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スタジオジブリ制作の、人間の家の床下で「借りぐらし」をする小人一家の物語です。
主人公アリエッティが家の中や裏庭で繰り広げる行動は、小さくなることで世界の見方が異なってくる「家庭内アドベンチャー」と言いたくなるような、面白さがあります(団子虫がペット!!)。彼女の行動的なところは女子のたくましさといった、宮崎イズムを継承しているようで、そういう小人たちの「冒険」が退屈しません。
とはいえ、盛り上げようとすればもっと盛り上がるかもしれない展開があまり盛り上がらないし、人間側のキャラ描写が薄いせいか、感動もありません。シナリオは宮崎駿氏が関わっているそうですが、なんか手を抜いたように見えました(自分の監督作ではないから?)。結局、映画でやるほどとは思えない小品といった印象です。
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お手伝いのおばさんが、単なる悪役にしか見えなかったのが物足りませんでした。小人を捕まえて何をしたかったんだろう?
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‐ 閃 光 ‐ |
都内で起きた殺人事件の捜査にあたる片桐は、コンビを組まされた古参の刑事・滝口から犠牲者があの3億円事件に関わっていたことを聞かされ、再びその未解決事件に取りかかりますが、警察組織の壁が立ちはだかります…。
3億円事件は今だにテレビでも話題にされて、人々の興味をそそります。映画はその真相の興味でそれなりに見せはします。しかしその犯人については、何かしらの事実に関連していることも無さそうで、結局フィクションとしか思えません。特に3億円の行方についてはまるで適当としか思えず、「何じゃそりゃ?」と怒りたくなりました。
キャラの行動についても、目の前で人が殺されているのに主人公たちが犯人を追おうとしないなど、何でそういうことをする?という突っ込みを入れたくなる箇所が所々あります。何といっても分からないのは渡辺大演じる片桐で、出世を目指していたはずの彼が何故仲間に反抗までして滝口に肩入れして、3億円事件の捜査を続けようとするのか、よく分かりませんでした。組織に協力した方が、出世できるかもしれないのに。
またこの映画、本筋に無関係にエロなシーンが目立ちます。そのくせ女子の裸を見せることもありません。近年女優業が目立つ川村ゆきえが、片桐の恋人役でラブシーンを見せますが(予想通り)寸止めです。でありながらエロでもない状況で渡辺大のケツを見せたりして、そんなん見たくもないっつーのに。
シナリオには長坂秀桂氏の名前がクレジットされていますが、かつての「特捜最前線」のエピソードであったような、骨太で感情を揺さぶられるような箇所はこの映画にはありません。監督の名前も脚本にクレジットされているし、原作もあるということで制限が多かったゆえでしょうか。
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本屋大賞受賞も当然のあの壮絶な物語を、「嫌われ松子の一生」などを手がけた中島哲也監督が映画化です。
お話の筋は原作と変わりませんが、構成を話し手で分けるのではなく、ある程度時系列に沿って並べているのが違う点でしょう。この方が映画的だと思うし、事件の全体像が分かりやすくなったように思います。これまでの中島監督の作品はファンタジーぽい描写が目立つ印象がありますが、今回のそういう箇所は予告編にも出てくるミュージカルぽいシーンくらいで、ひたすらリアルに徹しているのがまた、新鮮でした。
しかし映像になると、いじめのシーンや女のコをプールに落とすシーンなど、描写が具体的になる分、人の悪意がより強調されるようで、原作以上にショックというか、えげつなくなる感じがしました。
映画にはいじめ防止のキャンペーンを皮肉っているように見えるシーンがあるし、巷にあふれる感動や友情をウリにする、昨今流行りのドラマを皮肉りたいようにも見えるのも面白い点です。
ラストだけは映画独自のシーンが加わっていますが、森口の最後の一言で、ありかもと思います。
キャスティングは完璧と言っていいでしょう。特に主人公である森口を演じる松たか子はシーンによってはまるで般若(ひらがなではない!)に見えて、新境地を見せてくれます。
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霊能力者バトルロイヤル |
前作「トリック2」から何年もたって、なぜか「TRICK」が復活です。山田や上田は相変わらずブランクを感じさせないし、この映画の公開前にTVシリーズが作られる(宣伝のためか?)ほど出世した矢部が、本筋に絡まないのも相変わらずです。
今回もおなじみの小ネタが忘れられてなくて嬉しいし、ゲスト出演の佐藤健や松平健の出演作のネタもお約束という感じで、クスクスと笑わせてくれます。
この映画版の公開前に放映された、TVスペシャル版との「リンク」も見どころでしょう。お話が前2作よりちょっと暗めで切ないところがあるのも、スペシャル版と同様です。
しかしサブタイトルのわりには「バトルロイヤル」という感じがしないし、お話も淡々と進んであんまり盛り上がりません。まあこの部分も相変わらず、というところでした。
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ザ・ファイナルステージ |
フジテレビの深夜枠で人気を博した、TVドラマシリーズの映画版です。この作品の公開の直前にはセカンドシーズンが放映されましたが、この映画の宣伝のため?と勘ぐりたくもなりました。
TV版と同様にこの映画版も、ケムにまかれるゲームの内容+秋山クンの親切な解説で楽しめます。音楽でTVのメインテーマをちゃんと使っているのも、同じ雰囲気が出てヨシなところです。
とはいえ場所は限定されてるし、騙し騙されといった、結局いつもと代わり映えのしない内容ではあるので、映画で作るほどのものか?と疑問にはなりました。
今回はファイナルということだからか、ゲームの主催者の正体が一応明かされますが、テキトーな感じがしました。だいたい、スクリーンによく出てくるあの人形の声を発しているのは誰なんでしょう?それが主催者だと思うけど。
映画には脇のレギュラーで吉瀬美智子や渡辺いっけい、さらに鈴木浩一、そしてまさかの鈴木一真といったセミレギュラーメンバーまで出てくるのに、TV版のセカンドシーズンに出てきていた菊地凛子は全く出てきませんでした。ギャラの経費削減のためでしょうか?
