五条霊戦記

平安時代末期・平家の支配する末法の世。京の都に、平家の武者ばかりを斬り殺す｢鬼｣がいた。かつては人殺しもやった破戒僧・弁慶（隆大介）は不動明王から｢鬼を退治せよ｣との啓示を受け、名刀｢鬼切丸｣を手に京の都に戻ってくる。弁慶は元刀鍛治の鉄吉（永瀬正敏）の協力を得て、鬼の本拠といわれる、都の外れにある悪霊が棲むという森に入る。しかし目的の「鬼」＝遮那王（浅野忠信）は弁慶の「気」を感じ取っていた。さらに弁慶たちの後を平家の軍団が追ってきていた・・・。

五条橋での弁慶と義経の戦いは昔話で有名ですが、この逸話を「鬼同士の戦い」という新しい解釈で描きます。それゆえに、この映画で描かれる弁慶と義経の戦いは伝説でいわれるような優雅な戦いではなく、剣と剣とをぶつけあう、まさに死闘といった感じで、殺陣は迫力あるし、特に京劇を取り入れたという遮那王＝義経の剣さばきは優雅でかっこいいです。遮那王を英雄というより、悪のヒーローみたいに見せる描き方は、キャラに同情はできませんが、新鮮ではあります。
また護摩を焚いたり、真言を唱えたりといった、密教系のシーンが多くて、「陰陽師」や「孔雀王」みたいな作品が好きな人にはたまらない世界観でしょう。予告編にも出てくる、仏像に血が飛び散るカットは（不謹慎ですが）異様な美しさを感じました。

とはいえこの映画、眠気を感じました。弁慶と遮那王が出会うまでかなり長いし、その上本格的に戦うシーンまでがまた長くて、まどろっこしいです。
また、この映画は単に弁慶と遮那王の戦いの話を描くだけではなく、その戦いに至る過程の描写で何か言いたいことがあるように思えたのですが、それがさっぱり分かりませんでした。

この映画は日本映画には珍しく、カット数の多い映画だそうで、確かに戦闘シーンは短いカットをポンポンつないでテンポはそれなりによくなっていますが、それ以外のシーンは長回しが目立ちました。
撮影用の機材なども日本映画には珍しく、ハリウッドと同じ物を使用したらしいのですが、その成果は画面を見る限りよく分かりませんでした（さりげなさすぎて気づかなかっただけかもしれません）。カメラはステディカムを使っているようですが、ただの手持ちみたいに、揺れが目立つカットがありました。

主演である浅野忠信、永瀬正敏、隆大介の３人は良かったと思います。浅野忠信は何を考えてるか分からないミステリアスな感じが合っていました。
隆大介は黒澤明の「影武者」で華々しく？デビューしたものの、その後はあまりパッとせず、このところは「ウルトラマンダイナ」やＶシネくらいでしか活躍していない印象で、主役級の活躍は久々でしょう。彼は貫禄があってさすがに上手いけど、やせ過ぎな体つきは弁慶のイメージと違う感じがしてしまいました。ただ、これは今までの弁慶のイメージを覆す狙いかもしれません。
平家の親玉を岸部一徳が演じていますが、浅野忠信と岸部一徳は「鮫肌男と桃尻女」でも敵同士という役で共演していましたが、今回も後半で似たようなシーンが登場します。

この映画の興行ランキング初登場は９位だそうです。実際、日曜日に見に行ったのですが映画館はガラガラでした。
この作品は「ホワイトアウト」の後の東宝邦画系映画館での上映作品ですが、「ホワイトアウト」を続映した方がまだ客が入ったのではないかと思います。題材も地味だし、全国公開ではなく、ミニシアター系で上映した方がよかったのではないでしょうか。

