地  獄

 

 

世の乱れのために地獄の亡者の増加を愁いたエンマ大王(前田通子)は、現世の人間に地獄の実態を知らしめるべく、その伝達者としてリカを選ぶ。彼女は生者のまま地獄に連れてこられ、過去現在未来を写す鏡である「業鏡」を見るように言われる。そこに初めに映し出されたものは、少女連続殺人の犯人の行為と、彼が地獄に落ちた時に受けるであろう、のこぎり引きの刑だった。その次に映されたものは宇宙心理教。それはかつてリカが所属していた宗教団体だった。リカは、弁護士殺人事件や地下鉄サリン散布事件等、過去に彼らが関わった数々の悪行と、彼らの死後、地獄で受けることになる刑罰を見る…。

「地獄」というタイトルの映画は、過去に2作あったと思います。いづれも、主人公が死んだ後に地獄を巡る話だったと思いますが、今回の映画は生きて地獄を見る話です。
しかし、地獄に連れてこられる人物が、罪を犯したのか分からないようなねーちゃんというのが、何でこの人物なのかよく分かりません。新宿中央公園にいた彼女が、冒頭でいきなり地獄に連れて行かれる展開も唐突に見えました。

この映画での、地獄で刑罰を受ける人物は、少女誘拐殺人事件の宮○や毒入りカレー事件の真○美といった人物を彷彿させる、現在生きている犯罪者たちです。その刑罰の描写は、のこぎり引きの刑や、皮剥ぎの刑、舌抜きの刑などグロい描写が頻発しますが、怖いという感じはせず、血がドバドバ流れるだけの安っぽさに笑ってしまいます。

映画は地獄での刑罰よりも、彼らが現世で行った犯罪の描写に大幅な時間を割いています。特に、明らかにオウムである、宇宙心理教のエピソードには一番多くの時間が費されています。このことから、この映画で本当に描きたいのは、宇宙心理教=オウムの話なのだと思います。
映像でのオウムの本部や事件の再現は、この作品が初めてでしょう。とはいえこの映画での彼らの描写は、マスコミでよく言われたような、殺人やレイプなどの下世話なうわさをそのまま映像にした感じで、安っぽい出来です。
例えば、カサハラ(現実の麻原)の信者レイプなんてモロにAVですが、本当はもっと言葉巧みにうまくやったと思います。
ま、この作品はオウムのなぜを描く目的はなく、単に悪い奴として断罪したい映画だろうからこれでいいのでしょう。
現実世界では死んでない犯罪者を、未来に裁かれる刑として見せて、現実世界でちゃんと裁かれない(であろう)憂さ晴らしをやったような映画です。

示される救いが「祈り」ていうのはオイオイという感じですが、ラストもそのせいか、女性たちが朝日?に向かって祈るシーンです。なぜか服を脱いじゃうけど。
そのバックに流れる曲はコーラスで、宗教みたいに思えました。途中でテーマ曲みたいな、バンドぽい曲に変わるのも、なぜ?でした。

地獄ネタということで、映画には鬼や馬面といった奇怪なキャラクターが出てきます。美術監督は「さくや」の原口智生が担当していますが、「さくや」同様、この「地獄」でもマスクの表情は全然動きません。
また、亡者を食う竜や亡者を轢いていく大車などはミニチュアで作られていますが、出てきた瞬間に作り物と分かるダサい出来です。原口て「陰陽師」など、よく邦画の大作の特殊メイクを担当していて、キャリアはあるくせに、本当に才能あるのか?と思います。

地獄の背景は書割りみたいで、舞台を映したようにチープに見えます。前衛劇みたいな、意味不明の舞踏のシーンがあるのも舞台を思わせます。
出演している役者が、無名?の人ばかりというのも低予算な感じです。クレジットで分かったのは薩摩剣八郎くらいですが、着ぐるみか特殊メイクで隠れてるでしょう。西谷有可てAVか、AV系のVシネに出ていた女優だったような…。
エンマ大王を演じている前田通子は過去には有名な役者だったそうですが、僕は知りませんでした。一般的に男というイメージであろうエンマ様が、女性というのは今っぽい感じはします。
普通に名の知れてるであろう役者では唯一、丹波哲郎が(霊界ネタはやっぱこの人!)最後の方にちょっとだけ顔を出します。亡者のくせに鬼を切ったりして正体不明のキャラですが、何のために出てきたのかも不明です。

 

 


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突入せよ!「あさま山荘」事件

 

 

30年前、警察に追われていた連合赤軍のメンバーが軽井沢の「あさま山荘」に逃げ込み、管理人の妻を人質にして籠城する。事件を知った警察は海外でテロ事件の研修を受けた佐々(役所広司)を派遣するが、長野県警は自分たちで事件を解決すると主張する。現場は混乱したままに時間が過ぎていく…。

日本の事件史上有名な「あさま山荘」事件を、警察の側から描いた作品です。こういう2つの敵対勢力がある作品の場合、両方を描くのが順当でしょうが、この作品は赤軍側にはほとんど触れず、警察側に焦点を絞っています。おかげで視点がすっきりして、見やすい映画になっています。ま、連合赤軍からクレームが来る、なんてことはないだろうからいいのでしょう。
しかしこの映画、よくあるドラマのように、警察をかっこよく描くことはしていません。
それどころか、これで一番目立つ描写は、警察庁と長野県警の対立に見られるような、警察組織の混乱ぶりです(実はこれは撮影現場を描いたもの、という説には納得)。
この映画では誰がどんな役職である、ということは初めに語りますが、その人たちが他のキャラとどういう関係であるのかは詳しくは語りません。それゆえに、見てる方は全員のキャラを把握できずに混乱してしまうのですが、かえってこれが警察の混乱をよく伝えていて、意図的に説明を省いているように思います。ま、そういった説明のシーンを作ってると長くなっちゃうし。
こういった警察の混迷と、それをまとめようと苦労する主人公の苦悩を描いている(省略はありそうだと分かってしまいますが)おかげか、人質確保のシーンは感動的になります。事件の関係者の人々に「お疲れ様です」と言いたくなる作品です。

連合赤軍のメンバーの姿はこの作品では、逮捕時にチラリとしか出てきません。しかしその役には武田真治と鈴木一真が扮しています。また人質の役は篠原涼子ですが、彼女も解放時にしか顔を見せず、言われないと分かりません。
そのくせ、大きくクレジットされている椎名詰平はちょっとしか顔を見せないのは、アンバランスに思えます。

タイトルが出る時、その下「Choice of HERCURIES」という英語タイトル?が出ます。何のことか分からなかったのですが、話の中でこれの説明がされます。でももしこれが英語のタイトルなら、どんな映画なのか外国の人には分かるのかな?