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藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、小出恵介たちが暮らすシェアルームにある日、林郁都が転がり込んできて、いつの間にか居ついてしまいます。彼の存在が藤原たちの微妙な関係をかき乱していくことになりますが、彼らが集う部屋のまったり感は妙にリアルで、なんだか個人に深く立ち入ることを遠慮する、現代の人間関係を表しているように見えました。
話が進むにつれてキャラたちの隠されていた欲望や性癖が明らかになっていくのが映画の面白いところです。藤原はなんとなく想像がついてしまいましたが、それが明らかになった後の、ラストは下手なホラーより恐怖!でした。
林郁都は、見てないけど「バッテリー」とか「ダイブ」とか好青年の役が多いというイメージがあったので、ああいうダークな役(セ●ズリまで!)をやるとは意外でした。
貫地谷しほりはもっぱらジャージ姿ばかりの、正直言ってだらしない感じの女子がよく似合っていました。しかし対極といえる「龍馬伝」での凛々しい千葉さなも合っていたし、「スウィングガールズ」からいつの間にやらオールマイティに進化しているのは凄い!
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STRONG WORLD |
今だに大人気のコミック「ONE PIECE:ワンピース」の劇場版です。今回は原作者の尾田栄一郎氏がストーリーやデザインを担当するなど、映画にどっぷり浸かっているということなので、劇場版第10作目にして、初めて見てみました。
うろ覚えなのですが、尾田氏が以前どこかのインタビューで、話を盛り上げるのは「義侠心」だと発言していたような記憶がありますが、まさにその言葉通りに映画を盛り上げてくれます。そしてこの映画、敵が強いし、主人公はもっと強く、キャラクターがみんなかっこよく、スカッと爽やかに見れます。まさに「ドラゴンボール」や「聖闘志星矢」といったジャンプアニメの、王道を行く作品です。
敵であるシキの領土の島が空に浮いているイメージや、映画の展開には、同じ頃に公開されたジェームス・キャメロンの「アバター」を思わせる部分がありました。まあ偶然なのでしょう。他にルフィたちの「塔」といったような面白いイメージがあるし、彼らのフォーマルぽい衣装はフツーのアニメに見られないようなセンス(海パンというのも独特や)で、「メンズノンノ」の表紙を飾るのも納得です。
また合成生物のようなシキの島の動物達のデザインも面白く、弱そうな動物が強そうな動物に勝ってしまう設定も楽しませてくれます。中でも出色のキャラは鳥さん・ビリーでしょう。ルフィ同様にあきらめない姿が献身的で、いじらしくなります。
映画で気になったのは、シキの部下でした。敵はシキばっかり目立っていて、彼の部下にはあまり個性が感じられません。そのせいかルフィたちがシキの部下と戦うシーンは、エキサイトできませんでした。
ゲスト声優で北島康介氏が出ていたそうですが、全然分かりませんでした。皆道愛子嬢も出ていたそうで、事前にチェックしておくべきでした…。
劇場で入場者特典として配られていた(在庫があれば)、原作マンガと同じサイズの小雑誌「ONE PIECE」の零巻は、尾田栄一郎氏による書き下ろしマンガや、デザイン画が掲載されているなど、超盛りだくさんな内容です。これが無料とは太っ腹!
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「サマータイムマシン・ブルース」に続いて、本広克行監督が劇団ヨーロッパと組んだ作品です。クリスマスイブの日、香川県善通寺のとある喫茶店に集まったエスパーたちが、テレビ番組のADを演じる長澤まさみと絡むことで起こる騒動を描きます。
ほとんど覗きの透視能力や、限定的なテレポーテーションなど、小市民的なことしかできない彼らのパワーがなかなかに笑わせてくれます。クライマックスはクドいけど、キャラ達の優しさが心地よいエピソードもあって、爽やかに見れるお話でした。
エスパーを演じている俳優たちは劇団の人だと思いますが、やはり上手く役をモノにしています。そんな彼らに付き合うハメになる長澤まさみは一応主演になっていますが、狂言回しといった役割であんまり目立つ感じではなく、損な役回りの印象でした。
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「舞妓 Haaaan!!!」の水田伸生監督、クドカンのシナリオ、そして阿部サダヲのコンビ再び。幼い頃に別れた阿部サダヲと瑛太の兄弟の対立と和解のお話です。ということで映画のテーマは「家族」でしょうか。
お話は退屈はしないし、そこそこ笑えるシーンはあります。しかし「舞妓 Haaaan!!!」に比べるとテンポも吹っ切れぶりも今一つでした。特に舞台で主役兄弟が個人的な話をするシーンは、思い切り引きました。映画の観客はいいとしても、舞台を見ている観客は何が何だか分からんでしょう。
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「不毛地帯」などで有名な山崎豊子氏が、日本航空をモデル?にして書いた小説の映画化です。長い原作と同様に映画の尺も長く、今時の映画にはめったにない「休憩」が入ります。
しかしこの映画、原作を多少カットしているかもしれませんが、主人公など重要なキャラクターの描き方が丁寧なおかげで、彼らの行く末が気になってしまい、退屈しません。
あくまで正しさを貫こうとする主人公・恩地に対し、会社に残る上層部の人々は自分達の利益と地位の安泰を求める行動をします。彼らの描写は、高度経済成長から歪んでいった日本の歴史を見ているようでした。その欲望の追求に飽きがくることはなく、充足をしないその姿は、この作品の少し後に公開された「キャピタリズム」での、資本主義の頂点に立つ人々の金儲けにまい進する姿に重なります。正しい生き方、賢明な生き方とは何なのか考えさせられます。映画には大きく盛り上がるようなシーンはありませんが、ラストは静かな感動がありました。
このお話は日本航空をモデルにしているようですが、どこまで本当のことなのかは分かりません。しかしもし恩地みたいな人が本当にいるならば、そしてこのような人を生かせる社会であるならば、日本が「沈まぬ太陽」であることは可能なのでしょう。
本当のことといえば、映画の冒頭で描写される御巣鷹山の墜落事故、特に機内のシーンは凄くリアルに見えました。長くはありませんが、見ていて辛いシーンでした。
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ある日「感情」を持ってしまったダッチワイフ=空気人形。コミック原作の物語を「誰も知らない」の是枝裕和監督が映画化です。
感情を持つことで生まれる「つながり」の喜びや切なさ、あるいは感情を持つことで困惑する男など、現代の恋愛事情などがよく出ている作品です。
中でも空気人形が、作った師・オダギリジョーを訪れるシーンは、オダギリ君がいい味を出しているおかげで妙にほのぼのとした、感動的なシーンになっています。
