記録的な大ヒットになってたくさんの人が見ているでしょうが、映画には「これまでのあらすじ」といった部分は無く、一旦終了したTVアニメシリーズの「続き」になっています。なのでこの映画が「鬼滅」シリーズの初見の人であれば、主人公・竈門炭治郎に関する基本設定は知っておくべきでしょう。とはいえ今回の話でメインで活躍するキャラは師匠格の煉獄杏寿郎だし、彼らが見る「夢」でそれなりに設定は薄々分かるように作られてはいます。
「夢で殺す」ネタは映画だと「エルム街の悪夢」などこれまでにもありましたが、「インセプション」を思わせる描写が今ぽい感じがします。ただこの「夢」のシーンは、特に炭治郎の夢は同じようなシーンが続くせいか、いささか長く感じてしまいました。
「鬼滅の刃」のウリは戦闘シーンだと思うので、早く戦わないかな…と思ってしまいました。その戦闘シーンは期待通り、TVアニメと同様のスピード感とカッコよさで、これだけを見るために劇場に行く価値はあるでしょう。
映画が劇場公開される前は、登場する「鬼」は魘夢だけしかアナウンスされていませんでしたが、公開後は「鬼」はもう一人、猗窩座が登場することがバラされました。この猗窩座のシーンが映画の本当のクライマックスで、煉獄さんとの戦闘シーンは特に凄まじいものでした。
映画の後半にはウルッとくるシーンはありますが、終わりは苦いものがあります。TVか映画かは分かりませんが、続編は作らねばいかんでしょう。
「鬼滅の刃」は「少年ジャンプ」で連載されていましたが、やはり「努力・友情・勝利」のセオリーを踏んでいて、令和の世になってもこのパターンがウケるのは変わらないようです。戦闘時の「熱さ」も人気の一因でしょう。
今回の主人公といえる煉獄杏寿郎は過去が描かれますが、彼にしても炭治郎にしても、「愛された記憶」がヒーローを作るのでしょう。
煉獄さんの過去は描かれますが、魘夢や猗窩座の過去は映画では描かれません。「鬼滅の刃」のいい部分は、敵が鬼になった事情を描いている(それも感動的に)ところですが、今回の鬼に関してはそういうシーンはありませんでした。話のテンポを重視したゆえと想像しますが、物足りない感じはします。