本編では、たまにしか日時の字幕が出ません。おかげで連合赤軍が立てこもってから何日たったのか分からないため、警察側のいら立ちが今ひとつ伝わってきませんでした。

 

 


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K  T

 

 

1973年8月、都内のホテルで、現在の韓国の大統領である金大中氏が何者かに拉致され、姿を消した事件が起きました。今だに謎とされているこの事件の内幕を描きます。

映画は事件の政治的背景よりも、関わった人々の行動に焦点を当てています。このディテールは丁寧で、誘拐する側は悪いことをしているはずなのですが、成功してほしいと思う気分になってしまいます。
政治を描かないで、キャラクター描写に徹することで話はすっきりはしているのですが、それゆえに事件後のアメリカの圧力は唐突に出てきた感じがしたし、日本政府の対応もどうなったのか?と思いました。

佐藤浩一演じる主人公は自衛隊の人間ですが、韓国語の知識を買われて事件に関わるようになります。自衛隊の意義を問いながらも、政治的な思惑に翻弄されていく姿は分かるのですが、現在とのつながりが希薄に思えました。
どちらかというと、誘拐を指揮する韓国人のリーダーの方が、自分の指導者の敵をやっつける、という分かりやすい行動原理のせいか、目立っているように見えます。
ヒロインの女の子はあまり出てはきませんが、韓国映画には何本か出ているで役者さんみたいです。こういう、可愛いけれど薄幸な感じの女性は珍しいと思います。

この映画の舞台はもちろん70年代ですが、誘拐側の使う車がスカイラインというのが、時代を感じさせて懐かしく思います。
ホテルなんかは今とあまり変わりありませんが、時折出てくる、ゴミゴミしたアパートなどは70年代ぽい雰囲気が出ています。

今は韓国の大統領である金大中氏が、かってどういう政治的な主張をしていたのか僕は知りませんでしたが、この映画で語っている、「南北統一の前に民主化」という主張は今と変わっていないように思います。日本よりも進んだIT化や南北会談の実現など、彼の政策は今現実化しているのでしょう。

KCIAは誘拐をやるし、北朝鮮は上陸するし、この時代、日本は韓国や北朝鮮にいいようにされてるように見えます。今も同じかも。

 

 


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ディー

 

 

川俣はソ連で極秘に開発されていたコンバットスーツのパイロットだったが、ソ連崩壊のどさくさに紛れ、研究員だった松崎と共にスーツを日本に持ちこんだものの、それを使う機会の無さにうずうずしていた。そんな時、宇宙から飛来した謎の隕石から飛び出した生命体が人間に取りき、巨大なモンスターに変身して人間を食べまくる事件が発生。川俣は喜んで出撃する。しかし彼には民間人の犠牲など目に入っていなかった…。

この作品の製作は特撮関連では有名なビルドアップです。そのせいか、メカニックアクション、CG、特殊メイク等、この会社の総力を挙げて作った感じの作品です。
とはいえ、その内容はロボットVS怪獣という単純な話。企画や監督などの中心スタッフはこの会社の重役の人だそうで、要はこのテの特撮モノを作りたいマニアが、環境がそろってるのを幸いに作ってしまった、と思える作品です。

エピソードは3つに分かれていて、各話にオープニングとエンドクレジットが着いています。レイトショーで劇場公開されましたが、ビデオリリースをメインと考えた作品でしょう。

主人公を初め、キャラクターはみんな嫌な奴で、何か企んでたり、性格がおかしかったりと、いい奴は一人もいません。言葉のやり取りで面白さが出ているシーンはありますが、キャラで見られる話ではありません。
また、人がやたらと死ぬし、主人公も手足がもぎ取られるシーンがあったりして、グロい描写が結構出てきます。子供にも容赦がありません。
なので、気分よく見られる作品とは言えません。エピソードが分かれていることでメリハリがつくので退屈はしませんが、あくまで戦闘シーンを楽しむのに徹するべき作品です。

コンバットスーツは、ファンタスティック映画祭の会場で実物大のモデルを展示していたのを見たことがありますが、本編ではこれを結構使ってるように見えました。
対するモンスターは全てCGで描かれています。ライティングは周りと上手く合わせていますが、質感はCGと分かってしまいます。今ならもっとなじんだ質感でできるかもしれません。

モンスターは、1話が4つ足の獣タイプ、2話は鳥、3話はクモのような形で、各話にバリエーションを持たせているのは楽しめます。
宇宙怪獣というのはイージーな感じがしますが、B級ぽくて、低予算であろうこの作品にはこれでもいいように思います。

第1話は新宿の南口や東口やサブナード、歌舞伎町で怪獣が暴れまわります。人がいつもいるであろうこのエリアで、ちゃんとロケをやっているのには感心しました。よく許可を取ったもんだ(ゲリラでこれだけやったならもっとすごい!)。

敵はまだ全滅していない(宇宙から来る隕石だし)ので、続編が作れそうです。

 

 


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GUN CRAZY
復讐の荒野・裏切りの挽歌

 

 

人気女優の米倉涼子と菊川怜がアクションに挑戦ということで、この映画の製作発表時にはワイドショーを賑わせました。この時は共演みたいに言われていましたが、映画は「裏切りの挽歌」「復讐の荒野」の2つの別なエピソードに分かれていて、米倉涼子が「復讐の荒野」の主役、そして菊川怜が「裏切りの挽歌」の主役という形で、彼女たちが共演するシーンはありません。
2つのエピソードは直接の関連はなく、ワキの出演者が噂で別のエピソードでの事件を語る、という程度の関連付けがなされています。

米倉と菊川のアクションはそれなりにかっこよく見せてはいます。しかし明らかに「ニキータ」のパクりに見えるシーンもありました。
また、敵が主人公を狙ってるのに撃たないといった、撃たれんの待ってるのか?て思えるシーンが多いし、主人公が危機に陥った時に誰かが撃ってくれるといった、都合良すぎる描写が目立ちました。
話自体も都合いい展開が多いし、主人公と親しいキャラを殺すことを主人公の行動の動機にするのは、日本や香港のアジア映画ではありがちなパターンです。
ま、この作品の監督が、話なんか無いような作品だった「スコア」の室賀氏なので、しょうがないかもしれません。
子供が悲惨な目に合う描写があるのも、いかにもアジア映画という感じがします。

「復讐の荒野」の舞台は「津尊」という架空の町ですが、これは明らかに、OK牧場のあるツーソンを元にした地名でしょう。米軍基地の町という設定でアメリカ人?も出したりして無国籍風な感じにしており、時代も現代のような、あるいは「マッドマックス」ぽい近未来のようなあいまいな雰囲気にしています。
このエピソードでの悪役は鶴見慎吾ですが、三池崇史の映画など、この人はこういうワル役が多いような感じがします。