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死者の学園祭

角川が久々に放つアイドル前面出しの映画は、ついにできた？深田恭子主演の映画です。

フカキョンが演じるのはミッション系高校の演劇部の部長・結城で、学園祭で演じる劇の脚本を書いた彼女の友人（黒沢優）の自殺？を始まりに起こる、連続殺人事件の謎を結城が解決していく話です。
原作は赤川次郎ということで、話はいかにもの正当ミステリーです。クライマックスは親子の情愛の感動で盛り上げ、ラストには深田恭子の○○シーンもあるという、ウェットな感じの映画で、退屈しないで見れました。
しかし、主人公の友人が次々死んでいくのだから、次は自分が狙われる、という切迫感を彼女が感じていれば話がもっと盛り上がったと思うのに、なぜか主人公はそこまでは気づかないようです。
またクライマックスで、いつの間にか主人公がいくつかの謎を解いてしまっているのも気になりました。時間の関係ではしょったのかもしれないけど。

キャストの面では二時間ドラマやＶシネよりは高級な感じはしますが、劇場まで見に行く価値があるかどうか、疑問な映画ではあります。

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仮面学園

「死者の学園祭」と同時上映のこの作品は、アイドルというのは疑問とは思うけど、今人気のあることは間違いのない、藤原竜也主演の作品です。

仮面を被って素顔を隠すことが流行になるものの、その流行に乗り出した関係者が殺されていく事件の謎を女子高生（黒須麻耶）と、仮面作りの工房の若者（藤原竜也）が探っていく話です。

仮面を被ることが流行になるほどイケてるとは思えませんが、仮面を被ることで自分が変わったと思うようになり、それが人格を変えていく、という発想は面白いと思いました。
仮面、それも西洋風の仮装パーティーなどで使われるような、ちょっと不気味な面が群れている絵はイメージとしては面白く、また怖い感じもするので、このままホラーモノのネタとしても使えそうです。
とはいえ、お話は、殺人事件の犯人探しというありがちなパターンです。「死者の学園祭」が犯人探しの話なので、合わせたのかもしれませんが。

主演は藤原竜也になっていますが、映画の中で主に活躍するのは、脇役にされている黒須麻耶の方で、彼女の方が主演に見えます。惜しいのは、黒須麻耶も仮面を被るものの、ずっとフツーの人のままな点でした。彼女が仮面の悪の部分に魅せられていく話にしたら、話の方向は違ってくるかもしれませんが、もっと面白い形になったように思います。
藤原竜也が単なる美少年キャラではなく、サイコ的な面を持つキャラにされてるのは、彼の何を考えてるのか分からない雰囲気が生かされてよいのですが、途中で真人間になってしまいます。この部分を強調すればもっと面白くなったかもしれません。
ただし、こういったことをやりすぎて「発狂する唇」みたいにワケが分からなくなるのも困りモノなのですが。

映画の終わりはさらりとしていて、感動させましょう的な盛り上げもなく、この点では「死者の学園祭」と対照的でバランスが取れているように思いました。

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発狂する唇

里見（三輪ひとみ）の兄（鈴木一馬）は連続少女殺人事件の容疑者にされているが、行方不明のために彼女の家族は警察とマスコミから睨まれている。里見は心霊者の女性に兄の行方を相談する。里見の家に乗り込んだ彼女は降霊会を開き、殺された少女たちの霊を呼び出すが、その時里美には首のない彼女たちが見えてしまう。それ以来、里見には超能力のような不思議な力が現れる・・・。

と、ストーリーを書いてはみたものの、映画は中盤あたりから話がどんどん変になり、ストーリーなんてあって無いような展開になっていきます。
脚本は「女優霊」や「リング」シリーズの、ホラーならこの人ともいうべき高橋洋ですが、これらの作品に比べてこの映画はまともじゃありません。
主演の三輪ひとみは初めはフツーの女のコに見えますが、なぜか超能力を持ってしまうし（「テロメア」か？）、突然歌い出すし、レイプまでされちゃうし（しかも相手は２人のオヤジで、一人は×体だし、もう一人からはア××もやられちゃうし）、最後には斧振り回して人を襲うし・・・。
脇のキャストは阿部寛や鈴木一馬や大杉蓮など、それなりに豪華ですが、この人たちも異常です。阿部寛はＦＢＩだし、栗林知美は怪しい英語をしゃべるし、大杉蓮はレオタードで踊るし・・・。
この映画、幽霊は出てくるし、スプラッタはあるし、エロもあるし、カンフーアクションはあるし、今まで映画でやりたいと思っても、話の制限とかでできなかったことを全部ぶちこんでしまったような作品です。もしかしたら高橋氏は、ちゃんとした映画を書きすぎて、フラストレーションがたまっていたのではないかと思ってしまいます。
なのでこの映画は、ちゃんとしたストーリーを持つ映画を見たい人にはすすめられません。異様な状況を笑えるような人なら楽しめると思います。話や描写はブラックなものが多いので、残酷なネタや暗い映画が好きな人には向いているかもしれません

