NIN×NIN
忍者ハットリくん
ザ・ムービー

 

 

伊賀の里で修行をしている忍者、服部カンゾウ(香取慎吾)は、免許皆伝として父ジンゾウ(伊東四朗)に最後の修行を命じられる。それは、江戸(現代の東京ですな)に行き、初めに会った者を主として暮らすというものだった。カンゾウは自分が部屋に飛び込んでしまった少年・ケンイチを主と選び、2人の奇妙な共同生活が始まる…。

TVアニメにもなった有名な漫画「忍者ハットリくん」。まさか!の実写映画版です。
ハットリくんを慎吾ちゃんが演じるということで、どう見ても少年には見えないハットリくんが、どう見ても年下の少年を主に選ぶなど、設定にはオイオイ!と突っ込みたくなる部分がいくつかあります。
しかしメインの話をハットリくんとケンイチの関係に絞ったおかげで、映画は少年の成長物語という感じで爽快に進み、強引な描写も気にならなくなってきます。そして2人の絆が徐々に深まった末の、後半でのハットリくんの行動には、涙が出てきました。
予告など、映画の事前の見てくれはアホッぽく見えてしまったので、まさかこの映画で泣くとは予想だにしませんでしたが、客席からもすすり泣きの声が少し聞こえました。
ギャグシーンもなかなか笑わせて、映画は全体的に楽しくさわやかな仕上がりになっています。初日は映画館は大入り満員で、見る前は信じられませんでしたが、見た後は納得でした。

アクションシーンは絵コンテをヒグチしんじが担当しているせいか、CGの特性をそれなりに良く生かした仕上がりになっています。しかし「LOVERS」なんかを見てしまうと、いかにも作り物に見えてしまうのは仕方ないところでしょう。
とはいえ、特に後半のシリアスタイプの慎吾ちゃんはその行動のせいかかっこよく見えたし、ライバルとなるケムマキ役のゴリもかっこよく写っていて、ゴリエとはまた別の顔が楽しめます。

 

 


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マインド・ゲーム

 

 

電車に飛び込んできた若い女性。漫画家の西はその女性が中学時代に付き合っていた初恋の女性みょんと分かり、声をかける。西は彼女が姉と営んでいる焼鳥屋を訪れるが、そこに姉妹の父親から借金を取り立てようとする二人組のヤクザが現れ、おびえた西はあっけなく殺されてしまう。死後の世界であまりにもカッコ悪い死に様を見せられた西は、執念でこの世に舞い戻る…。

アニメに分類される作品でありながら、実写合成があったり、絵柄も普通のセルアニメタッチとは違う感じで、実験的手法が目立つ作品です。線は単純ですが、いろいろと動き回り、見た目は飽きません。
だからといって面白いかというと、話はそうエキサイティングとはいえず、疲れているときに見ると寝てしまうかもしれません。
監督は「クレヨンしんちゃん」を担当した人だそうですが、「しんちゃん」の方がまともに楽しめることと思います。
でも現実肯定のテーマには共感できるし、西たちが生への執念を見せるクライマックスは応援する気になりました。その後の可能性のシーンも、ちょっと感動的ではあります。

 

 


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ほんとにあった怖い話
怨 霊

 

 

ビルの警備員(半田健人)が深夜のトイレで遭遇した体験、ある「モノ」を持っている女幽霊に追いかけられる女性(西本はるか)、死者が連続する家を担当した葬儀屋が見たもの、鼓膜移植手術を受けた女性が見る奇妙な人影、ウィークリーマンションでいるはずの無い少女を見てしまう女性(仲根かすみ)…これら5つの、ほんとにあったというエピソードのオムニバスホラーです。

「ほんとにあった怖い話」はフジ系列でTV放映されていますが、この作品はそれとは違う会社で作られた映画です。
ホラー描写はそこそこ怖く見せていますが、話によっては間延びし、あまりに退屈なので早送りをしたシーンがありました。特に鼓膜移植の話は「アイ」のパクりみたいで、ほんとにあったの?と突っ込みたくなりました。

「ほん怖」TV版と比べてしまうと、演出なんかはこの映画版の方が下の出来です。劇場版のくせにTVより落ちるのは、配給会社が粗悪ホラー「ほんとにあった呪いのビデオ」等を連発してるブロードウェイだからなのかもしれません。

 

 


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呪 霊
黒 死 霊

 

 

ダンスの練習を終え、帰宅しようとした少女たちが突如黒い影に飲み込まれ、一人また一人消えていく。その少し前、帰宅した紀子(若槻千夏)の家には誰一人いなかった。だが家のトイレで親友の仁美が恐怖の表情で倒れていて、彼女に近づいた紀子は…。その少し前、出張先のホテルに入った紀子の父親に、ベッドの端から現れた黒い人影が襲い掛かってくる…。

ホラービデオシリーズ「呪霊」劇場版の2作目はオムニバスでない、1本のつながった話になっています。自分とは関わりのない幽霊が襲い掛かり、その呪いが拡大していくという、「呪怨」タイプと呼べる作品です。
ホラー描写はそこそこ怖くは見せていて、前の映画版よりは楽しめますが、所々間延びしたカットが見られました。
映画の構成は、時間を逆転させるという「メメント」的なやり方が特徴でしょう。しかしそれで謎解きとかをしてるわけでもなく何の意味も無いのは、やはりこのシリーズらしいところです。

今回、一応主演であろう若槻千夏が主題歌を歌っています。グラビアアイドルでバラエティと来て、次は歌手を目指すか…?

 

 


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誰も知らない

 

 

都内の2DKのアパートにけい子(YOU)と明(柳楽優弥)の母子が引っ越してくる。大家には2人だけと言っていたが、実は彼らは5人家族で、けい子は明以外の京子、茂、ゆき3人の妹弟には外出しないように約束させ、子供たちを学校へも行かせなかった。ある朝けい子は、明にメモと現金を残して出て行ってしまうが、彼らは普段通りの生活を続ける…。

2004年度のカンヌ国際映画祭で、ほとんど無名だった柳楽優弥クンが主演男優賞を受賞して、話題になった映画です。
その演技、特に子供たちは柳楽クンだけでなく全員が、上手いというより自然に見えます。是枝裕和監督は子供たちに演技させるよりも、自然に振舞うことを重視したそうですが、それが見事に生きていて、映画は彼らの生活を写し取ったような雰囲気になっているのに驚かされます。

生活を写し取った、という感じは子供たちの演技だけでなく、映画のスタイルからもくる印象でしょう。映画は子供たちだけの生活をひたすら、淡々と見せていくだけで、普通のドラマのような盛り上げはなんぞはありません。
映画の後半では悲惨な事件が起こりますが、演出はそれまで通り、泣きを狙ったような描写はしません。客席からはすすり泣きの声が聞こえましたが、僕は泣く気にはなりませんでした。
こういう感じに、映画は盛り上げも説明も全くといっていいほどやらないし、どうすべきだったとか誰が悪い、といった主張も全くしません。いわばこの作品、観客の感情をコントロールしたり演出によって主張する、ハリウッドでよくあるような映画とは対極の形です。
そういうハリウッドタイプの映画も悪くはありません(劇場映画の大部分はそのタイプなのだけど)が、「誰も知らない」のスタイルは、そういうパターンの映画以上に、福祉や虐待や地域のつながりなど、考えさせることがたくさん出てくるように思います。
映画が考えさせる物事はたぶん、人によってそれぞれ違うものになるでしょう。恐らく想像力が足りない人にはこの映画、全く面白くないと思います。逆に想像力が働く人にはこの話はいろいろと感じるところが出てくることでしょう。この映画は観客の想像力を試しているのかもしれません。

観客は高校生や大学生らしい若い女性が目立ちました。劇場から出てきた女の子で「誰も知らない」わけはないよ、と言ってた人がいましたが、まあその通りにも思います。でも東京ならやっぱり、どうかなあ…?