「裏切りの挽歌」の菊川怜は弁護士の役です。知性派をウリにしている?彼女らしい役柄ですが、やはり無理があります。あんな短いミニスカはいた弁護士いるかって。
このエピソードの舞台は現代の横浜です。この点は「復讐の荒野」との違いがちゃんと出ています。多少感動的なシーンもありました。

 

 


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トワイライト シンドローム
―卒業―

 

 

友里(酒井若菜)ら4人の仲良しグループは高校卒業を控えた最後の夏、好奇心で降霊実験を行う。だがその後1人が失踪、もう1人もカマを振りかざして襲いかかった後に姿を消す。自分が言い出した降霊実験が引き起こしたゆえに責任を感じる友里は、霊を静めるために再度降霊実験を行うが…。

プレイステーションのゲームとしてヒットしたホラーゲームシリーズ「トワイライト シンドローム」の映画化です。
ゲームの方は、元々作っていたヒューマンが潰れて(給料安かった…)、途中からスパイクの製作になりましたが、今回の映画版ではスパイクも製作に絡んでいます。またこの作品はデジタルカメラで撮影されたせいか、機材を提供したであろう松下電機も製作に関わっています。
僕はゲームをプレイしたことはありませんが、映画はゲームとは関係ないオリジナルの話だと思います。

ゲームと同様、ホラーの範疇に入れるべき映画ではありますが、この作品、全く怖くありません。
降霊儀式や、突然狂う友達、まとわりつく霊など、ホラーの定番シーンは色々出てくるのに驚けないし、サスペンス的な描写も盛り上がりません。
また携帯に来たメールに発信先が無い、というのはまだしも、主人公が失踪した友達のことを途中で忘れているように見えたり、悪霊の正体をうやむやにしてしまったりと、突っ込みたくなる部分もいくつかあります。
ただ、プリンタでお札を出したり、ネットで護符を送ってもらうとか、霊ネタではあまり結びつきそうにない、パソコン関係のアイテムを使うといった、ささいな部分でのアイデアには面白いものを感じました。

怖くはない代わりに、俳優たちのセリフの言い回しは(子役以外は)上手いし、映画で描かれる日常描写はリアルに見えました。また、主演の少女たちの表情がキラキラしていて見ていて気持ちがいいです。
主人公の姉が料理好きで、「ブイブイいわしタル」なんて妙なネーミングをつけて妹に毒見をさせるとか、霊感を持っている少女がそれゆえにいじめを受けてるなど、キャラクターの設定には面白さを感じます。でもそれが話に結びついていないのは残念なところです。
この作品の監督である舞原賢三氏はホラーよりも、普通の日常を舞台にしたドラマを撮った方が合ってるのかもしれません。
ホラー映画ファンには薦められませんが、酒井若菜や内藤陽子、福井裕佳梨(乙葉かと思った)といった、アイドルが好きな人には楽しめるであろう映画です。

主演の酒井若菜はグラビアアイドル出身で、この映画が始めて本格的な演技を見せた作品だと思いますが、なかなか上手く見えました。また制服だけでなく、浴衣とか水着といったコスプレを見せてくれるサービスも嬉しいところです。ま、幽霊見てんのに逃げねーのか?て思うシーンもありますが。

 

 


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フィラメント

 

 

この作品を見たのは単純に、井川遙目当てです。話自体はあまり興味を持てない感じで、遙チャンが出てなかったらたぶん見てないであろう映画です。
井川遙は元々グラビアアイドルの出身で、ドラマの経験はCMが数本くらいのはずです。TV朝日系で彼女が主演のスペシャルドラマが放映されましたが、それも「フィラメント」と同じ辻監督だし、同時期に放映されたので、撮影は「フィラメント」の後でしょう。
そういう意味では、「フィラメント」が井川遙の実質的な俳優デビュー作といえると思います。セリフの言い方は硬い感じはするけど、存在感はあります。この作品では遙チャンが笑うシーンはあまりありませんが、やはり彼女には笑顔が似合います。

登場するキャラクターには変態が入ってる奴が何人かいて、その異様さで興味が持てました。また主人公一家が住んでいる写真館&喫茶室家が、銭湯を改装したものというのは面白い設定です(湯ぶねなんかが残っている)。
とはいえストーリーは、暗い話を延々と見せる、人生ネタの低予算の日本映画の悪い見本を見てるようで、眠くなりました(寝はしなかったけど)。
こういうチマチマした話が好きな人もいるのでしょうが、井川遙ファン以外には勧められない映画です。
ただ、クライマックスは感動的な部分があるし、人生の目的が見つからない若者の苛立ちみたいなものは、よく表現されてると思います。

今はアニメAVで、兄妹が恋愛感情(に近いもの)を持ってしまう作品が多くなってきているようですが、この作品にもその匂いがあります。その意味では今っぽい映画かもしれません。

主人公は遙チャンの兄役の大沢たかおですが、以前TVドラマで演じたキャラを思わせるような、キレやすい若者を好演しています。ただ、彼の父親の方がより強烈なキャラクターであるおかげで、存在が薄くなった感じがします。
井川の元夫役の松重豊はやはり、ヤクザのようなコワモテの役がぴったりで、そのものに見えます。

 

 


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WXIII
PATLABOR THE MOVIE 3

 

 

東京湾沿岸でレイバーが破壊される事件が続発する。城南署の刑事、秦と久住は捜査を進めるうちに、備蓄基地で怪物に遭遇する。怪物から逃げ切った2人はやがて、遺伝子操作の研究所の関与、そして防衛庁の影を感じ始める…。

約10年ぶりの「パトレイバー」映画版。パート3にあたりますが、今回は本来主役であるはずの特車2課はワキ、いやチョイ役で、後藤隊長以外のメンバーはクライマックスにだけしか出てきません。
今回の主人公は、湾岸地域で発生する殺人事件を捜査する2人の刑事です。「パトレイバー」の世界観はある程度確立されているので許容範囲は広いと思うので、こういう話もありでしょう。
今回は怪獣ネタの話ですが、人間と細胞が関わるのは「ゴジラVSビオランテ」を思わせました。怪獣と人間ドラマの絡みは上手く、切ない話になっています。悪くいえば、辛く暗い話になっていて、爽快感はありません。

主人公たちキャラクターの描写は丁寧なのですが、怪獣が絡むシーンがスピーディなのに比べ、彼らのシーンはどこかスローなテンポで、眠気を感じました。
また捜査ということで、彼らが聞き込みをするシーンが出てきますが、アパートや古い商店とか、場所はバラエティに富んではいるものの、普通の聞き込みといった感じです。映画版第1作の聞き込みシーンの方が異様な雰囲気で、オリジナリティーがありました。

この作品の上映はレイトショーなど、公開形態はかなり限定されたせいか、僕の見た時は映画館はほぼ満席でした。もっと拡大して公開してもよかったと思います。
しかしパンフが800円というのは高い!800円でもファンなら買うだろうという、宣伝部の魂胆ではなかろうかと勘ぐりたくなります。

