マトリックス
リローデッド

いつの間にか３部作完結の予定となっている「マトリックス」サーガの２作目です。
アクション監督は前作のユアン・ウー・ピンが続投で、どのシーンもかっこよく見せており、スタイリッシュな美しさがあります。ただ１作目のようなイメージの斬新さはあまり感じられませんでした。
しかしアクションの規模と迫力（たぶん長さも）は前作以上になっています。今回はアクションのためにフリーウェイまでも作ってしまったそうですが、その中盤でのフリーウェイで繰り広げられるカーアクションと格闘は、とてもロケでは不可能に思え、スタッフの「公道を使うより安上がり」という言葉には納得でした。このシーンだけで映画１本分くらいの金はかかっていると思いますが、これだけでも劇場に見に行く価値はあります。
それでも今回はまだ局地戦のレベルらしく、本格的な人間対マシンの大規模戦闘は次回のお楽しみのようで、今回はクライマックスになると予想される第３作「レボリューションズ」の、序章といった感じの話です。

前作では、死んだはずの主人公ネオが復活するのは都合いいように思いましたが、今回はその理由（でもやっぱり都合よすぎ）と共に、ネオの出生の秘密が明らかになるのが見どころでしょう。途中で予想はついてしまいますが、
この「秘密」は、かなり前にアニメ映画化された竹宮恵子のコミック「地球へ…」を連想しました。このコミックがアメリカで出版されたかどうかは知りませんが、日本のコミックが好きだと言う監督のウォシャウスキー兄弟が、インスパイアを受けたということもありえないことはないかもしれません。
ただ、これに関連するシーンは語りのシーンが多く、他のシーンでアクションが派手な分、地味というか、退屈な見せ方になってしまっているので、このあたりの演出はもっと考えてほしかったところです。
また今回は新しく登場するキャラクターがかなりいますが、中盤に登場する、ネオの秘密を握る鍵に関わるメロヴィンジアンや、その妻パーセフォニーの行動理由は分かりにくいものがありました。ただこの点は次回作に絡んでくるのかもしれないので、ここで評価するのは早急かもしれません。
そうであるにせよ、今回は全体的にアクションに力を入れすぎて、それ以外のシーンで描写がおろそかになってしまった感じを受けました。

ネオがパワーアップしてる分、敵も今回はパワーアップしています。特に前回ネオにやられたはずのエージェント・スミスが復活し、マシンに縛られない独自に行動する存在に変わっているのは、前作のようなマシン対人間という単純な世界観に、広がりが出たように思います。
世界観の広がりは新登場のキャラクターにも伺えます。特に注目は双子の敵キャラ、ザ・ツインズでしょう。全身白ずくめの外観はスタイリッシュでインパクトがあるし、体を透明化できる能力は、前作で匂わされていた幽霊などの不可思議なモノの存在理由を体現したようで、上手く設定を生かしています。
蛇足ながらキャラクターの中で、自身がプログラムという設定を持っている者がいるのは、ＣＧ黎明期の映画「トロン」を思い出しました。

今回の終わりは「続く」といった感じではありますが、事件に一応の決着が着いた形なので、「ガメラ３」みたいな欲求不満は感じませんでした（次があることも分かってるし）。
この後、エンドクレジットが終わった後に次作｢レボリューションズ｣の予告が流れるので、クレジットが始まってから立ってしまうと、ソンすることになります。

「マトリックス」の世界では、人間は機械に支配されています。この設定は「ターミネーター」の未来世界でもあったし、７０年代には「地球征服計画」みたいなタイトルの作品や「ウエストワールド」などのような、人間と機械が敵対する話は前からありました。
それから見れば、「マトリックス」の設定は新しいものではありません。そんな映画がなぜ受けるのでしょうか？アクション？それも一因でしょう。またこのシリーズでは、ほとんどのキャラクターが表面上は人間の形で描写されているので、人間対機械の設定を観客があまり意識しない、ということはあるかもしれません。
思うに、このシリーズがヒットしている理由は、「今見えている世界は現実ではない」という考え方ではないかと思います。
「マトリックス」第１作登場の前から世界は不況に陥り、未だに出口は見えない状況です。アメリカも好況だったとはいえ、リッチになった人はそう多くはなく、「８ Mile」などにあるように貧富の差がより拡大しているように見えます。
そういう世の中では、今生きている世界から逃げたくなる人は多いことでしょう。今の苦しい生活が現実と思いたくなくなるのではないでしょうか。そういった人たちが、これが現実じゃなかったらいいなあ、と「マトリックス」を支持しているのではないかと思います。
そしてイラク戦争に対する反戦デモに見られる、アメリカ政府に対する不信のような、「何も信じられない」風潮も関係しているように思います。