 

 


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SURVIVE STYLE5+

 

 

殺しても殺しても蘇ってくる妻(橋本麗香)に襲われる男(浅野忠信)、CMのネタを思いつくとメモって夢想する女(小泉今日子)、通訳(荒川良々)と共に存在意義を聞きまくるロンドンから来た殺し屋(ビニー・ジョーンズ)、催眠術の最中に催眠術師(阿部寛)がその殺し屋に殺され、鳥と思い込んだまま戻らなくなった男(岸部一徳)、密かに想いを寄せ合う男三人組の空き巣。これら5つの、ヘンな人たちのエピソードが並行して進みます。

企画、原案、脚本でクレジットされている多田琢氏は、BOSS缶コーヒーや富士ゼロックスのCMを手がけた人だそうです。「茶の味」の監督石井克人氏や「下妻物語」の中島哲也氏などもCM出身の人ですが、この人たちの映画と同じように、この「SURVIVE STYLE5+」もやっぱりヘンな状況の、ヘンな人を描いた話です。
どの話もそれなりに笑えますが、特に面白く、観客(あまり入っていなかったけど)に受けていた感じだったのは、メインといってもいい浅野忠信の話で、殺すたびにターミネーター化していく妻が殺し方によってパワーアップするのが笑えました。

カットによっては長いと感じる箇所がありましたが、これは間を取ってるようなところもあり、感じ方の差なのかもしれません。ラストは爽やかでちょっと感動的です。

映画は色使いが個性的というか、かなり派手でインパクトがあります。石井氏や中島氏の映画もここまで強烈ではないにしろそんな感じがありましたが、CMの人てみんなそうしたがるのかなあ。

 

 


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予 言

 

 

里見(三上博史)は妻の綾香(酒井法子)と娘の奈々を連れて帰省中、立ち寄った電話ボックスで、奈々が交通事故で死亡という記事が載っている新聞を見つける。次の瞬間、車に大型トラックが突っ込み、彼の目の前で車が爆発し奈々は死亡する。3年後、新聞の話を信じていなかった綾香は調査でその存在を確信していく。そして彼女と離婚した里見の元に、再び新聞が届く…。

Jホラーシアターなるレーベルで、「感染」と同時公開される映画です。
新聞の謎と、それに翻弄されながらも、立ち向かおうとする里見と綾香の姿に目が離せなくなりました。後半の編集にはクドイとこもありますが。ラストでの三上の選択には感動させられました。
原作はかつて一世を風靡した、つのだじろうのコミック「恐怖新聞」となっていますが、この映画は「恐怖新聞」の設定だけ借りた別の物語と言っていいでしょう。あの物語から、こういう家族愛の話を作り上げるとは意外でした。
映画にはそれなりにドキリとする演出もあって、同時上映の「感染」よりはこちらの方がずっといい出来です。TVシリーズの「ほんとうにあった怖い話」でもそうですが、怪奇現象が絡む感動話を撮らせると、鶴田法男氏はなかなかの作品を作ってくれます。

酒井紀子は「呪怨2」以来の連続ホラー映画出演ですが、こうもホラーづいてると、「呪怨2」のキャラ通りに本当にホラークイーンになってしまいそうです。
その酒井紀子の助手役で、アコムのCM以来TVによく出るようになった小野真弓が出ているのが僕としては嬉しいのですが、映画公開の何日か前に放映された「恋のから騒ぎ」ドラマスペシャルでも彼女は酒井紀子と共演していて、のりぴーとのコンビが妙に続いています。

冒頭、主人公の娘が事故死するシーンは合成を使っているせいか、凄くリアルです。
だからこそ主人公の辛さが伝わってくるんですけど、見ていてイヤになるシーンではありました。娘が叫ぶ、という演出がより悲惨さを深めているというか、上手いというか…。

 

 


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感 染

 

 

その病院は経営危機により、薬や人手不足が危機的になっていた。内科医の魚住(佐藤浩市)は救急患者の受け入れを断り、様態が急変した大火傷の患者の緊急手術をするが、その最中ミスが起こり患者は死亡する。魚住や外科医の秋葉(高嶋政伸)や看護婦たちは保身を考え、隠蔽することにする。そんな時、受け入れを拒否したはずの救急患者が急患口に置き去りにされていて、その患者は内臓が腐りながらも笑っていた。そこに現れた赤井(佐野史郎)は、その患者の未知の感染症を研究すれば自分たちが有名になり、病院の経営も助かると魚住たちを誘う…。

Jホラーシアターなるレーベルで、「予言」と同時公開される映画です。
キャストは佐藤浩市や高嶋政伸や南果歩など、TVのホラードラマより豪華な感じではあります。しかしお話は間延びした感じで、所々退屈しました。もっと詰められると思います。
注射を間違って刺してしまうとか、縫合ができないとか、病院のイヤーなことをオーバーにしたような描写はそれなりに不快感を感じさせますが、映画全体にはそう怖いと感じるシーンはありません。

落合正幸氏は僕にとっては超駄作の2本「パラサイト・イブ」と「催眠」を作った監督ですが、「感染」はその2作よりはまだましな出来だとは思います。しかしこれまでの作品を見る限り、落合氏はやはり「世にも奇妙な物語」のような短編の方が合っていて、長編向きではないように思います。

 

 


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怪 談
新 耳 袋

 

 

TBS系のBSデジタル局BS-iで放送されている、5分間オムニバスホラードラマの劇場版です。今回も同様に8話から成るオムニバス話ですが、映画は時間を1話5分とは限っておらず、エピソードによってまちまちになっています。

初めのエピソードは「夜警の報告書」。「ほんとうにあった怖い話:怨霊」でも警備員の話がありましたが、あれみたいに幽霊がただいっぱい出てくるだけでなく、もうひとひねりしてあるところが面白いところです。

次のエピソード、「残煙」と「重いッ!」は他に比べると今一つな話ですが、それでもTV版でたまにある「何これ?」と思うエピソードよりは、雰囲気や役者で楽しめるところがあります。特に北村一輝は、存在だけで不気味!
「姿見」は一発落ちのような作品ですが、幽霊は観客に受けてました。こんなものを持つ幽霊、今までに無かったでしょう。

見どころのエピソードは最後の「視線」「約束」「ヒサオ」の3本でしょう。「視線」は「女優霊」のような幽霊接近型(という分類があるかは知らないけど)でちゃんと怖がらせる、正統派ホラーです。
次の「約束」は、呼ばれたら返事をしなければならない、というアイデアが上手いところで、幽霊登場シーンもドキリとさせられました。監督は雨宮慶太ですが、タイトル文字がいかにも彼らしい字体です

そしてラストの「ヒサオ」。母親が死んだ息子に語りかける、という見せ方は一人芝居みたいで、「新耳袋」だけでなく、他のホラードラマでもやったことがないであろう独創的な話です。またラストが感動的であるのも、「新耳袋」では珍しいパターンです。
母親役が烏丸えつこだとは、クレジットを見て初めて気づきましたが、あまりにも老けた姿にちょっと驚きでした。

この作品は東京では、渋谷のシネ・ラ・セットのみでの公開でした。この映画館、狭いということは聞いていましたが、なんといすはソファみたいなやつで、映画館と言うよりもマンションの一室て感じです。
いすの背もたれは低いので、もたれようとすると姿勢が悪くなるし、前に座っていた女子高生がちゃんと腰を伸ばして座っていたおかげで、頭を上げないとスクリーンが見えません。観客が多いとかなり疲れる映画館?です。

 

 


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スウィングガールズ

 

 

「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督が、今度は女子高生(+1人の男子)がジャズバンドでがんばる姿を描いた作品です。
主人公役の上野樹里を初めとするキャラたちが、始めは例によって怠けながらも、最後にすばらしい演奏を見せるという構造は「ウォーターボーイズ」と同じですが、キャラクター個々のエピソードの描写はより細かくなっていています。さらに「そんなワケないだろ」と突っ込みたくなるような描写が前作より減っていて、矢口監督、演出が進化してるように見受けられます。
クライマックスも前作同様に盛り上がり、爽やかな気分で映画館を出ることができます。
今回は立場的にも性格的にも「ウォーターボーイズ」以上に、男が弱い話になっていますが、今っぽい感じでリアルです。話に恋愛を絡めない形も、ドロドロとした内容にならずに良いところでしょう。

映画で、内気な少女・関口の役を演じた本仮屋ユイカは、この作品のロードショー前に放映されたTVドラマ版「世界の中心で、愛をさけぶ」に順レギュラーで出ていましたが、その終了直後にNHK朝の連ドラのヒロインに選ばれました。この枠では前に「てるてる家族」で上野樹里も出ていましたが、主役じゃなかった(ちなみに主役は、「ウォーターボーイズ2」でヒロインを演じた石原さとみ)し、もしかしたら今後人気度やキャリアが上野を越えるかもしれません。さすが矢口監督、目の付けどころが早い。

映画の製作にはフジテレビか関わっています。これも「ウォーターボーイズ」と同じで、あのドラマ同様、この作品もTVシリーズにするつもりなのかもしれません。てことはいずれ女子高生ジャズバンド選手権、なんてのもやるのかな。

 

 


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劇場版
金色のガッシュベル!!
101番目の魔物

 

 

富士山のふもとに住むコトハは文章が浮かび上がる白い本を見つけるが、その本の予言する文はことごとく当たった。ピクニックにやって来たガッシュたちはひょんなことでコトハと出会い、彼女の本には「洞窟でガッシュの母が待っている」というお告げが浮かぶ。ガッシュは予言を信じて森の洞窟へ急ぎ、清麿も半信半疑ながらガッシュに着いていく。洞窟から出てきた金髪の青年と入れ違うようにガッシュと清麿は洞窟の奥に急ぐ。だがそれは100人の魔物に選ばれなかった魔界の天才ワイズマンの謀略だった…。