娯楽性から言えば、同時上映の「ミニパト」の方が楽しめました。短編で見やすいというせいもあるかもしれませんが。

 

 


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京極夏彦

七人みさき

 

 

衛星放送WOWWOWで放映された、京極夏彦原作の江戸時代を舞台にした作品の第1話です。この「七人みさき」のみ劇場公開されました。
「必殺!」シリーズにホラーテイストを加え。グロ度とエロ度を強くしたような作品です。撮影が「必殺!」シリーズをやってきた石原興氏なので、やはりそうなってしまうのでしょう。「必殺!」シリーズが大好きな僕には嬉しいのですが、音楽も「必殺!」ぽいウェスタン調なのに、肝心の戦闘シーンの音楽だけは「必殺!」と違ってノリのいいものではありません。ここだけBGMを「必殺!」に変えたくなりました。

仕事人に当たるのは田辺誠一と遠山景織子で、彼らの知恵袋的存在が佐野史郎。この3人がレギュラーになります。
3人ともいろいろと事情があるようでいろんな場所を点々としますが、その先々で何らかの事件に巻き込まれ、その裏にいる悪漢たちを催眠や幻覚といった超常現象的な力で倒していく話です。

今回の話は、事件の関係者の人間関係が複雑になっていますが、把握できなくなることはありません。意外性を出そうと、ご都合的に複雑にしてるようにも見えます。
また第1話のせいか、説明臭いセリフがあるのが少し気になりました。

この作品での残酷シーンはかなりグロイ描写があります。普通のTVとは違う、有料放送であるWOWWOWで放映するための作品なので、過激なことができるのでしょう。
ホラーテイストだし、ウンチクも多くて、オタッキーなものが好きであろう田辺誠一や佐野史郎はノッて演じていたのではないかと思います。遠山景織子の戦い方は強そうには見えませんが、人形を使うやり方は独特です(目が怖いぞ)。

ゲストキャストは以外に豪華で、夏八木勲や小松政夫、小木茂光、そしてちょっとだけですが藤田まことも顔を見せます(主人ではない)。色物のキャラでは(やはりこういった役になるのね)AV系の朝岡美嶺や平沙織が出ています。

 

 


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D・O・A
デッド オア アライブ
犯罪者

 

 

ここ数年人気の高い、三池崇史監督の映画です。特にこの「デッド オア アライブ」は、第3作まで作られたシリーズ的作品です。

この映画、人がどんどん死んでいきます。男はもちろん、女も子供も容赦はしません。
こう書くと暗い話に思えますが、冒頭のチャイニーズマフィアの首領の死に方や、刑事役の本田博太郎の死、最後の車の爆発など、笑えるシチュエーションがずい所に出てきます。
また登場するキャラも、特殊な性癖を持つ組長や、飼い犬と思ったらそれ以外の役割を持った犬、ホステスにヤらせるホテトルの経営者など、ノーマルではないキャラが目立ちます。
こういった描写に強烈なインパクトがあるおかげで、暗くなるより笑ってしまい、アクションコメディといった感じに受け取れる作品です。
特にラストは、ここまでやるか!?て感じです。真面目に見ていた人は怒るかもしれませんが、まあ、付け足しみたいなものとも解釈すべきでしょう。こういったおふざけ的なシーンが受けてシリーズになったのかもしれません。

三池監督は「アンドロメディア」で期待できないと思いましたが、この「D・O・A」のようなアブノーマルな人間や状況の描写の面白さで人気を集めているのかもしれません。

主演である竹内力と哀川翔は今やVシネの稼ぎ頭です。特に竹内力は体格のせいか、貫禄が感じられます(仁王さんみたい)。他にも小沢仁志、大杉蓮、田口トモロヲ、平泉成、本田博太郎、ダンカン、寺島進といった、ヤクザ映画が似合いそうなクセモノ役者達が揃っています。特に、スカトロ好きの組長役の石橋蓮司と、中国マフィアのボス役で妙な中国語をしゃべる鶴見辰吾の怪演は笑えます。
エロ描写も結構出てきますが、アダルトVシネに出ている甲賀瑞穂(死に方は哀れ…)や、どのシーンに出ていたかよく分かりませんでしたが、元?AVギャルの桜沢奈々子、西田ももこなんかが出ています。

この作品は歌舞伎町や横浜の中華街でロケをしていますが、カメラを見てるような通行人がいたりして、ゲリラ撮影のように見えます。このあたりは人通りが多いので撮影許可が出にくい地域でしょうから、届け出無しでやってるかもしれません。
とはいえ撮影は雑ではなく、特に歌舞伎町での、裏道であるサンクスの角が映画では実際よりとても広く見えているのは驚きました。

日本映画でよく困る点は、セリフ聞き取りにくいことですが、この映画もそうでした。これはビデオで見たので、劇場とは条件が違いますが、ビデオにする段階で整音をちゃんとやるべきでしょう。

 

 


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クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦

 

 

「クレヨンしんちゃん」の映画版は、第1作の「アクション仮面」以来あまり関心が持てませんでしたが、昨年の「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」が良かったので、見てみました。劇場は子供連ればかりで、僕の隣はお母さんが座っていて、恥ずかしい思いをしました。

映画版は今作で第10弾だそうで、今回はしんちゃん一家が戦国時代へタイムスリップする話です。
タイムスリップなんて、普通の映画だったらそれを見せるだけでかなりの時間を費やしますが、この映画では実にさらりと、無理を感じさせないでやってしまっています。

戦国時代ということで、時代劇なのですが、合戦に至るプロセスや陣形など、戦闘に関する描写は丁寧で、本物ぽく見えました。この辺は大河ドラマなんぞよりリアルかもしれません。「まさか「クレしん」でリアルな時代劇をやるなんて思わないだろう」みたいな、製作者の「驚かせて(楽しませて)やろう」といった姿勢を感じ
ます。

テーマ性は前回のようには感じられませんでしたが、前回同様、泣けるシーンがあるし、しんちゃん一家を応援したくなるシーンがあります。ハッピーエンドとは言い難いラストですが、爽やかに終わってくれます。

残念なのは、みさえとひまわりの存在が薄くなっていることでした。タイムスリップするのはしんちゃんとひろしだけでいいような…。

予告編では、しんちゃんが侍相手にケツで真剣白羽取りをしたり、ひろしが車の屋根で通販商品(「HERO」でキムタク愛用品だったけど名前を知らん)で矢を払ったり、しんちゃんが3人の武士をやっつけるシーンがあります。いくら「クレしん」が破天荒な作品とはいえ、彼らをここまで強くすると不自然に見えるのか、本編ではこれらのシーンは登場しません。

 

 


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パルムの樹

 

 