主人公の空気人形を演じるのは、日本映画では「リンダリンダリンダ」に出演したペ・ドゥナですが、流暢でない日本語が妙にそれらしい雰囲気を漂わせています。韓国では裸の胸とかを見せるのはNGなはずなので、彼女が脱ぐとは意外でした。ただ、「血」は見たくなかった…。
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戦国時代、織田信長の居城として有名な安土城の建設に関わった大工たちが主人公、という異色ネタの時代劇です。
わざわざ敵の陣地に求めた心柱が来ない!人夫の中に信長を狙う敵!など、危機また危機のエピソードはまるで戦国時代の「プロジェクトX」です。まあこうしないと映画にはならないでしょうけど。しかしあまりハデなエピソードはないので、歴史が好きな人であればそれなりに楽しめることでしょう。安土城の最後を知っていると、ラストは切なくなります。
紅一点の福田沙紀はかわいいけど、一人だけ派手な着物を着ていたりして、浮き気味に見えました。
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人 生 逆 転 ゲ ー ム |
ヤングマガジン連載中で、TVアニメにもなった福本伸行氏の原作による、インパクト大の人気コミックの実写化です。
キャラクター達の自問自答や「ざわざわ」など、原作の雰囲気がよく出ていて、特にクライマックスの「Eカード」は緊迫!のシーンでした。売れっ子である香川照之の怪演が、お話を大いに盛り上げてくれます。
天海祐希のキャラはコミックでは男性になっていて、映画にあんまり女っ気が無いからゆえのキャスティングかもしれません。しかしこのお姉さんの迫力は、映画の世界にぴったりハマっています。
映画を見る前から気になっていたのは、原作のカイジは逆三角形の顔だけど、映画でカイジ役の藤原竜也は丸顔で、形が違いすぎる点でした。結局この違和感は、映画を見ていても最後までぬぐえませんでした。藤原クンのキャストは顔以外、性格なんかは完璧だと思うんだけど…。まあそれでも、パート2も見るでしょう。
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白土三平原作のコミック「カムイ外伝」の実写化です。
シナリオは宮藤官九郎ですが、映画は特にクドカンらしいとは思いませんでした。まあ逆に言えば、この人はフツーの話も書ける、ということになるのでしょうか。
映画はアクションをそこそこ散りばめてるおかげで退屈はしませんでした。でもキャラの感情が伝わってこないし、意外性も無くてがっかりでした。主人公カムイを演じる松山ケンイチはアクションをがんばっていて、いつものように好演しています。彼を始めキャストはそう悪くありませんが、あんまり個性が見られません。香港の大スター、イーキン・チェンなんて、どこにいるのか分かりませんでした。
映画には結構CGが使われていますが、海のシーンなんて光が合っていないのが一目瞭然でした。CGがここまでバレバレに見えるなんて、OKを出した監督のセンスを疑います。同じ頃に公開された「BALLAD」ではどこでCGを使っているかも分かりにくかったのに。これは経験によるものなのでしょうか。
カムイは「非人」という設定ですが、フツーには使わない言葉なので、そう言われても分からない人が多いのではないでしょうか。どんな身分だったかは映画ではなんとなく分かるようにはしていますが、もう少し解説があった方が良かったかもしれません。
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エリザベス女王の親戚を名乗り、女性を次々に騙していく国籍不明の男「クヒオ大佐」。映画はどこまで事実を描いているのか分かりませんが、こういう人間が実在したというのは驚きです。
しかしこのクヒオ大佐、完璧なようでいながらつまらないところでボロを出してしまい、所々で笑わせてくれます。そのクヒオ大佐を演じるのは堺雅人ですが、生真面目な役が目立つ印象のこの人の、いかにもな付け髭をしながらの演技は見モノです。
映画は彼と彼を取り巻く、あるいはターゲットに狙う女性達との物語ですが、正体を知ってもいじらしくクヒオに尽くす松雪泰子と、クヒオに引かれながらも反発する満島ひかりが面白い好対照を見せてくれます。さらに松雪の弟役で、クヒオのその上を行き、つけこむ新井浩文も、いつもながらの存在感を見せてくれています。
映画はせいぜいクヒオ君の周辺を描くだけの、低予算の内容だろうと思っていたので、大がかりなクライマックスシーンにはびっくり!でした。でもここと冒頭で登場する、内野聖陽のキャラが出る理由が分かりません。
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名もなき恋のうた |
しんちゃんシリーズの感動作「クレヨンしんちゃん:嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」を、「ALWAYS:三丁目の夕日」の山崎貴監督が実写でリメイクした作品です。
映画ではアニメ版の感動ポイントをちゃんと生かして、泣けるシーンがチラホラありました。山崎監督はあの映画を「分かって」います。
さらにアニメ版を発展させたような、映画版独自のエピソードもあり、特に中盤での「写真を撮る」シーンはいい情感が漂っています(プリントの枚数が足りるのか心配になったけど)。またラストシーンがアニメ版と一番違う点ですが。ここも泣けました。
主人公の少年をしんちゃんみたいな、ひねた性格にしなかったのは正解でしょう(あのまま実写にしたらお下劣度が相当目立ちますが)。またアニメ版と同様、お母さんが一番目立ってない感じを受けました。アニメ版でもひまわりの必要性は無かったと見えるので、今回は妹を出さなかったのも正解です。
侍達のキャラクターやキャストの良さは予想外で、特に穏やかなキャラの印象が強かった草ナギ君が、戦場でもいい演技を見せたのは意外!でした。お姫様役の新垣結衣も、意外に合っていました。また草ナギ君についていく、吉武怜朗演じる若侍は映画独自のキャラですが、これも好感の持てる人物像でした。
山崎貴監督といえば白組で、映画でもVFXを多用しているはずなのですが、どこで使っているのか分からなかったほど巧妙です。この後に公開された「カムイ外伝」のバレバレのCGに比べて、同じ日本映画なのに雲泥の差があります。
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大ヒットした、アニメ版「時をかける少女」のスタッフによる作品です。
「時かけ」は主人公が限られた人数で、閉じた感じの世界といった内容でしたが、この「サマーウォーズ」は家族重視で、キズナが重要になるという、「時かけ」より幅広い世界観の内容です。
お話の展開はなんとなく読めはします。しかし「時かけ」は楽しめたものの泣くまでは行きませんでしたが、「サマーウォーズ」はところどころで感動のツボを見事に突かれ、泣かされました。一人だけでなく、みんなでがんばるのがいいポイントです。デジタル対アナログと取れる構造ですが、デジタル社会もキズナによって成り立つといいたいのかもしれません。
