まだ見ていない人
フランス国内に持ち込まれた中身の分からんケースを大人達が入り乱れて奪おうとする話です。
オープニングのナレーションで、タイトルは日本語の「浪人」から取ったことが分かります。「浪人」とは仕える主君を無くした無宿物の意味ですから、この作品の内容は、自分の居場所を無くしてしまった「RONIN」の切なさが感じられる話にすべきだと思うのですが、この映画は全編ケースの奪取に主眼が置かれているので、「RONIN」のタイトルの意味が感じられません。
サム(デ・ニーロ)やヴィンセント(ジャン・レノ)が昔どの組織に所属していたのか語らないところが、余計に「RONIN」の哀愁を感じられない点だと思います。このタイトルを生かすなら、かって所属していた部署を敵に回す話にでもした方がふさわしかったと思います。
劇中ではヴィンセントの知りあいが、侍のジオラマを作りながら「浪人」のいわれを語りますが、話の内容は赤穂四十七士なのに、ジオラマの侍は戦国時代ぽいよろいかぶとを着けているのがギャップを感じました。日本人には赤穂四十七士の話は有名だから、戦国時代と衣装が違うというのは知っているけど、西洋の人にはそこまでは分からないのでしょう。
ロバート・デ・ニーロとジャン・レノは義理に厚く、仕事はきっちりこなすプロのオヤジの存在感を見せつけてくれます。この2人の頑張りがこの作品の一番の見所でしょう。
後半でカーアクションが出てきますが、このごろの映画ではカーアクションはあまり見ないような気がします。たぶん「TAXi」以来かもしれません。市街地で、しかもかなり長く追跡が続くので撮影は大変だったろうと思いますが、それだけの迫力はありました。デジタルに頼らないアクションを見せてやる、という監督の意地(そう思っていたのではないかと想像しているのですが)を感じました。「TAXi」も舞台はフランスだったけど、フランスってカーアクションがやりやすいのかな?
ニースなどのフランスロケはきれいです。古い町並みや岩場など、場所もいろいろ変わって飽きさせません。「ミッション・インポッシブル」や「ピースメーカー」など、ヨーロッパを舞台にすると、なんか国際的な陰謀というスケールを感じます。
指令を出す女、ディオドラを演じるナターシャ・マイケルホーンは「トゥルーマン・ショー」同様、きれいだと思いました。でも、目が大きいのがチャームポイントな分、恐い目になるとドスが効いた感じがしました。英語しか喋らなかったのは、フランス語の発音に問題があったからかな?
ジャン・レノはUCCの缶コーヒー「BREAK」のCMに出ていますが、あの派手なコスチュ−ムでの「BREAK、終わり!」の言い方が、どことなくおかしくて好きです。
新宿歌舞伎町のミラノ座の前を「RONIN」を上映している時に歩いていたら、映画館の中に「BREAK」がズラリとおいてあったのを見かけたのですが、スポンサーのご厚意で観客に配るのかなあ(それが目当てで入ったりはしないが)。
敵とか味方とかの人間関係は分かりやすいのですが、キャラがどの組織に所属しているのか分かりにくく、マフィアなのか、政府組織なのか不明で、時々誰がケースをどうしようとしているのか分かり難くなることがありました。
すでに見た人
ケースの中見は何だったのでしょうか?ケースは話のきっかけという扱いで、中身が分からなくても特に問題ではないと思いますが、サムが「ケースの中見」を執拗にディオドラに聞いてたので気にはなりました。製作者達は何も考えてなかったのかも。
デ・ニーロの手術シーンは、傷口から血が流れるのが見える、気持ち悪いシーンでした(上手くできたダミーだ)。シーマス(ジョナサン・プライスって、どこかで見たことあると思ってたら、「トゥモロー・ネバー・ダイ」の悪役だったのですね!)がグレゴーを殴る時の音も痛そうな感じがして、生理的な嫌悪感が上手く出た映画ともいえます。