地球とは違う異世界で、樹から作られた人間になりたいと願うロボット・パルムの地上から地底世界までの旅をたどる、長編アニメーションムービー。
「ピノキオ」を、世界観をよりファンタジックにして、キャラクターも増やして物語のスケールを大きくした話といえます。

映画は2時間以上の長さの大作ですが、ところどころ退屈しました。
一番気になった部分は、主人公であるパルムに感情移入できない点です。序盤の方ではパルム自身がどうやって動いてるのか、感情があるのかあやふやな描き方だし、特に中盤で彼が見せる自分勝手な行動にはついていけなくなりました。その行動の理由は後で明らかになりますが、それなら観客が同情できるような、もっと違った演出ができないものかと思います。
映画はアクションシーンが結構あり、こちらは派手な見せ方でそれなりの迫力が出ています。こうなるのなら下手に複雑な話にしてしまうよりも、単純にアクションを見せるだけの話にした方がよかったと思います。

またこの作品の世界は、天界とか地上とか地底とかに別れていて、それらの世界の中でいろんな部族がいたりして複雑になっています。なのにそれをちゃんと理解させるだけの説明が不十分なおかげで、キャラの置かれている立場が分からなくなるシーンがありました。
特に後半の話は、設定がよく把握できないおかげで、何が起こっているのかは分かるものの、どういう理由でそれらのエピソードが起こっているのかがよく分かりませんでした。

この作品は元はTVシリーズとして企画されていたそうで、その形で見せていたならば、設定が複雑でも何回か見れば分かるように作れるでしょう。しかし同じ情報量(削っているかもしれないけど)を2時間程度の長さの作品に盛り込むのは無理があります。
設定の中には話に絡んでいないように思えるものもあり、ここまで複雑にする必要があるのか疑問に思いました。もっと整理できると思います。
ただし世界観の描写には、空に巨大な魚やクラゲみたいなものが浮かんでいるなど、面白い部分がみられます(「天使のたまご」と同じパターンともいえるけど)。

監督のなかむらたかし氏は「アキラ」に関わったスタッフだそうですが、クライマックスはモロに「アキラ」を思わせる描写が出てきます。結局これかよ、とがっかりでした。

 

 


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マ タ ン ゴ

 

 

小説家や実業家、歌手など7人の男女が乗ったヨットが暴風雨に巻き込まれ、漂流してしまう。深い霧の中から現れた島に一行は上陸し、そこで見つけた難破船を宿とした。難破船は放射能の研究をしていたらしい国籍不明の船で、船内にはわずかな缶詰めと、「マタンゴ」と名付けられたキノコの標本があり、艦長日誌には乗組員が日ごとに消えていくと書かれて終っていた。島には動物はおらず、鳥も寄り付かず、不気味な人影がさまよっていた。食料が減って荒んでいく一行に残された食べ物はマタンゴのみだった…。

1963年に作られた、「怪奇人間」シリーズの範疇に入るであろう有名な東宝映画です。マニアックな意味で有名な映画ですが、今見るとあまり怖いとは思いません。
今だと「エルム街の悪夢」や「シックス・センス」など、ホラー演出ではもっと怖いパターンを見てるせいか、この時代の映画ではもう驚けません。ただし、子供の頃にこの作品を見たのなら、そういった演出に慣れていませんから、印象が強くなっていたかもしれません。
また、キャラ同士のいがみ合いや飢餓感や恋人が怪物化する苦悩といった、極限状況下の設定ゆえのドラマとして面白いポイントは結構あるのですが、空腹感など切羽詰まった感じがせず、突っ込みが足りない感じを受けました。

マタンゴが発生した原因をはっきり語らず、匂わせてるのみにしているのは適切な描写でしょう。「放射能」とはっきり言ってしまうと、またゴジラと同じパターンじゃん、と思います。とはいえ、ビデオの最後に収録されている予告編では「放射能」と言いきってしまっているのですが。
マタンゴは前半では頻繁に姿は見せません。それはいいのですが、初めに出てきた時は、はっきり「歩いて」いて、動きが人間くさすぎてチープに思いました。
マタンゴの群れのシーンでは、バルタン星人の「フォフォフォ」と同じ声をSEの怪奇音として使っています。これがどうしてもウルトラマンを連想させてしまい、怖いというより笑ってしまいました。ま、これは製作者が悪いわけじゃないんだけど。

この映画の一番のヒロインともいえる水野久美は、「怪獣大戦争」でもそうでしたが、やはり怪奇的な美女が似合うように思います。
今やジイさまとなってしまった、佐原健治の若い姿がこの作品で見られます。彼は「ラドン」でも「ウルトラQ」でもいい役だったし、後のウルトラシリーズでも参謀役が多く、この映画のような、悪役というのはあまり見たことがありませんでした。

全体的に演出の「生ぬるさ」が目立った作品ではありますが、今風のリアルな描写でリメイクしてみたら、面白い映画になるように思います。

 

 


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無 問 題 2

 

 

ケン(岡村隆史)は偶然香港旅行の券をゲットした。香港に来たケンは、泊まっているオンボロホテルの主人がカギを間違えたおかげで殺し屋と思い込まれ、依頼主から大会社を継ぐことになっている令嬢由美子(酒井若菜)を狙うように指示される。だが由美子にメロメロになったケンは彼女を助けてしまい、会社乗っ取りを企む組織から狙われるハメになる…。

僕は前作である「無問題」は見ていませんが、今回は(たぶん)全く関係ない話で、「1」と同じく岡村隆史が主演だから「2」とタイトルにつけられたのでしょう。
岡村は香港映画の大ファンだそうで、本編には彼の好きそうなカンフーシーンや、「フェイス/オフ」「グリーン・デスティニー」などのパロディシーンが出てくるので、彼同様に香港映画が好きな人には楽しめる映画です。
しかし、趣味で作っているように見えながら、この作品ではユン・ピョウやサム・リーといった香港映画のビッグスターがゲストではない、ちゃんとした役で活躍するし、アクションも本格的で迫力があります。製作者たちが自己満足ではなく、ちゃんと観客にも楽しめることを考えて映画を作っている姿勢がうかがえます。
話の中にはご都合的な展開が頻発しますが、「んなことあるかい!」と突っ込みながら楽しむべきでしょう。

同じ時期にアジアで日本が提携した映画といえば「ソウル」がありますが、「ソウル」はまともなA級映画を目指そうとして、真面目に欲張りすぎて失敗していました。それに対してこの「無問題2」はB級と開き直りながら、香港映画特有の面白ければ何でも詰め込む姿勢がうまく働いて、気楽に見れる映画になっています。
僕は香港映画が好きなのでこの映画に肩入れしてしまうのかもしれませんが、この作品は、映画は時にいいストーリーではなくとも、楽しませようというエネルギーがあればいいものができる、という例だと思います。

