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90年代に実際にあったという、小学校の先生がクラスで「食べるために」ブタを飼ったという試みを映画化した作品です。
ブタが逃げてしまったり台風を気遣ったりとか、飼育をめぐるエピソードが次々と展開して退屈しません。クラスになじめなかった生徒が、ブタの世話を通してクラスの輪に溶け込んでいく過程なんかは、いかにもな展開ですが、ホッとさせられます。
そうして愛情をこめて育ててきたブタを最後にどうするのか?クラスで繰り広げられる討論は役の子供達がガチンコでやったそうで、ドキュメンタリーを見ているようです。なかなか結論が出ないのはもどかしくはありますが、引き込まれました。「命」や「食」の意味を考えさせる良作でしょう。
ただこの試み、一歩間違えば子供達が対立して、クラスが2つに分裂する可能性があったように思います。
ブッキーはまっすぐで熱心な先生を好演していますが、やはりブタと子供達に食われてしまっているのは、仕方ないかもしれません。
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結末はある程度予想がついていましたが、ラストの流れからは、「そうなの?」という感じを受けました。しかし卒業から日がない中で結論を出したわけだから、卒業してから改めて集まったのだろうか…?
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フジテレビの「月9」枠で好評だったドラマ「ガリレオ」の映画版です。
今回の話は原作も売れた「容疑者Xの献身」です。主人公の最大のライバル登場というパターンは、映画スペシャル版にはふさわしい内容かもしれません。
しかしこの作品、主人公である湯川が計算式を書きまくるシーンなど、TV版「ガリレオ」の代表的なパターンが無いのは残念でした。また今回は湯川と石神の話になってしまったおかげで、内海と湯川の掛け合いがあまり無く、柴咲さんがただの進行役みたいになってしまい、テレビ版より目立たなくなったのはかわいそうでした。
石神のトリックをいかに湯川が突き崩すかという興味で、映画は退屈しません。でも雪山のシーンはあまり意味が無かったように思います。またTV版が好きな僕にとっては、ラストが切なく、暗いところで、後味が良くない印象を受けました。
TV版ではサブタイトル部分に流れた、テンポのいいテーマ曲が無くてさびしいなぁと思っていたら、映画ではエンドタイトルでの、柴咲コウの歌の後に流されました。しかしこんな使い方では申し訳につけた感じで、曲が台無しです。これなら流さない方がまだ良かった…。
公開日に放映されたTVシリーズの前日談「エピソード0」の方が、TV版の雰囲気がありました。シリーズと違う不満は、こちらで解消しますか。
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乙一原作小説の映画化。新任教師のいじめのターゲットにされた少年の前に現れる、拘束具をつけた幽霊みたいな存在の「アオ」が、彼の憎悪を煽っていきます。
予告では感動ホラーのような宣伝をしていますが、映画にはホラー的なシーンはあまり多くないし、コワくありません。また宣伝でウリの「切なさ」もいま一つでした。谷村美月演じるアオは悪くないけどこの映画、ホラーと思わない方がいいでしょう。
ただクラスに蔓延していく「悪意」は社会の闇を描いているようで、主人公がいじめられていく前半の方が面白い部分でした。
映画のテーマはコミニケーション不全ということのようで、それはそこそこ出ていたように思います。主人公の父親が語るセリフが、映画の言いたいことなのかもしれません。
ただこういう風に、肝心な部分をセリフで説明してしまうやり方は上手いとは言えません。
教師がなぜ主人公を目の敵にターゲットにするのか不可解でしたが、これも最後の方、セリフで説明してしまっているのは気になりました。
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タイで行われているという、子供達の売春や臓器移植のお話です。
ネタ的に危ない、あるいは暗いというせいなのか、当初の公開劇場数は少ないものでしたが、ヒットしているようで、拡大公開になりました。こういうヘビーな題材の作品がヒットするというのはいいことでしょう。
ただ、ワイドショーでの紹介なんかでは映画の事柄を事実のように宣伝していますが、原作の小説はフィクションだそうです。実際にこういうことが行われているのかは分りませんが、本当にありえるようには見えました。タイではなくても、他の国ではあるかもしれません。
映画には暴力や性描写など、見ていて不快になるであろうシーンがチラホラありますが、描かれる「真実」はかなり重く、考えさせられる内容です。特に臓器移植に関しては、移植をしたい側、拒否したい側、どちらが正しいとは言えない難しい問題ではあります。
移植を「悪」と訴える、宮崎あおい演じる恵子は正当すぎてイヤなキャラではあります。でもテーマを明確にするためにはこのキャラは必要でしょう。宮崎さん、よくこの役を引き受けたものです。
でもラストは意外すぎに思いました。言いたい事は分かる気はするけど、テーマが遠くなった感じがします。
映画は子供達や主人公達の行く末にサスペンスの色をつけて退屈しません。ただ、後半での銃を使ったドンパチは余計でした。製作者たちは、クライマックスではアクションを出すべきとでも思ったのでしょうか。
売春シーンはかなり具体的な描写なのに、子供達が演じているのには驚かされました。現場では演じる子供達にはかなりケアをしたらしいということですが。
その子供達を連れてくるタイの男は、主人公である江口洋介にどこか似てる感じがしました。何を考えてるかよく分らないのが不気味というか、面白いキャラです。
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座頭市の物語は、以前にハリウッドで主人公を白人(ルトガー・ハウアー)に変えた変化球がありましたが、今度は女性が主人公のお話です。
監督の曽利氏は前作「ベクシル」に比べると、ちゃんとドラマを作っています。子供を絡ませたのは上手いやり方でした。でも窪塚洋介と中村獅堂が敵対する構成は、「ピンポン」の2番煎じのようです。
主人公を演じる綾瀬はるか(この年、何本映画に出た?)はやはり魅力的ですが、アクションはスローモーションでごまかされた感じがしました。父親の行方もごまかされましたように思いました。どこかで関われば、また盛り上がったように思います。
盲人の女性、昔は今以上に大変だったんですなぁ。佐田真由美が哀れ…。
