隣人は静かに笑う

 

 

キャッチコピーは「衝撃のラスト」ですが、まさにこのコピーにふさわしい作品です。ラストがこう来るとは予想できませんでした。観客へのだましのテクニックがうまいです。
「衝撃のラスト」の文句で思い出すのは「セブン」ですが、この「隣人は静かに笑う」のラストは、「セブン」での「首」のような、女子供を犠牲にするラストではないので、不愉快にはなりませんでした。とにかく「やられた!」としか言いようが無いです。
宣伝によれば、アメリカではラストシーンがショックすぎて、未だに上映されていないそうです(嘘か本当かは分かりませんが)。確かにラストの展開は意表を突くものの、ここで引き起こされる事象については、見ていて不愉快になる人もいると思います。特に「アメリカの正義」を信じている人には。
これを見る前は、この「隣人は静かに笑う」は以前にもあったような、隣人が変な奴で、そのおかげで主人公も狂っていく、という話か、あるいは隣人の隠された異常性格を暴いていくような類のサイコスリラーかと思っていました。
実際見てみると、話は主人公(ジェフ・ブリッジス)が気付かぬうちにテロリストの罠にハメられていく、サイコスリラーというよりサスペンスものと言った方がいいです。話には多少退屈な部分もあるのですが、主人公がじわじわとハメられていく過程は秀逸でした。
もう一人の主役であるティム・ロビンスは、善人の顔と悪人の顔を巧みに使い分ける怪演を見せてくれます。この人は「ボブ・ロバーツ」や「ザ・プレイヤー」のような、2面性のあるキャラ(「ショーシャンクの空に」の役もそう言えますか)をやらせるとうまいです。
現題は「Arlington Road」ですが、これだと映画の内容がさっぱり想像できないので、日本語タイトルを考えるのは苦労したと思います。
ラストでのTVニュースの報道シーンは、日々報道される「事実」の裏が、実は違うものかもしれない、という事を考えさせてくれます。「衝撃のラスト」の裏で、報道が伝える「真実」や警察発表は、大衆向けに迎合して加工されたものではないか、というテーマもちゃんと伝えていて、製作者の「気合い」のようなものを感じました。
テーマといい、予想を裏切るラストといい、予定調和で展開するハリウッド映画のパターン(それを否定する気はありませんが)を見飽きた方にはぜひとも薦めたい作品です。

 

 


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