ロード　オブ・ザ　リング
二つの塔

旅の仲間と離れ離れになり、サムと共に指輪を捨てるべく滅びの山を目指すフロド（イライジャ・ウッド）は、怪物バルログと戦い行方不明になったガンダルフ（イアン・マッケラン）の夢を見る。そんな時、彼らは自分たちの後を追う者を捕まえるが、それは以前の指輪の持ち主、ゴラムだった。フロドは反対するサムを押し切り、ゴラムに滅びの山まで案内をさせる。一方、ウルク＝ハイにさらわれたピピンとメリーは彼らの急いでる様子から、仲間が後を追っていると察して途中でわざとピンを落とす。２人の後を追うアラゴルン（ヴィゴ・モーテンセン）、レゴラス、ギムリは落ちていたピンを見つけるが、彼らがピピンたちに追いつく前に、ウルク＝ハイたちが夜営をしているところに何者かが襲撃をかけてきて、２人は命からがら森の中に逃げ込む。その少し後、アラゴルンたちはローハン国の王、セオデンに追放された忠臣エオメルの軍に会い、彼らがウルク＝ハイの一団を襲撃し、１人残らず殺したと聞く。３人はその現場に着き、ピピンとメリーの痕跡を探して森の中に入るが、そこで死んだと思っていたガンダルフと再会する。そして森深く入ったピピンとメリーたちにも思わぬ出会いがあった…。

年１作公開予定で作られている、「ロード　オブ・ザ　リング」３部作の第２部です。
前作は長さが感じられて眠気を催してしまいました。今回も映画全体の時間は前作とほぼ同じなものの、眠気は覚えず、全体的に前作より楽しめました。
今回は「旅の仲間」が分かれて行動することになりますが、そのおかげで各キャラの描写に深みが出たのが、面白くなった一番の要因でしょう。前作では主人公であるフロドや、ガンダルフやアラゴルンといった知恵者や戦闘のプロがリーダー格になり目立ってしまったため、フロド以外のホビットたち、サム、ピピンとメリーたちの印象が薄くなり、何のためにいるのか分かりませんでした。しかし今回は、彼ら自身も決断を迫られる局面が出てくることで映画の中で役割を持ち、存在感が増しています（その分フロドは前作より影が薄くなりました）。特にフロドに付いて行動しているサムが、フロドの意識を指輪から遠ざけるための重要なキャラになり、まさに「あなたを、たった一人で行かせはしない」という宣伝コピー通りの活躍をします。

また今回は、クライマックスに大規模な戦闘シーンが展開するのも面白さの要因でしょう。このヘルム渓谷での戦闘は大掛かりなエキストラとＣＧを組み合わせて、ファンタジー映画史上初といっていい、スペクタクルな剣戦シーンを見せてくれます。そして規模がでかいだけでなく、戦闘の過程を丁寧に描くことで歴史劇を見ているようなリアリティーが感じられるし、数の上で敵に圧倒されているアラゴルンたちローハン軍が、知恵を絞って戦うことで戦闘方法にバリエーションが出て、延々と続く戦闘シーンを単調に見せないのも上手いところです。

今回は新しいキャラクターが何人か登場します。中でも指輪の前の持ち主で、その指輪を再び奪おうとフロドたちを付け狙うゴラムには大きく比重が置かれ、フロドよりも目立っています。フロドがゴラムに、指輪に取り込まれてしまった時の自分の末路を見るというのが上手い絡め方で、多重人格を思わせるミステリアスなキャラというのが今後のどんなトラブルを起こすのか、楽しみなところです。
ゴラムはＣＧで作られていますが、役者の表情をモーションキャプチャーで取り込んで作っただけに感情表現が豊かで、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」に出てきたドビーに匹敵する、素晴らしいクオリティで描写されています。

前回はモロに「続く」という形で終わって消化不良に感じたのですが、今回は映画内のエピソードに一応の決着がついて終了する、終わりらしい終わり方（全てがそうではないけど）であるのも好感が持てたところで、続編が早く見たくなりました。

今回と比較すると、前作はまさに設定紹介編というべき作品でしょう。とはいえこの「二つの塔」には、前作の紹介といったシーンなど無いので、前作を知らなければ舞台設定や人間関係は理解できないし、サムがフロドに献身的になる点など、前作にあった行動が伏線になっているエピソードもあるので、前作を押さえておく必要はあります。

アラゴルンたちのグループの中では、特にギムリが前作より目立ってきているのが良いところですが、彼らが途中からホビットたちのことを口にしなくなるので、指輪を捨てる、という旅の目的を忘れたように見えました。パンフの文で荒俣氏が、彼らが悪をフロドたちの方に行かないよう、引き付けるためにローハンに留まった、と解釈していましたが、そうならはっきり語って欲しかったと思います。
そのパンフは７００円ですが、メイキングの記事やスタッフやキャストのインタビューもちゃんとあって、中味がスッカラカンだった「ハリー・ポッター」なんぞに比べると遥かに充実しています。特に｢攻殻機動隊｣や「アヴァロン」の監督・押井守が原稿を書いているのは珍しいことでしょう（しかも誉めてるし）。

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