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葬式の時、死者に死装束を着せる「納棺師」を本木雅弘が演じる作品です。葬式に対して抵抗がなくなってきているであろう今、タイムリーなネタかもしれません。
前半は仕事に戸惑うコメディという感じで、このところシリアスものの多かったような滝田監督のコメディセンスが爆発しています。
主人公が仕事に覚悟を決めた後半は、シリアス感動編といったところ。本木クンの納棺の所作が優しく、そして美しく、惚れ惚れします。納棺のシーンはどれも泣けてきて、後半は涙が乾く余裕がありません。自分が死んだら、こういう風にしてほしいなあ、なんて漠然と思います。
こういうエピソードが後であるだろうなと思わせながら、そのシーンをカットしている箇所がありました。見てれば分るだろうということでしょうが、簡潔でいいと思います。
主人公はいわば、夢をあきらめてしまう人です。これは同じ頃に公開された「大決戦!超ウルトラ8兄弟」の「夢をあきらめない」テーマと対極ではありますが、この「おくりびと」の方が今っぽい、リアルな感じを受けました。
映画では食べるシーンがやけに目立ちました。生と死のモチーフでしょうか?ふぐの白子やフライドチキンなんて、実に美味しそうに見えました。
映画にはイメージソングとしてAIの歌があるそうです。でもこの歌をエンドタイトルで使わなかったのは正解でした。ここは映画の通り、主人公が弾くという設定のチェロでしょう。
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主人公を演じるモックン(若い人にはこう言っても通じないのでは)を初め、キャストはみんな合っています。特に広末はかわいく、理想の奥さんかもしれません。
それゆえに彼女が主人公に「汚らわしい!」と言うシーンはショックな盛り上がりがありました。でも今の人は、死体を触ることに対してそんなに強い抵抗があるのでしょうか?ま、ここは主人公が受け入れられるために必要なシーンではありますけど。
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楳図かずお原作のコミックの実写化。「おろち」なる存在が、ある年齢になると顔が醜く崩れていく運命にあるという、門前家の姉妹を見つめていくお話です。
映画はおろちの目を通して展開し、彼女は狂言回しという役どころです。おろちは永遠に生きてるらしいのですが、性格のよく分らないキャラです。名前もなぜ「おろち」なのでしょう?大ヘビでも出てくるのかと思いました。
でも、おろちを演じる谷村美月は貫禄を感じさせて、彼女よりキャリアの長い木村佳乃や中越典子と互角に渡り合っています。驚いたのは彼女が歌ったことでした。シナリオは「リング0」の高橋洋で、この人の映画では「発狂する唇」でも三輪ひとみが歌っていましたから、今回も谷村美月嬢に歌わせたかったのかもしれません。ただこのあたりの設定、おろちが何故こういう境遇になってしまったか、不可解でした。
顔が崩れていく運命にある姉妹を演じるのは、木村佳乃と中越典子。2人とも時に鬼気迫る!迫力を見せて、役に合っています(地だったりして)。映画には幽霊も怪物も出てこなくて、まさに怖いのは人間!と思わされます。いやまったく、女は怖い…。
ただ、オチの想像はついてしまいました。
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密着68日 復讐執行人 |
フジテレビ系で深夜、不定期に放送された番組「放送禁止」の映画版です。
「シエロ」なる闇の復讐サイトの管理人「ノラム」をディレクターが取材します。しかし彼はノラムに協力させられるハメになり、深みにハマっていきます。
ノラムに強制される行動の奇抜さや関係者の奇妙さ、そして彼女の目的の興味で、お話は退屈しません。
特に余計なことを語らない、想像させるラストがTVらしからぬ(映画ではあるけど)感じで、面白いところでした。
TV版を見たことはありませんが、今回の話にはついていけました。でもこれとTVにはつながっている話があるらしいので、DVDで確認するのも面白いかもしれません(販売戦略という奴か)。
映画は全編ビデオ撮影者の視点で、数ヶ月前に公開された「クローバーフィールド」を思わせます。日本で言えば、数年前に公開された「ノロイ」でしょうか。あの映画にも、本当のインタビューならこうは撮らないだろうと思うシーンがチラホラありましたが、それが「フェイクドキュメンタリー」ということでしょう。
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「下妻物語」「嫌われ松子の一生」と、連続で傑作を放った中島哲也監督。今回はCGのみのキャラも登場し、前作以上にVFXシーンが多くなっていますが、CGキャラと実写キャラの兼ね合いが絶妙で、意外にも「嫌われ松子」以上に泣けるポイントが多くなっていました。
原色を強調した特異すぎる舞台とキャラで、初めのうちは話に入りにくかったものの、どんどん引き込まれてしまいました。原作が舞台というせいか、世界観が限定的な感じがしましたが、途中からそんなことは気にならなくなるし、それが広がっていくのが映画的な快感、というものでしょう。
いいひと役の多い?役所広司は初めはイヤーな爺いが合っています。彼を始め、役者たちはみんな存在感がありました。ヤクザを演じる山内圭哉はTVや映画で見た記憶が無くて新鮮だったし、このキャラの意外な秘密は大笑いでした。映画の語り部となる、阿部サダヲの変幻自在のリアクションも最高!です。
そして特に、アヤカ・ウィルソンは可憐!この子のためなら、何かしようという気になってしまうでしょう。
映画にはガンダムのコスプレやエヴァンゲリヲンのポスターやフィギュアなど、アニメファンをくすぐるような小道具がチラホラ出てきます。何の意図だろう?
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おしゃれなミュージシャンになる夢を持つ根岸くんが、間違い(本人曰く)でデスメタルバンド:デトロイト・メタル・シティ(略称DMC)のボーカルで人気爆発してしまい、「こんなことやりたくないんだよー」と悩める、人気コミックの実写映画化です。
主人公役の松山ケンイチはノリノリの怪演で、まさにクラウザー様降臨!と、ハマリの演技を見せてくれます。この人はいろんなキャラに化けられますが、「デスノート」のLに次ぐ、ハマリになるかもしれません。
特にクラウザー様と一般人とのショットはシュールで笑えます。このへんは、いつクラウザーに着替えたのか?コスチュームどこで取り出した?