「発狂する唇」というタイトルの意味もよく分かりません。「発狂」ていうのは登場人物全員そうだけど。

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ＧＴＯ

「踊る大捜査線」の成功のおかげで「ショムニ」や「サラリーマン金太郎」など、ＴＶドラマの映画化作品がいろいろ出てきていますが、企画自体に安直さを感じるので、「踊る大捜査線」のような成功例が出るのはめったにないと思っています。
この「GTO」は、その予想通りの映画でした。

ＴＶ版の「GTO」では主人公の鬼塚はもちろん、冬月先生や教頭など、教師側のキャラの個性が強かったし、生徒の方も何人か個性あるキャラがいて、彼らの存在がＴＶ版の面白い点でした。
今回の映画版は、鬼塚が北海道に代理教師として赴任する話で、舞台は全て北海道です。そのため、ＴＶ版のキャラは鬼塚以外出てこないので、大いに物足りなさを感じました。映画版のオリジナルキャラはＴＶ版のキャラに匹敵するほどの個性の強さは感じられませんし。
ただ、キャラの描写に時間をかけられるＴＶ版に対して、映画のような短時間でＴＶ版に対抗できるキャラ描写をすること自体、無理があるかもしれません。
話自体は独立したストーリーなので、映画にしやすい話でしょうが、カーアクションや気球のシーンなどで多少お金はかかっている感じなものの、あえて映画でやらなくてもいい話です。

鬼塚役の反町隆志は、ＴＶ版からの流れでキャラを掴んでいるせいか、いつもの鬼塚の感じがちゃんと出ていて、当たり役です。ただ今回は、鬼塚が説教をやりすぎるのが気になりました。ＴＶ版でも説教はクライマックスに１回やるだけでしたし、金八先生（鬼塚はあこがれていたけど）じゃないんだから、それで充分です。

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ルーズ・ソックス

いつもピンクのかつらを被っているピンク（大河内奈々子）と、仲良しのピース、スケちゃん、カクちゃんは全力疾走している。ピンクはガムを万引きし、顔じゅうピアスだらけの店員に執拗に追いかけられているのだ。彼女らはただただ走り続ける…。

女のコたちがひたすら走り続けるだけで、何が面白いのか分からない作品です。
ただ、女のコの描写には定評のある今関よしあき監督だけに、主役の女のコ４人の個性は、外見と性格共によく描けていて、誰が誰か分からない、ということはありません。
とはいえ、一番性格が分からない（それが個性か）キャラがピンクなのに、こいつが話を引っ張っていくキャラであるために、余計に内容が分かりにくい作品になってしまったと思います。

映画では女のコたちが走るシーンが延々延々延々…続きます。いくら高校生とはいえこれだけ走れば当然疲れるはずが、彼女たちが休んでるようなシーンがほとんどないので、この人たち何で疲れないんだ？という疑問が頭から離れませんでした。おかげで、走りっぱなしの出演者やそれを追いかけて走るスタッフの苦労が察せられて、話の内容よりも制作の大変さの方が気になりました。
本編が終った後にメイキングが収録されているのですが、撮影時の苦労がちゃんと収録されていて、こちらの方が本編より楽しめます。メイキングパートの監督は、モーニング娘。がデビュー当時に出ていた深夜枠のＴＶドラマ（？）「太陽娘と海」でメイキングを担当していた太田隆文氏です。
この「ルーズソックス」メイキングパートは出演者の一人、木村沙也果の語りの形で進みますが、彼女の描いた絵を見せてからメイキング本編に入る形は、「太陽娘と海」のメイキングでもやっていたパターンで、これが太田氏のスタイルみたいです。