映画は現実世界とネット世界の2つが舞台になります。現実世界で舞台となる上田は、古いお寺がチラホラあることで「信州の鎌倉」というのがウリで、この作品を見る数ヶ月前に行ったので、個人的には嬉しい設定でした。
もう一つの舞台であるネット社会は、映画ということからかビジュアル重視の感じで、特にアバターが群れを成したりする3DCGは迫力!です。本当のネットはこう単純に描写できるものではないのかもしれませんが、「アバター」や「アカウント」といった、人によっては耳慣れないであろう用語がひんぱんに出てきたりするので、現実世界に近い描写にした方が、フツーの人たちにも分かりやすいと思います。
ここでは花札が重要なキーになります。ルールを知ってるともっと楽しめるかもしれません。
ヒロインの声は、最近チラホラとTVに出だした桜庭ななみが演じています。ヘタとは言いませんが、いま一つ上手いとも言えなくて、「時かけ」の時の仲里依紗の方がマシだったと思います。今回は「時かけ」同様脇役ながらも、谷村美月が桜庭以上に圧倒的な上手さを聞かせてくれます。この人が出てるのは知ってはいたけど気づかなくて、クレジットを見て「あの役か!」と驚かされました。主人公の声を演じる神木隆之介も、ドラマ同様の上手さを聞かせてくれます。しかし一番目立っていたのは、影の主役とも言えるおばあちゃん=富司純子でしょう。実写同様の貫禄で映画を締めています。
陣内家のメンバーの声のクレジットでは、他に「時かけ」で主人公を演じていた仲里依紗や、「サラリーマンNEO」やドラマの脇でよく出ている田中要次、TV版「はだしのゲン」「となりの芝生」などの子役で活躍中の今井悠貴なんかもクレジットされていますが、他の声優と混じっても全然気づかないほど、違和感がありませんでした。
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AIは人類を危険な目に合わせはしますが、殺そうとかいう悪意は無いでしょう。「千と千尋の神隠し」でのカオナシのように、諭すやり方もあったかもしれません。
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Saiko! The Large family 放送禁止 劇場版 |
フジテレビ系で深夜に放送していた(る?)フェイクドキュメンタリー「放送禁止」劇場版の第2作。カナダのドキュメンタリー映像作家ベロニカ・アディソンが、ニッポンの大家族に密着取材という設定で進行します。
取材対象になった大家族・浦一家はみんな幸せというわけではなく、彼らの中に家庭内暴力やフーゾクやひきこもりなど、ネガティブな要素があるのは面白いところでした。それに絵に描いたような、昔のホームドラマのようなベタなシーンをあえて出しているのが、わざとらしくて笑えました。
でも「放送禁止」であるなら、何かもっと深いウラを描くエピソードがありそうで期待して見ていましたが、あっけなく家族礼賛の話になっていて、拍子抜けです。こんな内容なら「放送禁止」じゃないじゃん。
…と思っていたら、どうやら今回の話は、以前放送したエピソードの後日談のようです。
映画には時おり、瞬間的に「今の何だ?」と思うような、意味ありげなシーンが出てきます。もしかしたら、アブない要素は「作品」にはあえて出さずに、探せと突き放しているのかもしれません。でも何回も見れるDVDならともかく、映画館でそれは辛いでしょう。何も知らずにこの作品を見た人は、何だこのベタな話は?としか思わないのではないでしょうか。
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西原理恵子原作の絵本の映画化。「ぼく」と、時々現れる不思議な生き物?「いけちゃん」との関係のお話です。
いけちゃんは予想通りCGですが、そこそこ馴染んでいる感じです。いけちゃんの声を演じるのは蒼井優で、「鉄コン筋クリート」以来の声優の仕事だと思いますが、雰囲気が出ていて、やはり上手く、ラストのセリフの言い方は感動的でした。
いじめとか虫殺しとかいたずらなど、映画には子どもの残虐さや意地悪さがけっこう出ていて、よい子たちではないのがリアルです。これが西原流の毒気なのかもしれません。
映画のしょっぱなには、吉行和子が出てきます。出演しているとは知らなかったので、上映してる部屋を間違えたと、しばし思ってしまいました。
ゲスト?で原作者の西原理恵子が顔を見せています。一応演技らしいことをしてるのは、失礼ながら笑ってしまいました…。
それにしても、蓮佛美沙子のギャル姿は似合わねー!
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− ム ウ − |
宣伝では故・手塚治虫氏の名前を強調していますが、この映画は原作というより、彼のコミックのストーリーを元にしたお話ということのようです。なので、コミック版の「MW」と映画がどの程度まで同じなのかは分かりません。
初日には本編の前に、この作品のダブル主演である玉木宏と山田孝之の2人のメッセージが流れました。その中で玉木は、役の方向性に行き詰まりを感じていたので、喜んで悪役を引き受けた、というような内容を語っていました。その言の通り、玉木宏は今回の極悪非道の役が、かなり似合っています。
玉木宏はこれと同じ頃に公開している「真夏のオリオン」でも主役を勤めていますが、そこではポジティブないい人の役です。このキャラも合っていますが、どちらかといえば彼の線の細さがこの「MW」の悪徳キャラ・結城により合っている感じがしました。
でも映画では、結城が悪の道に至る理由が説明されているせいか、所々応援したくなりました。この結城の行動の行方の興味で、見ている間退屈しませんでした。
山田孝之も一応、玉木と同格の主演格とされてはいますが、玉木の方が出番が多い感じだし、その悪役ぶりが際立っているおかげで、山田クンの影が薄くなってます。
そのせいか、山田クンにくっついている山下リオはヒロイン格の感じながら、あんまり目立っていないのが可哀そうです。クレジットでは大きく扱われている、石田ゆり子の途中退場も意外でした(哀れだ…)。
オープニングの誘拐エピソードはちと長く思いました。大方の客は誰が犯人か分かっているんだし、さっさと話を進めろって。
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太平洋戦争終結前夜、日本海軍の潜水艦イ−77とアメリカ軍の駆逐艦パーシバルとの攻防戦を描きます。脚本で福井晴敏が関わっているし、潜水艦が舞台で、しかも映画は戦争時代より現代へのメッセージという手法をとっていることで、「ローレライ」とかぶる感じがします。
ただ、「ローレライ」は艦隊が相手だったし、役者も役所広司や妻夫木聡などそうそうたるメンバーだったのと比べると、この「真夏のオリオン」は話も役者もスケールが劣る感じはしてしまいます。でも良く言えばこの映画、こじんまりとまとまっていて、国家がうんたらかんたら言っていた「ローレライ」よりは、すっきりと見やすい話にはなっています。
それに海にしろ宇宙にしろ、こういう船モノで、乗員が一丸となって作戦を実行する話は熱くなります。そのせいか、チラホラと泣けるシーンがありました。ずるがしこい悪役とかもいないせいか、爽やかに見終われる作品です。