と、根岸に突っ込むのも楽しみ方の一つでしょう。
彼の周りが次々と、クラウザーのファンになっていくといった、主人公の願望と世間がずれていくのが笑いのポイントでしょう。でもクライマックスには感動的な箇所もあって、ただ笑えるだけではない内容が、ヒットした理由かもしれません。
DMCのマネージャーを演じる松雪泰子は悪の白鳥麗子、といった感じのビッチな姉御が合っています。パンチラ(スパッツか?)をものともしない態度も、さすがの貫禄。
DMCのギタリストを演じる細田よしひこは、TVドラマ「ライフ」での2重人格的キャラが印象的な人ですが、今回はあれに比べると面白味に欠けるキャラになっているのが残念です。まあ脇役だからしょうがないかもしれないけど。
主人公が歌う根岸くんモードの時に歌う「おしゃれな」歌は、古いフォークソングのような、いかにも時代遅れ的な雰囲気で作っているのには感心しました。これでは引くわな。
DMCのコンサートのシーンでは、歌詞が演奏にかき消される感じで、よく聞き取れませんでした。歌詞の内容がおおっぴらに言うのがはばかられるモノらしいので、わざとそういう効果にしたのかもしれません。クライマックスの歌詞は、ある単純な一言の羅列でよく聞き取れますが、日本以外の国では放送禁止用語です。こういうことから想像すると、ラジオでDMCの歌を流すのを拒否された、という話はムリもなさそうです。
てことで、もしこの作品が英語圏の国で公開されたら、18歳未満お断りの指定になることでしょう。
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BUNBUN!BANBAN!劇場BANG! |
「仮面ライダーキバ」の前に上映される、戦隊シリーズの映画版です。今回は明るい「炎神戦隊ゴーオンジャー」にふさわしく、例年以上にストレート(単純!)な、誰でも分かる爽やかな話になっています。「キバ」よりもこちらの方がもう1回見たくなりました。
今回はレギュラーの逢阪りな、杉村有美や及川奈央だけでなく、ソニンや「デカレンジャー」の菊地美香など、美女も多く出てくるので男性観客には特に楽しい!内容でしょう。
ただ、敵の首領を演じるソニンには、もう少しキャラを感じさせる部分が欲しいところでした。あれではただの悪い奴で、もったいないです。
菊地美香もそうですが、最近バラエティづいている半田健人がもしかしたら「仮面ライダー555」以来であろう、特撮に戻ったのが嬉しいところでした。
今回の舞台は「サムライワールド」なる世界です。セットで映画村を使ったのはシナリオを書いてからの偶然の結果らしいけど、映画村を使うためにサムライワールドなるものをでっち上げたように見えました。でも福本清三の参加は、嬉しいところです。
サムライワールドだからということなのか、敵が和のデザインになっているのも面白いところです。特にソニンの配下の怪物は、狩野永徳の獅子の絵を参考にしたように見えました。
それにしてもゴーオンジャーたち、町娘の顔がケガレシアと同じなのに、分らなかったのかなあ?(てか、この女はケガレシアと関係あるの?)
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ベネチア国際映画祭に出品され、国際的にも有名らしい押井守監督の作品です。しかしこの映画、ベネチアでは何の賞も取りませんでした。
それも無理もないでしょう。お話の流れはまあ分かるものの、評判になった「攻殻機動隊」なんかに比べると、メインキャラの心情が全然理解できません。意味ありげなセリフが多いのでいろいろと解釈できると思いますが、間延びするシーンが多くて眠気を催しました。
ただこういう日常のシーンでの、押さえた色使いはいい雰囲気です。垂れ耳の犬は、押井作品のトレードマークのように見えます。
淡々とした運びの日常シーンと比べて、戦闘シーンはテンポががらりと変わり、スピード感があるのが、人間のシーンと対照的です。
こういうシーンでの川井憲二の音楽は、映画館で聞くと非常にスケール感があり、サントラ聞いてみようかという気にさせられました。
こういう風に映画は、日常と非日常にメリハリをつけることで、戦争の虚しさでも出そうとしたのでしょうか?
主人公達は将来が見えてしまうから、先の見えない戦いに身を投じようとしているのでしょうか?
…というような解釈もできるかもしれませんが、あまり迫ってくるものはなく、強引に取ればそうも言えるかも、という程度のレベルです。DVDで止めたりして、確認しながら見た方がいいのかもしれません。
宣伝では、押井氏はこの映画を若者に向けて作ったとコメントしていますが、彼らは共感してくれるのでしょうか…?
ヒロインといえるほど女性を感じさせないもう一人の主人公・スイトをの声を演じる、菊池凛子のセリフは上手いとは言えません。でもこれでダメ出しをされなかったということは、あえてセリフを棒読みぽくしているようにも思えます。
それに対して、主人公の親友を演じる谷原章介は自然な感じで、大きくクレジットされている役者の中では一番上手く聞こえました。
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「キルドレ」は「大人にならない子供」という設定のようですが、要するに遺伝子操作をされた人間のように見えました。
主人公の最後のセリフ(英語)で付けられた字幕は「ティーチャーを殺る!」でしたが、セリフは「I kill my father」と聞こえました。ティーチャーと主人公て、そういう関係なんでしょうか…。
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「地獄甲子園」の山口雄大監督が、楳図かずお原作のコミックを実写化した作品です。
山口監督は「地獄甲子園」「魁!クロマティ高校」といった作品で、妙にぶっ飛んだ映画を作る人というイメージがあるのですが、今回はちゃんとストーリーを語る、真面目な作りになっています。
映画の悪役は一応タマミでありますが、彼女が単に悪い奴でないのがいいところです。ただタマミの造形が今一つなのが残念で、もっと表情が豊かであれば、ラストの方で感動できたかもしれません。とはいえ、飛んだりぶら下がったりするような、人間とは思えない動きは面白いところです(てゆーか、笑える!)。
タマミのターゲットにされる主人公・葉子は、何も悪いことをしていないのに命を狙われるかわいそうなキャラです。ま、こいつが来なかったら南条家もタマミも、今まで通り平穏に暮らしていたかもしれないけど。
母親を演じる浅野温子は期待通りなかなかにハマりで、もっと狂ってほしいところでした。この人は意外にホラーはOKだそうで、次回を期待しましょう。
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千 年 呪 い 歌 |