映画本編で唯一面白かったのは、４人の女の子をターミネーターみたいな執念で追い続けるピアス男でした。この人はハデにころんだり、自動車から引きずり下ろされたり、一度飲んだ水を吐いたり、といった傷だらけの、まさに体当たりの演技を見せてくれます。

今関監督の作品では「タイム・リープ」は面白かったのですが、今回はよくないです。「タイム・リープ」の場合はシナリオが良く出来てたのが大きかったかもしれません。

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スペーストラベラーズ

まだ見ていない人

「踊る大捜査線」を成功させた本広監督の最新作で、期待度はかなり高いものがありました。
話そのものは、銀行強盗犯に人質が協力してしまうなど、状況の面白さで楽しめます。しかし、深津絵里ら人質があまりゴネることなく犯人たちに協力してしまったり、人質が監禁されている場所が２箇所だったり（しかも１箇所は見張りなし）、よく考えればおかしいと思う部分も結構あります。
なので、作品のノリに乗れなければ疑問だらけになると思います。深く突っ込まずに、軽く楽しむ映画です。
とはいえ、クライマックスでその軽さが消えるのは不満でした。

すでに見た人

クライマックスで金城武と安藤正信は警察の包囲網の中に飛び込みます。
彼らは死んだと思いますが、その前に、人質になりかけた浜田雅夫が銀行から脱出します。それならば、この２人も脱出させてもよかったのではないかと思います。
そういう流れになるとまた別な面白さが生まれるだろうし、このラストでは、いかに音楽で明るく盛り上げても、暗い感じがします。

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バレット・バレエ

広告会社に勤める合田（塚本晋也）はある日、同棲していた恋人に拳銃で自殺される。それ以来、合田はその理由を確かめたいのか、何としても拳銃を手に入れようとするが、うまくいかない。そんな時にオヤジ狩りを繰り返す不良グループのメンバーである千里（真野きりな）に興味を持ったことから、彼らと不思議な関わりを持つことになる…。

「双生児」を手がけた塚本晋也監督が、「双生児」の前に完成させていた映画です。この作品では塚本氏は監督だけではなく、製作、脚本、撮影、照明、美術、編集、そして主演と、ほとんど一人でこなしています。
ですので、「双生児」よりもこの「バレット・バレエ」方が塚本氏の色が濃く出ている作品なのでしょう。
しかしこの映画、ストーリーはちゃんとあるものの、よく分からない映画でした。
普通の映画だと主人公はかっこいい、あるいは始めかっこ悪くても、映画のどこかではかっこいいところを見せますが、この映画の主人公はひたすら情けない男です。敵をやっつけるのかと思ったら、そう上手くいかないし、かといって簡単に殺されるわけでもないし。敵と思ってた奴に協力しちゃうし。なので、いい意味で言えば話の展開が読めません。
話にはそう快感やカタルシスは味わえなかったし、主人公や他のキャラクターも何を考えているのか分からないせいか、感情移入もできませんでした。しかし、塚本氏の名を高めた「鉄男」も感情移入を拒否するような分からない作品だったし、こちらの方が本来の塚本氏の世界かもしれません。
ただし、雰囲気は暗めながらも、落ち込んでいくような話でもなく、かすかな、不思議な明るさのある作品です。

不良グループの表のリーダーを演じる村瀬貴洋は新人らしいのですが、本木雅弘をもっと荒々しくした雰囲気を思わせて、存在感がありました。ヒロインを演じる真野きりなは、「アドレナリンドライブ」では全然印象に残っていませんが、この作品では鋭い目が意志の強さを感じさせます。市原悦子と共演しているトヨタのＣＭとは感じが全然違います。
主演クラスは地味なものの、ワキの方では塚本映画の常連である田口トモロヲが顔を出しているし、有名どころでは鈴木京香と井川比佐志もチラリと顔を見せてます。特に井川比佐志は、クライマックスでは決めてくれます。