フジテレビで放映中のアニメ「金色のガッシュベル!!」の劇場版です。こういう正当友情話は結構好みで、テレビ版もたまに見ています。
今回の劇場版も愛と正義と友情と、て感じの王道の話で、こうくるだろうと思ったらその通りの展開になります。「ポケモン」同様にこういうパターンには僕は弱く、クライマックスは泣かされてしまいました。

お話はなかなかに満足しましたが作画では、ガッシュたちの表情とかはいいものの、画面の脇など小さめのキャラになると表情が無くなるといった、絵がけっこう雑になるのが気になりました。映画版なんだからもっときちんと描こうよ。

実は大のアニメファンという錦織健が敵の声を演じるということで、ワイズマンはなかなかに貫禄出てるので錦織すげーと思ってたら、思い違いで、彼は黒騎士というチョイ役の声でした。演技はまあまあかなぁ。出番少ないし。

 

 


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69
sixty nine

 

 

1969年、学園紛争華やかりし?時代の佐世保の高校生たちの大騒ぎを描く物語です。彼らの行動原理は今も昔も変わらない「オンナ」で、そのために理屈をこねくりまわす姿が笑えます。さらにそのハッタリが、空虚な理論をかざすだけの大人を打ち負かしてしまうところは爽快です。
映画のクライマックスは中盤のバリ封あたりでしょう。そこまでは盛り上がりますが、後半は失速してダラダラとした感じで話が続き、これで終わりなの?と思わされました。ラストの落ちも、あれでは話に何の意味もないようで不満です。
脚本は宮藤官九郎で、彼のシナリオの映画では「ゼブラーマン」はそれなりに盛り上がりましたが、「木更津キャッツアイ」の映画版はクライマックスの盛り上がりが今ひとつでした。今回の「69」がこれだと、彼のシナリオは映画向きなのか?と疑問に思ってしまいます。

映画にはスケベなシーンが多く、下ネタはそれなりに笑えましたが、結構えげつない描写もあります。でも、今は放送禁止となってる歌「オーチンチン」(てタイトルかは知らない)が聞けるとは思いませんでした。ま、肝心の3番はやっぱり出てこないけど。

 

 


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スチームボーイ

 

 

19世紀。アラスカで科学者エディとその父ロイドは蒸気の実験中に大事故を起こしてしまう。それから数年後のイギリスの片田舎。エディの息子で発明好きなレイの元に、祖父ロイドから黒い金属のボールが届き、そこに父と祖父を招いたオハラ財団の使者と名乗る男たちが現れ、ボールを奪おうとする。レイは自作の一輪自走車で逃げるが、男たちは見たこともない蒸気機関のメカで追いかけてくる…。

何年も前に、この作品のパイロットフィルムのような、一輪自走車のシーンをCG特集ぽいTV番組で見た記憶があります。
そして完成まで9年かけて出来上がった映画は、追跡と破壊と爆発が絶え間なく続いて退屈しない、ノンストップアドベンチャーに仕上がっています。
中でも、レイが父の説明を聞かずに景色に夢中になったり、感動の別れと思ったらそうならないといった、ハズした演出は面白いところです。

ただ、「AKIRA」みたいな重さというか、何かありそうな感じは無く、あれよあれよという間に映画は終わってしまいます。また兵器開発と科学の進歩のジレンマというテーマはそれなりに分かりますが、昔の東宝特撮でも語られたような記憶もあり、どこか古さを感じてしまいました。
そういう意味では製作に長時間かけた甲斐は見られず、9年かかってこれかい?と思ってしまいます。 今になってようやく完成というのは、もしかしたら今夏公開予定だった「ハウルの動く城」が延期になったことで、あわてた東宝が金を出して無理矢理完成させたのではないか?と勘ぐりたくなります。
お話は「AKIRA」や「童夢」「MEMORIES」にあったような皮肉やシャープさは感じられず、宮崎アニメに近い感じがしました。大友克弘、年取って丸くなったかな?

全体の色調は落ち着いた感じで雰囲気は出てるし、映画に出てくる数々のメカはそれらしい面白いデザインです(食玩買いたいとまでは思わないけど)。でもこんな小さな動力機関を各メカが持っているなら、スチームボールなんていらないんじゃないか?と疑問にはなりました。

 

 


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海 猿

 

 

映画で「海猿」の意味は具体的に語られませんが、海上保安官の中でもエリート中のエリート、潜水士のことを「海猿」と呼ぶようです。この作品は「週刊ヤングサンデー」に連載されて、テレビドラマにもなった人気コミックの映画化で、訓練で一人前の「海猿」になっていく男たちの物語です。
いわばこの映画、「愛と青春の旅立ち」の海保版といっていいでしょう。ただ「愛と−」が訓練とラブストーリーの部分をちゃんと両立させて描いていたのに対して、この「海猿」では、ラブ関連のシーンで「何これ?」と思わせる展開が多分にあります。
僕は原作のコミックは読んでいませんが、映画ではヒロイン格の伊沢環菜はかなり浮いて見えました。彼女は原作には出ておらず(もしいても、これほど大きい扱いではなく)、映画でムリやり作ったキャラに思えます。
伊沢環菜を演じる加藤あいは、前にテレビドラマに出ていた時よりずっときれいに見えましたが、彼女の存在は余計でしょう。
この違和感のおかげで途中まで、僕はこの映画を見たことを後悔していました。

そう思いながら、クライマックス、そしてラストシーンでは泣きそうになりました。映画館ではすすり泣きの声が聞こえましたが、ムリも無いと思います。この辺は女性キャラはほとんど関係なく、まさにこの映画は、男のドラマです。
ただ、加藤あいに次いで大きい存在の女性キャラを演じる、香里奈については余計とは言えず、その存在の意味はラストのワンカットにあると思います。

映画は公開前から製作未定の、パート2の予告を入れていると話題にされていましたが、初日の成績で本当に2作目の製作も決まったということで、スタッフもホッとしていることでしょう。
その次回予告はエンドクレジットが終わってから始まり、ちゃんとCGも入っている豪華な出来です。次はお台場で客船事故のようですが、1作目がまずまずの出来ということで、次回もたぶんチェックでしょう。

 

 


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下 妻 物 語

 

 

茨城県・下妻に住むロリータ趣味命の少女・桃子(深田恭子)と原チャリで特効服の暴走少女・イチゴ(土屋アンナ)。一見全く接点が無さそうな少女2人の…友情物語、てところでしょうか。
「友情物語」なんて書くとクサそうであまりいい表現ではないかもしれませんが、大枠のお話はそう言っていいと思います。とはいえこの映画はそんなこと思わないで、予告編の雰囲気通り、ブッとんだコメディと思って見るべきでしょう。
予告編の感じだと、この作品はムチャクチャなだけで中身の無い映画か、大いに笑えて話も楽しめる映画のどちらかだと思いましたが、出来は後者です。

主人公?である桃子が爆走するオープニングから、映画に一気に引き込まれました。初めに「何が起こってるんだ?」とインパクトを与える掴みは「GO」を思わせましたが、この作品は「GO」以来久々に「疾走感」という言葉が当てはまりそうな、最後までダレることない映画です。
監督の中島哲也氏はサッポロビール黒ラベルの卓球編など、話題を呼んだCMを監督した人ですが、なるほどこの作品はアニメや合成やテロップなど、CMで見られるような種々の映像表現を駆使して、ギャグシーンのつるべ打ちで笑わせてくれます。
そして映画は映像だけでなく、桃子とイチゴの交流といった本筋もちゃんと描いて、最後には女の友情をしっかり見せます。泣くまでは行きませんでしたが、爽やかに楽しめる仕上がりになっています。海外からも引きあいが来たそうですが、当然でしょう。

桃子役の深田恭子は、前に週刊誌での身勝手という噂を読んでしまったせいか、どこか浮世離れした印象を持っているのですが、今回の感情をあまり表に出さない、アンドロイド的なキャラクターは彼女にぴったりです。
しかしこの映画は、桃子よりもイチゴの方が引き付けられました。彼女を演じる土屋アンナは演技の経験がほとんど無いと思いますが、今ヤンキーやらせたら日本一の女優ではないか?と思うくらい役にハマっています。レディースのリーダー役で矢沢心が出ていますが、土屋アンナよりもキャリアが長いはずの彼女が、貫禄負けして見えました(心ちゃんには「偶然にも最悪な少年」みたいな軽めの役の方が合ってるかも)。
他には阿部サダヲや荒川良々、篠原涼子などが出ていますが、この人たちはちょっとヘンな映画やテレビドラマだとよく見る顔になってしまったので、少々パターンのように思えてきました。悪くはないんだけど。
宮迫博之が桃子の父親役で出ていますが、このダメ人間ぶりは他人事でないように思え、身につまされました。TVドラマ「アットホーム・ダッド」で共演している篠原涼子が、彼の元を去ってしまう桃子の母親を演じていて、2人ともTVとは全く違う役柄が面白いです。宮迫が篠原に「ざまあみろ!」と叫ぶシーンは同情したぞ。

 

 


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深呼吸の必要

 

 

