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戦場のシーンは今まで見た映画の中で一番凄まじいものでした。特にしょっぱなの、ノルマンディー上陸のシーンは凄惨極まりないです。こんな状況で、逃げないでよく戦う気になるものだと思ってしまいました。
血が飛び散ったりするシーンがたくさん出てくるので、残酷なシーンが嫌いな人には勧められません。これは映画で、嘘だと分かっているのでいくら残酷でも見ていられますが、これがもし本物の映像だったらすぐに映画館から逃げ出しています。まさに戦場を体験する映画であり、その意味では必見の映画でしょう。とはいえ、何度も見たいと思うような作品とは思えないので、アメリカでは大ヒットしなかったのも無理もないと思います。
戦場の効果音が一段とシーンの迫力を増しています。ひっきりなしにかすめる銃弾や、砲撃音など、こんなに凄まじい音を感じたのは「Uボート」以来です。サウンドではアカデミー賞は確実でしょう。
また撮影でも、カメラがブレたり、ピントがぼけたりするのが、本当に戦場で撮影しているようで効果的でした。レンズに血(もちろん偽物だろうけど)がついたショットをわざと使っているのも雰囲気が出ています。
特撮はILMで、ノルマンディー上陸で決着がついた後に連合軍の艦艇が海岸に集まっているロングショットはそうに違いないでしょう。ここで感心したのはそういうあからさまな特撮シーンではなく、戦闘時によく出てくる、画面の隅で飛んでいる小さな血しぶきを恐らくCGで作ったと思うのですが、そういう細かい部分で効果的にデジタルを使っている点です。
戦闘シーンがリアルなので、普通に歩いているシーンでもいつ誰がやられるかもしれないと緊張してしまいました。敵地だったらいきなり撃たれて死んでしまうこともあるでしょうし。
ストーリーにはこれといった特徴は感じませんでした。むしろ戦場の悲惨さを描くためにストーリーを組み立てられたような感じがしました。話の造りが「七人の侍」に似ているという意見がありますが、そうかもしれません。
実際に二等兵を探しに行く話なんてあるわけないと思っていたのですが、パンフによれば、米軍には、兄弟のうち一人は前線に出さないという法律があるそうで、日本軍とはえらい違いです。でもやはり映画の中で言ってるように、一人の兵士を探すために他の兵士の命を投げ出させるのは、いくら命が大切とはいえ、甘いのではないかと思ってしまったのですが。
予告編にはライアン兄弟の死の瞬間のスチル写真が出ていましたが、本編にはこの写真は出てきません。本編中の兵士の死の瞬間のシーンをスチルにしたものでしょうか?
戦闘シーンの凄まじさといえば、「スターシップ・トゥルーパーズ」も残酷でしたが、やはり空想のものと事実を元にしているものでは衝撃度が違います。
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上陸用舟艇の入り口が開いたと同時に敵の弾に撃ちぬかれて船内に倒れていく兵士たち、海に飛び込んだのに装備が重いために海中で窒息死する兵士たち、海上に浮き上がる途中で海中に飛び込んだ弾に打ち抜かれる兵士たち、ちぎれた自分の腕を持ってさまよい歩く兵士、飛び出た内臓を戻そうとする兵士、血に染まって水が真っ赤になった海岸…全てが本当ぽいです。トム・ハンクス演じるミラー大尉が、これで死者が35人と報告していましたが、少なくとも何百人単位としか思えません。
連合軍の兵士が、降伏しているドイツ兵を撃ち殺すシーンがあるなど、アメリカが正しいという描き方にしていないのは好感が持てました。
ノルマンディ上陸シーンが終わってから、シーンはアメリカ国内で戦死広報のタイプを打つ女の人たちに変わりますが、戦死広報はこうして作られたのかと、第2次大戦のドキュメンタリーを見ているようでした。
ファーストカットとラストカットはアメリカの国旗が逆光で撮られていましたが、わざわざ逆光なのは単にアメリカ万歳ではないと思います。どういう意味か分かりませんが。
初めと終わりを現代のシーンにしたのは、この話が単なる過去の出来事ではなく、この歴史の延長上に現代の我々が生きていると言いたいのだと思います。ただ、戦時中と現代の接点という点では、アニメ「火垂るの墓」のラストカットの方が衝撃度は高いものでした。
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