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「ゲゲゲの鬼太郎」実写劇場版の2作目。鬼太郎役のウエンツ瑛士を初め、レギュラーメンバーは前作と同じです。
今回は鬼太郎が「人間の味方をするべきなのか?」と悩む、「鬼太郎」にふさわしい話になっています。お話にいま一つ深みが感じられなかった、前作の反省を踏まえたのかもしれません。ただその悩みが、突っ込んで描かれていないもどかしさは感じましたが。
鬼太郎の悩みの象徴が「鬼太郎」での最強の敵・ぬらりひょんです。この妖怪を出すのはよかったのですが、濡れ女のエピソードが(予想通り)感動編になったおかげで、その分ぬらりひょんの影が薄くなってしまったのは残念でした。せっかく緒形拳が貫禄たっぷりに演じているのにもったいないところです。
また、予告編でも出てくるがしゃどくろ。こいつに「最終兵器」らしい迫力が無くて、放っておけば日本が危ない、という危機がまるで感じられません。「ナウシカ」でのオームのような描き方をするべきでした。夜叉の方がむしろ強い感じだし、かっこよさもあります(最後はあっけなかったけど)。
前作同様、砂かけ婆や子泣き爺など、レギュラーメンバーは均等に活躍しますが、今回は特にネズミ男が目立っていました。彼らが使う、携帯電話みたいな妖怪は面白いアイデアです。
猫娘は今回も踊って、やたらとダンスを見せたがるようです。衣装は前作と変わっていますが、太ももを見せないのは、前作で田中麗奈がクレームつけたのかもしれません。
鬼太郎の衣装も前回と違い、今回はズボンになっていますが、別に違和感はありません。ウエンツ瑛士の鬼太郎も2作目になって、板についてきたような感じがします。キャストは異論もあるでしょうが、彼以外の人が演じてここまで合うかどうか疑問です。
他の妖怪のキャストで出色だったのは、ぬらりひょんの子分である蛇骨婆がまさに怪演!で、佐野史郎が楽しそうに演じています。また、しょこたん演じる妖怪図書館司書が、控えめな感じなのが妙にいい雰囲気でした。
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ヒロインが身を引くのは前作の反省でしょうか。北乃きいはただの進行役みたいになってしまっていますが、「鬼太郎」という話である以上仕方ないのかもしれません。
彼女のとの別れのシーンで、バスがタイミングよく来ますが、田舎のバスがそんなに頻繁に来るか?と突っ込みたくなりました。
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好評だったTVドラマ「花より男子」の映画版です。タイトルが「ファイナル」となっているということは、この作品で最後…なのでしょうねえ?
今回のお話はつくしと司「花嫁花婿修行編」という感じの内容です。一応陰謀らしき設定がありますが、種を明かされれば呆気ないものです(予想もつくし)。
つくしたちはラスベガスや香港などを回りますが、結局そういった海外シーンには必然性が感じられませんでした。単に映画版だから金をかけました、だけのように見えます。ただ、無意味なシーンでもゴージャス感はそれなりに出ているので、セレブと呼ばれる願望を持つ女子なら、憧れの目で見るのかもしれません。
司君はひたすらかっこよく、彼みたいな男子に「守ってやる」と言われれば女子はついていくのかもしれません。でもあんだけ金を持ってれば、自信を持って「守る」て言えるよねえ(言ってみたいぜ)。
映画はいろんなところを回ってくれるので、あまり退屈はしませんが、無人島のシーンではさすがに間延びした感じがしました。疲れている時に見たら、寝たかもしれません。
でもTV版を見ていた人なら、それなりに感動できるであろうシーンはあります。
つくしや司など、キャラクターはTV版と比べてもぶれてないように見えました。今回の話はこの2人が中心で、F4以外の脇キャラの影がものすごく薄くなっていて、ワンシーンしか出ないTV版のレギュラーもけっこういます。でも他のキャラを絡めると話が散漫になるかもしれないので、これは正しいやり方でしょう。
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中学を登校拒否になってしまったまい。母親(りょう)は彼女を、田舎にいる祖母に預ける。家族間で「魔女」と呼ばれる彼女はまいに「魔女修行」をさせる…。
「魔女」を演じるサチ・パーカーはあのシャーリー・マクレーンの娘だそうですが、完璧な日本語には驚かされます。凛としたたたずまいがいかにもなキャラで、彼女の存在感で持つ映画といえるでしょう。
「魔女」はいろんなものを自分で作っているので、映画には所々園芸のウンチクが入るのが、見ていてお得な感じではあります。前半に出てくるクランベリージャムは砂糖いっぱいで甘そうだけど、食べてみたくなりました。
映画はそういった田舎暮らしのエコ的なお話で、あまり劇的な展開はありませんが、退屈しません。予告の印象通り、ラストには感動的なシーンがあります。
ただ、娘のネガティブな感情があまり変わらなかったのは、今の世の中の難しさを見るようでした。
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今や日本映画&TVのヒットメーカーになった、三谷幸喜氏の作品です。
ヤクザの親分(西田敏行)の女・マリ(深津絵里)を寝取ったことで落とし前を求められた若者・備後(妻夫木聡)が、親分の憧れている伝説の殺し屋を連れてくれば許すと言われ、売れない映画俳優・村田(佐藤浩市)を丸め込んでその殺し屋に仕立て上げるという、騙しのお話です。
こういう、嘘で固めるお話の場合、いかにその嘘を隠すか、あるいは騙されてしまうかというのが面白さのミソでしょう。三谷氏の映画ではこれの前の作品「有頂天ホテル」にも部分的ながら騙しのエピソードがあったものの、そのポイントが強引過ぎて引きましたが、今回はそういうムリな感じはなく、素直に笑える展開になっています。
クライマックスの大仕掛けも面白いスペクタクルになってるし、佐藤浩市が憧れた役者に会うシーンのような、感動的な箇所もあります。
三谷氏のこれまでの映画は「ラジヲの時間」がけっこう面白い話でしたが、あれはラジオ界を舞台にした話でした。今回は映画業界が舞台と、馴染みの世界を扱っている方がいい物語ができるのかもしれません。
三谷氏の映画では脇役であまり見ない(=新鮮な)役者を起用していますが、今回は妻夫木の部下を演じる伊吹吾郎が光っていました。TVの「水戸黄門」くらいしか思いつかず、映画ではこの人、あまり見ないように思います。「撤収!!」は使ってみたいなあ。
あと、先ごろお亡くなりになった市川崑監督が、もちろん短いながらも、顔を見せているのには驚きでした。最後の出演作になったのでしょうか…?