2月下旬の沖縄。日当5000円で広大なさとうきび畑の刈り取りを手伝いに来た若者たち、7人の作業開始から終了までの35日間に渡るお話です。
7人のキャラクターはそれぞれにいわくありげですが、その説明がされるのは成宮寛貴と谷原章介だけで、他のキャラクターは沖縄に来た理由がさっぱり分かりません。特に主人公であるはずの香里奈が、タイトルの理由は説明してるのに、それと沖縄がどう結びつくのかさっぱりです。
基本の話は、彼らがひたすらさとうきびを刈っていくというもので、それに成宮と谷原の過去がちょっと明かされ、あと少々のキャラのエピソードを経て、7人が自分を取り戻していく、といったお話です。

結局この映画、キャラクターがそう描けているわけではないし、エキサイティングな話ではありません。
なんですが、見ていて退屈もしませんでした。 きび狩りのシーンなんて、7人が延々ときびを刈ってるだけで、結構長いんですけど。
彼らの雇い主のおじいいとおばあは、きびの刈り取りが全部終わらないかもしれなくても「何とかなるさ」と許してくれる ひたすらいい人で、理想化された田舎の人、て感じがしました。人生うまくいってない感じの自分には、映画のキャラクターと同様?に、ありがたいお言葉です。
こういった、悪者のいない、のほほんとした雰囲気が心地良い映画です。ラストに流れるマイラバの曲もほのぼのとした感じで、これこそ「癒し系」ムービーというべき映画かもしれません。

リーダー役の大森南朋が、本人はそのつもりでないのに、端から見ると偉ぶるイヤな奴、を好演しています。この人はこういう、ちょっと普通でない役が合っているように思います。
「セカ中」で知名度が上がったであろう長澤まさみが、過去に何かやったくさいキャラを演じていますが、表情を変えず、あまりしゃべらない役だったのはもったいない感じがしました。彼女は「ロボコン」のような、明るい役の方が似合うと思うぞ。

 

 


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キューティーハニー

 

 

永井豪原作で、知らない日本人はほとんどいないであろう人気アニメの実写映画版です。
監督は「エヴァンゲリオン」の庵野秀明ですが、あれみたいに難解な描写は全く無く、話はわりと脳天気気味に都合良く進みます。
そういう雰囲気はアニメと同じ感じで悪くはないのですが、ハニーの過去をちゃんと描いてないし、彼女が救出にこだわる宇津木博士の関係も伝わってこないなど、お話にはオイオイ!と突っ込みたくなる部分が多々あります。
なのにクライマックスは感動してしまいました。こんなもんにジーンと来てしまった自分がこっ恥ずかしくなり(でも周りからすすり泣きぽい声は聞こえた)ましたが、この世界が好きだから守る、という感じのシーンには特撮ヒーロー好きの僕は弱いのかもしれません。

ハニーの周りのキャラも、設定もアホっぽくて何じゃこりゃ?と思うのですが、このアホッぽさは映画の狙いかもしれません。でもそれにしては真面目な人間ドラマぽいシーンもあったりして、この作品はお気楽コメディなのか、ちゃんとしたドラマをやりたいのか、中途半端です。中盤でハニーがさまようシーンなんて、全く共感できませんでした。
ただ、主役のサトエリについては発声もちゃんとしてるし、それなりにアクションはできていて、ハニーに合っていると思います。

映画は「ハニメーション」と名付けられている、アニメの動きに実写をはめ込んだような手法をウリにしていますが、やはり違和感があります。アニメの見せ方を単に実写に置き換えてもムリなだけ、ということがよく分かります。
お話がお話だけに、映画には合成シーンが多いのですが、それらのシーンで画質がTVぽくなるのは気になりました。また、合成があれば納得できる絵面になるのに、それがないおかげで手抜きと思うシーンもあります。
ただ、浄瑠璃人形のようなスカーレットクローの動きなど、パンサークローの特撮シーンは楽しませてくれます。

ハニーの携帯の着信音は、ウルトラセブンが好きな人にはたまらないでしょう。こういうマニアックな笑いをとるのは庵野ぽい感じがします。

映画の冒頭にワーナーブラザースのロゴが出ます。製作がトワーニということで、海外公開もする予定なのでしょうが、これまでトワーニが作った「さくや」と「天使の牙」に比べればまだ、多少出来はいいと思います。

 

 


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がんばっていきまっしょい

 

 

1976年、愛媛県の伊予東高校に入学した悦子(田中麗奈)はボート部に入りたいと思っていたが、女子部はないと言われ、強引に作ってしまう。そして悦子はボートを漕ぐために必要な他4人を、新人戦が行われる10月までいればいいと説得して集め、練習を開始する。だが彼女たちは5人とも、運動部の経験も体力も無かった…。

この映画、いい作品という評判は聞いたものの、結局見ないままでしたが、「チルソクの夏」のYahooの掲示板でこの「がんばっていきまっしょい」の方が良かった、という書き込みがあったので、本当にそうなのか見てみました。

ボートにがんばる女子高生の話、と書くとスポ根ドラマみたいですが、この映画の最大の特徴は、お話がスポ根のような勝利へ向かうものではなく、高校2年間の生活の思い出、として描かれていることでしょう。友達との他愛ないおしゃべりや花火といった遊びのような、並のスポーツ映画だったらカットしてしまいそうなシーンが練習シーンと同じくらい大切に描かれています。
映画がそういう雰囲気なせいか、盛り上がるのはラストの試合くらいで、全体的に淡々とした感じの話になっています。制作には「シコふんじゃった」や「Shall We ダンス」を監督した周防正行氏が関わっていますが、そういう点が彼の監督した映画とまた違う独特な点でしょう。また、監督は「ボートをこぐ少女の美しさを撮りたかった」と言っていますから、話の盛り上げにはあまり関心を払わなかったかもしれません。
そんなお話の中でクライマックスは唯一盛り上がりますが、悦子が危機を脱出する描写はアニメの演出を連想してしまいました(ニュータイプ!)。
ラストの試合の結果は残念ですが、それがこのお話らしいところでしょう。泣くまでは至りませんでしたが、後味は爽やかです。

主演の田中麗奈は今でこそ有名な女優に出世しましたが、この映画が彼女のスクリーンデビュー作です。そのせいか演技が硬い感じはしますが、初々しさがあるし、渋谷にはいないと思えるちょっとドンくさい感じが、いかにもちょっと昔の地方の女子高生ぽく見えます。
他女子部員を演じる4人のキャストの中で、今有名であろう女優は「バレット・バレエ」に主演した真野きりなくらいでしょう。とはいえこの映画では、どの女子たちもそれらしい感じが出てハマっています。

しかしこの映画、Yahooの掲示板に書き込みをしていた人とは違い、僕にとってはやはり「チルソクの夏」の方が上の出来のように思いました。
「チルソクの夏」の中心である女の子は4人、「がんばっていきまっしょい」は5人です。多少の人数の違いはありますが、女の子たちのそれぞれの個性の描き方は「チルソクの夏」の方が丁寧です。「がんばっていきまっしょい」は悦子1人に偏った感じで、彼女以外の女の子は今一つ存在感が希薄です。
また主人公の家族についても、「がんばっていきまっしょい」での悦子の家族には「チルソクの夏」での郁子と父親の触れ合いのようなちゃんとしたエピソードもなく、やはり希薄です。
「がんばっていきまっしょい」は主人公たちの目標を試合にしていたので、どうしても練習風景などを出さなければならず、女の子たち自身や家庭環境の描写を割愛せざるを得なかったのでしょう。
「チルソクの夏」でも主人公たちは陸上というスポーツをしていましたが、彼らが記録にこだわる理由はないためキャラクター描写に時間をかけられた分、彼女たちに感情移入してしまい、それで「がんばっていきまっしょい」よりも泣けたのだと思います。

それでも「がんばっていきまっしょい」もなかなかいい映画です。 見た後も「キャッチ、ロー」や「スパート!」といったかけ声がしばらく耳に残りました。

 

 


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ほしのこえ

 

 

宇宙で異星人と戦う少女ミカコ、そして地球にいる、彼女が思いを寄せる同級生ノボル。2人の思いを携帯のメールでつづっていく、25分程度の長さの短編アニメです。
この作品は新海誠という人がほぼ一人で作り上げた、商業ベースではない、個人映画といえるもので、第1回新世紀東京国際アニメフェア21でグランプリを取りました。

宇宙を舞台にした戦争アニメなんて今やありふれています。しかしこの作品のように、キャラクターの「想い」そして「せつなさ」を強く出した映画は始めて見ました。
無理やり宇宙で戦いをしなければならなくなったミカコ。彼女の想いがメールというツールを使うことで効果的に語られます。また彼女が太陽系を離れていくことで、地球では一瞬で進む光の速さでも時間がかかってしまい、メールの送信時間が1年、そして8年と離れていく描写が彼女の切なさをいっそう強くします。宇宙という環境を上手く、しかもリアルに生かした描写です。
バス停やコンビニや雨の日や夕焼け…ミカコの「戻りたいよ…」という想いに、そういった日常の何気ない風景の大切さや愛おしさが良く出ています。そういうシーンの作画がまた凄くきれいで、実写以上の情感を抱いてしまいました。