「バレット」が英語で「弾」である意味の通り、この作品では拳銃が重要なアイテムになりますが、拳銃を組み立てたり、撃つ真似をする時に動かす時のＳＥがとてもクリーンに響き、効果的に使われています。

塚本監督は「鉄男」では、鉄を生きもののように見せていました。この「バレット・バレエ」でも配管などの鉄をアップで撮ったカットがよく出てきますが、雨で濡れた鉄がどこかセクシーに見えてしまいました。

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千里眼

原作は去年ヒットした映画「催眠」を書いた松岡圭祐氏です。「催眠」の原作版が今一つ面白くなかったので、「千里眼」は読む気になれませんでしたが、世界観的には「催眠」とつながっているみたいです。
ですがこの映画、「催眠」を制作した東宝ではなくて、東映の製作です。続編に位置するであろう原作の映画を、別の映画会社が作ってしまうこと自体が奇妙な感じがして、何らかの裏の事情があったのではと疑います。

この映画では「催眠」で起こった事件に関しては新聞記事で匂わせる程度に留めており、「催眠」とは関係ない作品といっていいです。
とはいえ、話には「ミドリの猿」が出てくるし、催眠カウンセリングの話も出てくるし、「催眠」とテーマだけでも、何らかのつながりのあるサイコストーリーであろうと期待しましたが、結局、日本を混乱に陥れようとする人物と、それを阻止する岬美由紀（水野美紀）が戦う話で、お話自体には見るべきものはありません。
美由紀が途中で、催眠状態になりますが、この展開は唐突でした。彼女が催眠から覚めるところも唐突で、何が彼女を催眠にかけ、覚ましたのかまるで分かりません。
在日米軍の持つミサイルが話に関わってきますが、政治問題にもならないとはどういうことでしょう？それにクライマックスでは、一介の自衛官に過ぎない美由紀が在米米軍の指揮を取りますが、こんな外国人の小娘にそんな重大な作戦を任せるのは大いに疑問です。いやそれ以前に、「ミドリの猿」て何？
…という感じでこの映画、非論理的で、ワケ分かんないエピソードが多すぎます。

この作品は原作者の松岡氏が脚本を手がけていますが、原作もこんなヘンな話なら、読まなくて正解でしょう。松岡氏自身、カウンセリングを受ける患者として出演しているのは笑えましたけど。

美由紀役の水野美紀は、この作品で日本映画では初の主演となりました。「ストリートファイター２」のＣＭや「くの一忍法帳」といったＶシネの道を経て、よくここまで来たものです。彼女は今まで数々のドラマに出演してきていますが、「踊る大捜査線」の大ヒットが出世のきっかけになったのではないかと思います。
「千里眼」では水野美紀は結構長い格闘アクションを見せてくれます。この格闘シーン自体は話には全然必要ないと思いますが、水野美紀はアクションのトレーニングをしていただけあって、華麗な蹴り技を見せてくれます。
またクライマックスでは、彼女は敵によって発射されてしまった在日米軍のＩＣＢＭを止める指揮を取りますが、その行動自体は疑問なものの、流暢な英語を使って（発音の上手さにも驚き）米兵たちを指揮する姿はかっこいいです。
この映画、話自体にはかなり問題あると思いますが、水野美紀のかっこよさだけは唯一の見どころです。
彼女はインタビューで、今までの女性のアクションにはエロがつきものだったけど、それを抜いた、知性と体力で勝負する女性像を描きたい、と言っていましたが、彼女ならできると思います。志穂美悦子（古いかなあ）を超えてほしいぞ！

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オーディション

雑誌社に勤める青山（石橋凌）は妻に先立たれから７年が経ち、新たに女性とつきあおうと思うようになる。それを知った広告代理店に勤めている親友は、その女性を選ぶために偽のオーディションをでっち上げ、青山はそこで気に入った山崎麻美（椎名英姫）とつきあうようになるが、彼女の秘密が分かった時、青山はすでにとんでもないことに巻き込まれていた…。

