2000年の6月11日と12日に、東京の半蔵門にある国立劇場・小劇場にて、「隠岐島の舞楽と田楽」というタイトルで「十方拝礼(しゅうはいら)」と「蓮華会舞」が上演されました。
僕は12日の日曜(午後)に見に行きましたが、場内はほぼ満席でした。
前日、土曜の公演も同じような入りだったそうです。
「十方拝礼」は島前にある美田八幡宮で催される行事だそうですが、2年に一回しか舞われないそうで、見たのは始めてでした。これも蓮華会舞と同様に、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
この舞いは6つのパートに分かれます。楽曲は蓮華会舞と同じように、どのパートも似たようなメロディで、単調な感じです。
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劇場の入り口には、牛突きの旗が立てられていました。 | 「十方拝礼」の舞台セット。 公演中は撮影禁止。 |
一番始めの舞いは「神の相撲」と呼ばれるもので、2人の行司と、2人のふんどしをしめた子供が登場します。行司が「これより神の相撲をおん行う。」と声を張り上げると、子供らが中央に出てきます。しかし彼らは、取り組みのようなものはしないで、互いの耳にさした、「シンジヘイ」と呼ばれる、かんざしみたいなものを取り替えた後、再び元の位置に下がります。
次は「中門口」と言われる舞いですが、これと、この次の次のパート「子ざさら」に登場する2人の舞い手は、四角いかさのようなかぶりものをかぶっています。それに描かれている模様は、風水で使う羅板(らばん)を思わせる変わった絵です。
舞い手は、南京玉すだれみたいな、「びんざさら」という楽器を肩に乗せたり、地に這わせたりしながら歌いますが、その歌の言葉が「ハローハロー」みたいに聞こえるのは妙でした。
「中門口」の次は「すってんで」と呼ばれる舞いです。ここに登場する2人の舞い手もかぶりものをかぶっていますが、今度は鳥のかぶりものです。
「すってんで」「子ざさら」と来て、次は「総躍り」。文字どおり、今まで舞台に出た全員での踊りです。
それが終わると「中門口」の2人がびんざさらを四方の地に着けて、この「十方拝礼」は終ります。
衣装や歌詞には特徴があり、興味深いものがありますが、メロディや踊りが単調で、いすに座って見ていたせいか、眠くなってしまいました。
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劇場ロビーの出張売店。 | 売店で売っていた、眠り仏の置物。 相撲を取るシーンを再現。 |
「蓮華会舞」は今年の4月に国分寺で始めて見ましたが、今回上演された踊りの演目も全く同一のもので、出演の子供たちも同じ子らのようでした。
舞台のセットは野外のステージを似せた形に作ってありました。開演の時間になると、ライトが客席を照らしていたので、出演者が通るのかと思ったらその通りで、出演者は客席の背後から入場し、真ん中の道を通って舞台に上がります。
出演者たちが舞台に上がると、全員が舞台の周りを3周ほど回ります。先頭に立つ住職は、ステージの角で葉っぱのようなものを散らします。このパートは「行道(ぎょうどう)」と呼ばれているそうですが、4月に見た時は入場は見逃したので、始めて見ました(あの時は雨だったし、本堂の中は舞台の袖まで人がいっぱいだったので、入場はやらなかったのではないかとも思います)。
全ての舞いが終わると、出演者達が再び舞台の周りを回ります。「行道」では子供たちはお面をかぶっていましたが、ここではお面を取って素顔を出していました。
舞楽というものは、今では舞いを見る客を意識したものになっていますが、寺院で行われる舞楽であれば、それは仏さんへの奉納という意味があると思うので、観客ではなく、祭壇の方を向いて舞う方が当然だと思います。
国分寺で蓮華会舞を見た時は家族的な雰囲気が気に入りましたけど、国立劇場は舞台と客席が別れているし、国分寺の時とは比べ物にならないくらい観客の人数が違いますから、さすがにそういう雰囲気ではなかったです。住職の話のような、解説がなかったのも今一つな感じです。でも、眠り仏や獅子舞はお客さんに受けてました。
劇場のロビーでは、牛突きののぼりを立てたり、壁に漁船の旗を飾ったりして雰囲気を作っていました。粒うにやワカメや駅鈴など、特産品も少々売り出していて、そこには眠り仏の小さな置物も有りました。倒れないようにバランスを取れる置物で、初めて見ました。
一つ気になったのは、この公演を仕掛けたのは誰か?ということでした。
隠岐の側から、東京で公演をするといった、積極的なことをするとは思えないので、国立劇場の方で保存の意味で公演させたのかもしれません。放映の予定はないと言いながらもカメラで撮っていたし。
だとしたら、出演者の交通費や宿泊費は国立劇場が負担したのでしょうか?人数多いからかなりの額になったと思うけど…。