宇宙怪獣と戦う宇宙艦隊、ロボット兵器、そして光速による地球との時間のずれ、という設定は「トップをねらえ!」を思わせます。また制服でロボット兵器に乗るミカコの姿は、コクピットのデザインと共に「エヴァンゲリオン」を思わせるし、モノローグが多いのも「エヴァ」ぽい感じがしました。
このように、この作品で過去のアニメ、特にガイナックス作品の影響は、アニメが好きな人なら誰もが指摘するところでしょう。でもこの作品はそういう類似を持ちながらも、独自の世界を築き上げています。なにより、この映画に漂うような情感を抱ける作品が、有名監督作品でない商業ベースのアニメで一体何本作られたでしょうか?思い出せません。

地上シーンのバス停に「さいたま」と書いてあるように、作品の舞台は郊外の都市を設定してるようです。主人公たちが使う携帯電話は今と変わらない形だし、コンビニや石炭ストーブなどが出てきているのに、お話の年代は2046年という、今より未来という設定はヘンと思いますが、今を生きる観客に日常の大切さを訴える意図としてはこれでいのでしょう。これはまあ、今住んでる地球とはちょっと違った歴史の、パラレルワールドと解釈すべきでしょう。

この作品のDVDの音声には2つのバージョンが収録されていて、1つはプロの声優による音声です。もう1つは当初作られたであろう、ノボルを新海監督自身が演じている音声で、ミカコの声もプロの人ではないのかもしれません。2つの音声を比べてみると、やはりプロのアフレコの方が発音がはっきりして聞き取りやすく、演技も上手いです。
しかし、音声の違うバージョンを1つのメディアで見れるというのは、DVDならではの面白さでしょう(今頃気づいてやんの)。
またこのDVDには、新海氏がこの「ほしのこえ」より前に作った5分ほどの短編「彼女と彼女の猫」も収録されています。これも日常の風景の愛おしさをモノローグでつづる作品で、SFではありませんが「ほしのこえ」と共通するテーマを感じます。

新海監督の次回作「雲のむこう、約束の場所」は、この「ほしのこえ」が評価されたせいか長編になるようで、声の出演が吉岡秀隆に萩原聖人(ヨン様!)と「ほしのこえ」以上に豪華になり、公開劇場もあのシネマライズだそうです。期待されている証拠でしょう。

 

 


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ジ ャ ン プ

 

 

三谷(原田泰造)は翌日九州出張を控え、恋人の南雲みはる(笛木優子)の部屋に泊まることになるが、酒に弱い三谷は立ち寄ったバーでついカクテルを飲んでしまい、歩くのもやっとの状態になってしまう。マンションの前まで来たみはるは急に「リンゴ買うの忘れてた」と言いだし、「5分で戻るから」とマンションを後にする。翌朝三谷はみはるの部屋で目を覚ますが、彼女が帰ってきた気配は無かった。三谷が出張から戻ってもみはるは帰っておらず、彼がみはるの会社に電話をかけてみると、彼女は長期休暇を取ったと聞かされる…。

愛する人がなぜ突然姿を消したのか?その謎がミステリーとして話に引きつけられました。
三谷は初めの方では、自己チューぽい男という描写がされています。映画で見ていると、こいつ自分しか可愛くないのか!と呆れますが、実際は僕らも気づかないだけで、同じ行動を取っているかもしれません。その意味では、この三谷というキャラクターを自分たちの反面教師にすべきでしょう。
そういう自己チュー的な男が、彼女の失踪の理由をたどっていくうちに、自分が彼女の何も知らなかったことに気づいていきます。この映画は単なるミステリーではなく、愛する人の失踪の行方をたどることで自分を見つめ直し、成長していく男の話といえるでしょう。

ただし、失踪の理由には「こんなことで姿を消してしまうの?」と、ピンと来ませんでした。前から溜まっていたものが吹き出た、とでも解釈しないと強引なように思いました。原作者も監督も男性なので、本当に女性がこういう状況で「ジャンプ」してしまうのか、今一つ信用できません。女性観客はみはるに共感するのかなあ?

みはるを演じる笛木優子は、韓国で「ユミン」という名前で有名になった女優だそうで、これが日本での映像メディアデビュー(テレビにも出てないだろうし)でしょう。清楚な雰囲気が好感を持てます。
原田泰造にとってはこの作品が初の映画主演作となるはずです。彼はテレビドラマにも結構出ていますが、ここまで合ってるキャラクターは始めて見ました。気が弱いというか、人(女性に限らず)に対して強引になれない、現代人の典型といえそうなキャラクターにピタリとハマっています。
でもこの三谷って奴、わりと幸福な男だと思うなあ。なんで「彼女」にあんなに好かれるんだろう?

 

 


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チルソクの夏

 

 

1977年の夏、下関の長府女子高校へ通う郁子(水谷妃里)と真理(上野樹里)、巴、玲子の4人の所属する陸上部が、韓国・釜山で開催される競技会に参加する。その試合中、郁子は同じ走り高跳びの選手である韓国人選手の安と仲良くなり、来年の七夕に開催される競技会での再会を約束する。やがて二人の文通が始まり、友人たちも応援するが、韓国人に偏見を持つ親たちはいい顔をしなかった。それは、安に受験勉強に身を入れてほしい彼の母親にとっても同じことだった…。

「半落ち」で日本中を泣かせた佐々部監督が、また泣かせてくれる映画を作りました。
今度は前作(正確には「チルソクの夏」の方が「半落ち」より早く出来ていた)のようなミステリーとは違う、純愛友情話です。舞台となる下関は佐々部監督の故郷だそうで、さらに彼がこの物語のシナリオを書き出したのは10年ほど前ということで、大ヒットした「半落ち」よりも、たぶんこちらの方が思い入れが強いのではないかと想像します。

「チルソクの夏」は「半落ち」ほど登場人物が多くなく、また絞られているせいか、キャラクターの描写は「半落ち」よりも丁寧でまた感動的で、この点ではこちらの方が上出来です。特にメインの4人の少女たちの友情には熱いものを感じます。また主人公郁子の父親を山本譲二が演じているのが異色ですが、流しというぴったりの役で、一見無理解に見えながら最後は決めてくれる、いい味を出しています。

安君が韓国人ということで、彼のセリフにはちょっとだけ政治的な話題が出てきて戸惑いましたが、これは今がどういう時代かということを言いたいゆえに入れたセリフなのでしょう。
映画の冒頭とラストは現在のシーンになります。このシーンが思い出の切なさと同時に、安のちょっとテーマめいたセリフを受けて、今が1977年に比べていい時代だと製作者が言っているように思えました。

 


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アップルシード

 

 

22世紀、世界が壊滅状態になった大戦を戦っていた女性兵士デュナン・ナッツは突然捕獲され、新造都市オリュンポスに連れて行かれる。そこで目覚めた彼女は戦場で行方不明となった恋人ブリアレオスと再会するが、その体を機械化した姿にデュナンは戸惑う。そしてデュナンを尾行する何者かの存在を皮切りに、彼女は理想都市オリュンポスの真の姿を見、またオリュンポスの将来に彼女が重大な関わりがあることを知る…。

「攻殻機動隊」で有名になった、士郎正宗原作のコミックのアニメ化です。
「アップルシード」は10年くらい前にもビデオアニメとして作られたことがありましたが、この頃は「攻殻機動隊」よりも「アップルシード」の方が有名だった記憶があります。そのせいか、今になってアニメ化というのは遅い感じがして、企画にはちょっと違和感を覚えます。
監督は「バブルガムクライシス」などメカものアニメに多く関わっている荒巻伸志氏で、製作に「ピンポン」を監督した曽利文彦氏(監督よりも彼の名前がクローズアップされているので、曽利氏が監督と思っている人が多いのでは)が当たっています。2人とも30代のようで、たぶん若い頃に夢中になったコミックをアニメにしたくて、ようやくその念願がかなったというところでしょう。