岡村は演技が上手いとは思いません(しょーがないか)が、アクションでは飛んだり飛ばされたりと、結構頑張っています。特に「ポリス・ストーリー」のパロディ的シーンでは、本当にバスから吊るされていたようで、これは命がけだったでしょう。
ユン・ピョウは岡村を助ける格闘家ラムガイの役です。彼は今カナダに住んでいるせいかここ数年映画には出ておらず、一番最近の映画の仕事はジャッキー・チェンが主演したハリウッド映画「シャンハイ・ヌーン」のアクションコーディネーターだそうです。しかし今回は、久しぶりの映画出演とは思えないような切れのいいアクションを見せてくれて、映画に出てないのはもったいないです。
この作品のヒロインは今ドラマでも売れてきている酒井若菜ですが、重要な女性キャラではもう1人、ラムガイの妹で岡村を助ける、ラムトイがいます。演じるキャンディ・ローは本編のほとんどでわざとブスメイクをしていますが、わずかに美人!と思えるシーンがあって、彼女のプロフィールと写真目当てにパンフを買ってしまいました。
しかしこのパンフ、プレスシートみたいな薄さなのに600円は高い!

サム・リーは岡村の恋敵役という役で、2人が酒井若菜を巡って火花を散らせます。サム・リーは「メイド・イン・ホンコン」のようなシリアスな映画に出るイメージが強いので、こういうB級ぽい映画に出るとは意外でした。また他に香港映画の有名どころでは、エリック・ツァンも出ています。

日本人の出演者では、岡村に縁のある人が「メ○○○○ャー」を思わせる役でちょっとだけ顔を見せます。

 

 


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助太刀屋助六

 

 

江戸時代、助六(真田広之)は仇討ちを助けて感謝された快感が止みつきになり、以来仇討ちの助太刀の礼金で流浪の暮らしをしている。数年ぶりでなんとなく故郷である上州の宿場町に戻ってしまった助六は、そこのただならぬ雰囲気から仇討ちがあることを知る。彼は仇討ちをしようという侍に助太刀を申し出るが断られ、仇(仲代達也)を見に棺桶屋に行くが、そこの主人は助六を見ると、急にそわそわし出した…。

岡本喜八が(たぶん)「East Meets West」以来久しぶりに放つ劇場映画です、僕は「East Meets West」は見たはずなのですが、つまんなかったと思ったことしか覚えていません。
しかし今回の映画は「大誘拐」のように、爽やかでいい感じに仕上がっています。映画全体の尺は1時間半と短い作品ですが、コンパクトにまとまっていて楽しめました。

この作品は中盤までナレーションで話が語られますが、これを岸田今日子がやっていますが、ちょっとおふざけな文章と彼女の独特の言い回しが上手くマッチして笑えます。

主演の真田広之はセリフの掛け合い、そしてアクション(さすが元JAC)も軽快で安心して見れます。ただ、設定が24歳とはなあ…。ヒロインとなる鈴木京香が、処女という役もちょっと…。
仇となる侍を仲代達也が演じています。居合も速く、貫禄が感じられて、「金融腐食列島」でのふてぶてしい役とは全く違ったキャラを見せてくれるのはさすがです。
また、岸辺一徳が出ていますが、この人っていつも悪役で出てくる印象があります。

冒頭で助六の仇討ち道中が語られますが、この時チラリと顔を見せる侍たちに、竹中直人や嶋田久作や佐藤蛾次郎などが扮しています。彼らはすぐに消えてしまうので、このシーンは集中が必要でしょう。

ラストは読めてしまいました。また、こいつこんなに人気あったのか?ていう感じの唐突な描写もあって、シナリオの最後の詰めをもう少し考えてほしかった映画です。

 

 


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ソ ウ ル

 

 

まだ見ていない人

犯人護送のために韓国に来た早瀬刑事(長瀬智也)は、空港に行く途中で2人組の現金強奪事件に遭遇し、犯人の1人に追いすがるが誤って射殺してしまう。早瀬は唯一連続現金強奪事件の犯人の顔を知ったことで、捜査協力のためソウル警察に足止めされる。捜査を担当するキム部長(チェ・ミンス)はいい顔をしないが、早瀬はどこか腑に落ちない点が多いこの事件を独自で推理しだす…。

最近テレビドラマでも多くなってきた、日本と韓国の合同作品で、TVドラマでも主演が多いTOKIOの長瀬智也の初主演映画です。宣伝のコピーは「「ホワイトアウト」と「シュリ」のスタッフが手を組んだ」と期待させるものですが、出来はこの2本に比べてかなりレベルの低い結果になっています。

まず、都合のいいシチューエーションが続くのには閉口しました。「たまたま」現金強奪事件に遭遇するのはまあいいとしても、「たまたま」犯人が目の前に現れたりとか、「たまたま」が頻発します。
別の言い方をすれば、そういった「たまたま」を、「都合がいい」と意識させないテクニックがシナリオで不足してると言えるかもしれません。
また、韓国人の早瀬に対する扱いも気になりました。韓国の人にとって早瀬は外国人だから、初めの方で邪魔者的な扱いをするのは分かります。それが後で変わるのですが、ものすごく不自然に見えました。主役だから活躍させなければいけないのは映画としては当然だけど、そういう裏事情的な理由を思わせない自然さが、この作品には足りません。
また、映画の一番のウリであるアクションにしても、「ホワイトアウト」や「シュリ」なんかに比べるとシチュエーションにバラエティがなく、単に銃と弾丸の数が多いだけです。
キムと早瀬にある「つながり」があるなど、キャラクタ−にはそれなりの人物設定がしてあるのですが、それが話の中で全く生きておらず、とってつけたように見えます。

結局この映画、シナリオが全然整理されておらず、思いつきで書かれたバージョンを推敲せずに使ってしまった感じがします。

この映画の製作はフジテレビで、前に同局が製作した「踊る大捜査線」並みのヒットを期待したようですが、あの映画に比べると質が違います。長瀬智也は全国を回って必死にキャンペーンをしていますが、元がダメではそれも限界でしょう。彼やチェ・ミンスの演技は悪くないのに、シナリオや演出がそれを殺してしまったのが残念です。

 

 

すでに見た人

冒頭で現金強奪の犯人が日本語を話しますが、事件に日本人が絡む意味が感じられません。意味が無いといえば、キムが早瀬の兄を撃ち殺した設定なんて非常に重要な話だろうに、これも話の中で何も生かされていないのは、なぜわざわざそんな設定をしたのか疑問です。

初めは早瀬もキムもお互いの国の言葉しか理解できませんが、途中から突然、早瀬が韓国語を話すようになるし、キムに日本語で話したりします。
観客にとってはキムが日本語が理解できることは途中から想像がつくと思いますが、早瀬がそれを知るのはラスト(驚いているから、知らなかったと解釈できます)なので、これは変。
こいつら、いつお互いの言葉を覚えたんだ?と不思議に思えます。これでは早瀬がいくらかっこいいセリフを言っても説得力がありません。