主人公?である妻夫木クンの演じるキャラの名前が「備後」ですが、これまでの日本映画でこの名前は出てきたでしょうか?なんか自分の名前を呼ばれてるようで、不思議でした。「「備後」さんは入場料¥500」とかあってくれればよかったのに。
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「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨン監督が、日本を舞台に、日本人キャストで作った作品です。
未来から来た女子型サイボーグが男子を守る、つまりかわいい女のコに男が守ってもらうという、ヲタクの願望のような話、といった感じがしてしまいました。しかし主人公の男子とサイボーグ、2人の関係を丁寧に描いているせいか切なさが良く出ていて、ラストの方では泣けるシーンがありました。
特にこの作品では、綾瀬はるかの魅力が全開です。「猟奇的な彼女」が多分に入ったキャラという感じではありますが、サイボーグを演じる彼女の「感情」が伝わってくるのは、彼女の表情によるところが大でしょう。「猟奇的な彼女」でも「ラブストーリー」でも、ヒロインがとても魅力的に撮られていましたが、やはりクァク監督は女子を撮るのは国に関係なく得意なようです。
ただ、ヒロインに名前が無いのが、何らかの「謎」を残しているようにも思います。
話の途中で過去のシーンが出てくるのですが、ここも泣けたシーンでした。昭和時代かい!と突っ込みたくなるようなかなり古い感じではあるのですが、韓国の人がイメージする、古きよき日本(あるいは古きよきアジアか?)なのかもしれません。
予告でも出てくる、大地震のシーンは凄い迫力でした。「日本沈没」なんぞ軽く超えた、大スペクタクルシーンです。
でもこのあたり、主人公が悲鳴を上げているだけでは情けなすぎます。もう少しがんばってほしいところでした。せめて「僕が死んだら彼女を…(以下ネタバレなので略)」とか、思ってほしかった。
タイムトラベルネタのお話は歴史を変えないようにするのが常ですが、この作品はそういうルール?を無視しまくっています。これではタイムパラドックスがメチャクチャになって話が成立しないのでは?と突っ込みたくなりますが、見ていて気持ちがいいのは事実でした。最低限、らしく見えればいい、と製作側は割り切っているのかもしれません。
映画の舞台は東京という設定のようですが、大阪や神戸など、いろいろミックスしてロケしてるようです。でもおそらく、舞台をソウルにしても成立する話でしょう。ただ東京でもソウルでも、服盗むとか食い逃げとか、犯罪はいかんわなあ。
ゲロを吐く行動を、そのまま描写している(しかも1人だけではない!)のは「猟奇的な彼女」を思い出しました。でもやはりえげつないと思ってしまう…。
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「運命じゃない人」が評判を呼んだ、内田けんじ監督の作品です。
メインの出演は大泉洋、堺雅人、佐々木蔵之介、常盤貴子、田畑智子。行方不明になった堺を、同級生だと名乗る佐々木が大泉を巻き込んで探す、という話としてチラシなどでは紹介していると思いますが、これが映画の前半といっていいかもしれません。
しかし途中、人間関係ががらりと変わります。これには宣伝で言うとおり、完全に騙されました。大泉、堺、佐々木といったキャストの、観客が抱くであろう印象を上手く利用しています。彼らの関係性の変化の期待で興味が持てて、退屈しません。
ただ終わってみるとこの話、目的に対して仕掛けが大掛かり過ぎるように思いました。
サブキャラの一人で政治家が出てきて、こいつが悪役なのだろうと注目していたのですが、途中での絡み方は忘れられたようにあっさりしているのに、最後に重要キャラらしい扱いで出てきます。何のために設定されたキャラなのか、不可解でした。
今回有名な役者を使っているのは、監督も出世した感じですが、「運命じゃない人」に出ていた役者も使ってほしかったようにも思います。まあ、あんまり覚えていないけど…。
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黒澤明の傑作時代劇アクションを「ローレライ」の樋口真嗣監督がリメイクした作品です。
この作品の半年ほど前に公開された、黒澤明作品のリメイク版「椿三十郎」のシナリオはオリジナルのまんまでしたが、この「隠し砦の三悪人」は舞台設定は同じながら、流れはかなり変えられています。
オリジナル版は武士と農民の身分の厳然たる差が感じられたのがリアルでしたが、今回のバージョンではそういう差を感じさせず、むしろ秋月家ご一行のメンバーが仲間という感じを出しているのが、今っぽいように思います。
また今回は主人公である農民の2人組の一人、武蔵と雪姫の間にラブストーリーの要素が入るのも大きな違いです。まあこれは、武蔵を演じているのが嵐の松本潤というせいかもしれません。その分武蔵と、相棒であるはずの宮川一郎太演じる新八の関係は前回より薄くなっている感じはします。
身分の差を感じさせないという点は、雪姫が家来など、周りの人たちを気にかける描写にも現れています。特に冒頭での、秋月家の最後の砦にいる雪姫の家来の描写なんて、オリジナルではあまり(もしかしたら全く)無かったのではないでしょうか。
実は僕はオリジナル版の「隠し砦の三悪人」は、話は面白いけどいま一つ好き、とは言えないところがあったのですが、身分差をリアルに出しているゆえに、キャラが冷たく感じたのかもしれません。逆に言えばこの映画、オリジナル版が好きな人は良く思えないかもしれません。
しかし今回の映画、所々都合よすぎる展開もあります。まああまり暗い話にしたくない、というのは分るのですが…。ただエンドタイトルの歌はいらないでしょう。全く記憶に残りません。
オリジナル版で有名なセリフが「裏切り御免」ですが、このセリフ、今回は違ったシチュエーションで決め台詞として使っています。オリジナル版のリスペクトが現れているようで、好感の持てる違いでした。
椎名桔平演じる鷹山刑部が最大の敵として出てきますが、このキャラは今回のオリジナルでしょう。セリフの言い方や衣装など、脚本を担当した中島かずきらしいキャラだと思います。
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- 劇 場 版 - |
長期に渡ってテレビ朝日系で放映されている人気刑事ドラマ「相棒」の映画化です。
主演のコンビ、水谷豊と寺脇康文はもちろんTVのレギュラー陣、そして岸辺一徳などのセミレギュラーメンバーまで、おなじみのキャストはほとんど、今回の映画に顔を出しています。各キャラの登場の仕方など、キャラクターにはTV版との違和感はありません。また特に今回は、特命係に反発している捜査一課の芹沢が薫とコンビみたいに行動するシーンがあるなど、TVではあまり見られない描写は、シリーズを見てる人には新鮮かもしれません。
お話に強引な展開が目立つのもTVと同様ですが、テンポが良くて退屈しません。ただサブタイトルにもなっている「東京ビッグシティマラソン」なるものを出す必要は、あんまり無いように思いました。まあ、映画的な大スケールという意味ではありかもしれませんけど。
社会派のテーマをちゃんと盛り込んでいるのもTV版と同様の作りになっていますが、今回は特に、事件が解決した後のそのテーマの描写が長く、比重が大きく感じられました。
このテーマに関する、ラスト近くでの水谷豊と西田敏行が相対するシーンは2人の演技対決といった感じで、なかなかの迫力がありました。またかなり重要なキャラになっている木村佳乃も腹に一物あるような、妙な迫力がありました。
ということでこの作品、「相棒」TV版を見ていない人でも楽しめる作りになっていると思います。入門編としてはいい出来ではないでしょうか。
今回の映画版のテーマは、イラクでの日本人人質事件がモチーフでしょう。あの事件の時の週刊文春や週刊新潮などマスコミの、人質になった人たちへのバッシングは、まるで政府の御用聞きみたいで驚いたことを覚えていますが、やはり製作者達はそれでいいのか?と思っていたようです。この時の首相は小泉氏でしたが、平幹二朗演じる御厨元首相のイメージは彼でしょう。
この映画、大きな不満が一つあります。それは、あのテーマ曲のメロディが無いこと!