この映画のウリは、絵を全編3DCGで作成していることでしょう。今のアニメではメカや背景を3DCGで作成するのは珍しくありませんが、キャラクターに関しては大方の作品が2Dのセルアニメで表現されています。「アップルシード」のようにキャラクターの作画にも3DCGを使用するケースは、プレイステーションなどのゲームでは何本かありますが、映画、少なくとも全国規模で公開の劇場用映画では初めてのケースでしょう。
キャラクターの動きの作成にはモーションキャプチャーを使っていて、デュナンやブレアリオスなどメインキャラにはちゃんと専門の俳優を使って動きをつけています。デュナンの動きを演じたのは「死びとの恋わずらい」「さよなら、クロ」などで名演技を見せた三輪明日美で、久々に名前を見たと思ったらこんな仕事をやってたのは意外でした。
この映画ではキャラの動きだけでなく表情もキャプチャーしていて、デュナンの表情を演じたのは、その声も演じている小林愛だそうです。「ファイナルファンタジー」もそうだったし、3DCGでキャラを作る場合はモーションキャプチャーを使う方が動きを作りやすいのでしょう。ただ表情までもキャプチャーした例は聞いたことが無くて、驚きました。
こういう作業を経てできたキャラクターは、表情はそれなりに豊かだけど、手間がかかってる割には硬い感じがしました。どちらかといえば、まだ手描きの方が違和感が少ないように思います。
しかしこの映画が作られたことで、今後はアニメのキャラクター作成は手描きと、こういう3DCGを使う方向に分かれていくことでしょう。今は制作費が高額でも、いづれ3DCGの方が時間とお金がかからなくなるでしょうし、描き方も発達してもっと良くなってくることと思います。

アニメのメカに関してはCGの使用は今や当たり前ですが、監督の荒巻氏は「機甲創世記モスピーダ」「ガサラギ」など、前からメカ物に関わってきた人のせいか見せ方を心得ていて、それなりの迫力を見せてくれます。

お話に関しては、中盤で眠気を感じた箇所がありましたが、後半で都市の秘密が明らかになってくるあたりから面白くなってきます。クライマックスのデュナンの叫びは、ちょっと燃えました。

 

 


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CASSHERN

 

 

70年代に放送されて好評を博したTVアニメ「新造人間キャシャーン」の実写化です。同じタツノコプロが手がけた「科学忍者隊ガッチャマン」ほどではないにしろ、今なお「キャシャーン」の人気は高く、この映画を手がけた紀里谷監督もそれに魅せられた一人だったようです。
紀里谷監督は今や奥さんとなった宇多田ヒカルのミュージックビデオやCDジャケットなど、ビジュアル面の仕事が目立つような印象があるのですが、この「CASSHERN」でまず目に付くのはそのビジュアルのこだわりでしょう。
映画はCGを多用していますが、単に3Dを使うだけではなく、ほとんどのシーンを色を落としたような画質、あるいは白黒やセピアなど単色のシーンにしています。「セブン」などデビッド・フィンチャーの映画や「火山高」など、外国映画ではこういう手法は珍しくありませんが、日本映画にはあまり見られない色使いです。
またそこで描かれる世界観は「天空の城ラピュタ」や「風の谷のナウシカ」といった宮崎アニメのファンタジー世界や、「1984」そして「新世紀エヴァンゲリオン」などの影響が感じられるし、ちょっと前に公開された「イノセンス」と同じような感覚も見受けられます。ただ東洋志向が強く出ている「イノセンス」に比べると、「CASSHERN」は「メトロポリス」に見られるようなバウハウス的な指向が強いようで、そこから「日本が占領した近未来のソビエト」といったイメージがかもし出されたのは面白いセンスです。
また予告でも一部出してるとおり、中盤でのキャシャーンの戦闘シーンはアニメに結構忠実に描いていて、これは平面も立体もこなせるCGならではの表現でしょう。
このシーンを始め、キャラクターの名前などは原典のアニメに忠実になっていて、ブレンダーも登場します

しかしお話は、アニメ版とかなり違ったものになっています。紀里谷監督は映画のテーマとして「人はなぜ戦うのか」ということを挙げていて、話の舞台はテロ戦争が頻発する世界に設定されています。現在のイラクやイスラエルの状況を憂うような世界観ですが、こういうテーマに取り組むことは、世界の状況に無関心な作品が多いであろう日本映画では評価していいかもしれません。
しかしこの映画の最大の問題点は、そのテーマが空回りしてしまっていることでしょう。なにより、テーマをセリフで語ってしまっていることが一番ダメな点で、映画ならビジュアルやお話を通してテーマを語るべきでした。このテーマを語るシーンはクライマックスの前だというのに、そこだけ退屈で、浮いた感じを受けました。
またテーマのゆえか、ストーリーはかなり暗い展開になっています。僕はオリジナルのアニメをあまりまともには見ていなのですが、ここまで話を変える必要があったのか?と思います。
加えてこの映画には「どうしてこうなる?」と突っ込みを入れたくなるシーンが結構あります。特にラストの展開は「何で?」の連続で、都合良過ぎて見えました。

ラストが「何で?」という作品といえば「新世紀エヴァンゲリオン」がありましたが、この映画はそれを思わせる箇所が他にもいくつかありました。
アニメ版「キャシャーン」の設定は機械対人間でしたが、映画は新造人間対新造人間、あるいは新造人間対人間という形です。そして(うろ覚えですが)「エヴァンゲリオン」でもエヴァンゲリオンは敵である使徒のテクノロジーから作られていたと思います。
また映画では戦死した鉄也を父親がキャシャーン(と名乗るのはだいぶ後ですが)にしてしまいますが、「エヴァ」でも碇博士が息子シンジをエヴァンゲリオンに乗せてしまう、という設定も似ています。そしてこの、主人公鉄也と父親である東博士との関係も、ラストの東博士の行動のおかげで「エヴァ」と似ているように思えました。でも演じている寺尾聡はどうしてもいい人のイメージが付きまとうので、ラストの行動は意外すぎて戸惑います。

予告編ではアニメでの決めゼリフ「キャシャーンがやらねば誰がやる」を使っていましたが、映画のキャシャーンはアニメ版と違い、主人公自ら志願したわけではないせいか、映画ではこのセリフは出てきません。
しかしどうせならこの映画、このセリフが生きるような、オリジナルのアニメを忠実にリメイクした方がもっと面白くなったかもしれません。
紀里谷氏はこの映画が初監督作品ということで、気負いすぎたように思います。もうちょっと彼に好意的に考えるならば、初めはこの作品を低予算で考えていたものが、松竹など大会社が関わってしまったことで、大きなテーマを掲げなくてはならなくなり、当初の形から変質してしまったのかもしれません。
紀里谷監督はどこかの映画雑誌のインタビューで、この作品がビジュアルだけの映画と見られるだろうから、ストーリーはちゃんとしたものにする、というような発言をしていました。確かに予想よりは中身がありましたが、盛り込みすぎてかえって失敗してしまったと言えそうです。

 

 


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クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶ!
夕陽のカスカベボーイズ

 

 

今回の「クレヨンしんちゃん」は西部劇です。しかし前にあった戦国時代ものみたいにタイムスリップするのではなく、のはら一家とかすかべ防衛隊のメンバーが、西部劇の映画に入り込んでしまいます。
映画に入り込む話といえばウッディ・アレンの「カイロの紫のバラ」があったし、ファンタジーネタのテレビドラマでも過去にそういう話があったはずで、ネタとしてはそう目新しいものではありません。しかしこの映画で描かれる、映画世界の脱出方法は映画ということを上手く生かし、かつちょっと聞いたことがないやり方で、感心しました。

映画世界に入ってしまったしんちゃんたちは春日部にいた記憶を徐々に無くしていきます。こういう展開のおかげで中盤あたりはちょっと重苦しい雰囲気になりますが、後半からは脱出に向けて怒涛の展開になります。そこからは、かすかべ防衛隊の活躍にドキドキハラハラ、そして大声援を送りたくなるような燃えまくりになり、大いにエキサイトしました。
またかすかべ防衛隊の援護に、ある有名映画のキャラクターが出演しますが、彼らの登場には映画ファン、特に西部劇ファンには感涙モノでしょう。なかなかマニアックですが、さらに演じる声優までもTV放映版と同じ(たぶん)大御所声優の起用と言うこだわりはいつもの「しんちゃん」通りで感心します。
今回僕には「泣き」はありませんでしたが、人によっては泣けるかもしれません。ともかく熱く!燃えられる映画です。去年よりはずっと面白い話に大満足でした!