艦長が明るくポジティブなのも「ローレライ」とカブる感じがあります。ただこの「真夏のオリオン」の主人公・倉本はさらに楽天的で、どんなにヤバイ状況でも深刻にならないところは、「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーを思わせました。そういうキャラクター描写は面白いところではありますが、みんな清廉潔白なキャラのせいか、いま一つ食い足りない感じはしてしまいました。
あの暗い時代に、こういう明るい思考の軍人がいたとはちょっと信じられないし、公然と生きることを口にするのはリアリティーに欠ける感じはしますが、現代へのポジティブなメッセージを発する第2次大戦モノ、ということで割り切ればいいのかもしれません。
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「CASSHERN」を手がけた、紀里谷和明監督の第2作です。
その「CASSHERN」は、物語にところどころ疑問になる箇所がありましたが、今回はそういうところはなく、話がストレートで分かりやすくなっています。
主人公はあの石川五右衛門ではありますが、お話は戦国時代の正史を下敷きにしていながらも、部分的に歴史とは違う展開にしていて、それが上手くファンタジーな雰囲気になっています。和だけでない、イスラムなどが入った従来の歴史観にとらわれない、アーティストらしいセンスの建造物や衣服のデザインがそういう雰囲気をより濃くしています。
こういうファンタジーな雰囲気に加えて、踊りのシーンもあったりするので、この映画は血の量を増やした劇団新感線のドラマ、といったイメージがしました。
映画のアクションシーンは、アニメを再現したようだった「CASSHERN」以上に、アニメやゲームを連想させました。クライマックスの戦闘なんて「三国無双」か?(CMしか知らないけど)と思います。それが悪いということはなく、それが監督のやりたい描写なのでしょう。ちと重量感に欠けますけど。
GOEMON のキャラは特に初めの方なんか、身軽なアクション描写が目立ったり、軽口を叩くシーンがあるせいか、「ルパン三世」のルパンに似ている感じがしました。
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バレーの試合に勝って、「先生のおっぱいを見たい!」がために努力をしてしまう中学生たち。小説が人気を読んだ、本当にあったというお話です。
「おっぱいを見たい!」ということで、男の最大の行動動機はやはりエロ!というのを思い知らされます。何才になっても男ってやつは変わらんものです。ただ映画では「おっぱい」を連呼しますが、あっけらかんとしていて陰湿なエロさはなく、清清しい感じがします。
何かをがんばる、という内容でこの映画は「ウォーターボーイズ」などの、いわゆる挑戦ネタムービーに入れられるかもしれませんが、ラストを感動で終わらせないのが、この作品らしい感じがしました。また生徒達たちのエロスの対象になってしまう、綾瀬はるか演じる美香子先生の成長物語にもなっているのが、好感の持てる話作りになっています。
映画には今は消滅したであろうブルマが全面的に登場します。なので時代設定は80年代の初めくらいでしょうか。しかしこれを着た女子キャストは恥ずかしかったことでしょう(偉い!)。
映画では悪役の立場である石田卓也は、同じ頃に公開される「鴨川ホルモー」でもそういう位置なので、妙にかぶる感じがしました。まあ今回も、根っからの悪ではないのだけれど。
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フジテレビ系でドラマ化された「鹿男あをによし」の原作者・万城目学氏の小説の映画化です。「鹿男‐」は和テイストの不可思議ファンタジーという感じの内容でしたが、その点はこの「鴨川ホルモー」も同様です。しかし「鴨川ホルモー」は「鹿男‐」以上にエキサイトできる内容です。なんせ、「オニ」を操って「戦う」話ですから。
しかしこの「オニ」に言うことを聞かせるためには、独特の言葉とポーズが必要になります。これが傍から見ると、普通の人には「オニ」が見えないゆえに阿呆に見えて笑いを誘います。しかしこういうおバカなポーズにクスクス笑っているうち、彼らの戦いぶりに熱くなってきます。
特に主人公である安倍の情けない部分がかなり描かれているせいか、後半での栗山千明のかっこよさ!にはしびれました(萌えではない!)。この「オニ」を操るバトルは戦いではありますが、それには一定のルールがあるので、スポーツとも言えるかもしれません。
このオニ達、主人公らの命令に忠実に従ってくれるので、そこがかわいいというか、いじらしくなりました。オニとはいえデザインが怖くはなく、かわいくしてあるので、余計にそう思ってしまうのかもしれません。見終わったら「ゲロンチョリっ!」とやりたくなりました。
ただ、クライマックスの「危機」は他愛ないようで、こんなことで危機になってしまうの?と思うような、とってつけた感じがしました。よくわからないうちに収まってしまいますし。
映画の舞台は全面的に京都で、京都ネタのドラマでは定番の祇園や平安神宮はもちろん、新風館や南禅寺、八坂の塔といったスポットが出てきます。京都が好きな人にはたまらない映画でしょう。後半、主人公が駆け回るハメになるルートも、地理的にムチャクチャなものではありません。かなり疲れると思うけど。
主人公たちの名前など、映画にはマニア心をくすぐる仕掛けがチラホラあります。彼らの戦いは因縁のものだったわけだね。
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「相棒」映画版「絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」公開から約1年、今度の映画版はスピンオフ。主役は特命係の心強い&ほぼ唯一の味方である鑑識官・米沢です。
米沢を演じる六角精児は、ドラマの脇役やバラエティで時々顔を見ますが、ヲタク的なポジションが目立つので主役はありえないと思っていました。しかしこの作品では六角クン、ちゃんと主人公の顔になっています。まあ存在感はある役者ですから、当然かもしれません。
米沢の「相棒」となるのは荻原聖人です。たぶん今回だけの限定コンビでしょうが、暴走したがる荻原と慎重な米沢(頼みごとをする時の言い方が右京さんに似てるような)はいいコンビです。この2人が一致して行動するタイミングは熱くなりました。お話そのものも意外性があって、まさに「相棒」シリーズ!にふさわしい娯楽作です。
特命係はもちろん、伊丹などTVシリーズのレギュラーメンバーが時おり彼らに絡んでくるのも、「相棒」ファンにはたまらないことでしょう。前の映画版には無かった、メインテーマの曲がちゃんと流れるのも嬉しいところです。
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あの国民的?アニメがまさか!の実写映画化です。これもハリウッドのアメコミ実写映画の影響でしょうか…?