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「踊る大捜査線」の本広克行監督が柴咲コウ主演で描く、少林寺で拳法を学んだ少女(と言えるトシなのか?)・凛がチームプレイを学んでいくお話です。仲間を大事にという主張は、今っぽい感じはします。
しかしこの映画、話に全く乗れませんでした。敵として凛の入った大学の学長である仲村トオルがいますが、こいつがなぜ凛を狙うのか、何をさせたいのかがよく分かりません。凛を追い込んでいく過程はまるで香港映画でよくある、いかにもなパターンで、あまりの芸の無さには呆れました。チャウ・シンチーがこの映画の製作に関わっているから、そんな描写にしたんではあるまいな?
映画のクライマックスは予告編にも出ている、凛が仲村の本拠地に乗り込むくだりですが、この後にラクロスの試合の快進撃のシーンになります。ということでこのお話、敵の決着とラクロスの試合が別れている構成なのですが、これがしっくりこない感じでした。本来は敵もラクロスで戦いを挑んでくるべきではないのでしょうか。ただこれをやると「少林サッカー」ならぬ「「少林ラクロス」になってはしまいますけど。
悪との決着の付け方はちょっと変わっていて、これは日本的かもしれません。でもいきなりで、唐突な感じはしました。
ラクロス部には山崎真実など、女子アイドルが何人か顔を見せています。これがこの映画の、一番の楽しみかもしれません。
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「私ってかわいいし、才能あるし!」と思い込んでる合唱大好き女子高生が、鼻っ柱をへし折られて、真の合唱に目覚めていくお話です。まず、主人公かすみが自意識過剰な奴というのが面白いところでした。日本のドラマ、それも女子でこういうキャラってあんまりいなかったようなので。
映画の内容は「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」のような、近年目立つ「挑戦」ムービー、というところでしょう。そしてこの「うた魂」はそういった映画同様、実に気持ちがよく、合唱の楽しさが伝わってくるようなお話でした。悪人がいないというのも爽やかで、もう1回見ようか、と思わされたし、パンフも買ってしまいました(ちなみに、コミック版では夏帆が「合唱なめてんじゃねーぞ!」とドスをきかせているらしい。)。
クライマックスはややお決まりのパターン…と思ったら最後にもう一押しあって、そこは大感動!のシーンとなっています。中盤で主人公達が歌う「私の青空」も、やさしさが感じられるいいシーンでした。
本編で披露される合唱曲のバラエティ具合も驚きで、特に尾崎豊が合唱にこれほど合うとは、意外でした。
このテのジャンルで近く公開された作品では「ブラブラバンバン」がありました。しかしこの「うた魂」、レベルの違いを見せ付けてくれます。もし「ブラブラ−」を見てがっかりして、今後こういう話の映画を見なくなったりする人がいたりすればもったいないことで、「うた魂」の公開を早くした方がよかったようにも思います。
かすみの個性を夏帆が表情豊かに出していますが、親友で部長の楓を演じた亜希子の存在感にもびっくりしました。またピアノを演奏する副部長ミズキ役の徳永えりは「ブラブラバンバン」にも出ていましたが、どこにいるのか分らなかったようなあの映画に比べるとダントツの良さでした。映画の出来で、俳優の印象も決まってしまうようです。
かすみの転機となるキャラ・権藤を演じるゴリも高校生に見えるかは別として、役にハマっているし、彼と同じ部のコワモテのメンバーもどんぴしゃのキャスティングです。
かすみが恋する牧村役の石黒英雄は、TV「1ポンドの福音」でもそうだったけど、こういうコメディ的な役柄が合うみたいです。「仮面ライダー電王」で演じた悪役でも、こういうタッチを生かしていた感じがありました。
薬師丸ひろ子のキャラは、無理に教師ぶらないところが今までにない教師像の感じがしましたが、よく分らないキャラでした。分らなくしたのは意図だそうですが、それでいいのか…?