 

 


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花 と 蛇

 

 

過去に何度か映像化されている、SMの名作(読んだことは無いけれど)という団鬼六の原作を、離婚してかえって人気が出たという杉本彩を主演で撮った作品です。
この映画の一番のウリは、単に杉本彩が脱ぐだけではなく、吊るされたり、蝋を垂らされたりといった普通の女優ならやらないようなハードな行為を、体を張って演じていることでしょう。
確かに彼女は、こういうきつそうな行為を本当にやっているようで、がんばっています。そういう彼女のHシーンはなかなかエロいし、きれいでかわいく撮られています。杉本彩のファンがいるのかどうか知りませんが、いるなら必見の作品でしょう。

しかしこの作品を映画として見るならば、失敗作です。
この映画のお話で一番肝心な点は、杉本彩演じる静子の心の動きでしょう。世界的なタンゴダンサーで夫とセックスレスと言う設定の彼女は、冒頭で性的な夢を見ることから、セックスへの欲求不満があるように解釈できます。
映画はこの後、おそらく静子の性的願望の目覚め、というものを描くべきなのでしょう。しかし実際作られたものには、そういう彼女の心の動きや葛藤が全く見えず、ただ彼女への責めが繰り返されるだけです。なのでラストの彼女の行動は、何故なのかワケが分かりませんでした。
監督の石井隆は以前「黒の天使」を作りましたが、これはアクション以外は見るところの無い映画でした。今回もそれと同じパターンといっていいでしょう。

結局この作品は、映画というより、ただのSMショーと言った方が合ってるかもしれません。静子の夫役で出ている野村宏伸も、今回はただのAV男優になり下がっています。

 

 


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ク イ ー ル

 

 

まだ見ていない人

水戸レン(名取祐子)の家に5匹の子犬が誕生した。レンは犬たちを盲導犬にしたいと熱望し、訓練士の和多田(椎名桔平)が電話でアドバイスした、ちょっとしたテストに1匹が合格し、パピーウォーカーの仁井夫妻(香川照之、寺島しのぶ)に預けられる。その犬は鳥が羽根を広げたような模様を持っていることで「クイール(鳥の羽)」と名づけられる。二人の愛情に育まれたクイールは1歳になり、仁井夫妻と別れて訓練センターに入る。だが和多田はクイールの訓練をしていくうち、盲導犬としての適性に疑問を持っていく…。

ベストセラーとなった「盲導犬クイールの一生」の映画化で、タイトル通り、クイールの生誕からその死までを描く物語です。
宣伝では「感動」を前面に出していて、「泣き」をウリにしています。その泣かせの演出はスタンダードですが、しっかりやられてしまいました。これまでの崔監督の映画は「花のあすか組!」にしても「月はどっちに出ている」にしても面白いと思えなかったのですが、初めてまともに楽しめました。設定やストーリーが奇をてらってないからかな。
この作品が感動させてくれる大きな要因は、わんこと人間の無償の忠誠でしょう。こういう、利害のない友愛関係というのは、「ロード・オブ ザ・リング」での旅の仲間なんかもそういう関係ではないでしょうか。「クイール」と「ロード・オブ ザ・リング」のヒットの理由の根幹は、意外に同じものかもしれません。

仁井夫婦には子供はいないようです。あの年の夫婦なら子供がいて当然でしょうに、何でわんこに一生懸命なんだろう?と疑問になりました。たぶん、何らかの理由で子供ができなくてパピーウォーカーになったと推測できますが、そういった、キャラの背景をもう少し描くともっと話がしっくりしたと思います。 水戸レンが自分の子犬を盲導犬にしたがる理由も分からんし。

今のところ、一応健常者の自分は盲導犬を見たことはありません。でもこの映画を見ると、主人が自分勝手に歩かない、など盲導犬にも扱い方があり、それなりに大変だということが分かります。盲導犬に対する正しい?知識のお勉強にもなる作品です。

 

 

すでに見た人

クーと渡辺 (小林薫)との最後の再会からの死までの間、クーが何をしていたのか、ろくに語られないのが気になりました。ちょっとはしょりすぎな感じがして、渡辺との別れで映画を終えてもよかったように思います。ただ、もしそうしてしまうと、「クイールの一生」という原作のタイトルとは違うことになるかもしれませんが。

 

 


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花とアリス

 

 

ハナ(鈴木杏)とアリス(蒼井優)は幼なじみの親友。そんなハナは、以前電車で見そめた宮本が同じ高校に通っていることを知り、彼の所属する落語研究会に入部する。さらに宮本を尾行したハナは、彼が事故で倒れるのを目撃したのをいいことに、宮本に記憶喪失になったと言いくるめ、自分が宮本の彼女だとウソをつく。さらにハナはアリスに頼み込み、彼女を宮本の元カノに仕立てるが、宮本はアリスが気になってしまう…。

「スワロウテイル」や「リリイ・シュシュのすべて」など、僕にとってはこのところ不作気味に思える、岩井俊二監督の作品です。一見ラブストーリーに思える内容ですが実は、恋より友情の物語です。
鈴木杏は「リターナー」など、気の強い女の子の役が似合いますが、この作品ではその気の強さが歪んだ方向にうまく出て、彼氏をつなぎとめようとする暴走ぶりが笑えます。
また変なキャラクターも次々と出てくるので、そういったキャラや、ハナの暴走に突っ込みを入れながら見ると、楽しい映画です。

また後半での、アリスがバレエで踊るシーンは引き込まれました。ここは物語の上ではそう重要なシーンとは思えないのですが、とても美しく盛り上がるシーンです。
今回は映像だけでなく話も面白く、「リリイ・シュシュのすべて」みたいに不快にもなりませんでした。僕にとっては「Love Letter」以来初めて、岩井監督の映画で好きと言える作品です。

「リリイ・シュシュのすべて」と同様、岩井監督は今回も(たぶん同機種の)デジタルカメラを使っていますが、映像を雰囲気が出るように加工していて、ちゃんと効果が出ていると思います。

 

 


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ご め ん

 

 

京都に住む中学生の少女に恋をした、大阪の小六の男子。年上女性との遠距離恋愛?のお話です。

特に男性で、失恋した後、その相手の女性に親切にされた時、そっけない対応をしてしまって自己嫌悪に陥った、なんてことがある人なら、この主人公の気持ちがよく理解できるのではないでしょうか。 恋の「痛み」を、これほどちゃんと描いた作品は初めて見ました。
しかし男に比べて、やはり女はタフなもんですな。

ちょっとHでえげつない、映画の冒頭は笑ってしまいました。主人公を演じる男の子は恥ずかしかったろうと思いますが、よくやりました。

監督の次回作はあの「鉄人28号」です。この「ごめん」から察すると、主人公であろう正太郎(「ラスト・サムライ」の少年)の描写はそれなりに良くなるように思いますが、ウリとなるロボット戦はどうなんでしょう?メカ描写は抑えて少年のドラマに徹した方が、監督の持ち味が出そうに思うなあ。

 

 


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あのオウム真理教に、地下鉄サリン事件から1年後に密着取材したドキュメンタリーです。
この作品は当初テレビ用として撮られたそうですが、オウムを悪と見せようとするプロデューサーと監督の森氏が対立し、放映中止になったため、森氏が取材を続行させ、劇場公開という運びになったようです。
確かにこの映画、一見オウム寄りに見えますが、その姿勢はかなり中立で、森監督はオウムをただ、ありのままに見ようと努めている姿勢がうかがえます。
映画ではオウム信者の素顔や、撮影の手順をめぐっていがみあうカメラマンたち等、マスコミの報道ではまず、絶対に出さないであろう数々の事象が見れ、その意味で必見!の作品です。

中でも僕が最もインパクトを感じたシーンは、公安警察が路上でオウム信者を不当逮捕する場面でした。道端で私服の警察のオヤジたちが信者を歩けないように通せんぼをして塞ぎ、それを突破した一人の信者を追いかけ、突き飛ばして倒し、カメラが自分を写してると知るや警察のオヤジはいきなり「イテテ!」と自分で倒れこみ、彼の同僚の警察官は、オヤジに突き飛ばされてうずくまっている信者を「何てことするんだ!」と言って逮捕します。
オウムの危機はもはや無いも同然でしょうが、自分が今後の人生で警察に罪に陥れられることがないとは言えません。別に反権力的なことを企んではいないけど、痴漢のようにある日突然、犯罪者に仕立てられることもありえるかもしれません。そんなことを思うと、この出来事は完全に自分と無縁とは思えず、その意味で警察がいかに罪を犯していない人を犯罪者に仕立て上げていくのかが分かる、非常に興味深いシーンでした。

映画はオウムを善悪で描いてはいません。これを見るとやはり、信者一人一人は悪とは言い難い印象を持ちます。自分が起こしていない犯罪を詰問される彼らの姿には哀れにさえ思えてきます。
彼らを警戒する住民の気持ちも分からないことはないけど、信者を問い詰める彼らの姿には、「あんたがそれを言われる立場ならどうよ?」と突っ込みを入れたくなりました。結局人って、自分勝手なことしか言えないんだよね。

思うに、オウムとは現代社会で居場所を無くした人々が、逃避として選んだ場所なのだと思います。僕らがテレビを見て「オウムなんか潰しちまえばいーんだよ。」なんて排他的なことを言っている限り、信者たちみたいな人たちも、団体も(オウムでなくても)無くならないのでしょう。

この作品には英語字幕版が存在するそうで、このオリジナル版にないシーンが付け加えられているそうです。見たいぞ。

 

 


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A 2

 

 

「A」の取材から数年後の'99年、「アレフ」に改名した元オウム真理教を追跡取材したドキュメンタリーです。今回もまた、普段のマスコミでは絶対見せないであろうシーンが多々出てきて、非常に面白い内容に仕上がっています。