先にも少し触れましたが、クライマックスでの早瀬の扱いは気になりました。
なんでキムは犯人グループの中に日本人である早瀬を単独で突入させるかなあ?周りに自分の部下がいるのに。これじゃあ自国の刑事を差し置いた特別扱い。
いくら早瀬が主役だといえ、もっと自然なシチュエーションを考えるべきです。

 

 


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仄暗い水の底から

 

 

離婚調停の最中である淑美(黒木瞳)は一人娘・郁子を引き取ってマンションに引っ越してくる。その近所では一人の少女が行方不明になっていた。淑美はそこで暮らすうちに、その子供らしい影を感じるが、その態度は調停員には情緒不安定と受け取られ、娘を別れた夫の側に取られかねなかった…。

恒例となった角川冬のホラー2002年度版は、鈴木光司原作と中田秀夫監督という「リング」のコンビで、ホラー大ヒットの夢よもう一度、を狙ったようです。
今回は母子愛をプラスして感動も狙ったようです。といっても、淑美の背景はそれなりに描けているのに、一番肝心の、彼女が幽霊の子供に感情移入する描写が不足していて共感できず、感動までは行きません。
黒木瞳は精神がもろい母親を熱演しているだけに、演出がそれをフォローできなかったのは残念なところです。どうも中田監督は人間を描くのが上手くない、あるいは長編は不向きなのかもしれません。ビデオでもいいレベルの作品です。

中田監督は「女優霊」や「リング」などと同様、この「仄暗い水の底から」でも、日常にポッカリ現れるさりげない恐怖描写で怖がらせてくれます。とはいえ、その演出は既に他の映画でも使われてるやり方で新味はなく、「リング」みたいに悲鳴をあげてしまうまでは行きませんでした。
ただし、買ったマンションでの恐怖体験という話は、「リング」よりは身近にありそうに思います。これを見たらマンションを買うのが怖くなりそうです。

タイトル通り、この作品は水がキーポイントなので、雨や水道や漏水や給水タンクなど、水に関するシーンが多い映画です。それも清流みたいな爽やかな水ではなく、汚れた水ばかりで、それによって映画全体の雰囲気は重苦しくなり、恐怖感の増幅にいい効果を与えています。
出演者は水に濡れたり流されたりして、見ている間、キャストとスタッフは撮影中大変だったろうなあ…と苦労を偲んでしまいました。その苦労が報われたとは思えませんが。

映画館でこの作品を見ていて、冒頭の東宝マークが流れた時に、劇場内の横から水音がしだして、「トイレの音が中まで反響してきたのか?」と思ったのですが、これはそうではなく、横のスピーカーからの水音だったようです。サウンドデザインは上手いかも。

 

 


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修 羅 雪 姫

 

 

500年の鎖国を行っているアジアの某国。その国には隣国の混乱から脱出し、今は金を積まれれば誰でも殺す暗殺集団、建御雷(たけみかずち)の一族があった。その中で唯一建御雷の正統な血を受け継ぐ雪(釈由実子)は、組織の裏切り者を始末した時、空暇(沼田曜一)と名乗る男に出会う。彼はかつて彼女の母の護衛をしていたと言い、母を殺した者は今の組織のリーダー・白雷(嶋田久作)だと告げ、組織から抜け出すように言う。白雷の殺害に失敗した雪は組織から追われ重傷を負うが、隆(伊藤英明)という若者が彼女を介抱した。雪と隆は暮らしていく中で引かれあうが、雪には建御雷の一族が、そして隆にもある危険が迫りつつあった…。

この作品のアクション監督であるドニー・イェンは、「マトリックス2」のアクション監督をやると聞いたように思います。さすが香港の人だけあって、この映画ではワイヤーを多用し、香港の吊りと剣劇を合わせたような早い、迫力のあるアクションを見せてくれます。
釈由実子はTVでのボケのイメージが強いので、初主演の映画でいきなり本格アクションというのは似合わない感じがしましたが、実際見てみるとアクションがかっこよく決まっていて、頑張っています。この映画では彼女はほとんど笑わず、バラエティとは全然違う顔を見せますが、それも合っているように見えました。

監督の佐藤信介と製作の一瀬隆重は「LOVE SONG」で一度コンビを組んでいます。今回は「LOVE SONG」とは全然毛色の違う話ですが、「LOVE SONG」より納得できる展開で、楽しめました。ただしラストは暗いし、話の途中で終ってしまった感じで後味の悪さが残りました。続編を意識しているようにも思います。

建御雷の一族には、六平直政や松重豊や長曽我部蓉子といった、クセもの役者たちが一族の使い手に扮しているぴったりのキャスティングです。ただ、長谷部は雪との一騎討ちで目立つシーンがあるものの、六平はすぐにいなくなるし、松重も今一つ存在が薄かったのは残念です。他にも沼田曜一や佐野史郎など、脇役は怪しい奴らばかりで見ものです。
最強の敵となる嶋田久作は雰囲気はいいのですが、セリフがたまに聞き取りにくくなるのは困り物でした(発声練習の必要があり)。
また演技ではありませんが、時々フォーカスがぼやけたシーンがあることも気になりました。

特技監督は平成ガメラシリーズの樋口真嗣氏です。予算の制限なのか、CGを使っているシーンは多くありませんが、銃などのスピード感の強調には効果を発揮しています。またCGで作られているであろう、この時代の世界観を見せるシーンは数カットしか出てきませんが、北朝鮮チックな未来を思わせる独特のイメージがあります。

この映画のパンフは1000円でした。この値段じゃ買う気にならん…。

 

 


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G  O

 

 

在日朝鮮or韓国人である高校生・杉原の、「僕の恋愛に関する話」。
杉原や彼女だけでなく、親や友人といった、彼を取り巻く人々との話がハイペースで展開します。

主人公・杉原を演じるのは「GTO」から大出世した窪塚洋介です。先頃公開された「溺れる魚」も彼は主演格でしたが、椎名吉平も同格の扱いだったのを考えれば、今回の「GO」が窪塚クンにとっては本格初主演映画と言っていいでしょう。
僕は原作は読んでいませんが、不適さと繊細さが同居してるような杉原というキャラは、窪塚洋介以外に考えられないほど、彼のイキの良さが光っています。
しかし、この映画で個性のあるキャラクターは杉原だけではありません。山崎努演じる杉原の父親なんて、いつも杉原をとことんまでぶちのめし、サントリービールのCMで豊川悦史とバトルを繰り広げるキャラを連想させます。
大竹しのぶ演じる杉原の母も、出番は少ないけど強烈な存在感があるし、杉原の先輩や友人など、誰もが一癖あるキャラクターで、彼らを見ているだけで話に引き込まれてしまいます。しかし、そういう個性が豊かなキャラがたくさんいても、主人公の杉原を超えることはなく、ちゃんとキャラクター配置のバランスが保たれています。