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「マトリックス」シリーズもいよいよ最終作。今後はゲームという形では関連する作品をリリースするらしいものの、映画という形での続編の予定は、今のところ無いそうです。まあこの「レボリューションズ」を見てしまうと、もういいか、という感じはしてしまいました。
今回のお話は前作「リローデッド」の完全な続き物になっています。「レボリューションズ」の劇場公開は「リローデッド」公開から半年くらいしか経っていませんが、大まかな話の記憶しかないと、前半の方の細かい話についていけない箇所が出てきます。あまり気にするべきところではありませんが、前作をもう１回見ておいた方が、劇中の全てのエピソードにちゃんとついていけます。

映画にはちゃんと結末がついていて、「ガメラ３」みたいな「続く」という形ではないので不快にはなりませんでした。
しかしその結末はたぶん、大枠では誰もが予想できるであろう形で、ひねりはありません。物語のひねりよりも、ちゃんとした終わりにすることで、観客に心地よさを感じさせることを優先したように見えました。
「リローデッド」の終わりで、ネオが現実世界で超能力を発揮したことで色々な解釈をした人がいると思いますが、この点は映画では納得できる回答は出されておらず、結局ただのご都合主義としか思えません。これでは前作で語られた「今のザイオンは６度目」て話も、まるで意味無いでしょう。
また予告で出てきている、エージェント・スミスとの最終決戦は舞台を雨にしたり空を飛ばしたりして、前作と変えようとしてはいるようですが、前作で既に大勢のスミスと戦っているシーンがあるせいか、しつこいと思いました。宣伝ではこのシーンに何億もかけているのをウリにしていますが、そんなに金をかけるべきシーンとも思えません。

映画の一番の見どころはやはりザイオンの攻防戦、そして今回初めてじっくりと描かれるマシンシティの描写といった、お話や個々人のアクションではない、大スペクタクルシーンでしょう。
機械勢力の中心地であるマシンシティは第１作からちらりと登場しているし、既に「アニマトリックス」でも描写されていますが、実写でじっくりと描かれるのは今回が初めてです。実写といっても結局ＣＧのはずですが、重量感はよく出ています。

ザイオンの戦闘では予告にあった通り、前作でちらりと出てきたロボット兵器が大活躍します。弾が無くなるといちいち補給をさせるのはリアルですが、全員分やるのは危険すぎて無理ぽく見えました。このロボット兵器のデザインは「超時空要塞マクロス」（「ロボテック」と書くべきか）のデストロイドを連想させるデザインだし、ザイオンに大打撃を与える敵のドリルは「宇宙戦艦ヤマト」でのドリルミサイルを連想しました。
このドリルは前作「リローデッド」には出てこなくて、「アニマトリックス」の一編「フライト・オブ・オシリス」で始めて描写されたように思います。であるとやはり「オシリス」は話のつまらなさはともかく、「リローデッド」の前編と言えるのでしょう。
地中を掘るのならば、「ザ・コア」みたいにビームで掘る方がハイテクでマシンぽいと思いますが、そこでわざわざドリルを使うというがアナログぽい「マトリックス」の世界に合っています。さらにそのドリルから足が出てくるのが、イカ足飛行兵器センチネルみたいなグロテスクが感じられて、こういったデザインワークの世界観は今回もちゃんと守られています。
そう思うと「マトリックス」シリーズはやはり、話よりもビジュアルで見るべき映画なのでしょう。

しかし、ローレンス・フィシュバーンてずいぶん太ってないか（人のことは言えないけど…）。

すでに見た人

スミスとの最後の戦闘でネオが倒れた後、オラクルの姿になっていたのが映画の「謎」でしょう。スミスのパワーアップも実はオラクルが力を与えることで増強させ、マシンたちの脅威にさせていたように思えて、結局「マトリックス」はみんなオラクルの手のひらの上で踊らされていた話ではないのか、と思えました。