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いい音楽を聴いてしまうと「イッて」しまう芹生百合子。彼女を指揮者に、高校のブラスバンド部が大会を目指すお話。コミック原作の映画化です。
「スウィングガールズ」「うた魂」など、ここ数年目立つ「挑戦」(というジャンルがあるのかどうか分かりませんが)ムービーの1本といっていいでしょう。
しかしこの映画、話に全く乗れません。まず困ったのは、主人公達がブラバンをやる動機が分らないことです。どうも当初は、芹生を脱がそうという意図で始めるように見えるのですが、それが何故大会につながるのか不明で、無理矢理に見えます。ブラバンの甲子園だという「普門館」の名前、いきなり出てくるし。
「ウォーターボーイズ」なんかでも、シンクロをやる動機がキャラにとっては確たるものでなくても、観客には分るように描いていました。それに比べると、「ブラブラバンバン」は観客を置き去りにしている感じがします。
むしろこの映画、ブラバンをがんばる話ではなく、ドタバタコメディにした方が良かったかもしれません。もしかしたら当初の企画がコメディだったのが、「フラガール」などのヒットで挑戦ムービーにしようと、路線変更にしたムリが出ているのかもしれません。
キャラの個性が感じられないのも、この映画の難点です。一見特徴のある芹生だって、音楽でイクという以外の個性がはっきりしません(だいたい脱ぐと分っていながら、何でブラバンやるかな?)。主人公格である白波瀬も何を考えてるのか分らないし、彼の「イケメン」の友人とヘアスタイルが同じで、当初2人の見分けがつきませんでした。
キャラで一番目立つのは脇役で、「大会目指そう」と旗を振る部長・八田(イガグリ頭というのも個性的だ)と、芹生に対抗意識を燃やす直情女の近野成美くらいです。
芹生役の安良城紅は、女子高生には見えないし、セリフが棒読みなのは何とかしてほしいところでした。ただクライマックスで歌いだすシーンと、その時のエクスタシーの表情だけは良く、やはり歌手と思わされます。
安良城紅よりもやはり、近野成美の方が演技に安定感があります。感情的なシーン多いけど。彼女の親友役で徳永えりが出ていますが、「フラガール」のような印象の強さが全くなくて、もったいない役でした。
主人公の少年をふる役で、グラビアアイドルの南明奈が出ています。この人かわいいけど、イヤーな女がどことなく似合う…。
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ク ロ サ ギ |
コミック原作の、TBS系で放映されたTVドラマ「クロサギ」の映画版です。
主演はTV版と同様・山下智久が黒崎を演じます。彼以外にも山崎努や哀川翔などのレギュラーから、加藤浩次のようなセミレギュラーまで、TV版の出演者がちゃんと出てくるのは豪華と言えるかもしれません。黒崎の「毎度あり」の言葉も、TVと同じ雰囲気です。
でも今回の敵が竹中直人というのは、言っちゃ悪いけどTVと同じ格のように見えてしまいました(山崎努と哀川翔が出ることでギャラが足りなくなったか?)。
中盤、黒崎が自分のせいで人が死んだ、ということでえらく落ち込みますが、殺されたのが彼が騙そうとした奴だったのには、こんなことで落ち込むか?と大いに疑問でした。彼の近親者が死んだのならともかく、騙そうとした奴ならそういう可能性もあっただろうに、何を今更という感じです。
また、敵があっけなく黒崎に騙されてしまうのにも呆れました。わざわざ「顔を知ってる」というセリフが言われるのに、大した危機もないのにはイージーすぎて笑うしかありません。
それに毎度のごとく警察が黒崎を逮捕しようとしますが、これもムリぽい展開で、レギュラーである哀川翔を話に絡めたいためだけのように見えました。
そういったことでこの映画版、TVシリーズよりもかなり落ちる出来に成り下がっています。同じTV作品の映画化でも、フジテレビの「西遊記」や「HERO」はそんなにクオリティが下がらないのに、TBSとのこの差は何なのだろう…?
映画には頻繁に「ブルータス、お前もか」の言葉が登場します。文学的なセリフを出して高級感を出そうとしてるように思えますが、こんな内容ではただ空回りするだけで、しゃべらされている山崎努がかわいそうになりました。
映画にはTVシリーズでレギュラーだった堀北真希や市川由衣も顔を見せますが、彼女達は物語には絡まないので、おまけみたいなものでしょう。まあこの2人が出てないと、それはそれで寂しくはなりますけど。
ラストシーンは続編を意識したような感じでした。やるにしても、映画では止めてほしいなあ…。
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出自は不明だそうですが、ネットや週刊誌で話題になったという犬を飼うときの誓い、「犬の10戒」を元にしたお話で、北海道に住む少女あかりと飼い犬ソックスとの10数年間を描いた物語です。
映画は主人公の女性・あかりとソックスとのふれあいを中心にした、あかりの話です。つまり犬のお話ではなくて人間のお話ということで、犬が出ないシーンもけっこうあります。なので犬だけの話を期待すると、がっかりするかもしれないので注意です。
でも予告で思っていた通り、クライマックスはやはり、「いぬのいえいが」ぽいけど(ぽくて?)泣けました。
あかりを演じているのは田中麗奈で、彼女の父親を豊川悦史が演じています。このコンビ、最近のCMであるSOYJOYを思い出してしまい、「大豆ですから」と言いたくなりました。今回の豊川悦史は、ダメっぽい男を演じているのがちょっと珍しい感じがします。まあそれでもかっこいいのだけれど。
田中麗奈の少女時代を福田麻由子が演じていますが、田中麗奈とよく似ています。彼女と幼なじみのギタリストを加瀬亮が演じていますが、少年時代を演じた子役も加瀬氏にけっこう似ていて、びっくりでした。
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太平洋戦争後の極東裁判で、B,C級の戦犯とされた岡田資中将がその裁判を「法戦」と戦い抜く、事実を元にした物語です。
岡田中将は戦時中、B29の搭乗員を処刑したということで裁かれますが、岡田中将はその行為を彼以外の上官とは違い、誰の責任にも押し付けることはなく、部下を守ろうとします。こういう立派な日本人がいたということに驚きますがさらに、彼の発言のほとんどが事実だというのにも驚かされました。
今は「品格」という言葉がもてはやされています。この言葉自体うさんくさくて、あまり使いたくないし、この言葉を使うのに値する人が何人いるかと思いますが、岡田中将は間違いなくその一人でしょう。アメリカ人の看守から番号でなく、ジェネラルと呼ばれるようになるのにも納得です。
岡田中将の弁護人となるフェザーストーン弁護士の、岡田中将のための尽力にも驚かされます。今の時代に同じことをやったら非難ごうごうかもしれません。自由と民権を大事にしていた古きよきアメリカ人という感じで、この人も品格のある人物として描かれています。彼だけでなく、アメリカ人のキャストもなかなかよく、岡田中将に同情を寄せていく過程は感動的でした。
極東裁判というと連合国による一方的な裁判という印象がありましたが、B,C級の戦犯の裁判にはこういうフェアな感じのものもあったそうで、これも意外な発見でした。
ただ被告が赤ん坊を抱けるとは、今より緩やかに見えますが、本当かなあ?
