」に比べるとまるでド下手。手抜きに見えます。
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周防正行監督が「Shall we ダンス?」以来11年ぶりに放つ監督作品。今回はコメディ描写があまりない、どシリアスな裁判モノです。
男が痴漢の疑いを受けたら、警察や裁判所などでどういう扱いをされるのか?という過程が簡潔に、興味深く描かれている作品です。主人公にふりかかる運命をドキドキしながら追うサスペンスとしても楽しめて、実に面白い作りになっています。
ただ僕のように、男性がこの映画を見ると、自分に置き換えて辛くなってしまうかもしれません。ちなみに僕はこの映画を見てから余計に、電車の中で女性のそばに立つことを避けるようになりました(触らぬ神に何とやら)。
物語は痴漢の容疑を受けた主人公とその周辺の行動を描くのを主としていて、主人公自身のことにはあまり踏み込みません。なので映画は彼に同情がいま一つしにくいのですが、それはそれで、ドキュメンタリーを見ているようなリアリティーがあります。
主人公を演じる加瀬亮がいかにもフツーの兄ちゃんに見えるのがまた、そのリアリティーを一層高めています。この人は最近徐々に売れてきたようですが、このフツーさ加減は今後上手い武器になりそうです。
主人公の元カノで鈴木蘭々が出ていますが、最近見ない感じがしていたので珍しく思いました。
ラストはすっきりはしませんが、それが映画の狙いでしょう。ハリウッドでよくある、娯楽だけの裁判ネタ映画なんぞとは違う「怒り」を感じさせる作品です。
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