映画はヤッターマンやドロンボーが使うメカなど、アニメのシーンを忠実に実写化していて、メカが活躍するシーンは見ものです。CGの恩恵をありがたく受けた映画、といえるでしょう。
またCGだけでなく、ドロンボー一味に騙されてお金を出してしまう人たちの群れ、なんていうシーンも実写ならではの迫力です。でも一番凄かったのは、ボヤッキーの夢想する「全国の女子高生の皆さーん」のシーンでした。アニメでこういうシーンは簡単に作れるでしょうけど、実写でこのイメージは…かなりシュールです。まあ、男の願望だよねえ…。
そして男といえばやはり映画で最大の見どころは、ドロンジョ様の太もも!かもしれません。ま、アニメ通りに網タイツじゃなくしてくれてたら、もっと良かったんだけど…。
こういうお色気シーンだけでなく、セリフにもやけに下ネタが目だつのは、オヤジが監督したせいでしょうか…。
しかしこの映画、マジな部分とおふざけな部分の切り替えが唐突で、話に全く乗れませんでした。シナリオの担当者も責任はあると思いますが、事前の予想通り、やはり三池崇史じゃあ…て思ってしまいました。ギャグの部分も爆笑というより、クスクスという感じしかしないし。
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宮藤勘太郎の監督2作目。ネットで惹かれた「少年メリケンサック」の映像を、新人バンドと誤解したOLが、おっさんになって見る影もなくなった彼らと行動を共にするハメになるお話です。
クドカン監督第1作の「真夜中の野次さん喜多さん」は同性愛ぽいイメージがしたので敬遠しましたが、今回は主演に大河ドラマ「篤姫」で爆発的な人気を博した宮崎あおいを迎え、「真夜中―」より万人受けの感じでしょう。
宮崎あおいはこの作品で、ブリッ子したり酔っぱらったり突っ込んだりなど、いろんな表情を見せてくれます。撮影の時期は「篤姫」とかぶっていたようで、篤姫とは対極のようなこのキャラは、何だかお姫様の憂さ?を晴らしているようで、その弾けっぷりが最高!でした。そこそこ笑える小ネタが多いギャグの中で、彼女自身が一番笑えました。
バンドの行く末が気になって映画は退屈はしませんでしたが、ラストは引っかかりました。
ここはやろうと思えば感動的にまとめられたかもしれないのに、「チャンチャン!」という音を入れたいような、小ネタで締めてしまった感じです。クドカンはここで盛り上げて終わりにしたらフツーだとか思って、照れてしまったのでしょうか?それともこれが非メジャーというか、クドカンの言う「パンク」のつもりなのでしょうか?なんかしょーもない感じがしてなりません。
少年メリケンサックのリーダー・アキオ(佐藤浩市)の若い時代を、「仮面ライダーカブト」でガタック役だった佐藤智仁が演じています(まさか同じ「佐藤」だからではあるまいな?)。カブト役だった水嶋ヒロは今や売れっ子になりましたが、彼に続けられるでしょうか…?
また、彼の弟・ハルオであるキム兄の若い時代を、脇役界?では売れっ子の波岡一喜氏が演じていますが、「アイドル時代」の似合わなさが笑えて、クドカンらしいキャストです。
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「踊る大捜査線」のシナリオを担当していた君塚良一氏が監督した作品。犯罪者の妹になってしまった少女・沙織と、彼女を守るハメになった刑事・勝浦の逃避行のお話です。
君塚氏のこれまでの監督作である「MAKOTO」や「容疑者 室井慎次」などは、いいとは思えませんでした。ただこれは演出のせいというより、そもそもの話の作りに問題があったと思います。
今回は犯罪者の家族のみに焦点を当てた、今までにないパターンのお話です。手持ちのカメラを多用し、ドキュメンタリータッチの撮り方が緊迫感を盛り上げています。勝浦のキャラは多少作りすぎな感じはしましたが、鼻につくほどではありません。クライマックスは予告で想像がつきますが、それでも感動的でした。
フツーに暮らしていた日常がいきなり断ち切られ、何も悪いことをしていないのに、見ず知らずの人々から悪意を向けられる…望んでなんかいないのに犯罪者の身内となってしまう、戸惑いや怒りがよく出ています。家族もまた被害者、ということがよく分かります。
主人公たちに向けられる悪意の中でも最大のものは、中盤から存在が大きくなるネットでしょう。この作品の上映開始日に、製作しているフジテレビ系で、この作品の前日談というべきスピンオフドラマ「誰も守れない」を放映していましたが、その裏のテレビ朝日系では松本清張原作の「疑惑」をやっていました。そこでは新聞や週刊誌といったマスコミが容疑者を追い詰めていきましたが、あれの原作は昭和時代でした。この「誰も守ってくれない」では、追い詰めていくのがネットというのが現代らしいところです。
ネットの書き込みも本当だったら、映画に描かれるようにまで執拗にはやらないだろうとは思います。しかし、この作品の公開中に某ブログに悪意の書き込みをした人たちが書類送検されるということがありました。そういう無責任な正義感に警鐘を鳴らす意味では、これくらい誇張してもいいのではないかと思います。映画が終わってから、「ネットって怖いね」と言っていたご老人のカップルがいましたが(それは誤解といいたいけど…)。
誇張といえば、マスコミとのカーチェイスもたぶんそうでしょう。また容疑者の家族となってからの「手続き」は、見ている間はこんなことがあるのかー!と驚きだったけど、これも誇張だそうです。まあ、それはそれでドラマだし、面白い部分ではあります。
脇役では松田龍平演じる、勝浦の相棒である三島の存在が大きいものがありました。文句をタレながらも、主人公に絶対の信頼を置いているのが分かるいいコンビで、彼が映画の重苦しい雰囲気を軽くしています。この三島、松田君がTVドラマ「あしたの、喜多善男」で演じていたキャラが刑事になったような印象を受けましたが、収録が重なっていたのではないかと想像します。勝浦との会話の中でクスリの話題が出ることがありますが、それは「誰も守れない」で語られています。
柳葉敏郎が演じるキャラは、被害を受けた家族の心理の代弁というところでしょう。この人の心変わりには多少戸惑いましたが、それが人間らしいところかもしれません。このキャラのおかげで、お話が一方に傾くことなくバランスを取る役割をしているのでしょう。