冒頭は杉原の乱闘、そして「走る」杉原の破天荒な行動で観客にインパクトを与え、さらにその後の親父の初登場の行動も強烈です。この作品はこういった初めのつかみの印象づけが上手く、そのテンポの良さのまま、最後まで突っ走ってくれます。
オープニングクレジットはいい意味でTVドラマ的な表現で、話の疾走感にぴったり合っています。場面転換でもワンカットで面白い見せ方をしている箇所があり、監督のセンスの良さを感じます。

在日という現実のせいか、話の中には見ていて辛いシーンも出てきます。しかし、監督が窪塚氏に「在日の子たちがこの映画を見たら、胸を張って出てくるんだよ」と言った通り、 最後は爽やかに見れる映画です。

杉原の彼女となる桜木役の柴崎コウは「バトル・ロワイアル」での光子とは全然違う明るいキャラクターを演じていますが、こちらの役も合っています。ミニスカ姿が多いのは男にはうれしいところでしょう(中も見えちゃう!)。

 

 


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ホ タ ル

 

 

「鉄道員」(ぽっぽや)で日本の老若男女を泣かせた高倉健と降旗康雄監督が再びタッグを組んだ作品です。
今回高倉健演じる は特攻隊員の生き残りでありながら、その体験を誰にも語らずに鹿児島で漁師として妻と細々と暮らしていますが、特攻時代のもう1人の生き残りの死をきっかけに、その考え方が変わっていく姿を描きます。
主人公は高倉健ですから、おじさん(年からいったらおじいさんか?)なんですが、彼の友人の孫である10代の女の子、つまり特攻に飛び立っていった人達と同世代のキャラを絡ませることで、若い人にもこの物語が親しめる構成にしています。こういう下の世代を絡めることで、 戦争体験を伝えようというテーマが見えるのはいいことなのですが、彼女の出番が途中で無くなるおかげで、その視点が中途半端になってしまったのは残念に思います。
またこの映画では、キーとなるキャラで韓国人が登場します。外国人の見方を入れたことは今っぽく感じたし、ちゃんと韓国まで行ってロケをしているのは、製作者たちの戦争に対する真摯な姿勢がうかがえます。

「鉄道員」ほでではありませんが、泣けるシーンが数箇所あり、特に、特攻隊員たちの母親的存在である奈良岡朋子に関するシーンで涙がこぼれました。最近この人は見かけませんが、やはり上手いです。

同じ太平洋戦争を扱った映画では「パール・ハーバー」が上映されていますが、現代との接点も新しい視点もなく、ほとんど自国(アメリカ)の賛美と理屈で話が進み、しかも戦闘(人の死)を見せ物にしている「パール・ハーバー」なんぞより、「ホタル」は百万倍はいい作品です。たぶんハリウッド大作として大宣伝をしている「パール・ハーバー」の方がヒットするでしょうが、「ホタル」の方が多くの人に見てほしい作品です。
たぶん、こういった戦争の悲劇を描く作品は、特攻や本土爆撃などの悲惨な戦争経験をしている国であればこそ作れるのかもしれません。

高倉健はいつものごとく、一見無愛想ながら優しい男のキャラですが、この作品では彼の歌う姿や、「鶴ダンス」が見れるのは面白いところです。

 

 


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案山子
KAKASHI

 

 

まだ見ていない人

かおる(野波麻帆)は失踪した兄の部屋で、泉(柴咲コウ)からの「会いたい」と書かれた手紙を見つける。兄の消息を確かめるため、その手紙の住所である不来彼方村に向かったかおるは、村の入り口で車が故障したため、その村に滞在せざるをえなくなる。村にはあちらこちらに案山子(かかし)が立っていて、数日後には「祭り」が開かれるという。泉の家にたどり着いたかおるは彼女の両親から、泉は療養所に行ってしまって不在と聞かされ、車が治るまでその家に泊めてもらうことになる。その晩かおるは、離れの小屋に兄が監禁されている夢を見る…。

まだまだ映像化の流行が止まらない、伊藤潤二の作品を「リング0」の鶴田監督が映画化した作品です。鶴田監督はホラーでは定評がありますが、この作品ではドラマで一番肝心な要素である、キャラの背景を語るシーンがほとんどカットされています。
ホラーで一番怖いのはキャラ(あるいは死者)の想いから発生する怨念だと思いますが、この作品ではその描写が薄いため、その怨念の強さも伝わってこないし、おかげで感情移入もできません。なので、一時的に驚かせる演出はあるものの、心から怖いと思えたシーンはありませんでした。
これは、おそらくシナリオの時点で、キャラの背景に関するシーンを切ってしまったのだと想像します。シナリオでは鶴田監督を含めて4人くらいクレジットされていましたが、共作というより、ライターが次々と変わっていったゆえの多人数のクレジットではないかと思いますし、その過程でドラマが薄いものにされてしまったのでしょう。

映画の舞台は人里離れた田舎ですが、隔絶された土地の不気味さは出ています。人間そっくりに服を着せた案山子が乱立する風景は異様だし、ショック描写もそれなりには怖がらせてくれます。

主演の野波麻帆は最近は名前を聞かない感じで、「愛を乞うひと」やTV「LOVE&PEACE」以来久々に見ました。東宝シンデレラの肩書きは人気には役に立っていないようです(あるいはプロデューサーとかに好かれてないのかなあ)。
香港から来た留学生の役で、「ジェネックス・コップ」に出演していたグレース・イップが出ています。この作品に香港資本が入っているゆえのキャスティングだと思いますが、彼女が演じるキャラは外国人である必要もなく、何のためにいるのか分からない役なのが残念でした。
ドラマが薄くなってしまったせいか、要のキャラである泉の出番はあまりありません。彼女を演じる柴咲コウは化粧品のCMに出ている、清純派という感じだったのが、「アナザヘブン」や「バトル・ロワイアル」でのキャラのおかげで不気味な女のイメージがついてしまったように思います。
その他、「サトラレ」やTV「HERO」に出ていた田中要次や河原崎健三など、くせのある役者が出ているのは見どころでしょう。

 

 

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案山子が人間と化す設定はすぐに読めましたが、 人間化した案山子の群れが動き出すシーンは不気味です。しかし、クライマックスはこいつらが復活するだけで、人間に一斉に襲いかかるシーンが無いのは物足りなさを感じました。
一斉に復活する案山子グループとは別の案山子が人間として復活するシーンでは、案山子が人、それも近親者を殺しますが、これってまるで「ペット・セメタリー」のパクりに思いました。

 

 


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