始めはノーマルに思えたガイキチ女に恋した男が襲われる、「危険な関係」みたいな話です。
話自体は変わった展開があるわけでもなく、そう面白いものではありません。原作は村上龍ですが、この人の話はそんなに面白いとは思えないので、無理も無いのでしょう。
本編では日本映画によくある長回しのカットがあったりして、退屈したシーンがありました。もっと切れます。
監督は「アンドロメディア」を手がけた三池崇史ですが、この人はここ数年「中国の鳥人」などいろいろ撮っていて、多作な印象があるのですが、僕の見た作品はどれもいいとは思えず、何でそんなに売れてんのかよく理解できません。コネかなあ？業界に名を知られているからかな？

クライマックスは麻美が青山を動けなくして、体に針を何本も刺していったり、足を切ったりするシーンが延々と続きます。この作品はビデオで見たのですが、針を刺す時に麻美が「きりきりきり…」とつぶやきながら刺していったりして、あまりにも不愉快になってきて、早回ししてしまいました。
「ミザリー」でも足を潰すような残酷なシーンがありましたが、すぐに終わるので嫌悪感は持ちませんでした。しかしこの作品の残酷描写はずっと続くのでイヤになります。ＳＭ的なものが好きな人なら楽しめるかもしれませんが…。

グロいクライマックスの前に、麻美の正体が判明する場面が出てきますが、ここは過去と現在、現実と妄想が入り乱れて展開する面白いシーンでした。舞台劇ぽい感じがしたのはお金が無かったのか、それとも意図的なのかな？

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どら平太

日本映画久々のチャンバラ活劇、のように思っていましたが、立ち回りのシーンでは、出てくる敵の人数が余りに多いので嘘っぽく思いました。このシーンは音楽は沈んだ感じのメロディだし、切られた人のアップが出たりして、爽快感にはほど遠い、敵がかわいそうになってくるシーンでした。
ここの立ち回りより、ラストで役人を糾弾するシーンの方がずっと爽快感があり、観客にも受けていました。この部分の方がクライマックスというべきでしょう。
藩の中で悪の巣くつと言われている「壕外」のシーンでは殺しのシーンも出てこないせいか、そこにいる人間が悪い奴らという感じがしませんでした。だから立ち回りのシーンも沈んだ感じに見えたのかもしれません。

主人公のどら平太を演じる役所広司は、映画でもＴＶでも、どんな役でも自分のものにしてしまいますが、今回も安心して見れました。
また、どら平太の親友を演じる片岡鶴太郎の、一見渋そうで、実は感情の起伏が激しいキャラは見ていて面白かったです。

黒幕の正体は、このシナリオが書かれた７０年代だったら意外性を狙った感じですが、今はパターンな感じで、容易に想像が付いてしまいます。

クレジットのロゴのレイアウトは「八つ墓村」でもやってたような、市川映画らしい感じです。脚本のクレジットで、３人の名前のうち黒澤明の名前が一番始めに出るのは、リスペクトした感じがしました。
映画で登場する屋敷の中の、壁やふすまでの赤や緑の色の使い方はやっぱり市川映画の感じです。

僕はこの映画を、上映３週目くらいで川崎で見ましたが、じいさんばあさんなど、高年齢層の観客が目立ちました。劇場が小さかったせいか、立ち見が出る状態でした。

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人　　狼

JIN-ROH

全ての動画を、今や普通となったデジタルを使わずに、手書きのセルを使って作ったアニメーションとして、気になっていた作品です。
群集シーンでは各人の動きが違うし、銃撃シーンでの撃たれた動きはリアルな感じで、動きのシーンはどれもかなり細かく、手書きのアクションでは高い技術力を持つ日本の底力を見せてくれるアニメです。ただ、人物の影が足らない感じがしたカットが結構ありました。
とはいえ、エンディングクレジットでは「デジタルアニメーション」というクレジットがあったので、この作品は全くコンピューターを使わないで作画したわけでもないようです。