そういったキャラの中で、勝浦のカウンセラーを演じる木村佳乃の存在がよく分りませんでした。彼女は「誰も守れない」で勝浦に守られていたキャラですが、これを見ていないと「誰?」と戸惑うかもしれません。しかも「誰も守れない」よりも妙にミステリアスなキャラになっているし。
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Z E N |
曹洞宗の開祖・道元の生涯を通して、禅の意義を描く映画です。これを見ると、座禅の意味や曹洞宗の歴史がよく分かります。禅の入門にはぴったりの映画でしょう。
ただ中には、弟子がいつの間にか増えていたり、道元が周りから迫害されているのになぜか彼らを守る武士がいたりなど、何でそうなる?と突っ込みたくなるシーンが所々あります。そういう箇所は、曹洞宗の歴史をなぞっただけに見えます
とはいえこの作品、曹洞宗は凄い、というような礼賛の内容でないのがいいところです。時代設定は鎌倉時代でありながら、現在と重なるようなシーンもあって、だから道元が慕われるのか、と納得できました。泣ける箇所もいくつかあり、爽やかに見終われる映画です。
道元を演じる中村勘太郎は存在感が抜群でした。発声も迫力があるのは、さすが歌舞伎俳優です。
映画にはチョイ役ながらも哀川翔が出ていたりして、キャストは意外と豪華です。紅一点の内田有紀が、年のわりには?なかなかにかわいく写っています(離婚して良かったんでないかい)。
北条時頼を演じる藤原竜也も、大きいクレジットのわりにはチョイ役です。まあ特別出演だからしょうがないかもしれません。しかし彼の出演シーンは、これで時頼の建長寺創建につながるのだろうと想像できる、鎌倉が好きな人には興味深いシーンでしょう。
前半の中国ロケはなかなかに雰囲気が出ています。ただ中村勘太郎はいいとしても、中国人を演じるのが西村雅彦や笹野高志なんかで、しかも中国語までしゃべらせなくてもよかったのではないでしょうか。
ここで描かれる道元の悟りのシーンは、いきなりそこに行くのか?と、唐突に思いました。まあ時間的にしょうがないんでしょうけど。このイメージをCGにするのは分るけど、あまりにモロにCGで笑ってしまいました。悟りを絵にするのは難しいとは思いますが、CGは京都のワイドショットくらいで留めておくべきでした。
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ウィルスによるパンデミック(感染流行)が起こるとどうなるのかを、一人の医師の視点から描いた物語です。
監督が目標にしていたという、ウィルスパニックと人間ドラマの両立はそれなりに描けていると思います。特に、死ぬとは思わなかったメイン級のキャラがお亡くなりになるのはリアルだし、所々泣ける箇所がありました。
しかし、劇中の全てのエピソードに主人公の松岡(妻夫木)が関わるのはおかしいでしょう。患者が大量に発生している中で、彼に治療以外のことをやっている時間は無いと思います。まあ彼の視点で話が進むという意味では、このやり方も分からないことはないのですが。
あと、ウィルス発見のエピソードは余計に思いました(竹山がキレたら彼のイメージらしくて面白かったかもしれないけど)。でもここで感染が終わらないのは、リアルではあります。その分、ちと長い!とは思いましたが…。
映画を見ていると、パンデミックが起こるとどうなっていくのかよく分かります。パニックや、死体の群れのシーンはなかなかにコワくなりました。僕としてはメインキャラの動向よりも、こういった社会的に起こる出来事に興味が持てたので、そういうシーンをもっと増やしてほしかったという不満は残りました。そういえばこの映画、キャラの造形にいま一つ面白味に欠けていた部分はあります。
映画には、感染患者が松岡にゾンビのように迫ってくるシーンがあります。ゾンビ映画とは違うだろうに、余計な演出だ。
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怪人二十面相・伝 |
第2次世界大戦が無かった日本。華族が存続し格差社会が拡大する時代に、彼らををつけ狙う怪盗・怪人二十面相が跋扈していた…。独自の世界観で、怪人二十面相と明智小五郎の対決を新しい解釈で描くお話です。
中国のオープンセットを使用した映画は前に「魍魎の函」がありましたが、この「K-20」は「魍魎の函」より中国らしさが目立たない感じがしました。異世界ということでごまかせたのかもしれません。でもそういった世界観が出てるイメージが、いま一つ少ない感じがしたのは残念でした。でもクライマックスに出てくる「メカ」は、レトロフューチャーなデザインで面白い感じでした。歯車というのはマストアイテム!
監督の佐藤嗣麻子は吉野公佳が主演した「エコエコアザラク」を監督した人で、ずいぶん久しぶりに名前を聞いたように思います。今回は「エコエコ」以上のスピード感のあるテンポで退屈させず、2時間もない尺で楽しめます。
ただこの映画、二十面相に陥れられた遠藤平吉が二十面相と戦う物語のはずなのですが、話によけいな寄り道がところどころあって、ストレートに行かないのはもどかしい感じがしました。特に葉子が明智を引きとめるあたりの、下手な香港映画のギャグみたいなシーンはやめてほしいところでした。
二十面相の正体は確かに意外なものではありましたが、僕には抵抗がありました。その昔「少年探偵団」を読んでいたせいかなあ…。
音楽の佐藤直紀氏は同じROBOTで製作した「三丁目の夕日」からのつながりでしょうか。あれと同様にシンフォニックなメロディーを聞かせていますが、アップテンポな曲調は「スパイダーマン」を意識してるように思えました。
明智小五郎の助手・小林少年を演じているのは本郷奏多です。まだ童顔でイケメンの彼には、ぴったりのイメージでした。ただこのキャラ、時々何かありそうな表情を見せるのですが、結局何も無かったというのは、裏の設定でもあったのがカットされたのかもしれない、という想像をしたくなります。
それにしても、二十面相は金持ちである華族を狙っていたのに、庶民に人気がなかったのでしょうか…?