小泉尭史監督はこの作品のシナリオを15年あたためていたそうですが、価値観が多様になった今でこそ、作る価値がある作品です。原作のタイトルは「ながい旅」ですが、映画の「明日への遺言」の方が今にふさわしいタイトルでしょう。岡田中将みたいな政治家が3人でもいれば、日本はもっとマシな国になるかもしれません。
映画のテーマは冒頭で明らかにされます。非戦闘員への爆撃は国際法で違反とされているそうで、禁じた声明が出ていたとは初耳でした。でも結局、それを言い出した当人であるルーズベルトが破っています。そしてイラクやアフガニスタンで見られたとおり、アメリカ(以外の国でも)は今でも破っていて、その意味では今に通じるテーマであると言えるでしょう。
話の構成にアメリカ人を入れているのは、分かりやすさを重視したゆえと思います。映画の大方は裁判のシーンですが、岡田中将とのやり取りは白熱するし、裁判の間に家族のシーンを入れたりして変化をつけていることもあり、退屈は感じませんでした。
岡田中将の家族が絡むシーンは多くありませんが、必ずといっていいほど泣けました。特にラストの、妻役の富司純子は表情だけで涙がこぼれました。この人はもちろん、主人公を演じた藤田まことも役に合っていたと思います。
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「親指さがし」が映画化された、山田悠介原作の小説の映画化。「佐藤」の姓を持つ人が「捕まったら死」の鬼ごっこ(「ごっこ」なのか?)に参加させられ、理不尽に追われるお話です。
追われる立場である主人公達の運命にけっこうドキドキハラハラさせられ、疾走感のようなテンポも良く、全く退屈しませんでした。
パラレルワールドの設定は原作には無いらしいけど、そう違和感はありませんでした。突き詰めるとおかしい部分があるかもしれませんが、見てる間はそんなもんか、と上手くごまかされます。多少都合よすぎる展開もあるのですが、ラストは爽快で、気持ちよく見終われる作品です。
監督の柴田一成氏はプロデューサーをやってた人ですが、これまで手がけた作品は「笑う大天使」や「渋谷怪談」などロクなものがないので、今回の出来は意外でした。
映画の「鬼」は、押井守の「赤い眼鏡」に出てくる兵士ケルベロスのチープなパクリみたいに見えますが、顔が見えないせいかそれなりに不気味さがあります。まあ鬼が見る画像なんかは、普通にパソコンで作れる感じでチープではありますが。
チープといえば、王宮の外観はCGでちゃんと作っているくせに、中のセットは殺風景すぎて、いかにも金がありませんでしたという感じがありありなのは呆れます。
主人公・翼を演じる石田卓也はこのごろ売れっ子のようで、体力勝負のようなこの役には合っている感じです。ただこいつのあまりの頭の回転の悪さには、ちといらつきました。
映画のキーパーソンである彼の妹・愛を演じているのはやはりこのところ売れっ子、というか出演作が目白押しの谷村美月です。この映画ではパラレルワールドということで、アクティブな谷村さんや壊れた感じの谷村さんなど、このおねーさんのいろんな面が見れるし、ちゃんと性格を表現しています(キャラによってファッションが違うのが、また楽しいんだな)。
川崎での劇場はほぼ満席で、10代20代らしき若者が目立ちました。自分に置き換えて見ているのでしょうか。でも女子高生らしい観客が、「王様はあんなに年寄りじゃない」と言っているのを聞きましたが…。
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谷村さんが鬼に捕まる瞬間には、客席から小さい悲鳴が上がりましたが、僕も心の中で「あっ!」と言っていました。でも後日TVでのこの映画の紹介番組を見たら、このシーンをやってしまっていました。宣伝は分るけど、いいシーンを見せすぎるのはダメでしょう。
後半で谷村さんが処刑から免れるシーンがありますが、いくらこちらの世界の彼女が助かっても、向こう側の機械が止まることはないはずで、かなり都合よすぎの状況です。
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山田洋次監督が、太平洋戦争時の暗い時代を生きた家族を描く話です。
宣伝で受ける印象は「家族愛」の映画でしょう。それは確かにそうなのですが、むしろ太平洋戦争開始時のイヤーであったろう時代に翻弄された家族の物語、と言うのが正しいと思います。「銃後」の暗さと恐ろしさを、感動的なシーンを交えつつ秀逸に描いた作品です。「戦争」映画の秀作は何本かあるでしょうが、この映画は「戦争時代」を描いた秀作です。
映画の始めの方は、チラホラと笑えるシーンがありますが、だんだん見ていて辛くなってきます。
お話にはものすごい盛り上がりというのはなく、淡々と進みます。なので誰もが号泣するようなシーンはあまりない(あることはあるのだけど)ので、涙を期待する人が見るとがっかりするかもしれません。
しかし単なる感動で終わらせないラストの母べえのセリフには、「あの時代」を風化させまい!という監督の執念を見た感じがします。
映画には、戦争に賛同していく周りに逆らえない、時代の怖さが出ています。しかし、今も卒業式の「君が代」の時に起立しないことが問題視されるといった風潮があるし、この映画を単なる過去の話と受け取るのは間違いでしょう。「KY」とかいう言葉で「空気読め」と周りに同化を迫る日本人の特質は変わっていないようです。山田監督が今を憂う、反戦映画とも言えると思います。
吉永小百合は実際の年齢を感じさせることはなく、母べえのイメージにぴったりでした。この人は原爆の詩を朗読する活動もしているし、役に相応しいキャストです。
母べえの叔父を演じる笑福亭鶴瓶は、放浪癖があるようなキャラで、寅さんのイメージをダブらせている感じでした。生きていたら渥美清がやったかな?
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山ちゃん(浅野忠信)が母べえに出征を告げ、「覚悟は出来ています」という山ちゃんに母べえが「覚悟って何よ!」と返すセリフには、時代への怒りが上手く出ていたと思います。
「男たちの大和」で住宅街のど真ん中で「死んだらあかん」と叫ぶシーンより、よほどリアルで情感がこもっていました。これが角川春樹氏と山田洋次氏との差かもしれません。
ラストの病院のシーンで、成長した母べえの娘(戸田恵子)が病床の母べえに「もうじき父べえや、チャコおばさんに会えるね」、と言います。僕はこの後に、母べえが死後の世界で父べえや壇れいに会うシーンになるのだろう、と思っていました。
パターンではあるけれど、これやられたら泣くだろうなあ…と思っていた(「茶々」はそれでやられたし)ら、母べえは「生きている父べえに会いたい」と。
涙でごまかす甘い予想を打ち砕き、あの暗い時代を忘れまい、と山田洋次が言っているようでした。凄!
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