この映画のシナリオは「パトレイバー」シリーズや「攻殻機動隊」を手がけた押井守氏ですが、「人狼」では彼が１０年くらい前に監督した２本の実写映画「赤い眼鏡」と「ケルベロス」に出てきた機甲服が登場し、それのアクションがこの映画のウリです。
しかし、「赤い眼鏡」は見てないものの評判は良くなかったように記憶していますし、「ケルベロス」は見ましたが、眠ってしまった作品でした。
そういった流れを意識したのかどうかは分かりませんが、「人狼」のストーリーはキャラクターに感情移入させることなく淡々と進み、しかも分かり難く、ラストも暗い感じです。

世界観は６０年代の安保闘争が拡大した感じの世界で、路面電車が走っているような６０＆７０年代的な風景の中で、近未来的なフォルムを持つ機甲服が闊歩します。パラレルワールド的なフィクションという感じで、イメージ的には面白いと思います。

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ブリスター！

フィギュアコレクター・ユウジ（伊藤英明）の、激レアフィギュア「ヘルバンカー」を巡る争奪劇を、現在と未来の地球を交えて描く話です。

フィギュアコレクターの話ですが、主人公の恋人をマニアでない女性に設定したことで、この映画は単にマニアだけではない、普通の人の視点を持っているのがいいところでしょう。マニアを愛しつつ、突き放す語り口には好感が持てました。こうしないと、マニアの一人よがりな作品になってしまい、マニア以外の人は敬遠してしまうかもしれません。
ただ本当だったら、まともな女性はコレクターとはつきあえないだろうと思うので、リアルでないような気はしました。生活の全てをコレクションに捧げる男なんて、フツーの女の子にはついていけないのではないかと思います。
主人公はフィギュアマニアですが、この映画に登場するマニアはそれだけでなく、メカマニアやＳＦマニアなども出てきて、マニアにもいろんな種類があるというのをちゃんと描いています。各キャラの部屋やコレクションも実にそれっぽく、マニアの生態をよく把握しています。
そしてマニアたちだけでなく、一般人とマニアの、思い込みの落差もちゃんと描いてあるのがいいところです。いわばこの映画、マニアとそうでない人のバランスをうまく保ったキャラクター設定をしているのがうまい点でしょう。

この映画は未来の地球のシーンから始まりますが、この部分は話を広げすぎというか、強引な感じもしました。ただこの、未来の話自体がフィギュアのバックストーリー的な匂いを感じるし、このパートの主役「フリーボーン」という名前もフィギュアぽい名前です。
この未来と現在のエピソード以外にも、この映画では他にも、ヘルバンカーのコミックのストーリーや、韓国の謎の老人の話も出てきて、いろんなエピソードが交互に進みます。しかし、エピソードの切れ目がちょうどいいタイミングで変るのでダレません。
また、一見関係無さそうな未来の話が、じょじょに現在につながっていく過程は気持ちがよくて、ラストは後味の良さを感じた映画でした。

監督は編集にこだわったそうですが、コミックの話を「チャプター１」とかに分けたり、地名のカットを挿入するなど、斬新な編集を見せています。カット自体も、特にコミックのパートは短くて、テンポがいいです。

テラダを演じる大塚明夫は、「ふしぎの海のナディア」のネモ船長や、「機動戦艦ナデシコ」のミスマル・コウイチロウ、そして「新スター・トレック」のライカーなど、アニメや吹替えの世界ではあの渋い声をよく聞かせていますが、本人が出演したのは初めて見ました。こんなに演技ができると思いませんでしたが、たぶん舞台の経験もある人なんだろうと思います。

この映画、平日の午後に渋谷へ見に行きましたが、観客では女性が目だちました。わりとマニアックな話なのに、この映画のどこに女性が引きつけられたのか、謎です。

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発狂する唇

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ルーズ・ソックス

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バレット・バレエ

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千里眼

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オーディション

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どら平太

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人 狼 JIN-ROH

人 狼

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ブリスター！

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人　　狼

JIN-ROH

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