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生 存 者 あ り |
台風による高潮の浸水で新橋駅の地下に閉じ込められた篠原祐司(伊藤英明)たち。彼らを、祐司の兄である静馬(内野)たちハイパーレスキューのチームが、救出に努力するお話です。
伊藤英明は今回は助けられる側ですが、レスキューネタということで彼が主演した「海猿」とカブる感じはあります。その「海猿」も多少突っ込めるシーンがありましたが、この「252」はあれ以上に、突っ込みどころが満載のお話です。
まずは冒頭。お台場といえば東京湾内でも奥の方ではないかと思うのですが、そこへレインボーブリッジを超える高さの津波が何の警告もなしに襲ってくる、なんてことが今時あるでしょうか?気象庁内での香椎の「急でした」というセリフには笑うだけです。
この津波襲来シーン、ベイブリッジやフジテレビ、汐留のビル街などに津波がかぶりますが、それらが壊れるシーンは見せません。津波の後に破壊されたシーンが出てくるだけ(壊されたフジテレビのシーンは、日テレの願望か?)で、直接破壊されるカットは出しません。おかげでこの津波襲来シーン、唖然とするぐらい迫力に欠けます。
CGで破壊のシーンを作るのは確かに難しいはずですが、同じ頃に公開されたハリウッド製の「地球が静止する日」では、ちゃんと壊すシーンを見せています。あるいは模型を使う手もあったはずです。30年以上前に作られた「日本沈没」での津波襲来のシーンの方が、はるかに迫力があります。
こういうシーンを手始めに、レスキューチームがやけに新橋に集中しているとか、気象庁の人間がなぜか現場にいるとか、遭難しても携帯の電源が入るのに電話しないとか、この映画は突っ込みどころに事足りません。キャラに向かって「早くしろよ!」と言いたくなるシーンもチラホラあります。救出の場面なんかで所々涙が出るシーンはあるのですが、そんなとこでも「オイオイ!」と突っ込めてしまいます。
多分この映画、当初は伊藤英明ら数人を助けるだけに留まっていた話が、作っていくうちにスケールが大きくなりすぎて、破綻してしまったのではないかと想像します。
この作品の製作は日本テレビです。日テレといえばこの作品の公開の1年前は「マリと子犬の物語」という超号泣良心作を作っていたのに、こうもクオリティに差が出るものかと呆れます。
まあ結局、DVDあたりでみんなで突っ込みながら見るのが、この映画の一番いい見方かもしれません。
冒頭の字幕で関連会社名、そして聖書の文句が出てくるのですが、ピントが合っていない感じだったのが気になってしまい、中身が頭に入りませんでした。でもエンドクレジットはちゃんとピントが合っていたのは何故…?
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「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」と、努力ネタの映画が続いた矢口史靖監督の次のお題は飛行機です。とある1機のトラブルを巡り、飛行機内と空港でくりひろげられる悲喜劇のお話です。
この映画を見ると、飛行機を飛ばすのにどれだけの人が苦労しているのかよく分ります。まあ部分的に心配になる箇所もあるのですが(オーバーに描いてるのだろう。たぶん)。
お話の展開は、往年の「エアポート」シリーズを思い出すようで予想がつきますけど、退屈はしないし、矢口監督だけにしっかりと盛り上げてくれます。でも「スウィングガールズ」みたいな感動は無くて、泣くまでは行きません。
映画が始まると、まずシートベルト装着の映像が流れるのが面白い構成です。飛行機に搭乗、というノリでしょうか。いすにシートベルがあったら良かったかも。
映画を見るとタルトタタンが食べたくなりました。本当にこんなサービスがあったら、乗りたくなるかも…。
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宮崎駿監督の映画。魚の子・ポニョが人間の子・宗助に恋をしたことで始まる大スペクタクルのお話です。
宮崎監督の前作「ハウルの動く城」は話が複雑で分りにくいものでした。今回はその反省なのか、単純なものになっています。しかし単純になるとクオリティが下がる、なんてことにはならないのは、宮崎監督の最高傑作と言ってもいい「となりのトトロ」を見れば明白です。
今回の「ポニョ」はまず、魚のように変化する波やポニョの妹達の乱舞など、イマジネーションの豊かさに感心させられました。中でも凄いのは、海の下の町のイメージです。ここで、ただの魚が泳いでいるのであればありがちな発想ですが、既に絶滅した軟骨魚を泳がせる、という絵は、誰もが思いつくアイデアではありません。
こういう、魚達が町の上を悠々と泳いでいく姿は、人類滅亡後のイメージのような感じがします。人類が滅んでも自然は問題にしない、と言っているように見えます。
しかしこの映画、一方の人間側では、そんなことになっても誰もパニクったりしません。こんな陸が無くなったような世界になったら、本当だったらどうしていいか分らないだろうに、みんなたくましいものです。世界が終わっても人は何とか生きていく(「ナウシカ」がそうでしたが)、と言っているように見えます。
特にたくましいのは、今回もやはり女性で、その代表が宗助の母・リサでしょう。彼女は家が孤立する状況にうろたえもせず、会ったばかりのポニョを不審にも思わずに、お手伝いをさせます。
一生懸命それに応えるポニョの姿は、子供をもっと信用すべきだというメッセージに見えました。後半でのポニョと赤ん坊のシーンは、スキンシップの大切さ&気持ち良さを言っているみたいです。
こういったような、人を信じたり、触れ合ったりする行為は人との係わり合いの上で重要なことでしょう。かつての時代には当たり前だったことでしょうが、今はファンタジーでしか成立しないのかもしれません。宮崎監督の「不安と神経症の時代に立ち向かう」というメッセージも、何か納得できる内容です。
映画のラストには「信じること」で起こる大きな感動が待ち構えています。子供からお年寄りまで安心して見れる、大ヒットも納得の一本です。
ポニョの魚から人間への変化は、実写でやったらえげつなくなるでしょう。こういう風にかわいく見せられるのは、アニメならではです。
今回の作画は手描きにこだわったそうですが、絵の中でおかしく見える箇所はありません。まあ何年か前まではアニメは手描きで作っていたんだから、当然のことでしょう。背景はクレヨンやパステルのようで、優しい感じが出ています。
しかしこういう画を見てると、手描きとCGの差とはいったい何か?と思います。出来上がりが早くなる、というくらいがメリットなのでしょうか。
今回の音楽も宮崎映画では定番の、久石譲氏とのコンビですが、シンフォニックなBGMが合っています。オープニングタイトルの曲はオペラみたいだし、コーラスがあるのが、スケールを感じさせます。
エンディングに流れる主題歌も「ポーニョーポニョ」と耳に残るフレーズで、大ヒットしました。このメロディについて久石氏は「ポニョ」という語感から発想したとNHKのインタビューで語っていました。「ポニョ」は2008年度の流行語にもなりましたが、まさにこの「ポニョ」という響きも、ヒットの理由かもしれません。
この作品のエンドクレジットは、普通の映画のように受け持ちパート別に分かれてません。こういうパターンは世界初ではないでしょうか?宮崎監督の力があればこそ、こういう順列を無視したやり方が通ったのではないかと思います。フツーだったら各方面の圧力でムリなのでは。
映画の冒頭でフジモトが何を、何のためにやっているのか説明がほしかった感じはしました。グランマンマーレは出てきただけで説得力ありますが、フジモトはキャラクターが少し弱い感じがします。
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