地下鉄サリン事件、そして教祖の逮捕から数年が経ったからでしょうか、一部かもしれませんが、映画を見ると教団も反対運動も俗化してきてるように見えます。オウムはストイックでなくなってきてるようで、キティちゃんのストラップを持つ女性信者や性欲を語る信者がいるなど、前作以上に普通ぽい感じの人が出ていて驚かされました。
オウムに反対する住民の方も、敵であるはずの信者と食事をしたり、反対運動が終わるとオウムの本を求めたり、ずいぶん仲良しになっているのには驚きました。でもこれって、どこか日本人的な光景のようにも思えます。
中盤に登場する、オウムの反対を訴える右翼団体のおっちゃんたちもかなり紳士的で、インタビューに心情を切々と訴えるシーンはちょっと哀れでした。オウムであれ右翼であれ、直接接触しなければ本当の彼らは見えてこないだろうし、信者と馴れ合いに見える反対運動の人たちも、信者と接触したことで本当の彼らを知り、警戒心を解いたのでしょう。

そう思うと、後半で出てくる新たな反対運動のシーンは、そういった和解的シーンのアンチテーゼのように見えます。オウム反対を叫びながら、信者が「話を聞きますよ」と招き入れようとすると拒否して、外から拡声器で反対を叫ぶだけの住民たち…これが普通一般人の姿かもしれません。

この作品を見た人には、監督の森氏が2002年に「週刊朝日」に連載していた「オウムから見える日本」を読むことをお勧めします。「A」や「A2」の取材の裏話でいかに日本のマスコミが頼りないかが暴露されている(代表の荒木氏に直接取材を申し込んだのは、星の数ほどあるマスコミの中で森氏ただ一人だったそうだ!)し、映画ではあまりはっきりと語られていない、森氏の主張も分かります。

 

 


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聖闘士星矢
天界編・序奏
〜overture〜

 

 

「聖闘士星矢」は15年くらい前に少年ジャンプに連載され、アニメ化されて人気になりましたが、「マクロス」や「キャプテン・ハーロック」など昨今の懐かしアニメの復活にもれず、これもTV版の続編の形で「冥王 ハーデス十二宮編」がビデオシリーズとして作られました。
今回の「天界編」はこの「ハーデス十二宮編」の続編となる新たな物語で、今度は聖矢たちが天界の神々と戦うことになります。

映画のしょっぱなの星矢は車椅子に座って動かない、抜け殻のような状態になっています。前の「ハーデス十二宮編」での戦いの結果なんでしょうが、映画ではそのことは全く説明されません。なのでこの作品は、「ハーデス十二宮編」のビデオを見ていた人向け、というべきでしょう。ビデオを見ていない人は、星矢が何でそうなってしまったのか?という疑問は考えてはいけません。

過去の「聖闘士星矢」の映画版では、星矢たちブロンズ聖闘士がだんだん強くなり、最後にゴールドクロスを着けて敵を蹴散らす、というカタルシスがありましたが、今回はそういう爽快さがほとんどありません。特に星矢は主人公のクセに、かっこいい活躍をあまり見せません。
それは今回の映画が、「星矢復活編」というべき話で、抜け殻になっていた星矢がいかに力を取り戻すか、というのが主要な話だからでしょう。でもそういう筋のおかげか、今回の星矢はぜんぜん強くならず、クロスもほとんど着けません。戦闘シーンも同じようなパターンばかりで退屈し、映画は1時間半くらいの短さなのに、寝てしまいました。「聖闘士星矢」の劇場版に関してはだいたい見ましたが、寝たのは初めてです。

星矢以外のブロンズ聖闘士では、一輝と瞬にはそれなりにかっこいいシーンありますが、氷河と紫龍があまり出てこないのは不平等に思いました。
ま、今回は「overture」のサブタイトル通り、ラストは「続く」という形で終わり、ビデオシリーズの第1話と思った方がいい作品です。なので氷河と紫龍に関しては、後のエピソードで彼らをクローズアップする話をやるかもしれません。

でも僕はたぶん、もうこの後は見ないな。

 

 


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跋扈妖怪伝
牙 吉

 

 

かつて人間たちに滅ぼされた犬神族の生き残りである、牙吉(原田龍二)は各地を放浪している。彼が偶然迷い込んだ宿場町は、妖怪たちが人間に迫害されることなく暮らしていて、それはこの町の頭領である鬼蔵が領主からお目こぼしを受けているからだった。牙吉はそんな人間たちを警戒しつつ、宿に留まることにするが、領主の側近たちは最新のガトリングガンで、妖怪たちを一掃しようと企んでいた…。

「さくや・妖怪伝」の原口智生監督が再び作った、妖怪アクション映画です。その「さくや」は中味が今一つでしたが、今回の「牙吉」も同様で、お話自体は単純なのに何をしたいのか分かりにくく、退屈しました。

また「さくや」はウリである特撮もそんなに良くは思いませんでしたが、今回はそれより低予算のせいか、さらにチープなものになっています。ワイヤーが見えるなんて、デジタルで簡単に消せる今、お笑いでしかありません。
牙吉の変身シーンはまるで「ハウリング」のコピーと思ってしまうような、モデルを使ったアナログなシーンです。こういうシーンをマニアは低予算ながらよくやった、とか、アナログチックな良さを追求している、などと誉めるのかもしれませんが、先のワイヤーと同様、いまやCGを使えばリアルな表現が出来る時代に、こんなシーンを見せられてもチャチとしか思えません。
ましてこれが学生映画ならともかく、ちゃんとした劇場で1800円取って見せる作品でこんな安っぽい仕事を見せるなんて、この映画の製作者はプロなのか疑問に思います。原口智生はかなり前から特殊メイクのプロみたいに言われていましたが、「陰陽師」でもミニチュアは良くなかったし、本当に才能あるのか?と疑いたくなります。

牙吉の故郷は、人々が顔に絵の具を塗っていてダンスをしているという、アイヌかネイティブアメリカンを思わせるイメージで描かれますが、彼らが人間たちに迫害されるシーンもネイティブアメリカンの虐殺を連想します。こういった、妖怪たちの運命を少数民族に置き換えたようなシーンはちょっと面白いところでした。
また、敵の衣装が和服ながらも、レザーの洋装ぽいデザインなのは和洋折衷の面白い表現です。

 

 


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ゼブラーマン

 

 

市川新市(哀川翔)は小学校の教師。妻は浮気、娘(市川由衣)は援助交際、息子はイジメられているメチャクチャな家庭環境。そんな新市には子供の頃に夢中になった特撮番組「ゼブラーマン」のコスチュームを作るのが唯一の安息の時間だった。そしてゼブラーマンのコスチュームが完成した日、誘惑に負けた新市はそれを着てしまい、恥ずかしさから人に見られないように夜道を恐る恐る歩いているところで、近所を騒がせている殺人犯「カニ男」(柄本明)に会ってしまう。だが彼の体は、カニ男の襲撃を信じられないような身軽さでかわした…。

Vシネの帝王?哀川翔の、主演100本めというこの作品は、彼が多く演じるヤクザ物ではない、意表を付いた設定になりました。
新市がかって憧れた「ゼブラーマン」のコスプレをする…と、一見ヒーロー物のパロディに思える作品ですが、ゼブラーマンが強く進化していったり、そのきっかけが子供だったりと、実はヒーロー物の王道をいく物語になっています。ゼブラーマンが急に身軽に動けたりなど、都合いい展開も結構出てはきますが、ヒーロー物の通例ということでOKでしょう。
強大になる敵に立ち向かうゼブラーマンにクライマックスは大いに盛り上がり、彼を応援し、そして泣けました。三池崇史監督の映画ではもしかしたら初めて、いいと思える映画に出会いました。

哀川翔は、初めのうちは声が高めなのが気になりましたが、話が進むうちに慣れました。今回は大真面目にヒーローを熱演していて、目線をゆっくりと上げるいつもの?ポーズが物語に合っています。
当初はゼブラーマンの敵か味方か不明の、自衛隊の調査員を演じる渡部篤郎は「ケイゾク」の時と変わらないようなキャラクターになっていますが、存在が映画の世界にぴたりとハマっています。彼は変身しないからヒーローではないけど、彼を主役にした「Xファイル」みたいな感じの話を見てみたくなりました。

「ゼブラーマン」は昔のTV番組という設定ですが、その映像に渡洋史や水木一郎を起用しているのは、僕のようにかってヒーロー物に熱中した人間のツボを上手く突いてます。「ゼブラーマン」のオフィシャルサイトには「昔の『ゼブラーマン』のHP」という設定のHPがありますが、これもそれらしくできていて感心します。

ゼブラーマンの助っ人、ゼブラナースは胸の谷間がなかなかセクシーで、ちょこっとしか出てこないのが残念です。ここまで色っぽい特撮ヒロインはこれまでのヒーロー番組ではいなかったはずで、映画ならではでしょう。
映画ならではといえば、中で子供が暴れるシーンが出てきますが、これも子供への悪影響を考えると、テレビではできないシーンでしょう。
今回は怪人もパロディぽい奴らが出てきますが、「貞子怪人」(勝手に名前を付けました)は笑えました。ちゃんと井戸が出てくるのが最高!

 

 


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